No.447726

真恋姫†夢想 弓史に一生 第一章 第二話 出会いは…。

kikkomanさん

どうも、作者のkikkomanです。

転載なので、元々あげていた話数まで一気にあげて行きたいと思います。

さて、二話ですが、オリキャラの一人目が出てきます。

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2012-07-07 00:38:59 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:6533   閲覧ユーザー数:5681

 

~聖side~

 

 

野盗に襲われてから既に二刻が経過していた。

 

日も落ち、あたりは漆黒の闇夜に変わる。

 

日本に居たときには感じられなかった“漆黒”という言葉に似合った雰囲気に、少しばかり恐怖を覚える。

 

日本では今思えば、暗いところが無いほど電灯が立っていた。

 

だから、都会に住むものとしてはこの暗闇は慣れないものだ。

 

空を見上げれば満天の星空。

 

小さい頃は星を眺めるのが好きだったな~…。あまりに夢中になりすぎて二回のベランダから落ちそうになったこともあったっけ…。

 

ついつい昔のことを思い出しながらも歩を進める。

 

あれは、きっとさそり座かな?? じゃあ、あれはいて座かな…。

 

そうして上ばかり見ていると足元が疎かになるわけで…。

 

 

「っ!!!!?」

 

 

どうやら川のほとりまで歩いていたらしい。

 

それに気付かず歩を進めた結果………。

 

 

-ドッボーーーン-

 

 

川に落ちてしまった。

 

幸い川は浅く、足をつける場所であったため溺れることは無かったが、全身ずぶぬれの上、弓道衣が水を吸ってしまって重い…。

 

 

「ちくしょー最悪だ…。」

 

 

どこかで濡れた服を乾かせる場所はないかと辺りを見渡せば、近くに船があるではないか。

 

そこで服を乾かしながら、今日は野宿かな…。

 

そう思って船に近づいていく。

 

船の手前まで行くと、何か白いものが置いてあるのに気付いた。

 

近寄って確認してみるとこれは……女物の服と下着!!!???

 

やばいと思ってその場を立ち去ろうとしたその瞬間。

 

 

~パシャン~

 

 

水の音が聞こえて、そちらを振り向くと、水浴びをしている少女と目が合ってしまった。

 

 

 

 

 

 

~???side~

 

 

川で水浴びをしていると、見知らぬ男の人と目が合った。

 

一瞬の静寂。何が起こったのかわからない状況…。

 

すると、男の人はわたわたし始め、急ぐように後ろを見た。

 

 

「すっ…すいません!! けっ…決して覗くような真似をしようとしたわけではなく。たっ……ただ船があったので、そこで休めればな~っと思って…。」

 

 

そう言われて、改めて自分がどんな格好をしていたのかを思い出す。

 

……そして一瞬で顔が真っ赤になる。

 

 

「きゃあぁあっぁぁあああ~!!」

 

 

パニックに陥りそうになりながら、何とか持ちこたえた私は、冷静な判断のもとまずは服の所に行く。

 

服の所には武器も置いてあるので、まずは武器をとって男と対峙する必要があるからだ。

 

幸い、服のところに移動するまでに男が私に何かしてくることはなかった。

 

ほぉ~と心の中で第一段階が完了したと思いながら直ぐに気持ちを引き締める。

 

次はこの男をやっつけるのが目標だ。

 

武器を構え、男を鋭い目つきで睨みつけ、

 

 

「あなたは何者ですか!! まさか、ここらへんで騒ぎになっている賊なのですか!! 私が水浴びをしているのをいい事に強姦まがいのことをしようと付け狙ってきたのですね!! なんて卑劣な!! その行いの罪深さ、私の刀の錆となりて一生神に許しを請うが良い!!」

 

 

そう言って刀を振るう。

 

 

「うわっ!! あぶねぇ!!」

 

「ちいっ!! 外したか…。だが、次はこうはいかないわよ。」

 

 

男は身を引いて私の袈裟斬りをかわす。

 

ならばと、刀を横に構え、三段突きをお見舞いする。

 

 

「せい!! はぁ!!! たぁっ!!!!」

 

「おいっ!! まずは!!! 話を聞いてくれ!!!!」

 

 

男はそれをもかわし、両手を振りながらそっぽを向く。

 

 

「どうした!! 怖気づいたの!? それならそうと、早く私の刀の錆となりなさい!!」

 

「錆となるのはごめん仕りたい!! というか、その前に頼むから服を着てくれぇぇぇ!!」

 

 

男の指摘に、私は再び自分の状況を思いだし、顔を真っ赤に染めながら剣を握っていない片手で胸を隠す。

 

 

 

「俺は向こうを見てるから、頼むからまずは服を着てくれ!! 戦うにしても話をするにしても、それからでもできるだろ!!」

 

 

男にそう言われ、私も早く服を着たかったために一度剣を置くと、服を着始める。

 

