No.445512

IS インフィニット・ストラトス ~転入生は女嫌い!?~ 第五話 ~織斑 千冬の懇願~

Granteedさん

第五話です。

2012-07-04 16:40:16 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:15416   閲覧ユーザー数:14692

クロウは、学校はいきなり始まる物だとばかり思っていたがそうではなく、実際は三日間の余裕があった。そこでクロウは三日間、情報収集とブラスタのスペックを調査することにした。幸い通された部屋には、パソコンがありそれを使うことも出来たので情報収集の方は問題なく行った。だがブラスタの調査の方はそうはいかなかった。山田先生はデータの閲覧が出来ないと言っていたのだが、クロウが閲覧してみると簡単にデータが見れるのであった。

 

「(俺が簡単に見れるって事は生体認証機能でも付いているのか?だが元々ブラスタにはそんな機能は付いていないし・・・。これも転移の影響の一つなのか?・・・更に今の状態はまるでリミッターでも付いているみたいだ。妙に出力が低いし、武装も機動兵器だった頃と比べると少ない。これがISの普通のスペックと言われればそれまでだが・・・)」

 

とクロウが調査を進めているともっと気になる点が。

 

「(ん?この単一仕様能力(ワンオフアビリティー)・・・スフィアだと!?まさかこれも変化しているのか?まあ実際に起動してみるまではわからねえか・・・)」

 

というと一旦調査を終了し、ベッドに寝転がるクロウ。元々二人部屋を一人で使っているだけあってとても広く感じる。連日の情報収集で疲れていたクロウはすぐに眠りに落ちていった。

 

(数時間経過・・・)

 

「(コンコン)ブルースト、私だ。食事を持って来たぞ」

 

 

クロウはドアをノックする音で目が覚めた。時計を見ると七時三十分。いつの間にか夕食の時間となっていた。クロウとしてはこの寮の中の食堂に足を運んでもいいのだが、織斑千冬から「混乱の元となるので部屋から決して出るな」と言われていた。なので朝昼夜の三食は全て織斑か山田、どちらかが持ってきてくれていた。

 

「ああ、いいぜ。入ってくれ。」

 

と声を掛けるとドアが開き、夕飯が乗ったトレーを持った織斑 千冬が入ってきた。

 

「いつもすまないな」

 

「ふん。貴様が外に出て問題になるよりはマシだ」

 

と言うと部屋に設置されている机にトレーを置き、クロウの前に立つと

 

「すまない、今日は少し話があるのだがいいか?」

 

正直クロウにとっては千冬の様な女性に限らず、嫌いな女と同じ空間にいることは苦痛意外の何物でもなかったが千冬には借りがあるので無碍にもできず、渋々といった様子で

 

「(いつもだったらすぐに出ていくのに)・・・いいぜ、なんの話だ?」

 

承諾した。すると千冬は椅子を自分の所に引き寄せると唐突に話を始めた。

 

「お前、今度入学してくる男子、織斑 一夏の事は知っているか?」

 

「そりゃあ当たり前だろう。情報を集めている時にいの一番で出てきたぜ。」

 

「まあ、それ程珍しいからな、男のIS操縦者というものは。」

 

「それでその俺の未来のクラスメイトがどうかしたか?」

 

「もう気づいているかもしれないが、その織斑 一夏は私の弟だ」

 

「・・・。ああ、気づいていた。織斑という苗字も珍しいがそれ以前にあんた達、顔立ちがそっくりだぜ」

 

「話というのはその弟の事だ。」

 

すると千冬は意を決した様に顔を引き締めるといきなり

 

「私の弟を護衛してくれないか・・・」

 

と椅子に座ったまま、深々と頭を下げた。

 

「お、おい何やってんだよ!顔上げろ!!そんで説明しろ!なんでいきなりそうなる!?」

 

これはさすがのクロウも驚いたようで女嫌いなどどこに行ったのやら、慌てて声を掛ける。すると千冬は訥々と語り始めた。

 

「・・・この世界に転移してきたばかりのお前にはわからないかもしれないが、男のIS操縦者とはお前が考えている以上に問題なんだ。元々ISとは何故かはわからないが女しか起動出来ないというものだった。それが当たり前だった・・・」

 

「なるほど、あんたの弟さんがその”当たり前”をぶち壊した、と」

 

千冬は大きく頷くと話を続けた。

 

「一夏自身は全く理解していないが、世間での一夏の重要性は計り知れない。あいつがISを動かせると判明してから私の所に織斑 一夏さんを検査したい、という依頼が何百件来たと思う?」

