No.447616

魔法少女リリカルなのはStrikerS~軍狼の生きる道~第一話「狼は静寂を望む」

白さんさん

ミッドチルダに来たフェンリー。彼は何処へ向かうというのだろう…?

2012-07-06 23:16:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3006   閲覧ユーザー数:2919

彼が睡眠を始めてから、丸一日が過ぎた。

 

 

そんな彼はというと……

 

 

 

「……チッ」

 

 

こめかみに青筋を浮かばせ、目を瞑りながらベンチに寝転がっているフェンリー。率直に言うと、彼は苛立っていた。

 

 

「(うるせえ…)」

 

 

公園ではしゃぐ子ども達の声に苛立っていた。砂場で山を作り、それが崩れると笑い。滑り台では、滑り落ちる度に笑い叫んだり。ブランコでは高くこげばこぐほど声量が上がったりと、公園での日常風景に彼は苛立っていた。

 

それもそのはず。彼は軍事レプリロイド『フェンリー・ルナエッジ』戦う為に造られ、戦う事を生き甲斐として過ごしてきた。このようなほのぼのとした日常は、戦いに身を投じてきた彼の日常と全くソリが合わないのだ。

 

 

「(餓鬼共……ぶっ殺してやろうか?)」

 

 

内面物騒な事を考えている彼。しかし勿論そんな事はするつもりはない。彼は元々好戦的な性格だが、不思議とそんな気分になれない。人は一度死ぬと、性格は変わるものだろうか?彼は元は人ではないのだが……。

 

 

「(あーあ……これといってやることがねえ……こんな姿(ナリ)じゃ暴れれねえし……どうしたもんかねえ……)」

 

 

彼はどうしようもない事を延々と考え、ただひたすらベンチの上で時間を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのお兄ちゃん…まだ居る」

 

 

たまたま公園を通りかかったスバルは、未だベンチの上で寝転がっているフェンリー見て言う。

 

 

「何であそこに居るんだろう……もしかして…帰るお家がないのかな?」

 

 

彼女は考える。もし本当に帰る家が無かったら彼が可哀想だと、スバルは思う。いざ声を掛けようと近づこうとしても、彼の出す独特な雰囲気に圧され、中々近寄れない。

 

 

「スバル~何してるの?おいてくよ~」

 

 

「まって~!お母さ~ん!」

 

 

昨日と同じように、彼を横目でチラリと見る。やはり寝転がったままで、動き出す気配は全く感じられない。

 

 

「(よぉ~し、次に公園通りかかったら、今度こそ声を掛けよう!)」

 

 

彼女は自身にそう言い聞かせ、走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………首が痛え」

 

 

長時間ベンチに寝転がっていたのだ、当たり前のことだ。気づくと太陽は沈みだし、空は夕焼けで赤く染まっている。彼にとって赤は嫌いな色である。何故なら、赤は炎の色。彼が氷の力を持っていたレプリロイドで、炎が天敵なのだ。

 

 

「そういや、ゼロにやられた時も炎喰らってたな……あ?」

 

 

何やら声が聞こえる。方や屈強そうな男。方や子供の声。

 

 

「なんだなんだ?餓鬼と大人の喧嘩か?……にしても」

 

 

片方の子供、何か違和感がある。人間だが、どこか人間とは違った感覚。

 

 

「……チッ」

 

 

気づけば彼はベンチを降り、その声のする方へ歩いていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイオイ、俺にぶつかってタダですむと思ってんのか?嬢ちゃんよ?」

 

 

「ご、ごめんなさい……ちゃんと前見てなかったから……」

 

 

スバルは怯えながら、目の前の大男に謝る。

 

 

「そうだな…親呼んでこいや。慰謝料払わせてやる」

 

 

「えっ…?」

 

 

「ほら…さっさと呼んでこいやぁ!!」

 

 

男はスバルを蹴りつけようとした。

 

 

 

 

 

 

「は!下らねーな」

 

 

「なっ!?」

 

 

男の足は、突然介入してきたフェンリーに止められていた。フェンリーは掴んでいた足を離すと、男は離れる。

 

 

「てめぇ…誰だ?そこのガキの兄か何かか?」

 

 

「兄…?」

 

 

フェンリーはチラッとスバルを見る。スバルはビクッと体を動かす。

 

 

「ちげーよ……何かしらねーけど体が勝手に動いちまってたんだわ」

 

 

「ふざけんなよ!ガキが!」

 

 

男はフェンリーに殴りかかる。

 

 

「危ない!」

 

 

 

 

 

 

ガアンッ!!

