「さ、さっきの格好は一体何なの?」
アリサちゃんからその質問を聞くまでは本当に見ていたかどうか分からなかったのですが、やはり見られていましたか。どのように言えばいいのでしょうかと私は思っていた。
しかし今の言葉では、どこまでアリサちゃんが見ていたかまでは分かりません。ディバインバスターを放つところも見られていたかもしれないし、もしくはディバインバスターの桃色の光を見てこちらに来てみたという可能性もありました。これらの場合では言い訳をするようなことは出来ませんので、仕方なく本当の事を話すしかありませんが、唯変身を解除するときの姿だけを見られたのならばまだ言い訳が通用します。出来れば後者の方が私にとって嬉しいのですが、ディバインバスターの桃色の光を見ていないという可能性はかなり低かった。かなり目立ちますしね。今回に限ってユーノ君に頼んで結界を張ってもらっていませんでしたし、私自身手っ取り早く終わらせようと余裕を持っていたので念話すらしていなかった。その余裕が今回の事を齎してしまったのですが。
さて、本当にどうしましょうか? とりあえずはどこまで見ていたか聞かないと始まりませんね。確率的に低いけど、アリサちゃんがディバインバスターを見ていない事を祈りながら。
「えっとですね…… その前にアリサちゃんどこから見ました?」
「どこからって、突然なのはが急用だと言って走り出したのをみて、それから少ししてなのはの急用が一体何かと思ってなのはが走っていた方へ走って行ったら、突然巨大な樹木が町に現れるものだから驚いたじゃない!!」
「それからどうしたのですか?」
「その後なのはが心配になって探していたら、今度は桃色の光が地上から一つの樹木に向かって飛んでいくのが見えて、気になって光が放たれた方へ向かって見たら、白い服を着ていたなのはを見つけて……」
――私の予想通り、ディバインバスターまで見られていましたか……
私は思っていた通り、アリサちゃんに見られていたという事にどうしようかと悩みます。
しかしこの時点で決めるのは早いと思い、更に質問をする事にします。この時点で私が関係していると、アリサちゃんは思っているのかどうかが私が分かりません。だから次の質問で判断しようと思いました。
「アリサちゃんはここに私が居た時、どう思っていましたか?」
「最初はどうしてこんな所に居るのかと思っていたけど、もしかしてなのはは関係しているのではないかと思ってた。そうでなければこんな所に居るわけないし、さっきの姿を見てしまえばなのはは関係していると思って……」
――やはり、そう思いましたか……
その言葉を聞いて、私はやはりそう思っていましたかと思うのだった。
私は少し言い訳を考えますが、正直相手がアリサちゃんだと難しいと思いました。
向かってきていた場所に私が居て、更に変身を解除されている事を見られてしまったら、アリサちゃんなら私が関係しているという事は分かってしまうでしょう。正直に言えないと言ったとしても、アリサちゃんは私の事が恋愛感情として好きですから気にしてしまいますし、私に付いて来る可能性があります。魔法の事をアリサちゃんに教えたとしても、ついて来る可能性はあった。しかし知っている場合ならば、自分が邪魔になるかもしれないという事は分かっているので、ついて来ない可能性があった。
しかしそれは、アリサちゃんに魔法について教えることになる。正直な所、まさかこんな所でアリサちゃんと会うとは思いませんでしたが、そもそもアリサちゃんとこんな所で遭遇する原因は元を辿れば私にあるという事です。
一年生の時のあの喧嘩。あの時の私は御神流や魔法などの事で案外精一杯でして、どのように止めたのかなんて当時はどうでもいいと思っていた事でしたので覚えていないのです。
あの時の私はアリサちゃんが私を恋愛感情として好きになるなるとは思いませんでしたし、そう考えると今回の一件もある意味私のせいなのです。突然の急用という言葉に気になるのは同然ですし、後をついて行きたくなるのは仕方ない事です。たとえ好きな人が異性でも同性でも変わりなく。そしてジュエルシードによって巨大な樹木が町に現れてしまえば、心配になって必死に探すでしょう。そこまで私の頭が回っていたら、多分ユーノ君を連れて結界を張ったでしょうね。
「それで、さっきのなのはの格好は何なの?」
私が少し考えていると、アリサちゃんがまたそう聞きました。
これ以上、言い訳をしても私にメリットはありませんね。さっきも言った通り言い訳したところで逆に邪魔になる可能性があります。それならば、本当の事を言って付いて来させない方がいいです。それならばついて来たら邪魔になるとアリサちゃんに分かって貰っていた方がよろしかった。
しかし、心のどこかで私は本当の事を言うのを回避したいという部分があった。どちらかといえば、胸騒ぎに近い感じである。要するに、ここでアリサちゃんに魔法の事を話したらこの先も何か大変な事になるのではないかという予感がしていたのだ。しかしそれは無いと思っていた。どの道闇の書事件の時にアリサちゃんとすずかちゃんには魔法の事を知られてしまう。今言おうが後で言おうがあまり変わりないと思っていたのだ。
だから私は、その胸騒ぎを否定してアリサちゃんに魔法について全て話す事にした。それが、この先私を苦しめることになるとは知らず――
「……アリサちゃんには全て話すよ。私が何をしていたのか」
「……なのは?」
