ラミナ市内、イーストラミナ駅前にある中華料理店『
「さ、ここだぜ」
この店の前に、二人のロボットがやってきた。
一人はK-9隊5号機の
二人は事あるごとに拳を交えて力比べをし、そして事あるごとにこうして一緒に食事をする事があるのだ。
「よぉ、リンリンのねーちゃん!」
「ウーじゃないか、それにヴィルマー警部も一緒かい?」
「ああ。席あいてるか?」
二人は早速、カウンター席の隅に案内された。
そして二人はいつものように、食事を楽しんでいたのだが、ふいにヴィルマーが尋ねた。
「で、お前さんはなんでK-9隊に入ろうと思ったんだ?」
「まあ、それを話すとなると…オレの生い立ちにも関係してくるって言うのかな、そっからちょっと長い話になるんだが…」
ウーは
「ま、この腕や脚を見れば大体想像がつくだろうケド…オレはもともと軍用として設計されたロボットなんだ」
「なるほど、女にしちゃガッチリしてると思ったぜ」
「まあ、ボディ表面が装甲だからな。最悪マッパでの戦闘も想定されてるらしい…」
「それで、軍を辞めて警察に下ったっていうのか?」
「いや…そもそもオレ、軍人にはなってないんだ」
と言うと、ウーは目の前の
「ちょっと待て、それじゃ軍用ロボなのに軍にはいなかったッてことか!?」
驚いた様子で、大声をあげるヴィルマーに対し、ウーは落ち着いて答える。
「まあ、本来なら採用されてるはずだった。でもオレがロールアウトする頃にはさ…世間は軍縮だ軍縮だって言って、軍の予算も苦しかったらしい。それで採用は見送られたらしいんだ」
「しかしそんなことをしたら…」
「お察しの通り…もし採用されてれば、オレの製造コストは軍が肩代わりしてくれてるはずだった。しかし世の中が軍縮と合っちゃそれもままならねー…」
「じゃあまさか…」
「そう…オレは製造コスト分の借金を背負う羽目になっちまったんだ。しかしもともと戦闘用だからあまりたいした仕事は出来そうにねえ…」
いつしか、ウーからはいつものおちゃらけた表情は消え、鋭い眼光が光っていた。
ヴィルマーは、それをただ黙って見つめているしかなかった。
「それでもコストをどうにかしなきゃ生活できねえ。だからオレは、必死で仕事を探した…でも、どれも上手く行かなかった…」
「…そんな…」
「何度も仕事を経験してはクビになり、また職を探しては面接で蹴られ…なら、オレはこの道のプロ。格闘家を目指す事にした」
「格闘家だって?」
「もともと戦闘用だから、それが一番適してるんじゃないかなって思ったのさ。それはもうファイトの連続だった。腕がもげた事もあったが…稼いだファイトマネーでコストだけはなんとか返すことが出来た」
「そいつはよかったじゃねーか、じゃあなんで…」
と、ヴィルマーが尋ねると、ウーは目の前の炒飯を一口ほお張りながら答えた。
「コストが返せたからといって、生活費まで十分ってワケじゃねえ…極貧なのは相変わらずでさ。稼いでは消え稼いでは消え…自転車操業に近い状態だった。それでもっとちゃんとした仕事を探そうと思って、職業紹介所に行った…その帰りのときだった」
2年前。
その日、職業紹介所から肩を落としガックリとうなだれた様子でウーは出てきた。
「はぁ…結局いい仕事見つかんなかったな…なんでオレ、戦闘ロボなんかに生まれたんだよ…」
すっかり気を落としていたウーは、気がつけばラミナ市内の跨線橋の上に来ていた。
「…いっそ、貨物列車にでも牽かれて、元の形もわかんねーほどバラバラになっちまおうかな…」
と、呟きながら橋の欄干に手をかける。彼女は今まさに、自殺する寸前のところまできていたのだ。
(……オレ、きっとこの世界には必要ないのかもな…)
そう思いながら、橋から飛び降りようとしたまさにその時である!!
「…強盗だ!銀行強盗だー!!」
遠くから叫ぶ声を聞いたその瞬間、ウーの脳裏にある思いがよぎる。
(ちょっと待てよ…それでいいのか超 五華。オレはこの拳に可能性を見つけようと誓ったんじゃなかったのか…!いまここで死んだら…すべてムダになっちまうじゃねえか…!)
…気がつけばウーは走り出していた。冷却システムが追いつかず、
そして、すかさず強盗犯の姿を捕らえると…相手のみぞおちに向かって正拳突きをかましていた。
一撃を受けた強盗犯は思い切り倒れた。ウーはその様子をしばらく睨みつけていたが、
「…ぐっ…!」
このときのオーバーヒートにより、もはや立つこともままならず、やがて通りの中央に倒れこんでしまった。
「へへ…オレ、死ぬのかな…。でも、こんなオレでも、最期に役に立てた…かな…」
と、呟いていたウーの元に、手を差し伸べる女性型ロボットが一体。
「強盗犯を倒したのは君か?」
「…あ、アンタは…?」
ウーの問いに、そのロボットはあるものを取り出した。警察手帳だ。
「…私はファンガルド・プラネットポリスのエルザ・アインリヒト警部だ。犯人逮捕への協力、感謝する」
「ヘヘ…感謝か…オレにはもう、何もねえのに…」
「?」
「こんなオレにも感謝してくれるヤツがいたとはな…」
と、涙ながらに笑いを浮かべるウー。
「一体何があったんだ?」
「軍用ロボとして生まれたのに採用されず…メシ食う金もなくさまよい続けた。自殺まで考えた。挙句には限界性能無視して突っ込んでこのザマだ…」
その言葉を聞いたエルザは一息つくと、再び手を差し伸べた。
「…そうか、辛かったんだな。もしよければ、我々の元で働いてみないか?」
「…アンタと…一緒にか…?」
「そうだ。このたび我々は、特殊部隊を結成する事となった。そのためには君のような戦力が必要なのだ」
このときウーは思った。
こんな自分でも必要としてくれる者がいたのかと。
ならばこのチャンスをムダにはすまい、この人についていこうと。
「…超 五華…ウー、と呼んでくれ……。でもその前に…」
「?」
「ロボットの医者いねえかな…?」
「と、いうわけで今のオレがあるってワケだ」
「なるほどな…」
と、話し込んでいたウーとヴィルマーの背後から、忍び寄る影が一つ。
「ふうん、結構な思い出話ですこと」
「ああ、アンタも感動し……」
ウーは笑顔で後ろを振り向いて…
…驚愕した。なぜなら、その影の正体は、ラミナ警察署会計課の課長、サラ・セイバーズ警部だったからである。
「まーたやってくれたわねウー。トレーニングルームの修理代…キッチリ払ってもらうから覚悟なさい」
「いやいやいやあれはほんの不慮の事故で…オレの苦しい過去に免じてカンベンしてくれーっ!!」
「過去は過去、今は今!それにトレーニングルームの破損だって一度や二度じゃないでしょーが!!」
「いーやーだー!見逃してくれー!!」
必死でサラから逃げ回るウー。その様子を見ていたリンリンは、一人呆れ果てていた。
「…まったく、何やってんだいあのコは…」
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なぜウーがK-9隊に入る事になったのか。
その秘密が今明かされる!
◆出演
ウー(http://www.tinami.com/view/379510 )
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