 

 

「……」

 

 

「……ッぐあああ!」

 

 

フェンリーの顔面を殴った男は、腕を押さえ悶絶する。殴られたフェンリーはというと、何事もなかったかのように頬をさする。

 

 

「なんだコイツの体!?鉄みたいに固え!?」

 

 

「なに一人で盛り上がってんだ?」

 

 

嘲笑うかのようにフェンリーは男を見る。

 

 

「しっかしなってねえな……パンチってのは……」

 

 

フェンリーは振りかぶり

 

 

「こうやんだよ!!」

 

 

バキィイ!!

 

 

「ぐはぁああ!!!!」

 

 

フェンリーのパンチにより、勢いよく吹き飛んだ男。

 

 

「オイ、人間。さっさと消えねえと……やっちまうぞ?」

 

 

「ヒィ!!」

 

 

顔面蒼白にして、男は逃げていった。

 

 

「けっ…張り合いねーな」

 

 

「あ、あの…」

 

 

「あ?」

 

 

スバルはフェンリーの瞳を見ながら

 

 

「お兄ちゃんありがとう!」

 

 

と笑顔で言った。すると

 

 

「スバルー!」

 

 

一人の女性がやって来た。

 

 

「お母さん!」

 

 

「もう、どこいってたの?探したんだからね」

 

 

「ごめんなさい…」

 

 

「?そこの人は?」

 

 

スバルにお母さんと呼ばれた女性は、フェンリーを見てそう尋ねる。

 

 

「えっとね、わたしが男の人にぶつかっちゃって、それで蹴られそうになったところをお兄ちゃんが助けてくれたの!」

 

 

「そうなの!?……うちの娘がご迷惑をおかけしました」

 

 

女性は申し訳なさそうに頭を下げる。

 

 

「別に気にしちゃいねーさ」

 

 

「そ、そうですか……えっと、私はこの子の母親のクイント・ナカジマといいます」

 

 

「スバル・ナカジマです!」

 

 

「……俺はフェンリー。フェンリー・ルナエッジだ」

 

 

フェンリーはそう言うと、何処かへと歩き出す。行き先はベンチだ。彼は再び寝転がる。

 

 

「(俺が人間を助けるなんざーヤキが回ったもんだぜ……)」

 

 

そう考えていると、スバルが歩み寄ってくる。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん」

 

 

「んだよ?」

 

 

「お兄ちゃん帰るお家ないの?」

 

 

率直過ぎる質問に、クイントは焦りながら

 

 

「スバル!しつれいd「ねーよ」え?」

 

 

「だから、帰る家なんざねーよ」

 

 

彼は普通に答えた出しただけなのだが、クイントがかなり驚いていることに少し疑問をもった。

 

 

「じゃ、じゃあ、ご飯とかどうしてるの?」

 

 

「飯なんざくってねーよ。ってか俺必要ねえし」

 

 

「……」

 

 

クイントは目を閉じ、数秒間考えた。そして

 

 

「ねえ、あなたこの後予定とかある?」

 

 

「……これといってねーな」

 

 

「じゃあうちに来ない?」

 

 

「は?」

 

 

「スバルを助けてくれたお礼したいし…どうかしら?」

 

 

「……」

 

 

フェンリーは考える。ただひたすら考える。するとスバルが彼の手を握って

 

 

「ね、いこ?」

 

 

「あー……」

 

 

あからさまにめんどくさそうなフェンリー。だが

 

 

「わかったよ、どうせ暇だし」

 

 

「そう!それじゃいきましょ?家は此処から近いから」

 

 

「こっちだよ!」

 

 

「オイ、ひっぱんな。自分で歩けるっての!」

 

 

フェンリーはスバルにぐいぐいと引っ張られていったのであった。

 

 

 


 
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