ラミナ市内、商業D地区の外れ。ここに一軒の
グレゴリーズ・ガレージ。かつてカーレースで名を馳せたグレゴリー・ハマーが経営するガレージだ。
そしてカーマニアの間で名の知れたこの工場には、当然クルマ好きが集まってくる。
愛車の整備や修理、チューンナップ。中古車を買いに来る者もいるようだ。
そんなガレージに、一人のイヌ形ロボットが訪れた。
「親父さん、いるか?」
トレンチコートが似合うその女性ロボットは、エルザ・アインリヒト。
つい最近プロポーズを受けたが、あくまで姓は変えずに通しているらしい。
「おう、誰かと思えばエルザじゃねえか」
と、スパナを片手に持ちながらガレージの奥から白髪の男が出てきた。グレゴリーだ。
グレゴリーはエルザの前に現れるや、さらにこう続けた。
「…頼まれてたブツ、上がってるぜ。持っていきな」
と、グレゴリーは入口の近くにおいてある赤いバイクを親指で指差す。
それはエルザの愛車、ドラングだった。ドラングはブリッツェン社が販売するベストセラーバイクだ。
「ああ、恩に着る。いつもすまないな」
と、エルザは愛車の元へ歩み寄ると、早速その上に跨り、入念にチェックを行う。
「ハンドルがやや重いようだが」
「ああ、アンタはよく曲がる乗り方をしているからな、グリップ力を高めるためにいじらせてもらった」
「フフ、流石親父さんだ。よくわかってくれてる」
「部品の磨り減り方やオイルの減り具合、そう言ったものを見ればどういう使われ方をしてるのかがわかっちまうのさ。素人じゃ気づかんだろうが、オレぐらい経験溜めてれば大体はな。…あとはカンだな」
と、いつものように会話をしていたエルザとグレゴリーの元に、また一人のロボットが現れた。
エルザと同じジャーマンシェパード形、しかし若い男。そして持っていたのは黒い色のドラング。
そう、エルザの弟でラミナ警察署の捜査課に勤務するミハエル・アインリヒトに他ならなかった。
「す、すんませんおやっさん…またずっこけちまって」
そう言ってミハエルはドラングをガレージの店先に置く。見ればわかるとおり、車体はあちこちが傷だらけだった。
「おいおいおい、何をどうやったらお前は短時間でここまで壊せるんだ!?前に修理してからまだ2週間しか経ってねえじゃねえか!!」
「いや、ホント申し訳ないっす、犯人追いかけてるのに夢中で目の前のクルマ…ほら、グレーのスピGに思いっきりガンってぶつかっちまったんスよ」
「アホかっ!!
「まったく、同じ警官として…いや、ロボットとして情けなく思うぞ」
「だから姉貴…あれは不慮の事故だって」
と、言いかけていたミハエルは、後ろを振り向くと同時に言葉を失った。
「なるほどね、まさか私の愛車にキズつけてくれたのがミハエル君…あなただったなんてね」
「げぇっ!?そ、そそそそそそ総監!?」
そう、ミハエルの後ろに立っていたのはファンガルド警察総監、アイヴィー・ヒルトンだった。
「これは総監。総監も修理に出されていたんですか?」
「ええ、せっかくの休暇でドライブ中だったところを横からバイクにぶつけられたもんで修理に出してたんだけど…」
「なるほど…その犯人がミハエルだったとはな」
と、エルザは鋭い視線をミハエルにぶつける。
「いやいやいやいや!だからこれはワザとじゃないんスよっ、ワザとじゃっ!!」
「ワザとじゃないにも程度ってものがあるわよ。警官たる我々が交通ルールを守らないでどうするつもりなの?」
さらにグレゴリーも続く。
「ましてや警察のトップのクルマにぶつけるとはね…あーぁ、こりゃお前タダじゃすまねえぞ?」
「あ、あわわわわわわわわわわ…」
滝のように
「…まったく警官として…というよりロボットとして問題アリよ。基礎からみっちり鍛え直してあげるから覚悟なさい!」
「うわーーー!?あ、姉貴ー!助けてくれー!!!」
と、アイヴィーに引きずられていくミハエルはエルザに助けを求める。だが…
「…いい機会だ。この際ロボットの何たるかを総監に教え込んでもらえ」
「そ、そんなぁ!?」
と、あっさり流されてしまう。その様子を見ていたグレゴリーの顔には笑みがこぼれていた。
「さ、グズグズ泣いてないでさっさと来なさい。私の指導は厳しいわよ」
「ゆ、許してーーーー!!!」
…頑張れミハエル、負けるなミハエル。
いつか輝ける日がきっと来る…かも…?
「そ、そんなーーー!!」
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エルザ「みんな、クルマを運転するときは十分気をつけるんだ。私との約束だぞ」
◆出演
アインリヒト姉弟(http://www.tinami.com/view/375135 、http://www.tinami.com/view/395141 )
グレゴリー(http://www.tinami.com/view/412852 )
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