No.447694 魔法幽霊ソウルフル田中 ~魔法少年? 初めから死んでます。~ どうみても不法侵入な1話タミタミ6さん 2012-07-07 00:17:27 投稿 / 全2ページ 総閲覧数:2093 閲覧ユーザー数:2022 |
まず初めに言っておこう。
この物語は我らが主人公、高町なのはによるリリカルマジカルな物語ではない。
これは、彼女たちの待ち受ける運命を知り、影から彼女たちを支えようとする男の物語である。
その男の名は田中 太郎、一度死に、魔法の力を天使により授かった――――
――転生者である。
「……って、なるはずだったんだけどな~」
はあ~、と俺は盛大なため息をつく。
ややこしいプロローグですまない、俺の名前は田中太郎、少し前まで普通に高校生をやってた16歳の男である。
元々いた世界で死んで、現在リリカルなのはの世界に居座っている男だ。
今、俺がいる部屋は可愛らしいぬいぐるみやピンクのカーテンなどがあり、とても男子高校生の部屋とは思えない内装をしている。
事実、俺はこの部屋の主なんかじゃない。
というかリリカルなのはと聞いた時点でお気づきだろうが……。
『~♪~~♪』
ケータイのアラーム音。
俺のじゃないぞ、こんなかわいいピンク色のケータイを持っているのはこの部屋の主であり主人公の――
「う……うう~」
そう高町なのはちゃんである。
あ、ケータイ落ちた。
「はあ~、変な夢見ちゃった……」
なのはちゃんはもぞもぞと布団から眠そうに上半身を起こすと、朝日が射している窓の方を向いて大きく伸びをする。
そのとき、勉強机に腰かけている俺と目が合ったのだが……。
「さて、顔を洗わなくっちゃ!」
朝っぱらから見知らぬ学生服の男が部屋にいるのに、そこに何も居ないかのように、部屋から出て行った。
いつものことである、そしてその反応は『正しい』。
「……俺も行くかなぁ、やることないし」
この部屋にいてもしょうがないので、俺はなのはちゃんの後についていくことにした。
サラダに焼き魚、スクランブルエッグ、高町家の朝ご飯は実に豪華でおいしそうだった。
こんなに素晴らしい+若い+優しいお母さんを持つなのはちゃんはしあわせものだなぁ、と思ってしまう。
「いやでも3児の母と父にしては若すぎだよなあ」
知ってると思うけど、年齢ではなくて外見だよ?
俺の父さんなんか45でバーコード頭なのに……、遺伝してませんように。
俺が今、頭を抱えている場所は一家団欒としているテーブルの『真上で浮いている』。
べつに比喩表現とかじゃない、本当にふよふよ浮いているのだ。
しかも、誰もそのことに気付いてない。
なのはちゃんも、恭也さんも、美由希さんも、士郎さんも、桃子さんも、俺に気付いていないのだ。
士郎さんと桃子さんなんか子供の前だというのに新婚カップルみたいな惚気を披露してるし。
「みんなアレだぞ? こんな料理上手なお母さんを持って、幸せなんだから分かってんのかぁ」
士郎さんすっごい笑顔、にやけすぎである。
ホントに3児の父ですか、どうみても新婚夫婦ですありがとうございました。
「わかってるよ~。ねえ、なのは?」
「うん!」
元気に返事をする美由希さんとなのはちゃん。
でもよく見てみよう、若干苦笑いだから。
「ああん、もうあなたったら~!」
イラっ☆
「リア充死んでしまえ!」
心の内より湧き出てくる嫉妬(不可抗力)から、とっさに士郎さんに手刀を繰り出す俺。
普通なら顔面直撃コースなのだが俺の手刀は士郎さんの方に向かっていき――――
――――するり
「…………はあ」
手刀を振り下ろしたままの姿勢で肩をおとす俺。
躱されたわけではない、俺の手刀は士郎さんの体を『すりぬけて』しまったのだ。
もちろん士郎さんの体には傷一つない、俺にも気づいていない。
おわかりいただけたであろうか。
つまり俺、田中太郎は肉体が無いのだ。
だから初めのプロローグは、正しくはこうである。
この物語は我らが主人公、高町なのはによるリリカルマジカルな物語ではない。
これは、彼女たちの待ち受ける運命を知ってるんだけど、どうしようもできない男の物語である。
その男の名は田中 太郎、一度死に、魔法の力を天使により授かったけど死んだまんまだから使えないという――――
――――転死者である。
魔法幽霊ソウルフル田中、始まる前からクライマックスです。
「どうしてこうなった……」
何をやっても外れない頭の白い三角頭巾をいじりながら呻く俺。
こうなった原因はただ一つ、全ては5年前、俺がこの世界へ転死する直前のことだ……。
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これは、『高町なのは』による全力全開なお話ではありません。
このお話は『転死者』が織りなす、全身全霊の物語――。
魔法少女リリカルなのはの世界で、一度でいいから魔法を使ってみたかった男、田中太郎。
しかし、魔法が使えれば何でもいいやと細かいことを丸投げしたばっかりに……!
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