No.446813

DIGIMON‐Bake 序章 3話  ダーク&ロイヤル

※2017.6.05
2話http://www.tinami.com/view/446451
3話  ダーク&ロイヤル
4話http://www.tinami.com/view/447322

2012-07-05 22:32:37 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3129   閲覧ユーザー数:3116

※一人称視点から始まります。

 

 

  一言言っていいか?

 

 

「うざい」

 

 

 その一言をさっきから何度言っただろうか。いや、実際うざいから何度言ってもいいだろう。

 

 

「「べっベルゼブモン様ぁ!」」

 

 

 ひょこひょこ付いてくるこいつらは、何が嬉しくて俺に付いてくるんだ?

 そもそも何だ、ベルゼブモン"様"ってよォ。俺がいつお前らの頭になったんだよ? え?

 

 

「あ″ぁ″ーーーもう、てめぇらさっきから何なんだよ! 何で俺に付いてくるんだ!? あぁ!?」

 

 

 少しビクついて俺の怒鳴った事を聞いていた数匹のデジモンだが、今にも泣き出しそうだ。

 っておい。お前らこのダークエリアに住んでるウィルス種デジモンの類じゃねぇのか!? それなりに度胸とかあるんじゃねぇのか!?

 

 

「だって、俺達、ベルゼブモン様の部下になりたくて、」

 

「俺は部下はいらねぇ」

 

「誇り高き七大魔王! ベルゼブモン様! 俺達は是非あなたに付いていきたくて!」

 

「他を当たれ」

 

「そ、そんな事言わずに部下にならせてくださいっ!! ベルゼブモン様っ!!」

 

「そんなに部下になりたいんだったら他の上司紹介してやるよ」

 

「じゃなくって、俺達はベルゼブモン様の下に付いていきたいんですって!」

 

「じゃぁ例えば俺の部下になって何するつもりだ?」

 

「ぇぇえっと! 世界制服!」

 

「俺そんな野望抱いてねぇから」

 

「このダークエリアの支配者になって名を知らしめるってのはどうですか!?」

 

「それで、何すんの? 有名人になったつもりでいんのか? 却下」

 

「ではでは、七大魔王の中で一番強く! 他の大魔王様達も従える!」

 

「それで、何すんの? 他の奴らが俺の下に付いた所で楽しくも面白くもねぇからな」

 

「ではではでは、そのまま他の大魔王様達を従えてロイヤルナイツ達を一蹴! ってのは」

 

「してどうすんだ? 俺にセキュリティやらせるつもりか?」

 

 

 あああああ、もう何なんだこいつら。たまーに俺に付いて行きたいとかってヤツは見かけたが、こんなにうるさいのは初めてだ。

 おあいにくと部下を持つとか、世界制服とか、興味も何もあったもんじゃねぇ。

 

 俺は好き勝手に生きたいだけだ。他の大魔王は知らねぇが、俺は群れるのは好まない。

 その所為で"孤高の王"だとかなんだとか言われてるらしいが、そんなの勝手に付けてんじゃねぇよ。

 そもそもアレだぞ。"七大魔王"なんて固有名詞ですら俺は一度も名乗った覚えもねぇぞ。コレも周囲が勝手に付けたものだ。

 

 お陰で七大魔王とかって組織みたいなのに勝手に入れられるわ、集会があったら顔出せとか訳の分からない事も言われるわ、見つかり次第ロイヤルナイツに追い回されるわ

 

 もう面倒な事だらけの人生になっちまった。

 

 まぁ元々強い奴と戦うのは好きだし、ロイヤルナイツと戦う事も他の七大魔王とちょっとやり合う事も面倒な事はあるが嫌いじゃぁない。

 

 でもこれは面倒だ。部下にしてやらなんやら付き纏われるのは何もいい事がない。

 何とかこいつらを避ける方法はないかと考えた。

 

 

「お前らよォ、俺に付いてくるとか何とか言ってるけど、それって自由がなくなるって事だぞ」

 

「「「へ?」」」

 

「どんなに酷い仕打ちしても……どんなにこき使っても……自由なんて一切与えねぇ。それでもいいのか?」

 

 

 ちょっと悪戯げに、というかは脅しをかけてニヤリと笑って見せる。

 

 

「まぁ、それでもいいってんなら、まずは進化してから出直してくる事だな。したら考えてやるよ」

 

 

 脚に装備されているベレンヘーナを構えてもう一度笑ってみると、さっきまでよく喋っていたこいつらが身を震わせた。

 

 ま、成功ってとこだろうか。

 

 

「「「出直してきます!! ベルゼブモン様!」」」

 

 

 綺麗に揃って一瞥してから、疾走でその場を逃げ去る姿を眺め、ふぅと溜息を付く。

 

 

「もうくんなよな……」

 

 

 元来た道を背に、俺はふらりと再び歩き始めた。

 

 この後自分が消える事になるとは知らずに。

 

 

 

