No.445737

SAO 疾風のトレジャーハンター

rocklessさん

ソードアート・オンラインでトレジャーハンターをする少女のお話

2012-07-04 20:16:44 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2790   閲覧ユーザー数:2694

 

まえがき

 

原作未読なので設定がおかしいところが多々あると思います

『ぐっ・・・おま、え・・・ぐわぁ!!』

 

『あ、あぁ・・・あああ・・・』

 

「ハッ!はぁ・・・はぁ・・・」

 

悪夢から逃げるように無理やり目を覚ます

周りを見ると夢の中のダンジョンではなくどこかの森の中・・・

 

『ソードアートオンライン』

 

最新の技術を使ったVRMMORPG

負ければ現実でも死んでしまうログアウト不可のデスゲーム

こちらの勝利条件は100層目のボスを倒し、ゲームをクリアすること

 

「この世界も夢ならいいのに・・・」

 

私は膝を抱え、そう呟いた

 

 

 

 

 

私、佐藤真希ことアバターネーム『マーキィ』は攻略組の1人だった

投げナイフを使う投擲使いでベータテスターだったということもあって、他のプレイヤーよりも頭ひとつ抜きに出ていて、周りから『疾風』なんて呼ばれてすっかり調子に乗っていた。投擲使いは攻撃力が低めだから、より攻撃力を求めて毒ナイフや麻痺ナイフに手を出した。『味方に当てたら危ないからやめてくれ』なんて周りに注意されたが耳に入らなかった。自分がミスするなんて想像もつかなかったから・・・

 

そして私は人を殺してしまった・・・

 

ダンジョン攻略中、私が敵に向かって投げたナイフが、その敵の近くで戦っていた味方に当たってしまった。そのナイフも刃に即効性の麻痺薬が塗られていて、その人はすぐに麻痺状態になって動けなくなり、敵に殺された

敵に殺され、消滅していくその人を目の当たりにして、私は怖くなってその場から逃げ出した

夢中で、当ても無く逃げ続けた・・・

 

「グリーン、か・・・」

 

どれくらいの日数がたったのか、私は自分の表示がグリーンプレイヤーになっていた

犯罪を犯したプレイヤーは表示がオレンジやレッドになる。オレンジになった表示は何もしなければ1日2日でグリーンに戻ると聞く

 

「人を殺しても、2日で時効になっちゃうって・・・ありえないよ・・・」

 

システム上はダメージを与えただけで殺してないって判断だろうけど、あんなのどう見ても私が殺したようなもの・・・

 

 

 

ホント、この世界が夢だったいいのに・・・

 

 

 

 

 

それから当ても無く歩き続けた私は、外周に来ていた

 

ここから落ちれば・・・楽なれるだろうか・・・

 

外周の縁に立ち、下を見ながら私はそんなことを考える

下は雲で覆われて地面が見えない

 

私は縁の外に足を出して・・・

 

ガシッ!グイ・・・

 

「え?」

 

誰かに腕を掴まれて思いっきり引っ張り戻された

勢いよく引っ張り戻された私は、その勢いのまま私を引っ張った人にぶつかって2人して地面に倒れた

 

「イッテテ・・・怪我は無い?」

 

私を引っ張った人は、私を抱きしめるようにしたまま、私に向かって聞く

 

「何で私なんか助けるんですか?!」

 

私はその質問に答えず、叫ぶように問い返す

 

「君に何があったのか、何を思ってそんなことをしようとしていたかは俺は知らないけど・・・それは何の解決にもならない・・・それだけは言えるから」

 

彼は私に真っ直ぐ視線を向けてそう言った

そして・・・

 

「生きるんだ」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

私はこの世界で初めて涙を流した

 

 

 

 

 

それから、その日は私を助けてくれた人、キリトの家に泊まった

 

「行くのか?」

 

次の日の朝、部屋を出て行こうとする私に、机に突っ伏して寝ていたキリトが起きて声をかけてくる

 

「うん、キリトのようないい人の傍に、私はいたらいけないと思うから」

 

「俺がいい人、か・・・」

 

私の言葉にキリトの表情が曇る

 

「いい人だよ・・・『人殺しのビーター』を助けて、一宿一飯の世話までしてくれるんだから・・・」

 

「!」

 