着替えている最中、男の方をじっと睨んでいたが、男はこちらを向くことは一度もなかった。

 

………どうやら、意外に紳士らしい。

 

服を全て着終わると、私は剣を構えて男と再び対峙するのだった。

 

 

 

 

 

 

~聖side~

 

 

 

シュルシュル、シュルル、キュッ。

 

俺の後ろから、布のこすれる音が聞こえる…。

 

これは夢なのだろうか…。

 

男の、願っても無い偶然、出会えたらラッキーなシチュエーションBEST3に入るだろうシチュエーションに、俺は遭遇している…。

 

お父さん、お母さん、俺を生んでくれてありがとう…。そして、友の多くよ。俺は今、男なら最高に嬉しいシチュエーションに遭遇している…。どうだお前ら、羨ましいだろう!!

 

もしかしたら、お前らより先に大人の階段登っちゃうかもよ……そんな勇気ないけど!!!!

 

などと妄想に夢を膨らませていると、

 

 

「…いいわよ…。」

 

 

後ろから先ほどの少女の声が聞こえた。

 

振り返ると、白と黒のフードつきの服に身を包んだ少女が、剣を構えながら立っていた。

 

背はそれほど高くなく、華奢な体に似合わない太刀を持ち、橙色のセミロングの髪に、胸にはロザリオ。

 

見た感じシスター的な何かか?? でも、じゃあ何故太刀を持つ!!

 

シスターは………結構ありだと思うんだ………。

 

それに、程よい大きさのおっ…ゴホンゴホン…二つの双丘をお持ちだし……。

 

表すなら美少女の類に分類されるその少女。

 

良い、実に良い…。ただ、シスターならもっと優しく、お淑やかな。それこそ淑女のような…。

 

 

「ねぇあなた、何か失礼なこと考えてない!?」

 

「イエイエ、メッソウモゴザイマセン」

 

「あっそう。なんかイラッときたんだけど…まぁいいわ。さぁ、さっきの続きよ!!」

 

「ちょっ!!」

 

 

そう言って、また急に切りかかってくる少女。

 

確かな体捌きから、剣を右上から袈裟に切りかかってくる。

 

 

俺は後ろに飛びのき、距離をとって様子を窺う。

 

 

「なんだ、偶然かと思っていたけど結構やるじゃない…。じゃあこれならどう??」

 

 

少女が剣を振ると何かが飛んでくるのが感じられた。

 

 

「っ!!」

 

 

その刹那、俺の数センチ横を斬撃が通過した。

 

……おいおい…聞いてねぇぞ!! 何だこのチート攻撃は…。俺の生涯はここにて閉幕するわけ?? 絶対やだ!! まだあんなことやこんなこともしてないのに、死んでたまるか!!

 

 

「さぁ、おとなしく死んで頂戴!! 謝罪はその首で我慢してあげるから!!」

 

「おとなしく首を差し出すようなやつが、ここまで必死に抵抗するわけ無いだろうが!!」

 

「それもそうね…。じゃあ一思いにこの剣の錆になりなさい!!」

 

 

この少女…剣の錆が好きだな…。そんなに剣を血で汚してきたのか…。剣を血で汚して、楽しむような趣味を持ってるやつなんて、正気じゃねぇな…。

 

 

「死ね死ね死ね死ね!!」

 

 

どんどんと斬撃を飛ばしてくる彼女。

 

俺は、それをかわしながら、タイミングを窺う。

 

勝負は一瞬…。上手く相手の懐に入って、剣を弾き飛ばせれば、俺にも勝機はある。

 

 

「なかなか死なないわね!! とっととその首差し出しなさい!!」

 

 

剣を振りかぶった瞬間、俺は相手に向かって走り出す。

 

急に俺が向かってきたものだから、少女は一瞬動きが鈍る。

 

その一瞬を咎めるように、俺は足で少女の手から太刀を弾き飛ばした。

 

太刀は弧を描きながら数メートル先に刺さる。

 

俺はすぐに背から弓を掴み、矢を番えて構えた。

 

 

 

 

 

 

~???side~

 

 

太刀が飛ばされた先を目で追った後、男を振り返ると、男は弓を構えていた。

 

 

「チェックメイト…だな。」

 

「ちぇっくめいと??」

 

「あぁ~そうかここじゃあこんな言葉使わんよな…。これでおしまいって意味さ。」

 

 

確かに…。手元に武器は無く、男は弓を構えているのだから、武器を取りに言こうと後ろを向いた瞬間、射られておしまいだろう…。

 

がくっと膝を折って地面に座り、手を合わせロザリオを掴み、祈る。

 

 

「どうか、我が主よ…。死せる私をお許しください…。そして、犯した罪を贖罪しきれない私に、慈悲の心をお授けください…。」

 

 

私は目を瞑り死を覚悟した。

 

 

「…もしもし…?? お嬢さん??」

 