 

「話が見えてきたな。何処かの馬鹿が誘拐やらなんやらで無理やり弟さんを検査する事を恐れてあんたは弟さんの身を案じて一番近くに行けるであろう俺の所に来たって訳だ。」

 

 

「そうだ。IS学園に所属している限りどこの権力からも干渉されないが、仮に誘拐でもされれば一生モルモットだろう。私は一夏に平穏に過ごして欲しいんだ。」

 

「全くあんたは少し弟さんを心配しすぎじゃないか?」

 

クロウがそう言って笑って返すが千冬は至って真面目な顔で

 

「・・・実は一夏は一度誘拐された事があるんだ。」

 

「!!・・・続けてくれ」

 

「あれは私が第2回モンド・グロッソ決勝戦の当日に起きた・・・」

 

 

千冬は全て話した。一夏が誘拐されて決勝戦を棄権してまで助けに行ったこと、一夏は無傷で救出出来たものの情報をくれたドイツ軍に借りを返すため一年程ドイツ軍で教官をしていた事を。

 

「・・・。ようやく納得がいったぜ。あんたについて調べた時、その不可解な事件が一番最初に出てきた。あの棄権はそういう理由だったのか。」

 

「ああ、そういうことだ。過敏になっていると笑うか?だがなんと言われようがもう私は二度と一夏を危険に晒したくないんだ。学園の中だけでもいい。頼む・・・」

 

そこまで言うと千冬は痛みを我慢するかの様に唇を噛んで押し黙ってしまった。

 

「・・・誰が笑うって?」

 

「・・・何だと?」

 

「家族を想う気持ちっていうのは理屈じゃねえんだよ。どんな事をしても守りたいって思うのが普通なんだ。そんなになるまで弟さんを心配しているあんたは立派だ。誇ってもいい」

 

「それでは・・・」

 

「ああ、その依頼、受けてやるさ。約束する、俺は織斑 一夏を俺の全力で守る。あんたに対する借りがあるからな、依頼料は無料

ただ

でいい」

 

「すまない。感謝する。」

 

そう言うと千冬はもう一度深く頭を下げた。

 

「だから、そういう事はやめてくれ!背筋が痒くなる・・・」

 

と言うと今度はクロウが押し黙ってしまった。

 

「分かった。おっと、話しすぎてしまったな。」

 

その言葉に釣られてクロウも時計を見ると話始めてもう三十分以上経っていた。

 

ると千冬は席を立ち、ドアへと歩いていった。

 

「明日から学園生活の始まりだ。今日は早く寝ておけ。」

 

「この年になってそんな台詞を言われるとは思わなかったぜ」

 

「お前は23歳のつもりかもしれんが、外見は立派なガキだ。仕方ないだろう」

 

と言いつつドアへと向かう。するとクロウが思い出したかのように

 

「そうだ織斑、最後に一つ質問いいか?」

 

「なんだ?」

 

「なんで俺なんかにそんな頃事を頼みに来たんだ?俺がもし弱かったりそんな約束平気で破る様な人間だったらそんな依頼成立しないぞ?最悪弟さんが誘拐される原因になりうる」

 

「ふむ、まず一つ目の条件だが一番最初にあった時、お前私の拳を躱しただろ?あれでお前の実力は私と同程度、もしくは私より強いと言う事になる。二つ目の条件は簡単だ、お前は言動はチャラチャラしているが、内側には一本芯が通っていると感じた。何より私の直感を信じた。この説明では不服かな?」

 

「まったく、高く買ってもらっているんだな」

 

「私は人間観察眼には自信があるのでな。あながち外れてはいないだろう?」

 

「まあ、そういう事にしておいてくれ」

 

「明日は朝7時30分に朝食と制服を持ってくる。その後8時30分に迎えに来る。それまでに準備を済ませておけ」

 

「ああ、わかったよ」

 

「それでは、な」

 

そう言うと織斑はやっと出ていってくれた。

 

「(まったく驚きの連続だったな)」

 

あの織斑姉弟の身の上についてはある程度情報収集の時に分かっていたが、それ以上に崖っぷちの様だ。

 

「(姉のほうはともかく、弟の方は危険すぎる。下手すれば一瞬で世界のバランスが崩れる程の、だ)」

 

クロウは織斑 一夏を護衛する、という任務を胸に抱きながら眠りに落ちていった・・・


 
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