春香side
と言う事で、私達は何とか事務所に着きました。ここまでこけるばかりでしたけど…
「ここがそうなのか…それにしても、事務所に見えないのは気のせいか?」
まあ、遊星さんが言うのもそうですよね。事務所って言っても、3階にあって、他は全然別な所だし、隣にはもう…それに規模が小さいし。
「まあ、場所があるだけ充分だろ。それに、狭い場所での暮らしは慣れてるからな」
「そうですね。俺も、こう言うのには慣れてますし」
慣れてるって…どれだけ苦しい生活を送っていたんですか2人は…
そういえば、遊星さんは十代さんに敬語使うけど、歳が離れてるのかな?見た所同年代に見えるけど、違うのかな?まあ、無理に今聞く話題じゃないから良いか。
「それじゃ、中に入りますよ」
階段を上って、私はいつも通り事務所に向かいます。後ろには遊星さんと十代さんがいますけど。
そして、この出来事が私達にとっての第1歩になろうとは、この時の私たちは想像もしていませんでした。
「それじゃ、ちょっとここで待っててくれますか?話をつけてくるので」
入口前に着いた私達は、遊星さんと十代さんにはここで待っててもらう事にした。
「分かった」
「おう!いつでも待ってるぜ!」
適応が早いな2人とも。まあ、その方が良いか。
ガチャ!
事務所の入り口のドアを開けた中に入った私。
「あ、春香ちゃんお帰りなさい」
そこには小鳥さんがいました。小鳥さんはこの事務所の事務員さんです。その割に仕事をサボるケースが多くて、仕事中にも関わらず何か原稿とか妄想とか、完全に別の事をしてます。真剣に仕事している所は、あまり見たことが無いような…今日は珍しく仕事してるみたいだけど。
「小鳥さん、社長は今いますか?」
「何かあったの?」
「そうなんですよ。実はデュエルの腕前が良い人を連れてきました!それも結構強いんですよ!1ターンキルされちゃいましたし」
「そうなの!?この中で一番強いのは春香ちゃんなのに!?(それは凄いわね。是非今すぐ会ってみたいわ。良い男なら尚更!グフフフフ)」
私の説明を聞き終えた小鳥さんは、すぐに立ち上がった。
「それで、その人たちは?」
「あ、入口のドアで待機させています。今呼びましょうか?」
「それじゃ、今から社長呼ぶわね。ついでに律子さん達もね。顔合わせだけでもしておきましょう」
そう言って小鳥さんは会議室に向かった。その間に私は遊星さん達を事務所の中に入れた。
「何か昔いた寮の狭さに似てる気がするな」
「そうなんですか…」
十代さん、どれだけ貧乏な生活を送ってきたんですか?是非一度見てみたい感じがしました。
ソファーに座って、少し話しながら待っていると。
「おお!春香君!待たせてすまなかったね」
と、会議室方面から高木社長が来ました。後ろに小鳥さんに千早ちゃん、最近デビューしたばかり、伊織達率いる『竜宮小町』、他の皆もいます。
高木社長は、765プロダクションの社長さんです。面倒見が良くて、私達を実の娘の様に見てくれていてとてもいい人なんです。
『竜宮小町』は、つい最近結成されたユニットの事で、メンバーは、水瀬伊織・双海亜美・三浦あずささんの3人で、プロデュースするのは、元アイドルで現プロデューサーの秋月律子さんです。
まだまだ知名度が高くないので、人気は高くないのが悩みの種です。
「あ、特に気にしてないので大丈夫ですよ」
「そうか、ありがとう。それで、君達が春香君が連れてきた凄腕デュエリストなんだね?」
と、社長の目線は遊星さん達に向けられた。
「はい。先ほど春香から頼まれてここまで来ました」
遊星さんが答えた。緊張とかしてないのかな?