私は自虐的にキリトに自分の正体を告げ、キリトは驚く

ビーター・・・ベータテスターの蔑称。ベータテスターを経験していることで正式版から参加した人より効率よくプレイできることから、正式版からの参加者が嫌味として使う。最近広まった言葉で、誰かがそう自称しだしたからとか聞いた。死んだら終わりのこのゲームでは戦闘が強いキャラは重宝されるだろうが、私のような人殺しは用無しどころが邪魔な存在だろう

 

そして私は自身が犯した罪をキリトに話す

キリトは悲しそうな表情で黙って聞いていた

 

「わかった?私があなたと一緒にいてはいけないような人だってことが・・・?」

 

「あぁ、わかった・・・」

 

私が話し終わり、俯いているキリトに問いかけると、キリトが俯いたまま答えた

私はその答えを聞き、再び部屋の出口に向かって歩き出す

 

「・・・その理屈だと、俺もその『人殺しのビーター』だってことが・・・」

 

「え?」

 

扉の取っ手に手をかけたところで背後からそう聞こえてきた

私は驚いて振り返った

キリトは机に両肘をつけ、目元を押さえて表情を隠していた。しかし、隠しきれていない唇が噛み締められていることから、何かを堪えているのは確かだった

 

それからポツリポツリと語られるキリトの過去・・・

自分の責任でギルドメンバーを全滅させたこと、そのギルドの団長がキリトの目の前で私と同じように外周の縁から投身自殺をしたこと・・・ビーターという蔑称を自称し始めたのもキリトで・・・

 

キリトはまるで懺悔するかのように語り続けた

私はそんなキリトを見ていられなくなり、彼の頭を横から自身の胸元に抱き寄せる

 

「マ、マーキィ?(///)」

 

突然のことでキリトの表情が朱に染まる

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 

自虐的に言っていた言葉が、キリトを苦しめていたと思うと涙が出てきた

不思議だ・・・直接人を傷つけたときには涙なんて出なかったのに・・・

 

「・・・」

 

キリトは黙って私の抱擁を受け入れてくれていた・・・

 

 

 

 

 

それから私は、キリトと一緒に暮らしだした

同じような傷を持つ者同士、傷の舐め合いのような関係

私はトラウマで以前のようにナイフを持てなくなっていたので、キリトの帰りを待っているだけだった

 

 

そんなある日のこと・・・

 

 

「キリトー?どこー?」

 

今日は食料の買出しでキリトと町を歩いていた

しかしキリトとはぐれてしまい、私はキリトを探していた

大通りから細い道に入り、少し探していると木箱に腰掛けているキリトを見つけた

 

「あ、いた・・・キリ・・・」

 

呼びかけながらキリトに近づこうとして、私はキリトの隣に誰かプレイヤーがいることに気付き、言葉を途中で止め、立ち止まった

私はあれからプレイヤーと接するのが怖くてNPCとキリトにしか話しかけれない。街中ではフードで顔を隠していて武器も持っていないから誰も私が『疾風』だとは気付かないが、少しでも会話をしてバレてしまったらと考えると怖い

 

私は遠くから気付かれないように聞き耳を立てる

何を話しているかは聞き取れないが、話し声から相手は女性だということがわかった

 

途端に胸が苦しくなる。その場にいたくないという感情が頭に中を埋め尽くし、私は1人で部屋に帰った

 

 

先に部屋に帰った私は、ベッドに転がる。そして嫌でも考えてしまう

キリトとあの人はどんな関係なのだろう、と・・・

 

一緒に暮らしだしても私たちは寝食を共にするだけで、お互いの交友関係は何も知らない。いや、私にはもう顔を合わせられるプレイヤーはいないから交友関係なんてものは無い。だからキリトは私の交友関係を知ってはいるか・・・

 

リアルでの知り合い?もしかして彼女?