アリサちゃんはよく分からないといった感じをしていたが、真面目な話だと気づいてなんとなく察したようだった。
あ、念のため他の人に聞かれるのは困るから……
そう思った私は、結界を張る事にする。実は言うと、ユーノ君と会う前に一度結界を張ってみた事があり、私も結界を張れたりする。余り魔法を公開したくないので今までユーノ君に結界を任せていたのだが、結界魔法ぐらいは大丈夫だろうと思って張る事にしたのだ。
結界を張ってからアリサちゃんを見ると、周りの人が居なくなって風景が変わる事に驚いている感じでした。まぁ、驚かない方がおかしいですけどね。
「さて、ここでなら二人で話せるね」
「これは一体……」
「これは私が魔法で張った結界の中なの」
「魔法ってあの?」
「えぇ、アリサちゃんが思っている通りだと」
私は魔法についてアリサちゃんに教えていきます。もちろん私が伏せておきたい事は話しませんが、大体な事についてはアリサちゃんに話す事にしていました。
アリサちゃんはこの世界に魔法があり、更には別の世界が存在しているという事に驚いた顔をしていました。そして多分、私がその魔法を使っている事にも驚いていたでしょう。アリサちゃんの知らないところで、私が魔法なんていう物を使っているのですからね。
「以上がこの世界の事と魔法の事です。何か気になる事とかありますか?」
全て話し終えると、アリサちゃんは何も言わずに唯立っていました。相当驚いていたようですね。
数十秒驚いたままでしたが、少しして普段の顔へと戻り、聞きたかった事を聞いてきました。
「……どうして、なのははその事を知っているの? なのはの話では、この世界は魔法の事を知っている人は居ないのでしょう?」
アリサちゃんは私が魔法について知っているのかという事を聞いてきました。
正直な所、この質問だけは私自身言うのを避けていました。タイムリープで逆行して来たなんて言えるわけがありませんし、そうなると嘘をいう事になります。アリサちゃんとこんな所で会うと想定していなかったので、どのように言おうか先ほどから悩んでいたのです。
いやちょっと待ってください。今思い出しましたけど、ユーノ君に言った時と同じことを言えば良いのでは? そうすれば別に辻褄あいますし、この先もそれで通していけばいいのではないかと思いました。全くもって架空の人物なのですけどね。
「えっと、それはね――」
だから私はユーノ君の時にも言った、別の次元世界から来た人に教えてもらって、その人は今生きてないという、全くもって嘘の事を言いました。この先もこれは使えそうですね。
「そうだったの。ごめん何も知らずに無神経に聞いちゃって……」
アリサちゃんはユーノ君と同じように謝ってきました。ユーノ君の時も思いましたが、やはり嘘の事なのにその事で悲しんでもらうと私の方が辛いです。しかし、ユーノ君と辻褄合わせるためには同じことを言わなければなりませんでしたので、そのくらいの辛さは仕方ないことかもしれません。
「そういう事で、私はこの世界に散らばったジュエルシードというロストロギアを集めるのをちょっと手伝っているわけです」
「あたしに手伝える事はないの?」
やはり、アリサちゃんはそう言ってきましたか。しかし、前はアリサちゃんの魔力は魔法を使えるほどではありませんでしたし、タイムリープをしているので私以外の事は私が介入しなければ変わる事がありません。今のアリサちゃんは私のせいで私の事を好きになってしまっていますが、魔力などが変わる事はありませんので魔法は使えないでしょう。私が本当にタイムリープしたのならば。
だから私は本当の事をアリサちゃんに言います。
「多分、アリサちゃんには手伝える事はないと思います」
「そんな……」
アリサちゃんは手伝えないという事にがっかりしていました。こうなる事は目に見えていたのですけどね。仕方ありませんね――
「けど、これを見つけたら私に連絡してくれると嬉しいです」
私はそう言って、レイジングハートの中からジュエルシードを見せます。ジュエルシードについては先ほどアリサちゃんに言ってありますので、どれだけ危険な物なのか分かるでしょう。
「う、うん。分かった!!」
アリサちゃんは私の言葉を聞くと、嬉しそうな顔をします。多分私の手伝いを出来る事があるという事に嬉しかったのでしょう。タイムリープする前のアリサちゃんならばこのような答えはなかったかもしれませんが。
私はそれを聞いてから結界を解いて、アリサちゃんに近づきます。
「それでは、一度翠屋にもどりますか」
そう言うと、アリサちゃんはいつも通り私の腕を掴みます。私はその事に苦笑いしましたが、いつもと違って何故か気分がいいです。
そう思いながらも、私は翠屋への方向へ戻るのでした――
《なのは!! さっき結界が張られていたけど……》
……ユーノ君の事を忘れていました。
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新暦85年、高町なのははある任務の途中で死亡する。
任務は全て嘘であり、全てはなのはを殺害するための一部の管理局員による計画だった。
なのははその計画通りに殺されるが、その任務に向かう途中に偶然何故か落ちていた拾ったジュエルシードによって、なのははタイムリープをするのだった!!
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