No.446418 魔法少女リリカルなのはStrikerS ~赤き狂戦士~ゼロ・スパークさん 2012-07-05 13:52:14 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1133 閲覧ユーザー数:1112 |
第三章 過去との邂逅
第二十四話「激闘」
六課メンバーと別れ、一人行動しているヴァン。
彼は今自分に向けられて放たれている謎の気配を辿って街外れにある今は誰も商売をしていない、
廃商店街の中にいた。
「ここかァ・・・」
一つのつぶれた店の前に止まる。店は、サーフボードを売る店だったようで、
錆びれた看板がそれを彼に教える。
一呼吸し赤が目立つバリアジャケットを身に纏う・・・その姿は最狂と言われる赤き狂戦士だ。
「この中かァ・・・数は・・・やっぱ一人かァ・・・」
『どうします?コチラから仕掛けますか?』
「まァ、焦んなよ。それにお前もわかンだろ、このウザイ感覚」
『はい・・・私達を挑発しています』
そう・・・・・何も挑発に乗る必要はない。
この世界では基本魔法は存在しない。
だが下ろされたシャッターの向こうからはあからさまに魔力が放出されている。
魔力を隠す気は無いらしく、奔放に放たれて魔力が店全体を覆っている。
強烈なプレッシャーがヴァンの体を打つ。
ヴァンはそれを、自らの魔力で追い払った。
『これほどのプレッシャーを放つ人物・・・いったい何者なのでしょうか?』
「決まってンだろ?敵以外に何がある?」
そう言い、ヴァンは錆びれた店に意識を集中させる。
手練だ。
彼が今まで血祭りに上げた犯罪者達など相手にならない実力者が店の中にいる。
その気配は遊んでやるとでも言っているかのようにヴァンにまとわり付く。
その傲慢さ・・・ヴァンの勘に障るには十分すぎるものだ。
「・・・モードRだァ」
『Mode Rifle』
クロスミラージュに似た漆黒の銃がヴァンの右手に現れる。
ルーチェ・ライフルモード・・・・・・実はティアナのデバイス、クロスミラージュはルーチェの
運用データを元に開発された。
ティアナの主武装は銃だ・・・なら最も経験値が高い銃型デバイスを元にして作ればいいのではないかという事を機動六課デバイスマスター、「シャリオ・フィニーノ」ことシャーリーは立案した。
だが、その開発案を考えついた時に、隊の中で銃型デバイスを持っている隊員はティアナを除いて
誰一人いない事に気付く。
当初は開発計画を断念する事を考えた彼女だが、しばらくして転機が訪れる。
そう・・・インフェルノから転属になったヴァンが来た事で、銃型デバイスを使う隊員が現れたのだ。
しかも彼女の予想した以上の経験値をルーチェは蓄積していた為に、開発は同時期に開発が始められていたスバルのデバイス「マッハキャリバー」より先に終了してしまい、だがその分マッハキャリバーの開発作業はゆっくりでき、どちらも最高のできとなった。
つまりはクロスミラージュはルーチェの弟の
ようなものだ。
『全魔力回路問題な・・・』
「・・・・・来たなァ」
ルーチェが自身の状況を報告しようとするが途中で、ヴァンが呟いた。
『!!』
ヴァンの呟きでルーチェも気付き・・・・その直後爆発が起きた。
「ちぃ!ルーチェ!決界を張れ!!」
ルーチェに決界を張らせる。まさか決界を張らないで向こうが先に仕掛けてくるとは思ってなかったらしく、思わず舌打ちをする。
『マスター!』
爆発でシャッターが吹き飛び、コチラに迫ってくる。
ルーチェが主の身を案じ、声を上げると共にプロテクションを展開する。
ヴァンは・・・
「図に乗ンなよ」
ルーチェの張ったプロテクションを自分から解除し、ルーチェの銃口から魔力弾を放ち、
迫るシャッターを撃ち抜いた。
その陰に、いた。
「ハッ!」
「ヌフフフフフフ!大した殺気です!」
