~ブライト家~
食後、しばらくの間パズモとリスティとおしゃべりしていたエステルは目をこすり欠伸をした。
「ふわぁ~……」
「エステル、もう寝る?」
「うん……」
レナの言葉に答えたエステルはパズモを呼んだ。
「パズモ。」
(わかったわ。お休み、エステル)
「おやすみ~」
そしてパズモは小さな光となってエステルの中に入った。
「じゃあ、あたしはもう寝るね~またね、リスティ。」
「はいですぅ~」
そしてエステルはレナに連れられて二階に上がった
「それじゃあ、リスティも帰りますね~ご飯ありがとうございました~」
「リスティさん、少し話があるんだが、聞いてくれないかね?」
「私にですか~?別にいいですよ~」
リスティを呼び止めたカシウスは真剣な顔で話しかけた。
「すまない……リスティさんは最近流行っている『D∴G教団』という犯行グループによる誘拐事件を知ってるかな?」
「ごめんなさい……リスティ、難しい話はわかんないですけど、ご主人様達がセリエル様を呼んで教団の拠点がどうとか言ってたのは覚えてます~」
「な……!まさか例の犯行グループの拠点を見つけたの!?」
シェラザードは驚いて椅子から立ち上がった。
「落ち着けシェラザード。……そのセリエル様というのはどなたかな?」
カシウスは心の中で驚き、顔に出さず先を促した。
「セリエル様ですか~?セリエル様は獣人族がたくさん住んでいる領、スリージを治めた前領主様で聖獣メルと同じ動物と意思を通じ合える方ですぅ~」
「動物と意思を通じ合える……か。」
カシウスはリスティの言った言葉を考え、ある結論に至った。
(まさか動物を使って、教団の拠点を見つけたのか!?だとすると一刻も早くリウイ殿と会わなければ!)
カシウスは姿勢を正しリスティに頭を深く下げた。
「リスティ殿、お願いがあります。どうかリウイ殿とすぐ会えるよう口添えをお願いします!!」
「お願いします!」
カシウスにつられてシェラザードも頭を下げた。
「あやや……困りました……どうしましょう……」
リスティは2人を見て困った顔をした。
「リスティさん、私からもお願いします。」
そしてエステルを寝かしつけたレナも二階から降りて来て頭を下げた。
「エステルのお母さんまで……わかりました~取りあえずご主人様に話してみますぅ~」
「ありがとうございます、リスティ殿!」
リスティの答えを聞きカシウスは頬を緩めた。
「じゃあ、今ご主人様に伝えてきますね~」
そしてリスティは椅子から立ちドアを開け外に出た後、翼を広げ大使館へ飛び去った。三人は藁をすがむ思いでリスティが飛び去った空を見上げた。
~メンフィル大使館内会議室~
そこではメンフィルの主な人物達が机に何ヶ所かに印をつけた地図を広げ話し合ってた。
「まさか、これほどの規模だったとはな……」
リウイは大陸中にちらばっている教団の拠点である印がしてある地図を睨み呟いた。
「いかがなさいますか、リウイ様。今この世界にいる兵達を半分ほど使えば一斉攻撃は可能ですが。」
「いや……それは出来ん。他国の領地に勝手に兵を入れる訳にはいかん。」
ファーミシルスの意見をリウイは溜め息をついて否定した。
「それじゃあ、どうするの!?このままじゃ、子供達がどんどんあいつらの実験台に使われ続けられるわよ!?」
「そうじゃぞ、リウイ!力無き者のために動くのが我ら王族の務めであろう!!」
「リウイ様……」
教団の活動内容を知ったカーリアンとリフィアはリウイに詰め寄り、ペテレーネも懇願するような目でリウイを見た。
「……とりあえず、遊撃士協会に相談してみるか。話はそれからだ。」
リウイは少しの間目を閉じて考えた後、目を開き答えを言った。
「そうですね……彼らは国家間の問題では中立の立場であるのでちょうどよいかと。それに彼らも奴らの情報を欲しがっていましたからね……」
