No.446948

トトリのアトリエ ~若き双剣聖の冒険譚~ プロローグ 終わりと始まり

紅葉さん

この小説は、『トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~』の二次創作作品です。

主人公『日高 俊平』は、親の頼みで買い物に出かけた先で、恐らくは酒気帯び運転と思われるトラックに撥ねられ亡くなってしまう。
しかし、生前の記憶を失った状態で、play station3専用ソフト『トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~』の世界に転生する。
ヘルモルト家の長男『ラインニア・ヘルモルト』としての、彼の新たな人生が始まる……。

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2012-07-06 00:05:52 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7349   閲覧ユーザー数:7201

 

「あー、(さみ)(さみ)ぃ」

 

かじかんだ両手をこすり合わせながら、所々に街灯がぽつんと立っているだけの暗い夜道を歩く。

1月17日。今年も例年と同様、1月中旬に寒さのピークが訪れた。

家を出る前に気温を確認してみた所、どうやら現在の気温は-22℃らしい。

そんな時に自分の息子を、酒の肴を買わせる為に外に放り出す親の気が知れない。

こんないかにもやる気の出ないような状況で、唯一俺のモチベーションを維持しているのは、ある1本のゲームソフトの存在だ。

 

俺、『日高(ひだか) 俊平(しゅんぺい)』は、とある田舎町に住む、高校2年生だ。

無類のゲーム好きで、日々のほとんどの時間をゲームに費やす微ゲーマーだ。

そんな俺が高校入学当初から付き合っている、俺と同じぐらいにゲームに情熱を注ぐとある1人の友人から、あるゲームを薦められたのは、つい数週間前の事である。

そのゲームの名は『トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~』

時代の最先端を行く、話題のPlay Station3で発売されたゲームだ。

錬金術士、という言葉なら、誰しも1度くらいは聞いた事があるだろう。

このゲームは、1人の少女が、ある錬金術士から錬金術を教わり、その力を活かして世界中を冒険し、数年前に姿を消した母親を探し出す、というコンセプトの物だ。

ちなみに言うと、少女に錬金術を教える錬金術士、というのは、どうやら前作の主人公らしく、このゲームに『アーランドの錬金術士2』という名がついている理由でもある。

何故、前作からやらなかったかと言うと、友人に薦められた時には、まだこのゲームが『2』である事を知らなかったのだ。

とまぁ、大まかな説明をしてみたが、何が気に入ったかと言うと……

まず、錬金術が主体である為、純粋なシュミレーションゲームかと思いきや、戦闘にも結構力が入っていて、飽きる事無くプレイできる、という事。

あとはまぁ、作画が気に入ったり、起用されている声優に好きな人が多かった事で、俺の中のランキングでもかなり上位を占めた。

……と、長々と説明して来たが、前述の、俺のモチベーションを維持しているゲームというのは、紛れも無くこのゲームの事だ。

さっさと次に進めたいから、さっさと酒の肴を買って、さっさと家に帰りたい。

というのが、今の俺の心情だ。

あと5分も歩けば、最寄のコンビニ(と言っても、家から20分)に着くはずだ。

買い物が終わったその瞬間からが勝負だ。目標は、家まで10分かけずに帰る事。

それまでは体力温存だ。

 

「――ん?」

 

前から、多分トラックぐらいの大きさの車が走って来るのが見える。

だが、挙動が怪しい。何と言うか、フラフラしてる?明らかに普通の運転じゃない。

おいおい酒気帯びかよ、とか思ってたが、その時の俺はまだ、自分には無関係の事であると思っていた。

――その瞬間までは。

 

「なっ――!?」

 

フラフラと怪しい挙動で走行を続けていたトラックは、そのまま一直線に、俺の歩く歩道へと走行して来たのだ。

間に合わない――そう思った時には、既にトラックは俺の前方数メートルの所まで迫っていた。

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

視界に映るのは、真っ白な空間のみ。他には何も無い。

分かり易く言うなら、家具類が一切ない、壁も床も天井も全てが真っ白な部屋の中にいるような感覚だ。

何もする気が起きない。この場所から、たった一歩踏み出すだけのやる気も起きない。

ただ呆然とその場に立ち尽くしていたその時。

再び、視界が暗転した。

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

今度は、視界に映る全てが赤かった。

浮遊感がある事から、俺は今水中にいて、さっきのように呆然と立ち尽くしているわけではないらしい。

それと、さっきと違う事がもう一つ。

わずかだが、人の声が聞こえるのだ。あまりにも微かな物で、聞き取るのも難しいが。

程なくして、俺を包む謎の液体が、流動を始めた。

流れに逆らおうとも思ったが、体が思うように動かず、そのまま流されて行く。

流されて行く内に、やがて何かに引っかかった。

全身が大きな圧迫感に苛まれ続け、その後――

――視界が、再び眩い光で溢れた。

 

 
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