~エレボニア帝国・平原~
晴れ渡る平原に2つの軍が睨みあっていた。一つはエレボニア帝国でも5本の指に入る名将、ゼクス・ヴァンダール率いるエレボニア帝国軍でもう一つは突如どこからともなくロレントより現れ、ロレントの帝国兵を殲滅した後、破竹の勢いでハーケン門を突破し次々とエレボニア帝国領を制圧しているリウイ、ファーミシルス、シェラ、ルース率いる猛者揃いのメンフィル皇帝軍だった。
「(ク……リベール攻略だけでも手間取ってるというのに、ここで我が国土に侵攻する強国が現れるとは……これもリベールに無実の罪を被せた我らの報いか……)全軍、ここで必ず押しとめるぞッ!!!今こそ我らの忠誠を皇帝陛下に見せてみよ!!!!」
「イエス、サー!!!!!」
目の前の謎の軍――メンフィル軍の強さを感じ取り自軍の劣勢を悟ったゼクスは自分を叱咤するように兵達に号令を挙げた。
「全軍突撃ッッ!!」
「オオオオオオッオオオオッ!!!!!!」
ゼクスの命令で歩兵や導力戦車はメンフィル軍に向かって突撃した。
その突撃を丘の上からリウイ達は見ていた。
「リウイ様、機工軍団、戦闘配置完了しました。ご指示を」
機工軍団の戦闘配置を完了したシェラは主君の命令を待っていた。
「よし、突撃してくる帝国兵どもを一掃しろ。」
「了解しました。―――全軍に通達、第一戦闘準備。繰り返す――」
ウィィ――ン……
リウイの命令を受けた軍団長シェラの指令に反応し、兵士たちが唸りにも似た騒動音を徐々に高めていた。
「(……なんだこの音は……まさか!)いかん!全軍後退せよ!」
風に乗って聞こえてきた騒動音に嫌な予感を感じ、ゼクスは後退の命令を出した。
「我が主、攻撃準備完了。」
「攻撃開始だ。」
「……攻撃開始。」
ズド―――――ン!!!!
「「「「―――――ッ!!!!」」」」
「なッ!!!!」
しかしその命令は空しくリウイの命令によりシェラ率いる機工軍団が放った砲撃は平原を轟かす大爆音と共に、業火と爆発が一瞬で
突撃した敵兵を飲み込んだ。兵達の断末魔の叫びさえ掻き消し導力戦車さえも跡形もなく吹き飛ばした
機工軍団の一斉砲撃にゼクスは驚愕した。
「……目標攻撃範囲の生体反応が半減、残存した敵兵に動揺が見られます。」
「わかった。御苦労。」
シェラの報告を聞きリウイは兵達の前に出て大声で号令をした。
「我らはこのまま目の前の帝国軍を突破し、エレボニア主要都市の一つに侵攻する!兵は将を良く補佐し、将は兵を震い立たせよ!何人たりとも遅れることは許さんぞッ!!」
「オォォォオオォォォォォォオオオォォッッッ!!!!」
リウイの叱咤激励に応じて勇ましい雄叫びを上げたメンフィル軍は一斉に突撃を開始し帝国兵達を蹂躙した。
動揺している帝国軍はなすすべもなく突撃したメンフィル兵に次々と討取られて行った。
「………まさかこれほどの強さとは………全軍、退却せよ!!!」
戦場の敗北を悟ったゼクスは退却命令を出し、退却をし始めたのだが。
「ギャア!」
「グワア!」
「な、何が起こった!」
次々と討取られて行く周りからの叫び声にゼクスはうろたえた。
「フフ、どこを見ているのかしら?」
「どこだ!どこにいる……馬鹿な!」
どこからともなく聞こえて来た声を探していたゼクスは空を見上げた時、降下してくるファーミシルス率いる
親衛隊の飛行部隊に驚愕した。
「まさか、天使……」
「フン!あんな奴らと同等だなんて気分が悪いわ。……見た所貴様が指揮官のようだからここで討取らせてもらうわよ。」
ゼクスの呟いた言葉に降下したファーミシルスは鼻をならし連接剣を構えた。
「戦う前に聞きたい事がある……貴殿等は何者だ!なぜ、我が国土を侵攻した!」
「フフ……死に行くものに教えてやる義理はないけど、冥途の土産に教えて上げるわ。我はメンフィル大将軍ファーミシルス!誇り高き闇夜の卷族の国の将なり!貴様らによる我らが王を攻撃した罪、そして我らが王の悲願のため、貴様等には死を捧げて貰うわよ!」
「メンフィル……!?闇夜の卷族……!?我らが貴殿等の王を襲っただと……!?何を言っているのか理解できんぞ!」
「おしゃべりはここまでよ……ハッ!」
「ッ!!」
ガン!