 

悶々とした気持ちで頭の中がグチャグチャになっていく・・・

 

「好き・・・なんだけどな・・・やっぱり私なんか嫌だよね・・・」

 

ベッドの上で丸くなりながら呟いた

自殺を止められて、面倒を見てくれて・・・自然と私はキリトを好きになった

 

ずっとこのまま一緒にいたい・・・

 

最近はそんなことを考えるようになってきた

もちろんそんなことは叶わないのはわかっている。これはゲームの中の世界、ゲームがクリアされれば終わってしまう。それに私は止まっているが、キリトは前に進もうとしている。そう長くはこの生活は続かないということはわかりきっていた・・・でも

 

「いやだよ・・・1人にしないでよ・・・キリト・・・」

 

私はキリトの傍にいたいと思っていた

 

《!》

 

「?・・・キリトからメール?」

 

ベッドの上で泣いているとキリトからメールが来た

内容は今どこにいるかということ。キリトに何も言わずに帰ってきたから心配したのだろう

 

『ごめんなさい。ちょっと疲れたから先に部屋に帰って休んでた』

 

私はそうキリトに返した

 

『そう、わかった。会わせたい人がいるんだけど、大丈夫?』

 

キリトから再度メールが届く

会わせたい人とは、さっきの女性なのだろうか?

 

私は返信に迷う

できれば会いたくない・・・さっきの女性でも、そうじゃなくても・・・

 

『大丈夫、俺がついてるから』

 

返信に時間がかかっている私にキリトから追加のメール

まるで恋人にでも送るかのような文面に私はクスッと笑ってしまう

 

『わかった。会う』

 

私は短くそう返した

 

 

少しして、キリトが部屋に帰ってきた。そして会わせたい人を部屋に招き入れる

 

「アスナです。よろしく」

 

被っていたフードを外しながら自己紹介する。被っていたフードや声からその人が町でキリトと話していた人だとわかった

 

「・・・マーキィです・・・」

 

私は恐る恐る自己紹介をする

 

「あなたのことは彼から聞いたわ『疾風』さん」

 

「!」

 

彼女の言葉に私は驚いてキリトを見る

キリトはそんな私に辛そうな表情をして・・・

 

「いつまでも、このままってわけにはいかないと思って・・・」

 

「キリト君、2人にしてもらっていい?」

 

「うん」

 

アスナの言葉にキリトは頷いて部屋から出て行った

彼女の言葉は少し高圧的で、私は恐怖心でいっぱいだった

キリトが出て行ったのを見送って、彼女は私を向かい合うように椅子に腰掛けた

そして・・・

 

「彼のこと、好きなの?」

 

そんなことを聞いてきた。それは同級生の友達に聞くかのような口調で・・・

私は彼女の変わり様に呆気にとられた

 

「ねぇねぇどうなの?」

 

ズズイと前のめりになって顔を寄せてきてさらに聞いてくる

 

「は、はい・・・好き、だと思います・・・」

 

「だと思うって・・・自分のことでしょ?」

 

「『好き』と言葉にすると少し違和感を感じると言いますか・・・でも好きではないというわけではないですし・・・」

 

私は少し仰け反って彼女から距離をとりつつ答える

 

「姉や妹のように家族として見られたいの?」

 

「一人っ子なのでそれがどういうものかわかりませんが、それもなんか違うような気がします・・・いや、少し合ってる部分もある気もします」

 

「どっちなのよ」

 

「よくわかりません。ただこうしてずっと一緒にいたいと思っています。彼の傍にいて、彼のために生きたいなと思っています」

 

そう言っているうちに私の頭の中に1つの回答が浮かんだ

 

「たぶん私は彼を『愛している』んじゃないかなと思います」

 

その回答は凄くしっくり来るものだった

『好き』ではあるが、ただ『好き』なわけじゃなく、家族として見られたいが姉や妹ではない

 

『家族になりたい』

 

それが私の望みなのだろう

 

「・・・」

 

私の回答を聞いてポカンとするアスナ

 

「そっか・・・愛している、か・・・」

 

前のめりだった体勢を戻しながら彼女は呟く

 

「これは敵わないわね・・・」

 

そして悲しげにそう言った

 

「さて本題に入りましょうか。あなた、武器が持てなくなったんですって?」

 

アスナは急に真剣な表情になり、再び高圧的な口調で私に問いかけてきた

 

「!」

 

私は彼女の豹変とその言葉に驚き、今まで合わせていた視線を逸らす

 

「今のままでは愛していても傍にい続けることはできないわ。遠からず彼はまた前線に戻る。この世界を終わらせるために・・・そのときあなたはどうするの?ただボーっと彼の帰りを待つ?」

 

