「う、うぅん。ここは・・・・・・?」
膨大な記憶の整理を再開して数時間。
整理の目処がついた頃、尾に包ませて寝かしていたイタチの声が聞こえてくる。
薄目を開けて見ると、イタチは辺りをキョロキョロと見回していた。
どうやらまだ目ぼけているらしい・・・・・・。
「目を覚ましたか・・・・・・」
「え? あっ! し、神竜さま!?」
尾を緩ませながら顔をあげ呟くと、俺に気付いたイタチは慌てて顔を下げて叫んだ。
「お願いします! 父たちを助けてください!!」
俺はいきなり顔を下げられたため少し呆気にとられたが、すぐに顔を引き締め名を訊ねた。
事情を訊くにも名を知らなくては始まらないからな。
「・・・・・・私の名はメロディ、“エコー”と呼ばれる種の
顔を下げたまま名を告げるイタチ、もといエコーの娘に、俺は苦笑してしまう。
「顔をあげてくれ。俺は顔を下げられるのは苦手だ」
これは慣れてないと言い換えられる。
生前も今も中身の俺は全然偉くないし、頭を下げられる状況にあまりなったことはない。
だから頭を下げられるのは、正直困る。
エコーの娘(メロディ)が頷き顔をあげると、俺はじっと顔を見つめ事情を訊ねた。
メロディは俺を見つめ返して、ここまでの経緯を話しだした。
「・・・・・・我々、エコーは“精霊の力”で姿を変えられるのですが、ある時、人間がやってきて、『お前たちの力を俺のために使え』と言ったのです。もちろん我々に人間の言う事を聞く義務はありませんので、隠れて人間が諦めて帰るのを待っていました。でも、人間はニヤッと笑ったかと思うと、『これもで言う事を聞けぬのか?』と、高らかに我々の子どもを掲げたのです。そして人間はさらに『子どもを返して欲しくば、俺の言う事を聞け』と言ってきたのです。子どもを見殺しにはできず、長である私の父は男たちとともに、その人間の言う事を聞かざる負えなかったのです」
一気に話したメロディは顔を伏せた。
俺は目を瞑って、今の話を反芻していく。
おそらくその人間はエコーの力を利用することを思い立ったのだろう。
金儲けが目的か・・・・・・。ということは当面、エコーたちの命の心配はないだろう。
俺は目を開けて、顔を伏せているメロディを見つめた。
「事情は分かった。俺のところへ来たのは親父たちを助けだして欲しいということだな?」
「はい。最初は偉大なる古代の幻獣“ウルフローズ”の長・イザナギ様にお助けを願ったのですが、人間の前に出ることは許されないと仰られて・・・・・・、そのお詫びにと神竜さまのことを教えていただきました。お願いです! 父たちをお救いください!」
メロディは俺の問いに顔を上げて答えた。
イザナギと言えば、あの狼か・・・・・・?
ふぅ・・・・・・、何だか俺が知らないところで過大評価されていっているようだぞ?
ただまぁ、あの怪我をしてまで、俺を頼りにここまで来たわけだから、無下に断ることはできないな。
よし。ここは頑張るとしよう。
そう思った俺は、哀願の表情を浮かべるメロディを見つめ了解の意味で、その人間の居場所を訊ねた。
「・・・・・・・・・・・・分かりません。私はイザナギ様や神竜さまに助けを求めるために、
メロディはそう言って、顔を伏せてしまった。
なるほど父たちを助けてほしいという一心さから、その人間の居場所を突きとめる必要があるということを考えずに来てしまったワケか。
となるとどうするか・・・・・・。
その人間の目的が金儲けであることは決定事項として考えれば、トリステイン、ガリア、ゲルマニア、アルビオン、ロマニアのどれかの国の都市で商売をしていることになる。
しかし、これでは範囲が広すぎる。
「分からないのなら仕方がない。お前の住処に行けば、何かしら情報があるだろう。メロディ、乗れ」
「は、はい」
そう考えた俺は顔を伏せたメロディを頭に乗せて、浮かび上がった。
「メロディ。自分の住処の場所を思い浮かべてくれ」
「は、はい~」
必死に
**********
シェンとメロディがエコーの住処に向かった数十分後。
ガリアとトリステインの国境付近にある森のとある岩場に、身体に青色のバラの模様がある狼が立っていた。
「・・・・・・・・・・・・」
その狼の名は、アマテラス。
偉大なる古代の幻獣“ローズウルフ”の長、イザナギの娘であるが、ある事がきっかけで、使役狼としてシェンに仕えている。
そんなアマテラスのところに身体に黄色のバラの模様がある狼がやってきた。
「姉さん」
その狼の名は、ツクヨミ。
偉大なる古代の幻獣“ローズウルフ”の長、イザナギの息子で、アマテラスの弟であるが、アマテラスと同じく使役狼としてシェンに仕えている。
「ツクヨミ・・・・・・」
「あのエコーの
「ええ。ちゃんとシェン様のところへ行けたのか心配なのよ。ここは凶暴な獣が沢山いるから」
アマテラスは、シェンのいるトリステイン魔法学院の方角を見つめて、ツクヨミの問いに答えた。
ツクヨミもアマテラスの横に並び立って、同じように見つめた。
「大丈夫。きっとシェン様にお会いできているさ」
「・・・・・・・・・・・・そうね」
アマテラスとツクヨミはエコーの娘の無事を祈り遠吠えをして、群れに戻ろうと岩場を後にしようとした。
ぴ~っ!!
その時、二匹の耳に甲高い音が響いた。
それはシェンが二匹に言っていた指笛の音だった。
「ツクヨミ!」
「分かってる!」
その音でシェンが自分たちを呼んでいることを悟った二人は、お互いを見つめ合い岩場からジャンプ。
すると、その岩場から消えたのだった。
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死神のうっかりミスによって死亡した主人公。
その上司の死神からお詫びとして、『ゼロの使い魔』の世界に転生させてもらえることに・・・・・・。
第十一話、始まります。