戸惑っているゼクスにファーミシルスは襲いかかったが咄嗟の判断で剣を抜いたゼクスは防御した。
「少しはできるようね……楽しませて貰うわよ!」
「クッ!」
ガン!ギン!ガン!ヒュッ!
人間でありながらファーミシルスの攻撃を捌き致命傷を避けていたゼクスだったが、メンフィルでも一、二の実力を争うファーミシルスには叶わず徐々に疲弊して行った。
「ハアハア……(つ、強すぎる……この私が手も足もでんとは……)」
「フフ……神格者でもない人間にしては中々やるようだけど、遊びはここまでよ、ハッ!」
「クッ!」
疲弊したゼクスは迫る連接剣を交わそうと動いたが、疲弊していた体は云う事を効かず少ししか動かなかったので
攻撃を受けてしまった。
「グアアアッッ!!」
「少将ッ!」
ファーミシルスの凶刃を受けて叫び声を上げたゼクスを見てファーミシルスの部隊と応戦していた兵士達は思わず悲鳴を上げた。
「だ、大丈夫だ……うろたえるな。」
「しかし少将、目が……!」
駆け寄ってくる兵達を片手で止めたゼクスだったが、もう片方の手で連接剣で斬られ血を流し続けている片方の目を押さえていた。
「フフ、疲弊しながらも致命傷をさけるとはやるじゃない……だが、ここまでよ……!」
それを見てファーミシルスは半分感心し、止めを刺すため連接剣を振るった。
「グウッ!」
「な……!」
「あら。」
ゼクスは迫り狂う連接剣を見てもはやこれまでかと諦めたがほかの兵が楯になったのを見て驚き、ファーミシルスも少しだけ驚いた。
「少……将……お逃げ……下さい……グフ!」
ファーミシルスの剣によって貫かれた兵は血を吐き事切れた。
「少将、今のうちにお逃げ下さい!」
「お前達をおいて逃げれるものか……!やめろ、離せ!離せ――!」
わめくゼクスを兵達は抑え戦場から退避しようとした。
「チッ、逃がすか!」
「させるか!少将をお守りしろ!」
ズダダダダダダ!
追撃しようとしたファーミシルスを止めるため、周りの兵達は銃を撃ったが全てファーミシルスやファーミシルスの部下によって防がれた。
「鬱陶しい!……闇に落ちよ!ティルワンの闇界!」
「「「アアアアアッッ……!!!」」」
「怯むな!少将を逃がす時間を稼ぐだけでいい!」
「「「「オオッッ!!!」」」」
ファーミシルスの暗黒魔術を喰らった兵達は叫びを上げて事切れた。しかしそれでも将を守るため挫けずファーミシルス達に帝国兵達は襲いかかった。
「どうやらよほど死にたいようね……いいわ、その心意気を買って上げるわ!親衛隊よ!まずはこいつらを皆殺しにしてその後逃げた将を追うわよ!」
「「「「「「ハッッッッ!!!!」」」」」
ファーミシルスを中心とした飛行部隊に周りの帝国兵は一矢も報いることができずわずか1刻で全滅した。
「フン、雑魚共があっけない!」
全滅した兵に侮蔑の顔を向けたファーミシルスは武器を収めた。
そこに伝令を携えた副官のルースがやって来た。
「リウイ様より伝令です、ファーミシルス様!敵は全滅し街も制圧したとのことでただちに部隊を戻すようにとのことです!」
「……そう。指揮官を討ち取れなかったのは口惜しいがあの程度の者を逃がしたくらいで支障は出ないわ。親衛隊、ただちに帰還せよ!」
「「「「「「ハッッッッ!!!!」」」」」
ファーミシルスは指揮官が逃げた方向を見た後踵を返し、リウイ達の元へ向かった。
この戦いでエレボニアは全兵力の4割と主要都市の一つが失われた……
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第6話