No.438830

ボケ娘に告白されました! 白鳥飛翔の告白

スーサンさん

ここらへんで過去のキャラをもう一度出そうかな?
候補としては古優リムかな?

2012-06-18 10:07:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:601   閲覧ユーザー数:596

「アナタ、生徒会に入りなさい!」

「はひ?」

 いきなり校内放送で生徒会室まで召喚されると俺は訳のわからない命令をされた。

 白鳥飛翔(しらとりひしょう)。

 ウチの学校の生徒会長で「デキる女」だ。

 会長就任以来、さまざまなマニフェストを成功させた、すごい人でもある。

 しかも、「デキる」だけじゃなく、容姿もこれが素晴らしい。

 モデルのように整った顔に胸は小さいながらプロポーションが取れ、抜群のスタイルを持っている。

 そのスーパー生徒会長が俺を呼び出して、いきなり、「生徒会に入れ」だ。

 理解しろというほうが無理な話である。

 固まっている俺に会長は顔を覗きこんだ。

「アストロンでもかかったの?」

「それは魔法です!」

 あ、ちょっとだけ、喋れるようになった。

「いきなりどうしたんですか? 人を呼び出して?」

「今、言ったわよ」

「いきなり、「生徒会に入りなさい!」じゃ、わかりません!」

「生徒会って言うのは生徒たちの代表になって、学校行事や部の予算の申請などの」

「それはわかってます! 俺が言いたいのは」

「胸のサイズは八十以下だけど、美乳よ!」

「そんな話はしてません!」

「意見箱を開けて、気付いたらヘンテコなバトルにはならないわよ!」

「それはめだかの学校です!」

「会長キックは譲らないわよ!」

「それはときめいてる学校の話です!」

「裸と刺繍されたTシャツってどこで買えばいいのかしら?」

「それもときめいてる学校の話です!」

「生徒会って、なんか、エッチな響しない?」

「しません!」

「みんな、もう帰ってるから、大丈夫よ」

「なにが大丈夫ですか!」

 息を整えた。

「で、なんで、俺が生徒会に入らないといけないの?」

「実は先日、うちの副会長が転向しちゃってね!」

「転校でしょう! ポジション替えみたいにみたいに言わないでください!」

「新しい副会長が急病になっちゃって」

「急務です! なんですか、入院したんですか!?」

「暇そうな人間を考えたら君が出たの!」

「暇は余計だ!」

「ウチの学校は生徒会長と副会長の承認を得て初めて、学校行事が出来るの!」

「知りません!」

「今、知ったじゃない!」

「屁理屈こねるな!」

「なってくれれば、お礼はするわよ?」

「お、お礼って?」

「私の胸を触っていい権利を」

「お邪魔しました!」

「あ~~嘘、嘘! 本当は遅刻したときの口聞きを」

「現在に至るまで、無遅刻無欠席です!」

「これでつれないなんて!?」

「手に持ってる本はなんですか?」

「私の聖書(バイブル)!」

「某ネコ型ロボットのマンガじゃないですか!」

「これには社長になれば会社に遅刻してもいいんだと書いてあるわよ!」

「典型的なメガネの少年の言い分です、それは!」

「四次元なポケットと青いネコ型、どっちがほしい?」

「いりませんよ、どっちも!」

「明日から、生徒会よろしく♪」

「まだ、オーケーしてません!」

「そんなこといわず、握手握手」

「え、あ、はい?」

 ギュッと手を握った。

「好きあり!」

 バンッと机の上の書類に手が叩きつけられた。

「はひ?」

 嫌な予感がし、手を上げた。

 見事に真っ赤な手の跡が書類に残っていた。

「しゅ、朱肉、塗ってたな!?」

 真っ赤な手の跡の残った入会届けを見せ、会長はニコッと笑った。

「これで、君は名実ともに私たちの仲間だ! 頑張って、生徒会に慣れてくれ!」

「朱印で生徒会なんかに入れるか!」

「私を誰だと思ってるの?」

「誰ですか!?」

「私は白鳥飛翔よ!」

「それがなんだって言うんですか!?」

「私が黒だといえば、アナタ一人の意見なんて、簡単に黒に塗りつぶせるのよ!」

「独裁者ですか!?」

「独身者?」

「どくさいしゃです! なんですか、独身者って!? 独身貴族でも気取るんですか!?」

「それは困るわよ。私の人生設計じゃ二十三で結婚予定だし!」

「アンタの人生設計なんか知りませんよ!」

「ちゃんと式場も調べてるわよ!」

「さすが出来る女! すでにそこまで調べ済みですか!?」

「もっと、褒めて~~♪」

「褒めてません!」

「ツンデレさんね?」

「アナタは電波ですよ!」

「じゃあ、また明日ね?」

「話を聞け!」

「まぁまぁ、今日のお礼ね?」

 唇に指をチョンッとつけ、俺の頬にくっつけた。

「投げキッス♪」

「……」

 不覚にも真っ赤になってしまった。

 

 