「・・・」

 

彼女の問いに私は何も返せない

 

「あなたは・・・怖くないのですか?戦うこと、戦いに負けて死ぬこと、自分のせいで他の誰かが死んでしまうかもしれないことが・・・」

 

私は震えるような声で聞いた

 

「怖いわ。怖いに決まってるじゃない。でもね・・・たとえ怪物に負けで死んだとしても、この世界には負けたくないの!」

 

彼女は私の問いに一切視線を逸らさず、真っ直ぐ私を見て答えた

 

「それだけは・・・それだけは絶対に嫌だから・・・だから私は戦う」

 

そう言って彼女は立ち上がって部屋から出て行った

 

 

あれから数時間、日も沈み、私の目の前にあるランプの火がユラユラ揺れている

キリトはまだ戻ってこない・・・キリトと暮らし始めてから、こんなに1人の時間を過ごしたことはない

 

頭の中に残る彼女の言葉

 

『たとえ怪物に負けで死んだとしても、この世界には負けたくない』

 

彼女は生き残るために前に進み続ける覚悟を持っている

 

『生きるんだ』

 

次に浮かんできた初めてキリトと会った時に言われた言葉

彼も逃げずに立ち向かう覚悟を持っている

 

私だけ、このまま止まってて、いいわけがない

 

 

 

私たちは、『ゲーム』をしているが、『遊び』でやっているわけじゃない

 

『嫌だ』『怖い』で許されるような、そんな甘い世界じゃない

 

 

 

私はキリトにメールを出して部屋に戻ってきてもらうように言う

キリトは部屋のすぐ近くにいたようでメールを出してから部屋に着くまでそんな時間はかからなかった

 

「ただいま」

 

「おかえり」

 

戻ってきたキリトはさっきまでアスナが座っていた椅子に座った

 

「キリト、ありがとう」

 

「そう言うってことは、これからどうするか、決まったんだね?」

 

「うん、明日ここを出て行く。それから下層で一から鍛え直す」

 

キリトの隣に立つために・・・

 

私はキリトを見詰めながら言った

 

「そっか・・・頑張って」

 

私の言葉にキリトが短くそう返した

そのときの彼の表情に、少しだけ悲しさの色が見えたことに、私はとても嬉しく思えた

 

 

「あ、あのねキリト・・・最後にお願いが、あるんだ・・・」

 

そろそろ寝るという時間になって、私は少し緊張しながら言った

 

「いいよ・・・何?」

 

キリトは特に考えずそれに答える

 

「えっと・・・一緒に寝ない?」

 

私の言葉にキリトは座っていた椅子から転げ落ちた

部屋にはシングルのベッドが1つしかなく、今まではキリトが私に気を使って机に突っ伏して寝たり、床に座わって壁に寄りかかって寝たりしていた

 

「あ、え、その、えっと・・・」

 

キリトは口をパクパクしながら慌てふためいている

 

「ダメ、かな・・・?」

 

「・・・わかった」

 

そして私とキリトは1つのベッドで、寄り添って寝た。もちろん何もなかった

この世界でも倫理解除コードというものを使えば“そういうこと”ができると聞くが、このときは使わなかった。これを使うのは今じゃない

 

 

次の日、朝・・・

寝ているキリトにを横目に私は身支度を整える。やっぱりと言うか昨日キリトは私が隣にいることでなかなか寝付けなかった。私が先に寝付いたのでいつ寝付いたのかはわからないが、まぁとにかく起こすのは悪いので寝かせておこう

 

身支度を終えた私は寝ているキリトの傍に行く

 

「キリト・・・ありがとう・・・いつか、私が自信を持って隣に立てるようになったら・・・」

 

そこまで言って一旦言葉を止め、寝ているキリトの唇に自分のそれをつける

 

「また一緒に暮らそうね。今度はずっと・・・この世界が終わるまで、そしてその後も・・・」

 

唇を離し、言葉を続ける

そして最後に・・・

 

「キリト・・・愛してる」

 

そう言い残し、私は部屋を出た

 

い、言えた・・・寝ていたから伝わってはないけど・・・

 

部屋を出た私は、恥ずかしさから駆け出していた

恐らく顔は真っ赤になっていると思う。今は朝で町にはNPCも含めて人がいないが、万が一にもこんな姿は見られたくはない

 

《!》

 

っとそこに一通のメールが届く。差出人はキリト。何も言わずに出たからだろうか・・・?

