No.446510

東方霊兄生

秋ランドさん

先代の巫女、博麗霊歌が赤ちゃんを二人拾った。双子の兄には才能がなかった。それに比べて、妹のほうは才能の塊であった。そんなのがいたらという、自分よりも優れた妹のいる兄の話。

2012-07-05 17:38:26 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2742   閲覧ユーザー数:2711

 
 

「こんなに雨が降っているんですもの。散歩に出かけましょうか。藍、散歩に行ってくるわ。留守番よろしくね。」

 

「動機がおかしいと思うのですが…まぁ分かりました。いってらっしゃいませ、紫様」

 

 

こうして、大抵の者には理解できないような理由で散歩に出かけた"八雲 紫(やくもゆかり)"は出てきたはいいものの行く場所が無いので、博霊神社に行くことにした。お得意の"スキマ"を使い、博霊神社までやってきた。考えても見ると、散歩にも"スキマ"を使うため、天気など紫には関係ないのだが。

そして、博霊神社までくると、いつものように博霊の巫女である"博霊 霊歌(はくれいれいか)"の真上にスキマの出口をセットし、驚かす用意をしていた。

そして、スキマから出ようとしたときに見えたのは、霊歌が二人の赤ちゃんを抱いていたことであった。

 

 

「は~い、霊歌。その子たちは誰かしら?」

 

「あら、紫。ちょっと待っててね。後でお茶を出すから」

 

「ちょっと、驚いてくれないの?それと、質問に答えて頂戴。お茶はいらないから」

 

「しょうがないわねぇ。まずは、この子達のことなんだけど…」

 

霊歌は二人の赤ちゃんのことを、紫に説明した。

時折、赤ちゃんが泣いて、説明が中断されるということもあったが…

この二人の赤ちゃんは、神社の外に置いてあった箱の中にいたとのこと。男の子と女の子。詳しいことは、箱の中にあった紙に書いてあったとのこと。

ちなみに、双子で男の子が兄、女の子が妹だそうで…

 

 

「そう…それで名前は決めたのかしら?もし決めてないのなら私が決めたいのだけれど」

 

「残念。もう決めました。兄のほうが"零悟(れいご)"それで、妹のほうが"霊夢(れいむ)"って言うの」

 

「あら、いい名前じゃない。きっと、この子達も報われるわよ」

 

「…どうしたの?紫。なんか悪いものでも食べた?」

 

「どういう意味よ」

 

「だって、貴女が素直に褒めるなんて、殆ど無いじゃない。だから・・・」

 

「じゃあ、その"殆ど"が今だったのね。よかったじゃない。私に褒めてもらえて」

 

 

相変わらず、嫌みったらしく物をいう胡散臭い紫。それを、華麗に流す霊歌。

そして、この二人のことを話していると・・・

 

 

「うええぇぇぇぇぇぇえええん!!」

 

「あらあら霊夢、お腹がすいたのかしら」

 

「そうみたいね。ご飯作ってくるから紫。ちょっと、面倒見ててもらえないかしら」

 

「あら、母乳は出さないのかしら?」

 

「出るかッ!!」

 

「分かってるわよ。早く作ってらっしゃい」

 

「後で、覚えていなさい・・・」

 

 

そういって、霊歌は台所へと向かった。そして紫は・・・

 

 

「ん?この子…霊夢のほうには中級妖怪以上の霊力があるみたいね。この年で、この霊力とは…将来が楽しみね。霊歌はそれを知っててこの子達を拾ったのね。

でも兄のほうには毛玉程度の霊力しかないわね。鍛えれば、中級妖怪程度にはなるでしょうけど、妹の実力に届くことは無いかも…いえ、"かも"ではなくて"無い"か。残酷な話ね」

 

「は~い、れいむ~ ご飯ができましたよ~」

 

「すごい、キャラが変わってるわね」

 

「だって、二人とも可愛いんだもの。もう、零悟もお婿には出さないし、霊夢もお嫁になんか出さないわ」

 

「じゃあ、本人が『この人と結婚したい』って言われたらどうするのよ」

 

「そのときは、本人の自由にさせるわよ。そこまで、縛るつもりは無いから。まぁ、『この人をください』って来たやつは妖怪の山に頭だけ残して埋めてやるわ」

 

「怖いこといわないでよ。貴女なら本当に出来そうなんだから」

 

「それよりも、霊夢はすごい霊力ね。能力まで一緒とは。さすがに、驚いたわよ」

 

「それに比べると―――」

 

「ええ、やっぱり紫も気づいた?零悟の霊力が…残酷ね」

 

「能力も無いみたいだし…博霊の御子としてやっていくには相当鍛えないといけないわよ。霊歌、大丈夫なの?」

 

 

これは、相当つらいこと。才能の無い兄。才能しかない妹。将来は、兄が相当厳しい立場になるだろう。此処で、親がしっかりしていないと、零悟は将来グレるだろう。

才能の無い兄の劣等感。それに、妹は耐えられるのか。

逆に、妹の優越感。これが、兄にプレッシャーと不信感を与える。

 

 

「最大限の努力はするわ。」

 

「そう、がんばってね。じゃあ、私はここら辺で帰るわね。さよなら、霊歌。あと、零悟も霊夢も」

 

 

紫が零悟と霊夢のほっぺたをつつく。そして、二人はキャッキャと笑い声を上げる。

 

 

「ええ、またね。紫」

 

 

 

 

 

それから、十年の月日が経った…

 
 

 
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