ルーチェをブレイドモードにし、宙を駆ける襲撃者の斬撃を受け止め、弾き返す。
斬撃を放った相手は空中を回転しながら笑っていた。
ヴァンが殺気を更に強めるほどに・・・・・紫色の光刃の鎌・・・・・それが相手の武器。
一瞬、脳裏にフェイトの姿が浮かんだがすぐに消える。
左半分をピエロの仮面で顔を隠している。
魔力光と同じく紫の髪が夜の背景に溶け込むように宙を跳んでいる。
男、青年・・・・・ヴァンとそう歳がかわらないような気がする。
宙で回転していた青年は、一つの標識を蹴ると一気にヴァンの頭上を抜けていく。
「待てよ!遊ぼうぜェ!あげゃ!」
ヴァンがその後を追う。
『やはり、かなりの手練!』
ブレイドモードのルーチェがそう呟いた。
空を飛びヴァンは青年を追いかけた。青年も空を飛び始める。
その動きに無駄はなく、ヴァンを引き離すほどに速い。
「ちぃ!」
二度目の舌打ち。自分が引き離されている事に苛立ちを覚える。
だがそれで終わるヴァンではない。
「ルーチェ!」
『Sonic boom』
フェイトやエリオがよく使用する魔法。
ヴァンもどうやら使えるようた。爆発的に増した速度で一気に背後に迫り、ルーチェを叩きつける。
狙いは、利き腕の肩。戦えなくしてから、確実に捕獲し、何故自分を呼び寄せたか聞く。
そのつもりだった。
「あン?」
だが、その一撃は入らなかった。
青年は、ヴァンの頭上にいた。彼の斬り込むタイミングを読んだのだ。
「(ミスったァ!)」
このミスで絶対に逃げられる・・・・そう思った。
ソニックムーブの勢いを殺している間に逃げられる。
「中々やりますねぇ」
だが青年は逃げなかった。
それをチャンスと感じ、ヴァンは上の方へ急上昇する。
そして斬り込もうとした瞬間、悪寒がするのを感じた。
「っな!?あの構え・・・まさかァ!!」
ヴァンは青年の構えに驚愕する。
その構えに見覚えがあったからだ。
いや゛見覚え"ではなく"身覚え゛だ。そしてヴァンも青年と同じ構えを取る。
そう・・・抜き打ちの構え。
カートリッジを互いにロードする。
そして次の瞬間に二人の得物が交差する。
「「ブラッディスラッシュ!!」」
二つの赤い血のようなまがまがしい斬撃が×印にぶつかる。
その斬撃の背景には暗き空の中、美しく輝く満月があり、見る者からすればこの光景は、月が赤く×印に斬り刻まれて見えても不思議ではない。
ブラッディスラッシュを放ったヴァンは、相手のブラッディスラッシュを受け止めきれずに
後方に飛ばされた。
「流石についてきましたねぇ」
「テメエ・・・何者だァ?」
自分を前にして、落ち着いて戦いを分析している相手に苛立ちを覚えながら、正体を尋ねる。
当然相手は応えはしない。
そのまま連続で襲い掛かる鎌を、ヴァンはルーチェで弾き返す。
一撃一撃が思い。どんどん下空へ押し戻されてしまう。
「ふっ!」
「!!ちぃ!」
上段からの斬撃。完全にヴァンは地に足を下ろしてしまう。
打ち合いで自分が押し負けた事に驚きながらも、自分の現在地を確認する。
そこで彼はある事に気付く。結界を郊外事に張っていたはずなのに、いつの間にか、結界を抜けまったく違う場所で戦闘していた。
「(結界を破壊された?奴は破壊はしていない・・・・・・仲間がいるのかァ?・・・・・・だがこの俺様に気付かせずにそンな事ができる奴など・・・・・)」
だが間違いなく今周りに張られている結界の魔力反応は自分の物・・・・・これでは結界事、
自分達は移動した事になる。今までに体験した事のない感覚に内心驚く。
再び空に上がり、上から追撃してくる青年に、ヴァンはルーチェをぶつける。
---ストームジャッジメント---ヴァンの剣技の中でもっとも広範囲の技。
魔力弾を含んだ赤い竜巻。青年をあっという間に飲みこむ。
「甘いです」
竜巻の中から青年が何事なかったかのように現れる。
よくストームジャッジメントを見ると勢いが大分消えている。