私は走りながらそのメールを開く

 

『待ってる』

 

メールにはそれだけしか書かれていなかった

 

・・・え?まさか起きてた?

あれからもう1年とちょっと・・・

私は1人、自分を鍛え直し、今はソロでダンジョンを探索してレアアイテムを探す『トレジャーハンター』になった。攻略組に戻らないのはまだ少し人が近くにいると手が震えてしまうから・・・

 

あの日以来、キリトと私は会うどころか一度も連絡を取り合っていない

しかしアスナやアスナの友達のリズベットから話は聞いている。この間竜使いのビーストテイマーの女の子を助けてそれから連絡を取り合っているとか・・・『浮気してるわよ』なんてアスナにからかわれたりもしたが『信じてるから』と言って流している

 

 

 

 

 

「さて、お宝探索始めますか」

 

今日は最前線付近の上層階にあるダンジョンに来ていた

自分で言うのもアレだが、あれから私は強くなった

 

「グォオオオオオオオ!!」

 

ドス

 

「「グォオオオオオ!!」」

 

ドスドス

 

ダンジョン内に入り、エンカウントしたオーク鬼の首に向かってナイフを投げ、一撃で敵を倒す

ナイフはNPCが普通に売っているもので、刃には何も塗られていない

投擲技術を鍛え直した私は、武器の威力に頼る戦い方から、急所を狙って大ダメージを与える戦い方に変わった。この方が使う本数も少なくて済む

索敵スキルで敵の出現は予測されてるから落ち着いて反応できるのも大きい

 

私は探知と索敵のスキルをオンを維持して、ダンジョンの奥に進んだ

 

 

少し進んだところで、私はピタッと足を止める

別に敵とエンカウントしたわけでも、お宝を発見したわけでもない、通路の途中で・・・

 

普通の人から見たら普通の通路、だけど私には見える

この先にあるトラップが・・・

 

私はそのトラップに手を伸ばす

 

《トラップを解除しますか?はい/いいえ》

 

表示されたウィンドウに対し、口頭で『はい』を選択する

 

トレジャーハンターには欠かせないスキルのうちの1つ、『罠師』

ダンジョン内に設置されているトラップの解除をすることができるスキル。他のプレイヤーが仕掛けたトラップも解除したり、私自身も設置することができるが、罠師ってマイナーなスキルだからあまりこのスキル持っている人を聞いたことがないし、プレイヤーが仕掛けたトラップに対して使ったことはない。設置のほうはトラップがアイテムイベントリに嵩張るので持って来ていないのでできない。お宝見つけても持ち帰れなかったら意味ないからね

 

カチャカチャと効果音を出してシステムがスキルを行使してトラップを解除する

私自身が何かをやるわけではない。スキル経験値の量と器用度がそのトラップを解除できる基準に達していれば解除される。解除できる基準に達していなければ、何も起こらなかったり、最悪トラップが発動する。私の罠師スキルはここのダンジョンのトラップの解除できる基準に達しているので問題なく解除される

30秒くらいしたのち、トラップが解除された

 

 

またしばらくエンカウントした敵を倒しながら進んでいると、行き止まりにぶつかった

分かれ道の選択をミスったのかと思ったが、探知が隠し扉を発見して私に教える。よくあることだ。なかには宝箱自体が探知を使わないと見えないというものまである

 

私は隠し扉の前に立ち、扉にそうっと触れる。もちろん探知は維持

 

隠し扉を見つけたことに油断してトラップを発動なんて、この辺りの階層のダンジョンでは当たり前のこと。システム上の都合で隠し扉の表示で罠の有る無しがわかりにくいのも原因の1つ

予想通り、触った瞬間に罠師スキルが起動して解除するかの問いが表示された

私はそれに『はい』と答える

 

トラップを解除し終えて、次は『開錠』のスキルを使って扉にかかった鍵を開ける

開錠も罠師と同じでシステムが開錠できるかをスキル経験値と器用度から判断して自動で開錠を行う。こちらは基準に達していなくても開錠できないだけでペナルティは無い。せいぜい時間を無駄にする程度だ