 俺の生徒会活動が始まった。

「最初の仕事を言うわね!」

「なんなりと!」

 俺は元気よく返事を返した。

 納得はいかない部分は多数あるが、ポジティブに考えることにした。

 考えてみれば、こんな美人と一緒に仕事できるのだ。

 苦労はこの人の近くにいられる代償と思えば苦もない。

 そう、俺は学校一ラッキーな男なのだ。

「先生にオリエンテーリングを考えるよう言われてるのよ!」

「オリエンテーリング?」

「学校上げてのイベントね。ウチはこういうことに力を入れてるから」

「ウチも好きだね?」

 まぁ、そういうところが入学希望者を増やすコツなのかもしれないけど……

「私は山田さんの家かミリタリーごっこを開く予定なんだけど?」

「山田さんって誰ですか?」

「山田さんは私の近所に住んでいる、蟷螂拳(とうろうけん)の使い手よ!」

「それ、ただの一般人でしょう!」

「蟷螂拳が使えるのよ!」

「それがなんの役にたつんですか!?」

「通信教育で覚えたみたい」

「通信かよ!?」

「使ったことないらしいけどね」

「ないのかよ!」

「ケンカや決闘は立派な法律違反よ!」

「知ってますよ!」

「じゃあ、なにが言いたいの!?」

「そんな男の家にいってなにをするのかを聞いてるの!」

「山田さんは女の人だよ!」

「紛らわしい!」

「十歳の子供を持ってるわよ!」

「子持ちかよ!」

「マフィアのボスの嫁になるのが夢みたい!」

「育て方を考えろ!」

「仕方ない、ミリタリーごっこを……」

「どこの世界に学校を挙げて戦争ごっこを許す学校がある!?」

「面白いわよ!」

「もっと、平和的なイベントを開いてください!」

「校内昼寝大会とか?」

「平和すぎるわ!」

「昼寝って、気持ちいいわよね?」

「そんなコース、誰が参加したい!?」

「面白いかもよ?」

「面白いわけあるか!」

「じゃあ、残ってるのはUFOを呼び出す儀式ね?」

「なんで、それが残るんですか!?」

「未知との生物との対話は大切よ!」

「イノベイターにでも、頼んでください!」

「テロ組織?」

「それはダンボールの戦いです」

「昭和にはやったゲームね!」

「それはインベーダーです!」

「今も面白いわよね?」

「ええ。激しく同意ですけど、話を戻してください!」

「話をもともに戻す程度の能力?」

「それは東だ!」

「君って、オタクだね?」

「余計なお世話です!」

「刻が見えるといいね?」

「見えた瞬間に破滅ですよ!」

「そうだ! 覚醒人類を研究するイベントを」

「するな!」

「じゃあ、なにならいいの!」

「もっと普通に楽しめるイベントを選べ!」

「ネッシーを探す旅とか?」

「だから、なんでそんなに偏ってるんですか!?」

「偏ってないわよ! 統一されてるわよ!」

「混沌(カオス)な方向にな!」

「本当に君はなにがしたいの!?」

「普通に山に登るとかあるでしょう!」

「……」

「……」

「な、なんですか?」

「君は天才か!?」

「普通だ!」

 誰だ、この人を「デキる女」といった奴は。

「山なら、やはり、高いほうが制覇しがいがあるだろうね? 剣岳なんかどう?」

「死人が出るわ!」

「恐山は?」

「自殺する気か!?」

「樹海なんか楽しそう♪」

「それは森だ!」

「東京付近は?」

「偏見だ!」

 肩で息をし、会長の書類を奪った。

「こんなの近くの山でいいんですよ! はい、この山に行きますよ!」

「でも、これだと、一時間で頂上に着くわよ?」

「一時間歩くだけで十分です!」

「せっかくなんだから……そうだ、この山をミリタリーごっこの」

「会長の意見は全て却下です!」

「剣岳の案だけは!?」

