No.448056 化物になっちまったようです act2アルテマニアさん 2012-07-07 14:25:51 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1406 閲覧ユーザー数:1361 |
軽く右手を握り込む。
意識を集中……「力」をイメージする。
灰色の炎が右拳の中に生まれた。
数秒間それを維持してから、拳を開き、霧散させる。
「うむ、魔力の具現化はだいぶ安定してきたようだな」
ベルトルトによる評価。まあ、訓練を始めた3日前に比べたら随分マシにはなってるだろう。
最初は大変だった……全然出ないと思って力を強めたら次には一気に膨れ上がって爆発するし……。ベルトルトにはその時思いっきり苦笑されちまったしな……。
もう1回炎を出してみて、それからすぐ消す。
魔力変換素質・炎熱。
それが、俺の魔力で炎を生み出させている力だ。
この世界じゃレアものに入る技能の1つ。
これが俺の転生特典……なのだろうか。
どちらかと言えば……地味だ。
だって、俺が二次創作で知ってる限りでは「無限の剣製」だとか「王の財宝」、「大嘘つき」などを筆頭に、かなり強力かつ有名所を貰っている人が多かったし。
まあ、実際に体験するとなると話は別、という所か。現実はそんなに甘くない、と。
そもそも神様に出会って転生とか特典についての話さえしてないしね。そうそう良い感じに事は運ばない。ま、世の中そんなもんかもね。
「魔力変換素質との相性も悪くない……素質覚醒の成功確率は五分、か」
待て。
それだと魔力変換素質・炎熱は最初から持ってるんじゃなくて、あんたに与えられたように聞こ……え……。
…………。
うん。心当たりが有りまくるんだけど。
4日前、カプセルの外へ出てから、健康診断を受けた時。
ラストで、麻酔で一旦眠らされたんだ。
身体の特殊なスキャンをする際、身体に負担を掛ける可能性がある為に、という理由だと説明されたんだが……。
(……騙しましたね?)
思いっ切り不機嫌感全開の目でベルトルトを見る。
すると、彼は苦笑して手を合わせた。
「いや、すまない。しかし、この実験をすると知れば、君は抵抗するかもしれないだろう?」
……いや、それはそうかもしれませんけど。
(……ちなみに、失敗してたらどうなったんです?)
「……そうだな、その素質の種類にもよるが……君の場合は炎熱だから、下手をすれば君は自らの炎でその身を焦がしていたかもしれん」
……4日前、この科学者は意外と常識が有るとか言ったな。
ありゃ嘘だ。
五分って事は残り五分で俺焼死の未来じゃん!勘弁してくれよホントに!
俺の長時間のジト目睨みに、ベルトルトは降参のポーズを取る。
「悪かった、悪かった。とりあえず昼食にしよう。腹が減っては何とやら、だ」
あ、こいつ逃げやがった。
まーでも、腹減ったしな……素直に従うか。
……全くの余談なんだけど、ベルトルトは料理がかなり上手いんだよな。
てめえのような科学者が……まあ、いても良いんじゃね?
あ、ところで。
俺の転生特典は一体何なんだろうか。
まさかの無い、ってオチだったら泣ける。
飯を食いながら、ベルトルトと少々話した。
この世界は、「第72番管理外世界『ファランクト』」と言うらしい。
人間はあまり住んでおらず、どちらかと言えば他の生物が力を持っている世界の様だ。
……研究所脱走なんて考えんのは無謀らしい。良かった、何も考えずに抜け出してたら俺はおじゃんだったね。
後、この博士を除いた、俺や俺以外の連中についてだけど……。
人造生命、という分類だそうだ。
どこかの孤児などを集めてきた、何てものでは無く、正真正銘、1から造られた生命。
ホムンクルス、という名前の方がしっくり来る人も居るんじゃ無かろうか。
ちなみに、番号は造られた順番ではあるものの、目覚めるタイミングは異なる為、俺より先に7番とか10番とかがもう動いているそうな。……俺、目覚めんの遅くね?
とまあそんな話は置いといて、この研究は倫理的に非難されてもおかしくない。時空管理局なんざに見つかれば相当ヤバいだろう。
(……そんな事までして、あんたは何の研究を進めてるんです?)
「……魔力変換素質について……さらに突き詰めれば、人の持つ可能性について、だ」
ベルトルトは語りだした。
魔法は、基本的に理論体系化されたものであり、人により得手不得手はあるものの、リンカーコアを持つ者なら誰でも行使は可能だ。
だが、まだ未知の範囲がある。
魔力変換素質や、レアスキルなどがそれだ。
これらは得手不得手、などという問題では無いし、努力次第で何とかなるものでもない。
神の恩恵、と言っても過言じゃない。ぶっちゃけ突然変異と見られてもおかしくないし、またレアスキルにはその言葉が当てはまるような、強力なものが過去に確認されているらしい。
レアスキルの種類は余りにも多岐に渡る為、分類が難しい。
が、魔力変換素質なら?
これらは比較的少なく、まだ分類も容易。
そこにベルトルトは目を付けた。
「魔力変換素質の根本、そこに何らかの規則を見つけ、さらに理論化する事が出来れば……。それを足掛かりに、レアスキルの研究も進められるだろう」
(レアスキルを、研究……)
「そうだ。レアスキルは、言わば人の可能性の集大成。過去には、世界をも変え得る程のもの、奇跡と呼ばれるものも存在したという。それほどの力を、もっと安全に、苦しみに苛まれ続けている人の為に……子供の為に身を削る母親や、誰からも見捨てられ、孤独に震える者に、使うことが出来れば……!それは、どんなに……!」
熱を込めて話していたベルトルトが、はっとする。
「……すまない。熱くなり過ぎたな」
(いや……あんたの熱意がはっきり伝わってきましたよ)
誰かを……救えなかった経験でもあるのかな。
「……しかし、困ったものだ。ここまで熱くなってしまうとは……」
ベルトルトが頭を掻きながら苦笑する。
「……さっきも言った通り、私は人造生命を用いて実験を行っている……その中には、非人道的なものもあるのだ。それでも、私は……あくまで彼等には自我が無い、それだけを逃げの口実として、実験を重ねてきた。どうしようもない悪人だろうとは思う」
しかしだ、とこいつは首を傾げている俺を見て、一層苦笑する。
「4番……君という、自我を持つイレギュラーが出て来てしまったのだ。こんな私だ、君にどの様に接すれば良いか、全く解らんし……おまけにさっきの様に調子も狂ってしまう。本当に参ったよ」
いや、参ったよ、なんて言われましても。
こっちだってあんたとどう接するべきか絶賛悩み中なんですが。
……まあ、とりあえず。
はっきりと解る事が1つだけある。
まあ、ちょっと位こいつの実験に付き合ってやるか、と考えている俺がいる事。
……どうも、俺は変な所でお人好しらしい。
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転生してしまったのは良いけど……前途多難のようだby4番と呼ばれている転生者