「………。」

 

「もしも~し…。」

 

「………??」

 

 

いつまで経っても落ちない首に違和感を覚えて、私は目を開ける。

 

そこには、変に怪訝そうな顔をした男がいた。

 

 

「もしもし?? あの~俺は君を殺すつもりは無いんだけど…。」

 

 

………一瞬、男が何を言っているのか理解できなかった。

 

 

「えっ!! 殺さないんですか!?」

 

「そんなむやみやたらに殺すわけないじゃん!!」

 

「何故?? あなたは賊なのでしょう??」

 

「俺は賊じゃない…。」

 

「っ!!! じゃあ、私を辱めて、その後は我が身を売ろうという魂胆なんですね!!」

 

「そんなこともしない!!」

 

「…………本当ですか??」

 

「あぁ、本当だ。」

 

「………ほっ…。よかった~…。」

 

「へっ??」

 

「わ~ん、怖かったよ~…。若くして死にたくなかったし、本当によかった~。」

 

 

男が私を殺す気がないのだと分かると、安心感から涙が自然と流れ出してくる。

 

その様子を見て、男は驚きと戸惑いを隠せないでいた。

 

 

「えっ!!! おいおい…。とりあえず泣き止んでくれよ…。」

 

「ぐすっ…。だっで~ぼんどに殺ざれるかと…。」

 

「はいはいっ…。よしよし、もう大丈夫だからね…。」

 

「っ!!」

 

 

その男は私の頭をなでた。

 

なんだかむず痒いような、嬉しいような、なんとも言えない気分に包まれる。

 

恥ずかしくてすぐに振り払ったけど、でも、うん…嫌じゃないかも…。

 

 

「とにかく落ち着いたかな…。」

 

「…はいっ…。」

 

「まず、一つ聞いていい??」

 

「はいっ?」

 

「さっきまでとずいぶん雰囲気が違うんだけど…。」

 

「すいません…。実は剣を握ると性格が…。」

 

「なるほど…そういった仕様か…。」

 

「はい??」

 

「…こっちの話だから気にしないで。 …そうだ!! 俺に聞きたいこととかある??」

 

「…えっと…。では、お名前を…。」

 

「あっ!! そういえば名乗ってなかったね。」

 

 

そう言って男は自分の身分を紹介してきた。

 

 

姓は徳種、名は聖、字も真名も無いという…。

 

字も真名もないとは珍しい。

 

どうやら、彼はこの世界とは違うところ出身らしく、この世界のことをよく知らないという。

 

俄かには信じがたい話だが、その身なりといい、言葉と言い、その武器といい、この国の物でないことは間違いない。

 

彼曰く、「自分は星を眺めていたら急に星が光だし、気付いたらこの先の荒野に倒れていた」ということらしい。

 

 

「…とまぁこんな感じなんだけど、信じてもらえるわけないよね…。」

 

「…俄かには信じ難いですが…あなた様の格好からしてこの国のものではないですし、その話しにも少しばかり心当たりがありますからね…………あなたは管輅の占いをご存知ですか??」

 

「ん?? いや…知らないけど。」

 

「管輅は有名な占い師なのですが、実は彼は少し前に予言を出しておりまして、『この世界に流星と共に天の御使いがやってきて、この乱世を鎮め、この世に平穏をもたらす』と言っていました。あなたの話を聞く限りじゃあ、あなたはその御使いそのものですね…。」

 

「えっ!! そんなの俺は知らないよ!!」

 

「とはいえ、そうじゃないと納得できないことも沢山あります。うん、あなた様は天の御使いさまです!! これからはそう名乗ってください!!」

 

「はっ…はぁ…。」

 

 

まぁ胡散臭さは残るけど、この人から感じる雰囲気は悪い人ではないと言っている。

 

この人がもし、本当に御使いだというなら、この乱世を本当に鎮めてくれるのだろうか…。でも、この冴えない男で大丈夫なのだろうか…。不安だな~。

 

 

「はっ!! では、私は天の御使い様に剣を向けてしまった…。神に仕えるものとして、天の御使い様に牙を剥くとは言語道断…。どうか主よ…。私に今一度許しを与えたまえ…。」

 

「あぁ~えっと…。まぁこうして無事だったわけだし、気にしなくて良いよ。むしろ俺のほうこそごめん…。本当に覗く気なんてなかったんだ。」

 

「おぉ~御使い様は私をお許しになられるのですね…。主よ、その慈悲深き愛に感謝いたします…。」

 

「まぁ…うん。とりあえず、誤解が解けたようで何よりだよ…。」

 

「ありがとうございます。そういえばまだ名乗っていませんでしたね…。私は、姓は徐、名は庶、字を元直。以後お見知りおきを…。」

 

 

そう言うと、男の表情が少し曇った。

 

どうやらとても困惑している様子だ……。

 

 

 


 
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