No.439969

【獣機特警K-9】Friend over the CROSSHAIR

残念成分が(ほんの一瞬だけ)ログアウトしました。
ヴィルマーさん http://www.tinami.com/view/422522
ナインチョッパー http://www.tinami.com/view/388920
エルザ隊長 http://www.tinami.com/view/375135
アレク http://www.tinami.com/view/376898

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2012-06-21 02:23:18 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:941   閲覧ユーザー数:829

「ラミナシティ・サンエンジェルズビルにて武装テロリストの立てこもり事件発生。K-9隊は機動3課と共同で鎮圧に当たれ。なお、近隣にスナイパーの潜伏が考えられる。注意せよ」

「了解。K-9出動!」

 エルザの命令で、K-9のメンバーは一斉に散った。

 アレクは、専用ヘリのナインチョッパーに乗り、空へと舞い上がる。ナインチョッパーは自動操縦だ。

 激しく揺れる高速ヘリの機上からの狙撃は、簡単ではない。だが、アレクには、それをやれる技術があるのだ。

「こちらアレク。現場上空に到着した。現在、敵スナイパーは発見できず。引き続き周囲を警戒する」

「了解」

 ビル入口前広場では、K-9を含めた警官隊が、突入のタイミングを図っている。だが、敵の抵抗が激しく、また、スナイパーを警戒し、なかなか踏み込めずにいる。

「クソッ! ラチが開かねえ! 野郎ども! 突入すっぞ! 俺についてこい!!」

 しびれを切らせた機動3課隊長、ヴィルマーが叫んだ。軍用マシンガンを軽々と担ぎ、広場を突っ切ってビル入口へと走り込もうとする。

 次の瞬間。

 光の弾丸が、ヴィルマーの肩を貫いた。

「ぐあっ!?」

 オイルを血のように流し、その場に倒れこむヴィルマー。

「スナイパーだ!!」

「隊長が撃たれた! ヴィルマー隊長が撃たれた!!」

 悲鳴のような通信の声。

「くそっ! どこだ…!? どこにいる…!?」

 ナインチョッパーの機上で、アレクは必死にスナイパーを探していた。ライフルを構え、そのスコープの先に敵の影を探す。

「…いた!!」

 ついに、アレクのアイカメラが、巨大なライフルを構えるスナイパーの姿を捉えた。

「対ライドアーマー用狙撃ライフルかよ…! あれに当たって生きてるとは、ヴィルマーのおっちゃん、よほどツイてるな」

 アレクは独り言をつぶやいた。

 と、その時。ヘリの接近を察知したのか、スナイパーがこちらを向いた。

「…!?」

 アレクの目が見開かれた。

 敵スナイパーは、ユキヒョウ型のロボットだった。冷酷そのものの瞳で、スコープ越しにアレクを見据えている。

 アレクが驚いたのは、その男が、アレクのよく知った人物だったからだ。

「ヴァシーリ…どうしてお前が…!?」

 と、ナインチョッパーが機体を傾けると、大きく旋回した。一瞬、ユキヒョウ型ロボットがビルの視覚に隠れる。次の瞬間、敵スナイパー…ヴァシーリは、その姿を消していた。

「…」

 言葉を失うアレクを乗せ、ナインチョッパーはその場を離れた。

 

 結局、ビルに立てこもったテロリストは、突入したK-9隊と機動3課により、制圧された。

 

 その夜。ラミナ警察署近くのバー。

「ここ、いいですか?」

 エルザが顔を上げると、そこには。

「アレク」

 アレクは黙ってスツールに腰を落とした。

「昼間はすみませんでした。俺の判断ミスで、仲間を危険にさらしてしまった」

「そのことか。あれは君だけの責任じゃない。ヴィルマーも無事だった。そう自分を責めるな」

「…」

 答えずに、アレクはウェイターに注文を告げた。

「ウォッカ。ストレートで」

「おい…?」

 さすがに驚くエルザ。

「俺にだって、酔っ払いたい時くらいありますよ」

 アレクは、どこか他人ごとのように微笑んだ。

 運ばれてきた透明な強い酒を、アレクはほとんど一気にあおった。そして、やや乱暴にテーブルにグラスを置く。

「…シュニードルフオリンピック選手村・北3号館」

 独り言のようにつぶやくアレク。エルザは思わずアレクの顔を見た。

 その建物の名前は、エルザも忘れようがなかった。

「シュニードルフオリンピック選手村占拠事件…!」

 3年前のことだ。ファンガルド北部の村、シュニードルフで開催された冬季オリンピックの選手村に、テラナー系移民排斥を訴える、過激派テロリストが立てこもった事件だ。

 突入した警官隊とテロリストの間で壮絶な銃撃戦となり、民間人を含めて多数の死傷者が出た。

 この事件が、凶悪犯罪を専門的に扱うK-9隊設立のきっかけにもなったのだ。

 そして、エルザ自身も、突入した警官隊の一人だったのだ。

 選手村北3号館は、事件の中でも、最も激しい戦闘が行われた建物だった。

「俺たち、北3号館にいたんすよ、その時。選手として」

 アレクの言葉には、どこか懐かしささえこもっていた。

「俺のダチ、ヴァシーリっていうんですけど、ユキヒョウ型のロボットがいてね。俺と同じバイアスロンの選手で、そりゃあ強かった。俺よりも何倍も。あいつにはナタリアって妹もいました。可愛い子だったなあ」

「アレク…」

「北3号館で、俺たちは銃撃戦に巻き込まれたんです。それで…」

 アレクは言葉を切った。

「ナタリアちゃんが撃たれて。…助かりませんでした、彼女。電子頭脳[アタマ]に深刻な損傷受けてて」

 2杯目のウォッカを、アレクは一息に飲み干した。

「俺がK-9に入ったのって、ナタリアちゃんの敵討ち、みたいな感情があったってことは確かですね。手垢ついた言い方ですけど、もう誰もナタリアちゃんみたいな目には遭わせたくない、っていうか」

「…」

「事件の後、ヴァシーリは、姿を消しました。誰にも何にも言わずにね」

 アレクは、エルザをまっすぐ見つめた。鋭く冷静な、スナイパーの瞳だ。

「昼間、あの現場にいたスナイパーはヴァシーリです。間違いありません」

 エルザは息を吐き、尋ねた。

「スナイパーは一瞬の判断を要求される。もし、次に彼を照準(クロスヘア)に捉えた時、君は引鉄(トリガー)を引けるか?」

「はい」

 アレクはきっぱりとうなずく。

「あいつの心は、まだあの北3号館をさまよってるんです。それを助けだせるのは、俺しかいない」

 アレクは立ち上がった。

「…俺らしくない話をしちまいましたね。このことはご内密に。特に、フィーアちゃんにはね」

 片手を上げて、アレクは店を出ていった。

「…アレクめ。ちゃっかり支払いを私に押し付けていったな」

 


 
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