ファーミシルスもリウイの考えに賛成した。
「シェラ、生け捕りにした犯人共はあれから口を割ったか。」
「ハッ……捕らえた教団員を尋問しましたが、全く口をわらず、それどころか精神に異常が見られ会話が成り立ちません。」
「そうか……まあいい。拠点が判明した以上奴らに用はない。魔導鎧の実験に使うなり自由にしろ。元々奴らは生かす必要などないしな。」
「御意。では、実行のためこの場を離れます。」
リウイの処刑とも言える命令をシェラは実行するために部屋を出た。。
そしてそこにリスティが部屋に入ってきた。
「ご主人様~エステルのお父さんがご主人様と話したいそうです~」
「なんだリスティ、帰ってきていきなり……待て。エステル、だと?」
リウイはリスティの言葉に呆れたがエステルの名を聞き、リスティに聞いた。
「はいですぅ~エステルのお父さんがご主人様と今から話したいそうです~」
「そのエステルって子って、確かマーリオンが言ってた人間の友達じゃない?」
カーリアンはリスティから出た名前を思い出しリウイに聞いた。
「ああ。この世界の人間であるにもかかわらず俺達、闇夜の眷属に驚かず、逆にたくさんの闇夜の眷属と友人になりたいと言ってた変わった娘とマーリオンが言ってたな……確か父親は以前のリベールとの会談で何度か会ったカシウス・ブライトだったな。」
「ハッ……カシウス・ブライト……人呼んで『剣聖』。我らがこの世界に来るまで大国、エレボニアの攻撃を凌ぎ、さらには反撃作戦を考えた勇将です。私もかの者と会談を通じて会いましたが、かの者はこの世界の人間では最強の部類だと思います。恐らく”幻燐戦争”時に共に戦った同士達以上、あるいは神格者と同等の強さを持っていると私は感じました。……今は、軍を退き遊撃士協会に所属しています。」
ファーミシルスはゼムリア大陸で有名な武人の情報を入手しており、その情報をリウイに言った。
「遊撃士協会に所属か……ファーミシルス。その者、恐らくランクも高レベルだろう。」
「ハッ!おっしゃる通り、かの者の正遊撃士ランクは最高ランクのA級です。」
「だとすると、例の教団の事件に担当している可能性は高いな……ちょうどいい。今からその者に会いに行く。ペテレーネ、その者の家に今から行くぞ。」
「承知しました、リウイ様。」
「こっちに呼ばないの、リウイ?」
カーリアンは王族であるリウイ達が自ら会いに行くのを珍しがり聞いた。
「今から使者をやってこっちにこさせても二度手間になる。……それにそのエステルと言う娘、少々興味があるしな……」
「そうね。あたし達、闇夜の眷属と進んで友達になりたい人間なんてこの世界じゃ初めてじゃないの?」
「ああ。……会う機会があればその者と話そうと思っていたのでな……まあ、この時間では寝ているかもしれんが。その時はまた、別の機会を待つだけだ。」
カーリアンの言葉にリウイは頷き、外に出かけるため立ち上がった。
「リウイ、余も行くぞ!余達、闇夜の眷属と友人の娘なら、余にとっても友人じゃ!余も会いたいぞ!」
リフィアはリウイ達の会話を聞き、自ら会いにいくため立ち上がった。
「ダメだ。お前はここで留守番していろ。」
「なぜじゃ!?」
「こんな夜遅くに大人数で押し掛ければ相手を警戒させるだけだ。それに俺の不在時、この大使館を指揮できるのはまだお前だけだ。プリネにはまだ早いのはわかるだろう?」
「むう~……確かにそれも王族としての役割じゃの。仕方あるまい……今回は大人しく引き下がるとするかの。」
リフィアはしばらくの間、唸り引き下がった。
そしてリウイとペテレーネはブライト家に向かった……
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第15話