No.439059 IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 番外短編 光輝の奥底の意識きつね@らんさん 2012-06-18 22:55:33 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2400 閲覧ユーザー数:2373 |
これは光輝の奥底に閉まっている部分の物語。アムロが覗いた光輝の奥底にある過去の一部を見てみよう。
僕は昔の記憶があんまりない。覚えていると言えば家族が居たという事実だけだ。それ以外は何も覚えてない。僕自身の本当の名前も家族構成も研究所に連れて行かれる前に居た友達のことすらも……。
僕が研究所に連れて行かれたのは他の人とは段違いに直感や空間認識があったからだ。幼い僕はそれを気にしてはいなかった。その能力はアムロさん曰く、ニュータイプ--そんな能力があったからである。
僕はある日、両親と病院に行ったときに医師に何かの注射をさされていたのが最後の記憶だ。あの時の僕は確か……4歳か5歳ぐらいだったと思う。自分では知らない何か病気にかかっていたから両親と一緒に病院に行くんだなと思ったぐらいだったんだろう。
そして目が覚めれば、知らない部屋に居た。二つのベット以外は何もなく、コンクリートで作られた8畳ぐらいの部屋に居た。
その時の僕は此処がどこなのか、両親はどこに行ったのか怖くなって泣いた。そんな時に部屋に入ってきた子供が一人。
その子は見た目は何ともないだろうけど、凄く痛がっている感覚は伝わった。でも彼女は僕を見てすぐに微笑んだ。それは今ある未知の恐怖を取り除いてくれるのに十分だった。
その子とはすぐに仲良くなった。その子は女の子で僕より……一歳か二歳年上だったと思う。あんまり詳しくは覚えていない。
彼女が言うにはここは異常な能力を持った子供が集められている研究所で、場所は分からない。僕たち以外にも同じ年ぐらいの子が何十人もいるとか……。
この時に僕は察した。昔から以上に感が良かったこととかが両親にとっては嫌だったのだと……。僕は嫌われていたのだ。僕はそのことも知らずに両親と居たのだ……。じゃあ今まで楽しかった思い出も全て嘘だったの!? そんな気持ちが僕の中に募り、また泣いてしまった。でも彼女はそんな僕の頭を撫でながらこう言った。
「思い出は嘘をつかないよ。その思い出が君を強くするの。だから泣かないで」
彼女のその言葉はとても心地よくて、まるで大好きだった両親に思えて、そのまま彼女にずっと撫でられてたね。
僕も研究材料として検査をされる日々が始まった。頭に変な機械をつけられたり、着ている服を全部脱がされ体の隅々まで調べられたり……同じ部屋の子以外にもできた友達を目の前で殺したり! 始めはそれが怖くて泣きじゃくってた。でも泣くとすぐに殴られる。そんなことを繰り返していると、感情を表すことができなくなってくる。僕はもうそれこそ人形になりそうだった。
でも彼女の存在が僕を救ってくれた。死にそうな僕の心をギリギリのところで彼女が助けてくれる。部屋に戻った際、その度に僕を抱きしめて慰めてくれる。僕は何も彼女に反応できなかったけど、僕はまだ人間でいられた。
研究所に来て一年ぐらいだろうか? 彼女は脱走をしようと提案してきたのだ。過去にも何回かしようとした子がいたけど、全員つかまって薬漬けにされたり、犯されたり、最終的には殺される。
僕はそれに賛成した。リスクは大きいけど助かるかもしれない、そんな小さな希望を抱いて……。
僕たちはそれを実行した。いつも定時に来てくれる看守を扉を開けたところで死角から彼女が殴り気絶させ、そのまま逃走した。この時の彼女は何か感覚が違った。詳しくは覚えていないけど、いつもは優しさを感じるのにその時だけ、狂気を感じたからだ。今思えば、なぜ彼女がここに連れてこられたのか聞いたことがなかった。
そんなことを聞くのは僕を助けてくれる彼女に失礼だったから聞かなかったと思う。そこもあまり覚えていない……。
話を戻そう。僕たちは見つかりそうになりながらもなんとか逃走を続けていた。僕自身、どこから人がくるとか、ここは安全とか分かるので大人たちには見つからずにいたのだ。
そしてあと少しで研究所から逃げれると思った矢先、油断していたのだろう、僕は側面から現れた大人に気付きことができずに捕まったのだ。だけど彼女は僕を捕まえた大人に戦闘を仕掛けて相手の油断しているところを突き、助けてくれた。しかし、今度は彼女が捕まってしまった。彼女は「先に行って! 必ず追いつくから!」と言って僕に逃げるように言った。でも僕は彼女を見捨てることができなかった。でも僕には大人と戦って勝てるほど強くもない。迷っているうちに大勢に大人が来るのを感じた。
「何を迷っているの!? 早く逃げなさい! 君だけでも--」
僕は……彼女を見捨てて逃げてしまった。
僕は彼女を見捨てたのだ。僕に力があれば彼女を助けることができたかもしれないのに……。でも僕は逃げたんだ! 僕は……彼女を見殺しにしたんだ。
なんとか逃走に成功した僕は走り続けた。遠くへ、誰も来ないように遠くへ……。
そして力尽き……倒れて自分の能力を呪い泣いた。久しぶりに泣いた。研究所に居た時は彼女にも感情を出せなかったのに。
僕はそのまま死にたかった。でも僕がそう望まなくともそうなりかけていた。彼女のところに行ける。そう思うと死が心地よく感じた。
でも僕は助けられて、今、此処に存在している……。
今ではたくさんの友達もできて、感情も昔とは比べ物にならないくらいになった。でも僕は今でもこの時の記憶を思い出す。嫌なことは忘れられない。その通りである。
僕はこの過去からは逃げたくても逃げれない。いつまでも過去に囚われている。誰か助けて……
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本編から外れてこんなものを書いてみました。もちろん、本編も書いていますよ?
今回は光輝の奥底に閉まっている過去について書いてみました。
短いです。