カチャカチャとトラップの解除の効果音と同じ音を出して、10秒で鍵が開いた

 

隠し扉は石造りの割りに軽い力で動いた

隠し扉の先は長い一本道で、見える範囲では探知や索敵には何も引っかからなかった

 

警戒しつつしばらく進むと曲がり角の先に1体索敵に引っかかった

私は覗き込むように曲がり角の先を見る。そこにはオーク鬼よりも大きなトロールがいた

トロールはHPが高く、暴れるように向かってくるので急所に狙いがつけにくく、私のような投擲使いが苦手とする敵の1つだ。まぁナイフの刺さらないゴーレムのような敵や動きの速い敵とかに比べたら断然戦いやすいけどね

 

仕方ない、と私はナイフを大量に用意して手数で押す準備をする

こういう敵こそ本来は毒や麻痺を使うのだろうけど、私はもうそんなものに頼る気は無い。アイテムイベントリがもったいないし・・・

幸いこういうケースも想定して、ナイフだけはアイテムイベントリを気にせずに大量に持ってきている。ナイフも無料(ただ)じゃないのであまり使いすぎるとお宝を発見しても利益が少なくなってしまうので、できれば少ない本数で仕留めたい。まぁ命あってのなんとやら、出し惜しみはしないけど

 

準備が終わって、いざと思ったら索敵スキルが新たに8体の敵を発見した

その位置は私の後方、今通ってきた道で、退路を塞がれてしまったらしい。これもよくあることだ。条件付きでの敵出現、今回の場合はプレイヤーが通って一定時間が経過というところか。これはトラップではないらしく、探知には引っかからない。恐らくトロールとの戦闘を避けるために戻ってから別の道に行こうとしたらちょうど敵が出現して囲まれるという寸法だろう。いやらしい造りだ。50階層超えてからこんなのばっか・・・このダンジョンの製作者性格悪すぎ・・・

 

この配置だとどちらかと戦闘を開始すると戦闘音でもう片方にも気付かれる。トロールと戦闘しつつ奥に進むしかないかな・・・

 

私は今まで以上に集中して、曲がり角の先に飛び出す

 

「ガァアアアアアアアアアアッ!!!」

 

私を発見したトロールは大声を上げて持っている棍棒を振りかぶるが、私が先に攻撃を放つ

私は両手に持った8本のナイフを1回の動作で全て投げた

 

ユニークスキル『多段投げ(ダブルスローイング)』。割とポピュラーなユニークスキルで、発現条件も判明しているので投擲使いならほぼ全員が持っていると思われるスキル。しかし私のように両手で8本を投げる人はいないだろう。アスナたちに聞いても片手4本までの人しか知らないって言ってたし・・・私は人の前では投げれないから両手で8本投げれると言っても信じてもらえないし、他の人は片手4本が最高だと思っているのだろう

 

私が投げた8本のナイフはトロールの左胸に集中して刺さり、トロールの左側が仰け反って後退、運良く攻撃も中断され、私はダッシュでトロールの横を抜けて通路を奥に進む

 

トロールは鈍足なのでこのまま振り切ってしまおう・・・相手するのメンドイから・・・

 

私はトロールの足に向かって1本投げて機動力を削ぎ、トロールを振り切った

 

さて、振り切ったとはいえ追いかけて来ないわけじゃない・・・ウカウカしてられなくなっちゃったな・・・

 

 

 

 

 

さっきこのダンジョンの製作者は性格が悪いと言ったけど訂正する。最悪だ

結局あの先には小さな宝石が2つだけしかなかった。大赤字もいいとこだ

イラッと来てトロールとオーク鬼8体を多段投げで倒した私は悪くない。それでさらに赤字が増えたけど・・・

 

あのダンジョンの探索は続けるが補給のために、私は最近拠点を置いている50階層にある町に戻った

 

「もう最悪ですよ・・・あれだけやっててあったのがこの宝石2つですよ?ひどいと思いませんか?父さん」

 

私は町の中で買い取り商をしている父さんことエギルさんに愚痴をこぼす

エギルさんは高レベルの斧使いで面倒見がよく、中層プレイヤーの育成に力を入れている人

お世話になっている人は『おやっさん』とか『親父』とか呼んだりするけど、私の場合は『父さん』と呼んでいる。これには私のリアル、佐藤真希の生い立ちに関係がある

 

私の両親は小さい頃に事故で死んでいてもういない。私を育ててくれたのは父方の祖母で、男親というものを私は知らない。お婆ちゃん元気かな・・・?

