No.449137

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 51

soranoさん

第51話

2012-07-08 16:28:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1024   閲覧ユーザー数:980

~遊撃士協会・ボース支部~

 

「――本当にご苦労さまでした。やっぱり、わたくしの目は間違っていなかったようですわね。みなさんだったら絶対に解決してくれると思いましたわ。」

軍に空賊や人質達の事を任せたエステル達はギルドに戻り報告し、ルグランから事件が解決したことを聞いたメイベルがリラを共につけて直接ギルドに出向いてエステル達に感謝し、褒め称えた。

「でも、軍に良い所を持っていかれちゃったしなぁ。解決したとはいえないかも……」

「そんなことはありませんわ。仮に、皆さんがいなかった場合、軍の突入も上手くいったかどうか。逆上した空賊たちに人質を傷つけられたかもしれませんから。」

「うむ、お前さんたちが潜入してアジトを制圧していたおかげじゃ。胸を張ってもいいと思うぞ。」

事件が自分達で解決できたかわからなく、納得しきれていないエステルにメイベルやルグランは褒めてフォローした。

「そ、そっかな……えへへ。」

2人に褒められたエステルは納得しきれてない表情から照れた表情になった。

「確かに人質は解放されて空賊たちも逮捕されたけど……。幾つかの謎が、解明されぬまま残ってしまったのが悔やまれるわね。」

「湖畔に現れた男たちと空賊の首領の奇妙な態度ですね。この事件、まだ裏があると考えた方がいいかもしれません。」

「まあ、そのあたりは王国軍に任せるしかなさそうじゃのう。連中の身柄を拘束された以上、こちらとしては調べようがない。」

同じようにいくつかの謎が残ったことに後悔しているシェラザードとヨシュアにルグランは気持ちを切り替えるように言った。

 

「とにかく、人質たちが全員無事に戻ってきただけでも幸いですわ。空賊逮捕のニュースのおかげで街にも活気が戻りつつあります。感謝の気持ちに、少しばかり報酬に色をつけさせて頂きました。」

「え、いいの?」

報酬を上乗せしたメイベルにエステルは驚いて尋ねた。

「ふふ、もちろんですわ。オリビエさんも……本当にありがとうございました。」

「フッ……『グラン=シャリネ』分の働きが出来たのであればいいがね。」

「ええ、お釣りが来るほどですわ。」

オリビエにもお礼を言ったメイベルはリフィア達の方にも向いて、感謝した。

「リフィア殿下達も他国の事件だというのにありがとうございました。殿下達のおかげで飛行制限も緩くされ、ボースの経済もなんとか立て直せました。」

「気にしなくてもよい。例え他国だろうが民はみな同じだ。それにリベールはメンフィルにとってこの世界では唯一の盟友。余達は友に力を少し貸しただけだ。それにリベールには色々と世話になった。このぐらいのことは当然だ。……だが、メイベル殿の感謝はありがたく受け取っておこう。」

「私もリフィアお姉様と同じです。私も今回の事件に関われたことによって貴重な経験を得られました。メイベル様とも出会えてよかったです。」

「屋敷で出たお菓子結構美味しかったよ。ありがとう。」

「フフ……お気遣いありがとうございます。」

リフィア達から逆に感謝の言葉を貰ったメイベルは上品に笑って答えた。

「リフィアお姉様、アレは渡さなくていいのですか?」

「おお!すっかり忘れていた!……メイベル殿、よければこれを使ってくれ。」

「?これは?」

プリネに促されリフィアは懐から手紙を出し、それをメイベルに手渡した。手渡されたメイベルは首を傾げて尋ねた。

 

「その手紙はリウイに会えるように書いた余とプリネの紹介状だ。メイベル殿――新しいボースの市長殿と今のボースの現状が書いてある。今後のボースの経済のためにも役立ててくれて構わん。」

「えっ……そのような重要な手紙を貰ってもよろしいのですか!?」

リフィアから聞いた手紙の効果にメイベルは驚いて聞き返した。

「構いません。ただ、それはあくまでお父様と会えるようにする紹介状なので、メンフィルとさらなる取引ができるかはメイベル様の腕によります。」

「うむ。双方にとってよい取引をメイベル殿がリウイに提案するのを期待しているぞ。」

「ええ、それはもちろん私も同じ思いです。それに父が死去してからリウイ陛下に市長としてお会いしてなかったので、私にとってもちょうどいい機会です。殿下達の期待を裏切らないためにもこの紹介状は大切に使わせていただきます。………それでは皆さん、ご機嫌よう。何かあったらまたお願いします。」

「……失礼いたします。」

エステル達に会釈をしたメイベルとリラはギルドから去って行った。

「うーん、何だかものすごく感謝されちゃったわね。」

市長であるメイベルに多大な感謝をうけたエステルは照れながら答えた。

「あれ以上事件が長引いていたらリフィア達のお陰で航空制限が緩くなったとはいえ、流通を元通りにするのは難しくなっただろうからね。市長さんが喜ぶのも当然かもしれないな。」

「えへへ、何だか嬉しいな。あたしたちが頑張ったことでみんなのお役に立てたんだったら遊撃士冥利に尽きるってもんよね♪」

「フフ、ナマ言っちゃって。でも、確かにあんたたちももう新人とは言えないわね。正直、今回は色々驚かされたわ。」

「えへへ、そっかな?」

喜んでいるエステルにシェラザードは嬉しそうにエステル達が予想以上に活躍したことを褒めた。

 