 三陣中学陸上部は、今日は休部。副部長の椎橋契はそのまま家に帰ろうとした。

 

 

「せっちゃーん!」

 

 

 しかし真っすぐ家に帰るつもりがそれを遮られてしまう。

 

 

「凛か……何だよ?」

 

「今日部活は?」

 

「今日は休み」

 

「じゃぁじゃぁカードバトル付き合って!」

 

「またか……」

 

「一回でいいから!」

 

「一回だけな。一回だけ」

 

 

 契に声をかえた中国服が印象の女の子。石川凛は契と同じ中学である。

 

 そして彼女はテイマーである。

 彼女がテイマーであることを知っている者は少なく、彼女のパートナーを見た者は契以外にいない。

 契が彼女のパートナーを見た時は、自分にはパートナーがいないもののデジタルワールドが存在する事を知った。百聞一見に如かずというやつだ。

 

 誘った彼女の家に向かい、早速カードバトルを開始する。凛の隣にのそのそ歩いてきたのが例のデジモンだった。

 

 

「赤いワニ……」

 

「ワニじゃない、リヴァイアモン!」

 

 

 可愛いでしょーと主張する凛の可愛いの基準はどうなっているのだろうか。この赤いワニを可愛いと表現する女の子はこの世に何人いるのだろうか。毎度この二人を見るたびに契はそう思う。

 

 

「じゃぁ始めよう!」

 

 

 互いの手持ちのカードをシャッフルし、赤いワニ…リヴァイアモンを横目に契はバトルの一戦目を始めたのだった。

 

 

 一戦目が終わりもう何度もカードバトルをしているが、契が最近気付いた事がある。

 

 リヴァイアモンは話す事をしない。

 「がぁぁ」や「うがぁぁぁぁ」という雄たけびは聞いたことがあるが、話している所を見た事はなかった。

 

 そしてリヴァイアモンは本来相当の大きさであると公式では言われている。

 リヴァイアモン自身体の大きさを調節しているのだろうか……想像しているよりもこのリヴァイアモンは小さいのである。

 

 

(七大魔王のリヴァイアモンだともっと大きいのか……)

 

 

 完全にこのリヴァイアモンと七大魔王であるリヴァイアモンを別物と考えている契。おそらく凛もそう思っている。話す事もしない、もしくは出来ないのか、このリヴァイアモンにデジタルワールドの事を聞くのは無意味に等しい。

 

 デジタルワールドの事を知りたい。

 本物のデジモンがここにいるというのに……何つーもどかしさだ、なんて契は思いつつも凛の隣にドスンと座っているリヴァイアモンを見る。

 

(やっぱデジモン……)

 

 ほんの少し凛を羨ましく思った。

 

 

▼▼▼▼▼

 ダークエリア――

 ここに向かったのはデュークモンとドゥフトモンである。

 ダークエリアの入り口はどうにも気味悪く、入るのも嫌になりそうな場所に思えた。

 それはウィルス種のデュークモンであってもだ。

 やはり"聖騎士"と言われるだけの事があるのだろうか。ウィルス種であろうがその意志は強い。

 

「ここの居心地は何度来てもいいとは言えんな」

 

 ドゥフトモンがつい本音を言ったが、デュークモンは少し怒りが混ざったように返す。

 

「当たり前だ」

 

 明らかにイグドラシルを出るときから機嫌はよくなかったデュークモンだが、ドゥフトモンの一言でデュークモンの機嫌がまた悪くなってしまう。さっきの言葉は失言だったとドゥフトモンは苦笑した。

 

 七大魔王はダークエリアの深層に各城……のような各エリアを持っている。

 そんなダークエリアの深層にベルゼブモンだけは自分のエリアを持っていなかった。それは彼が"群れるのが嫌い"という性格だったからだ。

 この世の支配欲もなければ、部下を持ちどこかを襲うということもない。魔王型にしては特殊ともいえる。

 

 だからこそ、ベルゼブモンは自由であり、自分の意のままに生きる。

 いつも居場所が同じ訳ではないので探すのには困難だ。

 

 そんなベルゼブモンと因縁を持ったのはいつだったか……デュークモンはそんな事を考えながら彼を探した。

 

 

「ベルゼブモンが消えたにしても……まだ何か足りない気がするな」

「七大魔王の住みかにしては静かすぎると言いたいのか、ドゥフトモン?」

「ああ、入り口ではそうな思わなかったが、ここまで入り込むと何やら違和感があると思ってな」

 

「確かに……何か足りない気もする」

 

 

 その"何か"とは、抽象的すぎて互いに分からなかった。

 ダークエリアの深層、七大魔王の城、いつもの居心地の悪さ、

 

 他に足りない何かは、此処から消えたベルゼブモンが知る事になる。

 

 

 そしてダークエリア深層でデュークモンとドゥフトモンが見つけた彼の進んだ形跡であろう足跡は、まだ新しいものだった。

 

 

 


 
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