 

「ま、そんな日もある、とでも思ってないとやってられんさ。そこまで出せんが一応買い取ることは買い取るが・・・どうする?」

 

宝石を鑑定しながら父さんが言う

 

こんな小さな宝石じゃ今日の赤字には焼け石に水だしな・・・

 

「うーん・・・やめておきます。こんな小さな宝石だと買い手つかなそうですし」

 

「そうかい。ホラ」

 

父さんが宝石を返してくる

 

何かの材料になるかもしれないし、あとでリズベットにあげて、ナイフを値切るのに使おう・・・

 

「じゃあまた来るね、父さん」

 

「おう」

 

そう言葉を交わして私は店を出ようと扉を押して開ける

 

「おっと」

 

「あ、ごめんなさい」

 

扉の向こう側に誰かいたらしく、驚いた声が聞こえてきたので、私は反射的に謝る

 

「マーキィ・・・?」

 

「え?」

 

驚かせてしまった人に名前を呼ばれて、私はその人の顔を見る

その人は・・・

 

「キリト・・・」

 

1年以上ぶりとなる最愛の人だった

 

「ひ、久しぶり、だね・・・」

 

「う、うん・・・」

 

「「・・・」」

 

頭の中が真っ白になってて言葉が出てこない

キリトも同じような状態のようで、頬を赤くしながらポリポリと頭の横を指で掻いている

 

「おーい、店の入り口でラブコメはやめてくれー。客が来なくなるから」

 

父さんから棒読み気味に注意の言葉か飛んでくる

私たちはいそいそと店に入った

それからステータスを見せ合いながら少し話したりした

 

「じゃあそろそろ行くね」

 

「うん、また」

 

私はそう言って席を立ち、キリトは手を振って応じる

 

「あ、そうだ。再会の記念にこれあげる」

 

私はそう言って、ダンジョンで手に入れた小さな宝石2つをキリトに渡した

 

「ありがとう」

 

そう言うキリトに抱きつきたくなる衝動を堪えて、私は店を出ようとする

 

まだ・・・まだ私は、キリトの隣に立つ自信が無い・・・

 

「ずっと・・・」

 

「!」

 

背後から聞こえるキリトの声に私は思わず足を止める

 

「ずっと待ってるから・・・」

 

背中でその言葉を受け取り、私は涙が出そうになるのを必死で堪える

そして・・・

 

「うん!待ってて!」

 

いつか絶対、あなたの隣に帰るから・・・

 

振り返って笑顔でそう返した

 

 

 

 

 

数ヵ月後、あの日渡した宝石が私とキリトの指に輝いていた

主人公設定

 

アバターネーム:マーキィ

 

本名:佐藤真希

 

ふりがな:さとうまき

 

性別:女(男バージョンの設定案もあり)

 

年齢:15歳(SAOにログインした時点)

 

 

キャラの来歴

 SAOのベータテスター組で、SAO正式開始序盤にその経験故に他のプレイヤーよりも強く、攻略組に入っていて『疾風』の二つ名で呼ばれていた。しかし調子に乗ってしまい、毒ナイフや麻痺ナイフなどの危険なものに手をつけるようになってしまう。他のプレイヤーから危険だと注意されながらも自分の腕を過信してそれらを使い続けた

 そしてとうとうある日、ダンジョン攻略中に味方に当ててしまって、そのプレイヤーはその直後にモンスターに殺されてしまう。それから攻略組を抜け、一時期はナイフを持てなくなるほどのトラウマになるが、アスナの『たとえ怪物に負けて死んだとしても、この世界には負けたくない』という言葉を聴いて少しトラウマを克服する。しかしまだ人の近くに投げることに恐怖心があり、攻略組には戻らず、ソロでダンジョンを探索してレアアイテムを探す『トレジャーハンター』になる

 同じようにトラウマを持っているキリトと通ずるものがあって、攻略組を抜けてすぐの一時期は傷の舐め合い的な付き合いをしていて、キリトに愛情を持っている(しかし一線は越えていない)

