No.446451

DIGIMON‐Bake 序章 2話  本物

※2017.5.23 修正済

1話http://www.tinami.com/view/446396
2話 本物
3話http://www.tinami.com/view/446813

2012-07-05 15:21:52 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1257   閲覧ユーザー数:1241

 とあるファーストフード店。未だにパソコンを広げ居座る二人は、パソコンの調子が悪くなってきている事に気が付いた。

 

 

「ねぇ、何か動きが遅いよ……」

 

「うん?」

 

 

 ネットを開くと動きが遅い。ノートパソコンで元々そんなに高性能でもないのだから、多少は遅くても仕方ないと思ったが、

 

 

「……遅くなってきてるな」

 

 

 フリーズしそうなくらいに遅い。

 ネット画面を消せばいいんじゃないかと言ってみれば、澪はネット画面を消してみる。

 それでも次の動作をするには反応が遅かった。

 

 

「故障?」

 

「昨日までは普通だったのか?」

 

「うん」

 

「ウィルスが入ったとか」

 

「バスターは入ってるけど……」

 

「バッテリーもなくなってきたな。ウチにくるか?」

 

「うん、そうする。ありがと」

 

「ん」

 

 

 深の家でパソコンを見る事になり、パソコンの電源を切ったのだった。

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 データを食われていた、のではない。

 データを変えられていた、のだ。

 

 体の違和感はデータが移動用に小さくされていた所為だった。

 しかし今は元に戻っているデータ。よって退化もしていない。

 

 

「うむ……そしてお前はイグドラシルに移動させられたという事か」

 

「そのようだ……」

 

 

 やっと状況の把握ができたのか、クレニアムモンは先程起きた事の分析を始めた。

 そして他のロイヤルナイツにそれを伝えた。

 消えた残りの3体はどこにいるか分からない。だか起こっている事はきっと自分と同じだろう。

 

 

「何が目的だったのか……」

 

 

 ドゥフトモンがそう言ったが、それは誰にも分からない事だった。何せその敵はもういない。

 それも移動させられたのは荒野に向かった4体のみで、イグドラシルにいた自分たちは何もなかったのだから。

 

 

「今後、何か影響があるようだったら調べよう。今すぐには分からない事だらけだ」

 

 

 アルファモンの言葉により、その事態は一旦保留となった。そしてロイヤルナイツの仕事が増える。

 消えた者達の捜索と、今後の敵の影響、そして目的。

 

 

 だが早々に一つの情報が入ったのは、ダークエリアからだった。

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 深の家に変えると再びパソコンを広げる。

 広げると電源を入れる、しかし電源が入らなかった。

 

 

「あれ……」

 

「どうした?」

 

「電源が入らなくなってる」

 

「コンセント挿してるよな。ほんとだ、付いてない」

 

 

 澪の頭の上には「?」がいっぱい付いている。正直深の頭の上にも「?」が付いている。

 

 

「俺のパソコンはどうだろ」

 

「うん、どう?」

 

「……付かない」

 

「うそ……」

 

「うん……うわっ!?」

 

 

 広げた二つのパソコンが同時に光る。そして画面には見たこともないマークが点滅していた。

 

 

「な、なんだこれ……!?」

 

「変なマークだ…」

 

 

 ブツン

 

 

「「!?」」

 

 

 部屋の電気が全部落ちた。だけどパソコンだけは起動している。

 

 

「ちょっ、停電!?」

 

「だったら何でパソコンだけは付いてるの!」

 

「わっ分かんねぇよ!」

 

「わっ、深! きゃっ!!」

 

 

 パソコンの画面が激しく点滅を繰り返し、赤いマークがこちらに向かってる気がした。

 バチバチと音が立ちそうなくらい光る赤いマークは、黄色い光を照らし出し、まるで狙ったかのように二人を直撃する。

 

 

「くっ!?」

 

「きゃぁ!?」

 

 

 あまりの光の濃さに二人は目を閉じた。そして光が包み込む。

 その瞬間、画面の向こうから光と共に生き物が放りだされる。

 

 

「何だっ!!?」

 

 

 深が近づこうと身を出したら光は消え、パソコンの前には2体の生き物が倒れていた。

 一匹は猫のような姿、もう一匹は恐竜のような姿。

 

 

「まさか……」

 

「これって……」

 

 

 澪と顔を見合わせる。それは、絶対にこの世界に存在しないものを見ているからだ。

 

 

「「デジモン……!」」

 

 

 メジャーなデジモンではなく、マイナーと言えばマイナーな成長期デジモン。

 レオルモンとドラコモン。

 二人は倒れてる2体にそっと寄ってみる。恐る恐る、動かないかどうか、確かめながら。

 

 あと数十センチというところでレオルモンがピクリと動いた。

 

 

「「っ!!?」」

 

 

 二人は驚き顔を見合わせる。

 しかしそれ以上の動きはなかった。少しばかりほっとし、二人はそれ以上近づく事を止める。

 触ろうとしたのだが、近くにあったタオルを澪が手に取ると、2体にそっとそれを掛ける。

 