その後エステル達はルグランからメイベルからの多めの報酬を受け取った後、さらにはボース支部の推薦状を貰った。推薦状をもらって喜んでいたエステルとヨシュアだったが、未だに連絡がつかないカシウスの事が心配になった。しかしその後カシウスからしばらく帰れないことの便りを貰い安心した。また、カシウス宛の謎の小包で漆黒のオーブメントは小包に書いてあった”R博士”を探して届けるためにエステル達が預かった。その後シェラザードは事件が解決したのでロレント支部に戻ることになり、ロレントに観光に行くオリビエと共に定期船に乗ってロレントに行くために見送りのエステル達と空港に行った。

 

~ボース国際空港~

 

「それじゃ、あたしはこれでロレントに戻るけど………まあ、プリネさん達がいるから心配は無用と思うけど無茶は禁物だからね?」

「も~、大丈夫だってば。一応、正遊撃士を目指す旅だもん。シェラ姉ったら心配のし過ぎだよ~。」

「エステルの言う通り何とかやっていけますから、心配はしないで下さい。」

シェラザードの心配の言葉にエステルとヨシュアは大丈夫だと答えた。

「プリネさん、リフィアさん、エヴリーヌさん、本来なら私の役目なんですがエステル達のことをお願いします。」

「うむ!余達に任せるがよい!」

「エステルさん達が何か困った時があれば出来る限る力になりますから、安心して下さい。」

「エヴリーヌ達がいるんだから、大船に乗った気持ちでいていいよ。」

「ありがとうございます。……あんたたちの歳で正遊撃士を目指すのは珍しいんだからくれぐれも無茶しないようにね。

それと、困ったことがあったらプリネさん達に相談するかロレント支部に連絡するのよ。あんたたちがどこに居ようとすぐに駆けつけて行くからね。」

リフィア達にエステル達のことを託して安心したシェラザードはいつでも相談するように言った。

 

「うん……ありがとね、シェラ姉。シェラ姉の方こそあんまり飲み過ぎないでよね。あたし、それだけが心配なんだから。」

「タハハ……まあ、気を付けておくわ。」

心配したエステルから逆に心配されたシェラザードは苦笑しながら答えた。

「フッ、心配しないでくれたまえ。何といってもシェラ君にはこのボクが付いているのだから!」

そこにオリビエが出て来て胸をはって答えた。オリビエの発言にオリビエ以外は全員脱力した。

「……で、どうしてあんたもロレントに行くわけ?しかもシェラ姉と一緒に……」

「フッ、ボースの郷土料理はとりあえず全部味わったからね。そろそろ他の地方に足を向けてみようと思ってね。ロレントの料理は、野菜が絶品と聞いているし、シェラ君が噂の『闇の聖女』と深い知り合いだというから今から楽しみだよ。」

ジト目で睨んで尋ねたエステルの疑問にオリビエは楽しそうな表情で答えた。

「――てな感じで、美味しい店と師匠を紹介しろって言って聞かないのよ。あんまりしつこいから居酒屋で酒に付き合うのを条件に付いてくることを許可しちゃった♪」

「うっわ~……」

「オリビエさん……あの、本当に大丈夫なんですか?」

「早まった真似はよしたほうがいいですよ?」

生き生きとして答えるシェラザードを見て、エステルやヨシュア、プリネが心配して言った。

 

「フッ、このオリビエ、美人と美食のためなら死ねるさ。本当は、ヨシュア君やメンフィルの姫君達にも付いていきたいところなのだがね。迷った挙句の苦しい選択だった……」

「迷われても困るんですけど。」

「あはは……」

「プリネ、こんな奴相手にするだけ無駄だよ。」

「あれほどシェラザードに酒でやられたというのに、懲りない奴だな……」

相変わらずのオリビエの様子にヨシュアやリフィア、エヴリーヌは溜息をつき、プリネは苦笑した。

「まったく懲りないヤツ……ロレントの治安を乱さないでよね。あと、仕事明けのシェラ姉って本当にリミッター外れちゃうから。マジで注意した方がいいわよ。」

「なによぅ、失礼ねぇ。アイナは付き合ってくれるもん。」

「あの人だって底ナシでしょ!」

「リミッターが外れる?あの、それって……この前よりもスゴイのかい?」

エステルとシェラザードの会話が気になったオリビエはヨシュアに尋ねた。

「……何というか。比較にならないと思います。」

「ふーん、そうなんだ……え!?」

気不味そうな表情のヨシュアの答えにオリビエは流しかけたが、ある事に気付き驚いた。その時定期船の離陸の放送が響いた。

 

ロレント方面行き定期飛行船、まもなく離陸します。ご利用の方はお急ぎください。

 

「あら、もう出発か。ほらオリビエ、急がないと。」

「シェ、シェラ君。ちょっと待ってくれたまえ。少し考える時間をくれると嬉しいな~って……」

発信の放送を聞いたシェラザードはオリビエの服をつかみ、飛行船に乗るよう促したがオリビエは及び腰で少し待つよう嘆願した。

「出発直前になって、な~にを言ってるのかしら…………男だったらグダグダ言うな!」

「ひええええ~っ!」

しかしシェラザードはオリビエの願いを断ちきって、情けない叫びを出すオリビエを飛行船のデッキへ引きずっていった。

「シェラ姉、まったね~!ロレントのみんなによろしく!」

「2人ともお元気で!」

「うむ、達者でな!」

「2人とも体には気を付けて下さい!」

「ばいば~い!」

エステル達の別れの挨拶と共にシェラザードとオリビエを乗せた定期船は飛び立っていった……

 

 


 
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