あのあと授業が終わりお昼ご飯を貰いに厨房に来た
「すいませ~ん」
「なんですか?貴族様」
この人がマルトーさんか?
「俺は貴族じゃなくて、ルイズ嬢に召喚された使い魔なんだけど」
「そいつぁ悪かったな。大体ここに来るのはメシに文句言う貴族なんでね。っでアンタは何のようだ?」
「まず自己紹介をさせてくれないか?俺の名前は波風ハヤテ。ルイズ嬢の使い魔らしい」
「おっと俺の名前はマルトーだ」
やっぱマルトーさんだったか
「食堂ではご飯が食べれないんでね。主人に許可を貰って、厨房に貰いにきたんだ」
「そうか。勝手に呼び出されたのに飯も食わせてもらえねぇなんて、貴族の奴らはひでぇな」
「いや、さすがに主人も人間が呼び出されるとは思わなかったようだから、仕方ないよ」
「おまえさん、器がでけぇな!気に入った!シエスタ!コイツに賄いを食わせてやれ!!」
「分かりました」
「こんにちは。シエスタ」
「はい。こんにちはハヤテさん」
そして出てきたのはシチューだった
「いただきます」
「なんですか?それ」
「ああ、こっちにはないのか。俺の故郷のならわしで食事の前には『いただきます』って言うんだよ。なんでも食材と作ってくれた人に感謝する言葉らしい。食べ終わった後には『ご馳走様』って言うんだ」
「いい言葉ですね」
「俺もそう思うよ。食べ物を食べられないのは厳しいからなぁ…」
そういって俺はシチューをスプーンで掬い、口に運ぶ
「美味しい…」
「おかわりもありますよ」
「食べる!!」
「美味しかった~。ありがとうシエスタ、何か手伝えることないかな?」
「そんな!いいですよ。私たちの仕事なんですし」
「いいから。何か手伝わせてよ」
「…じゃあ、デザートを運ぶのを手伝ってください」
大きな銀のトレイを持ち、シエスタの後ろについて運んでいる
シエスタは時々トレイからケーキをはさみでつまみ、貴族たちに配っていく
「なあギーシュ!お前は今、誰と付き合ってるんだ?」
「誰が恋人なんだよ?ギーシュ!」
「つきあう?僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」
ふとそんな声が聞こえてきた
ギーシュって誰だっけ?
コロン
そのギーシュ?のポケットから紫色の液体が入った小瓶が落ちてきた
流石に見てみぬ振りもできないし…
「貴族様?落とされましたよ」
そう言ったがギーシュは反応しない
「落し物ですよ。貴族様」
「何を言ってるんだね?これは僕のものではない」
その小瓶に気づいたギーシュの友人たちが囃し立てる
「おお?その香水はもしや、モンモランシーの香水じゃないか?」
「そうだ!その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」
「そいつがギーシュ。お前のポケットから落ちてきたってことはつまり、お前は今、モンモランシーと付き合っている。そうだな?」
「違う。いいかい?彼女の名誉のために言っておくが…」
ギーシュ?モンモランシー?なんか頭に引っかかってるんだよなぁ
「ギーシュ様…」
ん?何だあの子?
「やはりミス・モンモランシーと…」
「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心に住んでいるのは君だけ…」
ケティ?はギーシュの頬を思いっきり叩いた
うわっいったそ~。何も思いっきり叩かなくたって…
ほら、ギーシュの頬に紅葉が…
「その香水が何よりの証拠ですわ!さようなら!!」
うわ~修羅場だ…←きっかけコイツ(まあ何時かこうなってたろうけど…by作者)
ん?誰かなんか言った?
そんなことをしていると遠くの席から金髪の巻き髪の女の子が近づいてきた
「モンモランシー。誤解だ。彼女とはただ、一緒にラ・ロシェールの森へ遠乗りしただけで…」
なんか必死だな~。冷や汗たれてるよ?
「やっぱりあの一年生に手を出してたのね?」
「お願いだよ『香水』のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りで歪めないでおくれ。僕まで悲しくなるじゃないか!」
モンモランシーはワインのビンを引っつかむとギーシュの頭の上からかけ始めた
そして全部かけ終わると…
「うそつき!!」
と怒鳴って去っていった
ああ!決闘のイベントか!?できるだけ避けたかったんだけど…
やっぱり二人ともが認めてならともかく二股は許せないな!
まあこの世界は貴族制があるから一夫多妻もあるんだろうけど
「あのレディたちは薔薇の存在の意味を理解していないようだ」
…なんかもう哀れに見えてきた
もういいや。と思ってシエスタと一緒に行こうとしたところ
「待ちたまえ」
ギーシュに呼び止められた
面倒くさいなぁ…
「何ですか?貴族様」
「君が軽率に香水の壜を拾い上げたせいで、二人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」
…何を言ってるんだろうかコイツは?
「それは二股をかけたあなたの責任でしょう?私には責任の欠片もございません」
「そうだギーシュ!お前が悪い!」
俺の意見に周りが同調する
「フン。いいかい給仕クン?僕は君が香水の壜をテーブルに置いたとき知らない振りをしたじゃないか。話を合わせるくらいの機転があってもいいだろう?」
「私はただ落し物を落とし主に届けただけです。感謝されこそすれなぜ責められるんです?それに私は給仕ではありません」
「ふん…ああ君は」
ギーシュはバカにするように鼻を鳴らした
「確かあのゼロのルイズが呼び出した傭兵だったな。傭兵に心の機微を期待した僕が間違っていた。行きたまえ」
…俺をバカにするのはいい。だけどルイズは今この場には関係ないだろ
「私としては、今すぐあのお嬢様方を追いかけて、許しを請うべきだと思うのですが」
ギーシュの顔にサッと朱がさした
「どうやら、君は貴族に対する礼を知らないようだな」
「貴族に対する礼はありますが、貴族のバカ息子に対する礼は存じ上げておりませんね」
「よかろう。君に貴族に対する態度を教えてやろう。ちょうどいい腹ごなしだ」
「おもしろいじゃないですか。準備運動にはなりそうだ」
「ヴェストリの広場で待っている。ケーキを配り終わったら来たまえ」
そういってギーシュはマントを翻して行った
シエスタがふるえながら俺を見ている
「大丈夫だよ。あんな、人をバカにするような器の小さい人間に負けるつもりはないから」
「で、でも…」
「朝の俺の修行見たでしょ?アレを見て俺が負けると思う?」
シエスタは小さく首を横に振った
後ろから、誰かが近づいてくる気配がした
「どうやらご主人様が来たようだ」
「アンタ、何やってんのよ…」
ルイズは怒っていると言うより呆れているようだ
「いや、ちょっとご主人をバカにされたから」
「いいのよ。そんなの言わせておけば」
ルイズは気にしていないふうを装っていたが、握った拳が震えていた
「じゃあ、これは俺のわがまま。主人をバカにしたあいつをぶっ飛ばしてくる」
「な!なにをいってるのよ///」
「それに、ルイズはまだ俺の強さが分からないでしょ?今回の決闘で俺の強さの一端を見せてあげるよ」
「まあ、正直ちょっと疑ってたわ…」
「さてヴェストリの広場ってどこ?早く行かなくちゃ」
「あ、待ってください!!」
「?なにシエスタ?」
「ケーキを配ってから行ってくださいね?」
「…ハイ」
さて、次回はギーシュとの決闘です
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第四話です