俺の朝は早い。
隊長補佐というポジションに位置する俺は、その名から読み取れるように、各隊長や副隊長の補佐が主な仕事だ。
ここで指す隊長というのは六課にいる隊長全てだ
そんな俺の朝は早い。
―――――
「遅いぞ!!」
FWの朝練が始まる1時間ほど早い時間にも関わらず、彼女は元気に声を大しにて俺を怒る。
そんな時間に何をやるかと言うと、目の前にいるジャージ姿のシグナムさんと共に早朝のランニングだ。
「すいません、シグナムさん」
怒っているシグナムさんに頭を下げる。
怒られないため、約束の時間よりも少し早めに着たにも関わらず、頭を下げることになるとは思わなかった。
「次からは遅れないようにしろ。
お前が遅れれば、それだけ私とお前が一緒に居る時間が減るのだからな。
私はお前と少しでも長く一緒に居たいんだ。
誰よりもな」
淡々と言うシグナムさんに怒られるのは、もう何度目のことだろう。
次は怒られないようにしよう、そう決意するのも何度目のことだろう。
「すいませんでした」
再度謝罪の言葉を口にして、頭を下げる。
それを見られたからか、声をかけられた
「隊長補佐、シグナム副隊長おはようございます」
「おはようございます」
そう挨拶してくれたのは、ティアナとスバルの仲良し二人組だ。
シグナムさんが何か言う様子が無かったから俺が2人に挨拶する。
「おはよう、2人共どうしたの?朝練にはまだ時間があるけど」
朝練にはまだ早いのに俺も何をやってるんだろうか。
シグナムさんが普段からディスクワークしかしない俺を心配して誘ってくれたのは嬉しいけど、前の時間に戻してほしいな。
徐々に待ち合わせの時間が早くなってきてる現状に、俺の体がついてきてくれない。
「隊長補佐が毎朝走ってるって話を聞いたので、私達も着いていこうかなーって思ったんです」
スバルが元気よく答えてくれた。言われてみれば、2人の服装は普段の制服ではなくジャージ姿だ。
2人の服装を見ていると俺とスバルの間にシグナムさんが立つ。
「お前達には朝練があるのだからランニングなど止めて、高町との朝練に備えたらどうだ?」 「ランニング後の朝練何て集中して出来ないだろうしな」
「朝練もランニングも両立出来るように頑張りすよ。
それに、朝練前の軽い運動と思えばこれぐらい大丈夫ですしね」
シグナムさんの忠告をティアナが反論する。
雲行きが怪しくなってきたのを肌で感じる。
「なぁ、ティアナ」
名前を呼ぶと彼女の目線が此方に向けられた。
自分で呼んだにも関わらず、それ耐えきれなかった俺は視線を地面に移した。
「どうしたんですか、隊長補佐。
そういえば、隊長補佐は私達のランニングの参加に賛成ですよね。
隊長補佐が私のことを拒否するなんて……
隊長補佐は私と一緒に走ってくれますよね。
大丈夫です、スバル程では無いですけど、六課に来てから体力には自信があります。
隊長補佐の足を引っ張るようなことはしません」
ティアナが黙ると畳み掛けるようにスバルは口を開いた。
彼女もまた、俺を真っ直ぐに見つめている。
「そうですよ、隊長補佐。
いきなり朝練やるよりも、隊長補佐と一緒にランニングしたあとのほうが私はいいです。
隊長補佐は、私を入らないなんて言いませんよね」
2人は黙って俺を、俺の目を真っ直ぐに見つめている。
そんな2人にちょっとした恐怖心を抱くことしか出来なかった。
もし、断ったりしたら何を言われ、何をやられるのだろうか。
恐怖心に狩られた俺はシグナムさんにお願いする。
「と、とりあえず今日ぐらいは、一緒に走るというのは駄目ですか?」
「駄目だ」
即答したシグナムさんは俺ではなく2人を見ていた。
背中しか見ていない俺には、どんな顔で見ているかとか、全くわからないでいる。
「さっきも言ったが、私はお前と少しでも長く一緒に居たいんだ」
二人っきりでな、シグナムさんはそう付け加えるとたちまち、ティアナの顔が目に見えてイラついた表情に変わる。
「それってただ、自分の立場を利用して、隊長補佐を無理矢理自分の隣に居させてるだけじゃないですか。
隊長補佐がどんなに嫌がっても、立場上隊長補佐はシグナムさんの言うことを聞くしかない。
どんなに嫌でも、傍に居るしかない。
それって、隊長補佐が可哀想だと思わないんですか?」
ティアナに同調するかのようにスバルが首を何度か縦に振る。
彼女達はきっと、俺のことを心配してくれているんだろう。
彼女達
そこには、ティアナとスバルだけじゃなく、他の人達もいる。
例えば、目の前に立つ彼女とかが。
「そんなことあるばずながないだろ。
こいつは進んで私と毎朝ランニングしているんだからな。
それに、こいつが私を嫌うはずがなかろう」
シグナムさんは堂々と、言葉に自信を持ってるのか、強く言い返す。
彼女達は俺を気遣ってくれているなら、俺は彼女達を気遣うしかない。
せめてもの恩返しのつもりで。
「今日の昼は、時間が空いてますから、その時間に埋め合わせしますから」
そう言うと、シグナムさんは考える素振りを見せる。
返事は直ぐに返されることになった。
「いいだろう、今日はお前に免じて特別にだ」
「「ありがとうございます」」
息をそろえて返事をする2人を見ながら、軽い溜め息を吐く。
今日は朝から大変な目にあった。
「それじゃ、行こっか」
俺は彼女達に言うと走りだした。
肌寒い季節になった、なんて現実逃避ににたことを考えながら。
機動六課に所属する少し変わった肩書きを持つ俺の朝が、周りよりも早い朝が始まった。
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病みつき六課 第一話となります
改めてみると下手だなぁーっと思いました