「ふむ、小鳥君曰くあの春香君を1ターンキルしたとか。素晴らしい腕前だと聞いているぞ」
「いえ、それほどでもありません」
凄くクールに答える遊星さん。何か凄いな…
「さて、話を戻そうか。もう春香君から聞いていると思うが、私は765プロダクションの高木順二郎だ。君達の名前を聞かせてもらいたい」
「はい。俺は不動遊星と言います」
「俺は遊城十代!よろしくな!」
クールに答える遊星さんと、元気一杯に答える十代さん。対象的なのに息が合いそうだな。
「ふむ、遊星君と十代君だね。では話を進めよう。改めて聞くが、君たちは本当にこの765プロの力になってくれるのかい?」
「はい。全く構いません」
「俺も!強いデュエリストと戦えるなら、尚更ワクワクするぜ!」
「なるほど…よし!なら私は君達を快く迎えよう!新任プロデューサーとして、これから頑張ってくれたまえ」
どうやら話はうまくまとまったようです。良かった。
「さてと、では私も君達のデュエルを一度みておきたいな。遊星君は春香君とやっているから、まだやっていない十代君の腕前を見せてもらいたいな」
そういえば、十代さんのデュエルをまだ見ていなかったっけ?それは私も気になるな。
「おお!ここでようやく俺の出番か!ワクワクするぜ!」
何かデュエルの事になると元気になるよね、十代さんは。
「ならそうだな…私が直接十代君の実力を見定めてもらおう」
しゃ、社長が相手!?でも、社長も結構強いからな。現在の環境は、シンクロ・エクシーズが中心なのに、エクストラデッキは融合モンスターのみ。まあ、それを言うなら律子さんや真も言えるけどね。
「おっしゃ!!なら社長さん、さっそくやろうぜ!」
「はは。十代君は本当に元気だな。では、ここでやると狭い。少し広い所でやるとしよう。おっと、皆も来るかい?」
「そうですね。勉強にもなりますし」
「は、はい…」
「ご一緒いたします!!」
「や、やよいが行くなら私も行くわよ!」
「僕も行きます!どんなデュエルか気になりますし!」
「私も行きますよ~」
「亜美も行くよー!ねえ真美!」
「うん!真美も兄ちゃんのデュエルを見てみたいし!」
「まあ、新任のプロデューサーの腕前を見てみますか」
「あふぅ…眠いの」
「自分も見に行くぞ!」
「私も、このデュエルを観戦させてもらいましょうか」
上から十代さん、社長、千早ちゃん、雪歩、やよい、伊織、真、あずささん、亜美、真美、律子さん、美希、響ちゃん、貴音さんの順に答えた。勿論、私も行くけどね。
「それじゃ私は、ここで待機しておきます。さすがに事務所をガラ空きにしておくわけにはいきませんからね。帰ってきたら土産話で構いませんよ」
小鳥さんは残る事になったけど、仕事しなさそうに感じるけど…
と言う事で、私達は広場にやってきました。この広い広場なら存分にデュエルできますしね。
あ、この移動中に他の皆との自己紹介とか済ませてます。
「では十代君、君の実力を見せてくれ」
「ああ!俺の全力、見せてやるぜ!!」
もうやる気満々の社長と十代さん。やる気があるのは良い事だけどね…私達は、早速D・ゲイザーを左目につけます。遊星さんと十代さんにも、一応渡してあります。
あれ、良く見ると十代さんのデュエルディスク、私達が持っているデュエルディスクとは何か違う感じがする。遊星さんのもそうだったけど、今の時期、ああ言うディスクでデュエルする人も、珍しいけど。
<ARビジョン、リンク完了>
「「デュエル!!」」
十代 LP4000 手札5 デッキ35 エクストラデッキ15
高木社長 LP4000 手札5 デッキ35 エクストラデッキ5
遊星side
「先行は俺から行くぜ!俺のターン、ドロー!」 手札5⇒6 デッキ35⇒34
十代さんと高木社長のデュエルが始まった。
十代さんのデッキは、知っての通り「E・HERO」を中心とするデッキ。対する高木社長のデッキは何なんだ?特殊召喚の制限デッキなら、十代さんとってかなり厄介になる筈。
「(さすがに初手の融合はまずいよな)俺は、『E・HERO スパークマン』を召喚!」 手札6⇒5
E・HERO スパークマン 光属性 戦士族 ☆4 通常モンスター
ATK 1600 DEF 1200
様々な武器を使いこなす、光の戦士のE・HERO。
聖なる輝きスパークフラッシュが悪の退路を断つ。
「ふむ…十代君は『E・HERO』を使うのか。なるほど、菊地君と同じ系統のカードを操るのか」
「同じ系統?」
系統?どう言う事なんだ?試しに真に聞いてみた。
「真、どう言う事なんだ?」
「一応僕のデッキは、確かに十代プロデューサーと同じ『E・HERO』ですけど、『スパークマン』は入れてませんね。寧ろ、効率のよい『HERO』デッキですけど」
「真のデッキもかなり使いさ。融合召喚の展開率は、真の専売特許だぞ」
…となると、形が違う「E・HERO」を操るのか?気になるな。
「一枚カード伏せて、ターンエンドだ!」 手札4
「なら私のターンだ。ドロー。ふむ…なら手札から魔法カード、『テラ・フォーミング』を発動しよう」 手札5⇒6⇒5 デッキ35⇒34
テラ・フォーミング 魔法カード
自分のデッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える。
「この効果で、デッキから『歯車街』を手札に加え、デッキをシャッフル」 手札5⇒6 デッキ34⇒33
「『歯車街』?(何なんだ?あんなカード、見たことが無いな)」
十代さんが不思議そうな表情をしている。あのカードを知らないのか?