 そして静かに、部屋を出たのだった。

 

 

 一通の情報が入った場所はダークエリア。

 

 

「ダークエリアだと?」

 

 

 デュークモンがあからさまに不服な声でそう言ったが、オメガモンが続けて入ってきた情報を読み上げる。

 

 

「ダークエリア、現在1体のデジモンのデータが消えた。消えたデータは究極体、七大魔王ベルゼブモン。」

 

「!? ベルゼブモン!?」

 

 

 先とは打って変わって声を荒げたデュークモン。彼はその消えたデジモン、ベルゼブモンとは多少なりとも因縁がある。

 声を荒げた理由はベルゼブモンの身を案じてか、それともそんな事があるはずないと驚きの表明か。

 どちらにせよこのままではこのダークエリアの捜索を、誰かを押し切ってでもデュークモンが行くと言いそうな勢いだ。

 

 

「落ちつけデュークモン。まだ報告は終わっていない」

 

「あ、ああすまない」

 

 

 抑止したのはオメガモンだったが、淡々とした口調で残りの報告も終わらせる。

 

 

「消えた時刻はほんの先刻。我々が敵と戦っていた時刻と被る」

 

「敵がいないところでもあいつらと同じ事が起こったという事か?」

 

「うむ。そういう事になる」

 

 

 ドゥフトモンは考え込んだが、やはり現場を見に行かなければ分からない、という意見を出した。

 

 

「敵は、本当にダークエリアにはいなかったのだろうか」

 

「分からん。ネットワークの検索にも引っ掛からなかったし、なにより四聖獣達からも連絡は入らなかった。いなかった可能性が高いと思われるぞ」

 

「だとしたら何故……」

 

 

 マグナモンの疑問は皆の疑問だった。だが「いない」と言い切ったロードナイトモンは自分の力も、自分たちの力も、そして協力態勢である四聖獣も信用している。

 

 

「ともかくダークエリアに今すぐ向かう。何があるか分からない。これ以上人材は割かないほうがいい。デュークモン、ドゥフトモン、お前たちが行ってくれ」

 

 

 アルファモンの指示により、デュークモンとドゥフトモンはダークエリアに向かうこととなった。

 早急にイグドラシルからダークエリアへ。

 

 

 

▼▼▼▼▼

 

 暖かい。しかし、体が小さい気がする。

 

 そう感じて目を覚ましたのは、見知らぬ場所だった。

 

 

「? ここは……」

 

 

 デジタルワールドとは違うというのは直感で分かった。横に寝ているのは明らかに成長期デジモン。

 まさかとは思ったが、そいつを起こして聞いてみないと分からない。

 

 

「おい、起きろ」

 

 

 小さくなった体でそいつの体を揺する。

 掛けてあったタオルがずれ落ち、暖かさが減少した。

 

 

「ん……?」

 

「起きたか」

 

「お前は……」

 

「デュナスモン、だった」

 

「……まさか……」

 

「確認だ。お前はエグザモン、だったのか?」

 

「ああ、だった」

 

「そうか……」

 

 

 互いに退化したらしい事を確認し合った俺達は、ふと横に置いてあったパソコンを見た。

 

 

「……? ロイヤルナイツ……?」

 

「そのようだな……」

 

 

 画面には俺達が映っている。どういう訳か、誰がこんなデータを欲しいと思ったのかは謎だ。

 デジタルワールド内では俺達ロイヤルナイツは脅威の存在だと思われがちだからだ。

 

 そうかと思えば足音が聞こえてきた。誰かが来る。

 こんな体で何が出来ようかと思いつつも、やはりロイヤルナイツとしてのプライドは退化しても失くさなかったようだ。

 

 2体で息を潜め、近づく足音を慎重に聞いた。何やら話し声も聞こえて来る。

 

 

「様子見るとかいいけど……さっきのさっきだぜ。早すぎないか?」

 

「え、そう? だって下にいても暇だもん」

 

「……あのなぁ……あれだけカードゲームって引っ張っといて暇ってなんだよっ!」

 

「深弱い」

 

「ゲームしねぇから俺! 観賞用で集めてるから俺!」

 

「ふーん、あそ」

 

「……」

 

 

 何だこの会話は。警戒するような程の者が本当に来るのだろうか。

 そんな怠慢な考えがよぎったが、モチベーションは何とか保った。

 

 

「開けるよー」

 

 

 声の主が部屋の扉を開ける。

 その瞬間、俺達は技を開く扉に向けて撃った。入る前に「開ける」などとわざわざ言うヤツがいるのか、と腐抜けたヤツだと思いながら。

 

 

「って危なっ!!!」

 

「きゃぁっ!!!」

 

 

 扉が開き、間一髪技を避けた者達を見る。

 

 

「「!?」」

 

 

 デジモンではない姿。

 彼らの思考は全く付いてきていなかった。

 

 

 デジモンではない姿。デジモン以外の生命体。

 

 

 それは、ニンゲン。

 

 


 
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