青年は竜巻の中で、竜巻とは逆の方向に回転しストームジャッジメントの威力を軽減したのだ。
今回っているのはただのふよふよ漂う中身のない魔力の塊。
徐々に消滅を始める。
ストームジャッジメントが消失と共にピエロの仮面が取れ、左半面に傷が走っているのがみえた。
鎌とルーチェが衝突する。
「この程度ですか・・・・・?」
囁くように言われた名前。同時に、手に握るルーチェに違和感を感じる。
「ちぃ!」
青年を蹴飛ばし距離を取り、牽制に魔力弾を放つ。
『損傷軽・・微・・・まダ、いけマ、す』
途切れ途切れにルーチェが状態を告げる。
剣身に細かいヒビが幾つも入っていた。----ブラッドファング----武器潰しの技だ。
そしてこの技はヴァン自身も使える技。
ブラッディスラッシュに続きまたも自分の技を使う青年の正体がさらにわからなくなる。
「(魔力が十分に通せねェ・・・)」
ルーチェはまだ行けると言うが、あと数回しか技を放てないだろう。
「本気?・・・・じゃないですよね?まさか私達の信仰対象がこんなものではないはずですよねぇ」
「・・・・オマエ・・・・俺の正体を?」
自分の上から見下ろしている青年をヴァンは睨む。
「カイン・アレース・シンクと言う者です」
ヴァンとは対象的な漆黒のマントを纏い、風に流す。
「・・・・アレース教団」
アレースという名を聞き、彼がしる団体の名を口にする。
「そうです。四代目教祖です」
ご名答と言わんばかりに、挑戦的に笑っていた。
アレース教団。教団とは名ばかりの戦争中毒者の集まりだ。
あらゆる世界を自前の次元航行艦で移動する彼らは、行く先々で自分達の教団に入団する事をすすめている。
そして、紛争の絶えない世界にわざわざ趣きその紛争に介入し、状況を悪化させる。だが、未だに管理局からは危険集団指定されていない。
おまけに自分達は神の教えに従っていると言い張るのだ。
軽くテロリストのような存在だ。
「俺様を何故呼んだ?」
「ちょっとした遊びです。それに今の我々の信仰対象がどのようになっているか見てみたかったのでね」
「・・・・ハーナが狙いじゃないのかァ?」
「「鍵」のあの方は今となってはどうでもいいのです。我々は貴方様とコレから始まる「祭り」にしか興味はありません」
相手と話ながら魔力の密度を上げる。
「勝手に俺様を信仰対象にしたクソ教団がナニ抜かしてやがンだァ?俺はオマエら教団なンか
眼中にないンだよ」
「酷い物言いです・・・我々はこんなにめ貴方を崇めているというのに・・・その証拠に私は貴方が使われる魔法の殆どを使えますよ」
「「奴」から貰った俺様のデータで猿真似かァ・・・・・余程の暇人めェ」
忌々しい連中だ。心の底から怒りが湧いてくる。
だがそれは今はおさめなければならない。状況は明らかにヴァンが不利。
ルーチェは大破寸前。
魔力の走りが悪い上、他のモードにすればその変化についてこれずに分解するおそれがある。
「我々の貴方への忠誠心は本物だと言うのに・・・・・まぁいいでしょう」
次の瞬間、カインが動いた。目の前に現れたカインの斬撃を上に飛び躱す。
「本気にならない貴方を倒すのはまことに残念ですが、今は貴方のかつて持っていた闘争本能を引き出すのが私の役目・・・・・ご無礼、お許しください」
距離をとったヴァンに、猛然とおそいかかってくる。
「(俺の闘争本能を甦らせるだと?)」
カインの言った事を考えながらも、攻撃をかわし、ヴァンは改めてカインの実力に
内心下を巻いていた。
これまでそれなりに強い奴と戦ってはきたが、カインほどやりにくい相手とは戦った事はない。
魔力量自体はヴァンより下ではあるが、近接戦闘ではヴァンと並ぶほどの実力者。
リミッター付きとはいえ、ここまでヴァンを追い詰めた事実は、彼を焦らせるには十分すぎる材料だ。
「どうしました?もっと貴方の力を見せてくださいよ」
(ルーチェ。悪いがちょっと壊れてもらうがいいかァ?)