 キリトの隣に立つために下層で一から修行をし直し、以前のような武器の威力に頼った戦い方から、敵の急所を精確に狙う戦い方に変わる

 トレジャーハンターになってから、入手したアイテムを売るためにエギルと出会う。エギルの性格と真希自身の生い立ちもあって、真希はエギルを『父さん』と呼ぶようになる

 攻略組に参加しないだけで、上層階のダンジョンにも1人で入れるだけのレベルではあり、攻略組からトラップスイーパーとして参加を要請されていて、『戦闘に参加しない』という条件でたまに参加している

 

 

キャラ情報

・投擲をメインとしたシーフ系の職業(スタイル)。この戦闘スタイルの理由は他のネトゲでもシーフ系をプレイしていたから

・ステ振りは、装備要求分のみの筋力値を確保して、あとは敏捷度と器用度を7:3で上げている。丈夫さは無振りで装備補正頼り

・スキルは『投擲』『探知』『索敵』『罠師』『開錠』をメインで上げている 少し『格闘』『治療』なども上げている

・ユニークスキルとして『多段投げ(ダブルスローイング)』、システム外スキルとして『血祭り(ダーティフィーバー)』を会得している

 

 

スキル説明

 

一般スキル

・投擲:手裏剣や投擲用の短剣を投げるスキル。投擲物に毒薬を塗ることも可能

・格闘:投擲物が無くなったとき用に最低限戦えるように。ただあくまで最低限のみ

・探知:ダンジョン内でトラップや隠し扉を発見するスキル

・索敵:敵の場所や数を探るスキル。探知と併用可能

・罠師:トラップを設置したり、ダンジョン内のトラップを解除するスキル。設置するトラップはダメージを与える地雷やステータス異常を起こす麻痺罠や毒罠。マスターにはスキル経験値以外にも器用度が必要

・開錠:宝箱や扉にかかった鍵を開けるスキル。マスターにはスキル経験値以外に器用度が必要

・治療:ソロプレイヤーなのでHP回復やステータス異常回復を少々・・・

 

ユニークスキル

・多段投げ:1回で2つ以上の投擲物を投げるスキル。投擲使いには当たり前のスキル。発現条件は『投擲』スキルの経験値量とステータスの敏捷度が一定値を超えること。段階があり、片手二段投げから片手四段投げ、そこから器用度を必要とする両手を使った八段投げまである。普通の人は片手四段までだが、真希は投擲使いで唯一両手八段までマスターしている(他の人はスキルアップに器用度が必要だとは知らなくて片手四段が最高だと思っている)

 

システム外スキル

・血祭り:標的を変えながら両手で交互に投げまくるスキル。片手多段投げと併用可能

 

 

装備

武器は普通の投擲用短剣。攻略組を抜けてからは毒ナイフや麻痺ナイフは使わなくなった。(無限に投げれるオプションがついた超レア物の投げ短剣とかでもいいかも。入手はトレジャーハンターの活動で見つけたとかで)

防具は回避型なので軽鎧。補正値はいいものだがレアモノではない

 

 

真希の来歴

地方の田舎出身で、両親が事故で他界していて、父方の祖母に育てられる

田舎ゆえに娯楽が無く、小遣いを貯めてPCを買い、祖母に頼んでネットを繋いでもらった

祖母と2人暮しなので、家事スキル万能。しかしSAO内ではスキルを上げていないので全くできない

あとがき

 

アニメのPVでのアスナの台詞から書いた作品

時期は原作開始前

スキルはネトゲのレッドストーンを参考にしました

 

男バージョンだと相手はアスナですね

 

原作に入ってからの展開案をウィキであらすじ見ながら考えてた

 

・SAO編ではアスナのポジションが主人公になるだけで大きな変化無し。しかしクリア後、目覚めた真希は唯一の家族である祖母の死を知る。SAO被害者を集めた学校に通うため地方から東京の施設に引き取られるが、エギル(の中の人)が保護者になって引き取られ、エギルが経営する喫茶店に住み込みでバイトするようになる

・フェアリダンス編では、親友になったアスナを助けるためにキリトとALOの世界に入る(キリトは手伝い)

 

とりあえず考えたのはここまで

 

アニメ1話の放送前に投稿することが目標でした

 

 
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