歯車街 フィールド魔法
「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターを召喚する場合に、必要なリリースを1体少なくする事ができる。
このカードが破壊され墓地に送られた時、自分の手札・デッキ・墓地から「アンティーク・ギア」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。
「そして『歯車街』を発動しよう」 手札6⇒5
高木社長が『歯車街』を発動すると、フィールド全体に、歯車を中心とした巨大な街が出現した。
「このカードは、「アンティーク・ギア」と名のついたモンスターを召喚する際、生贄を1体少なくするカードだよ」
「マジかよ!?(しかも、「アンティーク・ギア」って、クロノス先生が使ってたカード。そんな強化カードが存在してたのかよ!?すげえな!)」
「さあ行くよ十代君。これから私の「サイバー・アンティーク・ギア」デッキの底力を見せてあげよう。相手の場のみモンスターが存在するとき、手札から『サイバー・ドラゴン』を特殊召喚!」 手札5⇒4
サイバー・ドラゴン 光属性 機械族 ☆5 効果モンスター OCG
ATK 2100 DEF 1600
相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在していない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
「『サイバー・ドラゴン』!?(今度はカイザーのカードかよ!世界が違うとこうも違うのか!)」
「そして、『サイバー・ドラゴン』を生贄に、レベル8の『古代の機械巨人』を召喚しよう。『歯車街』の効果で、生贄は一体で済むからね」 手札4⇒3
古代の機械巨人 地属性 機械族 ☆8 効果モンスター OCG
ATK 3000 DEF 3000
このカードは特殊召喚できない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、このカードの攻撃力が守備表示モンスターの守備力を超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
「『古代の機械巨人』かよ!これは凄いことになりそうだな!」
まさか、『古代の機械巨人』を再び目にする日が来るなんて。正直俺も驚いたな。あれは伝説のカードに分類されている。簡単に見れる物じゃない。
「あれが社長の切り札の1つ、『古代の機械巨人』なんですよ。あれが出たら、大抵はお手上げに近い状態ですけどね」
「確かに…大抵は罠カードで除去するのが基本だが、発動を封じられるあのカードは厄介だ」
春香達が結構不安そうな表情を見せる。だが、どのカードにも、弱点も突破口があるのも当然だ。
「バトル!『古代の機械巨人』で、『スパークマン』に攻撃!そして、『古代の機械巨人』の効果で、十代君はダメージステップが終了するまで、魔法・罠は発動できない!『アルティメット・パウンド』!」
「ぐっ!」
十代 LP4000→2600
十代さんが先に先制ダメージを受けたか。しかも、通常『E・HERO』はサポートカードを多く使って戦うデッキ。それが封じれば何もできずに終わってしまうケースが強い。この状況をどの様に立て直すかが、十代さんの形勢に大きく変わる。
「やるな社長さん。だが、こいつを発動することができる!リバースカードオープン!罠カード『ヒーローを継ぐ魂』を発動!」
ヒーローを継ぐ魂 通常罠 オリカ
自分の墓地に、『HERO』しか存在しない時に発動できる。デッキから、レベル4以下の『HERO』と名のついたモンスター1体を、表側守備表示を特殊召喚する事が出来る。この効果で特殊召喚したモンスターは、表示形式を変更できない。
「このカードは、俺の墓地に『HERO』と名のついたモンスターしかいないときに発動でき、デッキから、レベル4以下の『HERO』と名のついたモンスター1体を守備表示で特殊召喚するぜ! (今の俺の手札だと、逆転できる手がない。『バブルマン』を呼んで、一気に…あれ、何か『バブルマン』の効果が違う…だと。ど、どうなってるんだ!?)」
E・HERO バブルマン 水属性 戦士族 ☆4 効果モンスター OCG
ATK 800 DEF 1200
手札がこのカード1枚だけの場合、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に、自分のフィールド上と手札に他のカードが無い場合、デッキからカードを2枚ドローする事ができる。
「(ど、どうなってるんだ!?ま、前まではそんな効果じゃなかったのに!?何で変ってるんだ!?)」
どうしたんだ?デッキのカードを見て、十代さんの様子がおかしい。この局面なら、『バブルマン』を特殊召喚するのがセオリーの筈だが。
「…俺はデッキから、『E・HERO クレイマン』を守備表示で特殊召喚する」 デッキ34⇒33
E・HERO クレイマン 地属性 戦士族 ☆4 通常モンスター
ATK 800 DEF 2000
粘土でできた頑丈な体を持つE・HERO。
体をはって、仲間のE・HEROを守り抜く。
『クレイマン』だと!?『バブルマン』じゃないのか!?
「(先程十代君の表情が変だったが、まあ後で聞けば良いか)最後に2枚カード伏せて、ターンエンド」 手札3⇒1
これで状況が大きく変わった。完全に十代さんが圧倒的不利。対する高木社長は、強力な効果を持つ『古代の機械巨人』とリバースカードが2枚。まさに鉄壁の布陣だ。俺でも、そう簡単には突破はできない。
「(『バブルマン』の効果が変わった理由がわかんねえけど、ますますワクワクしてきたぜ!)社長さん、ここから、俺と『E・HERO』達の実力を余すことなく見せてやるぜ!」
だが、十代さんの闘志は消えてない。寧ろ更に強くなっていく。ここからどうなっていくのか、俺も楽しみだな。
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第3話です。今回から765プロメンバーが出演します。
ここでの設定では、『竜宮小町』は結成からまだ日が経っていない状態です。その方が面白いし(おい)
デュエルは十代VS高木社長です。前半・後半に分けます。
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