鎌を避けながら、自分のデバイスに念話で話し掛ける。
《ホ、本当に仕方、ノない方・・でスね・・・・そのカわりちゃんト、修復をお願・・
いしま・・すよ?》
(任せろよ・・・・)
念話を終わらせ、同時にカインが接近してくる。
剣と鎌がぶつかり合う。
火花が散り、デバイスに収まりきれない互いの魔力が周囲に漂い大気を震わす。
そして武器のぶつかり合いで起きる振動でルーチェに変化が起きる。
ルーチェの太い剣身が砕ける。
それを見てカインが笑みを見せる。
だがそれでヴァンは終わらない。
大破したルーチェの柄をカインに向け、魔力を柄に集中させ、放つ。
「・・・ブレイド・・・・エンド」
赤い極太の砲撃が至近距離でカインに命中。
ブレイドエンド----その名のとおり剣の終わりを意味する技。
ルーチェが破壊された場合一度のみ使える起死回生の一撃。
だがカインはすんでのところで防御魔法を展開し、ブレイドエンドを防ぐ。
しかし、彼の想像以上にブレイドエンドの威力は大きく、防御魔法ごとカインを吹き飛ばす。
「ぐわっ!?」
勢いをころしきれず、そのまま結界を突き破る。
同時に結界が完全に崩壊する。
さらに宙を舞うカインの腹部に拳打を叩き込む。
ギリギリで腕で防がれたが、威力がカインが思っていた以上にあり、カインは河川敷近くにある
グランドに落下。
粉塵が舞う。
当然それを見逃すヴァンではない。
グランドに降り立ち、粉塵に向け魔力弾を両手から放つ。
マウンド近くの金網が崩れ落ちる。
「仕留めたかァ?」
いや・・・・・粉塵の舞う中で、気配が一つ増えた。
仲間が来たようだ。
「どうする・・・・・)」
身構える。だが・・・・・気配はその場から消える。転移魔法を使ったのだろう。
「(追撃するかァ?・・・・・いやァ、ルーチェは完全に機能を停止している・・・・・
反応を追えねェーかァ)」
ルーチェは今、完全に機能を停止している。
ルーチェなしでも戦えるが、あきらかに不利だ。
「ヴァン君?」
「ン?」
カインの事を考えていると背後で自分の名を呼ばれ、振り返る。
声の主はなのはだった。
他にもフェイトやフォワード達がその場におり、驚いた顔でヴァンを見ていた。
「ヴァン君・・・っ?!どうしたの、ルーチェ!?」
ヴァンの右手に握られているルーチェを見てなのはが驚く。
「ルーチェ!!」
ハーナがヴァンに駆け寄り、ルーチェをヴァンの手から取り上げる。
ルーチェは柄部分を残してそこから先は完全に失われていた。
柄部分にも大きな亀裂が走っていた。
「何があったんですか?」
ハーナはなるべく平常心を装って、そう尋ねる。
「・・・・・なンというか・・・・」
ハーナの問いに応えようとするが、上手く説明する事ができない。
そしてヴァンはそのままハーナの横をとおりすぎる。
「ヴァン・・・」
「ハーナ、シャーリーにルーチェを直させた後に、ルーチェをチューニングしてくれェ」
バリアジャケットを解き、グランドにある階段を登り、ハーナ達を残して一人先にコテージに向かう。
カイン・アレース・シンク、アレース教団・・・・・・それぞれの名を思い出しながら、
歩く・・・・・
改めて自分を中心に運命が動きだしている事を実感し、そしてこれから確実に大きな事が起きるのを
ヴァンは確信した。
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時空管理局特務殲滅部隊---通称「インフェルノ」。そこには管理局員、次元犯罪者の両方が「赤き狂戦士」と恐れる青年が所属していた。そんなある日彼は、インフェルノの部隊長の命を受け新しく設立された部隊「機動六課」に異動する事になり、狂喜的な笑みを浮かべ素直に異動を受諾する・・・彼の笑みは何を意味するのか?