「一番、ダメに決まってるでしょう!」

 とりあえず、近くの山に登山することが決まった。

 会長はどこか不満そうだが、不満はこっちだ。

 副会長が転校したのは会長に嫌気がさしたからじゃないのか。

「じゃあ、次の日曜、この山を視察しに行くわよ!」

「登るんですか?」

「視察しないとわからないことも多いでしょう? 安全性とか、危険性の有無とか?」

「案外、考えてるんですね?」

「剣岳なら、危険だってわかってるから、視察の手間が省けるのに……」

「危険承知で選ぶな!」

 

 

 といいながら、日曜日がやってきた。

 目的地につくまで電車に揺らされないといけないので俺達は駅のホームで待ち合わせすることになった。

 一時間で頂上につける緩い山なので装備は必要最低限のもので済ませている。

 足りない分は現地で揃えればいいだろう。

 初心者のための登山用の山だから、現地でも登山用具がそろえられる便利な山になっている。

 なんでもある、平成の世って、なんか、素敵。

 でも、こう待ってるとなんだか、恋人とデートしてるみたいで楽しい気分になるな。

「飛翔、ち・こ・く・だぞ! な~~んちゃって!」

 ヤバイ。テンション上がってきた。

 会長、まだ来ないかな。

「お待たせ!」

「あ、会長、おはようござ……イッ!?」

 真っ青になった。

「なんですか、そのフリフリは!?」

「え、これ?」

 白を基調とした清楚なドレスに会長は不思議そうにクルリと回転した。

「勝負服よ」

「なにに勝つつもりですか!?」

「特注よ!」

「そんなの聞いてません!」

「お気に入りなんだからね!」

「知るか!」

「フリフリドレス嫌い?」

「そういう問題じゃない!」

「じゃあ、どういう問題なの!?」

「ドレスで山を登る気ですか!?」

「登れないの?」

「汚れるでしょう!」

「クリーニングに出すわよ!」

「もっと服を大事にしろ!」

「靴は登山用よ!」

「なんで、そこだけ、準備がいいんですか!?」

 駅とは反対方向を指差した。

「今すぐ、ラフな格好に着替え直しこい!」

「え~~! せっかく、着替えたのに!」

「そんな格好で登山する人間なんか見たことない!」

「マンガとかでは」

「アンタのマンガ観なんか、知るか!」

「マンガ観じゃないもん!」

「そして、その荷物はなんだ!?」

 会長の背中の荷物を奪った。

 中身を確かめ、取り出した。

「このゲーム機は!?」

「私、3Dより、ポータブル派なの」

「登山に必要ありません!」

「ロボットが活躍する名作よ!」

「聞いてません!」

 また、カバンの中をまさぐった。

「これはなに!?」

「ジュース」

「醤油ですよ、これは!」

「大丈夫。器が醤油瓶なだけで中身はコーラだから!」

「紛らわしい!」

「空いてるボトルがそれしかなかったのよ」

「こっちのほうが移し変えるのが大変だわ!」

 また、カバンの中を確かめた。

「なんだこれは!?」

「釣り用具」

「川のない山でどうやって、釣りをするんですか!」

「え? 無理なの?」

「今回、行く山に魚はいません!」

「つまんな~~い」

「余談ですが、これは海釣り用の竿です!」

「違うの?」

「全然、違います!」

「ちゃんと、資料を見て用意したのに?」

「それはネコ型ロボットのマンガでしょう!」

「違うわよ! これはご先祖様の残した設計図を元に」

「もういい!」

 話を切り替え、背中を向けさせた。

「着替えなおして、戻って来い!」

「面倒臭いな」

「面倒臭いのは、こっちだ!」

「可愛い格好は嫌い?」

「山登り以外なら大歓迎です!」

「学校の中とかでは?」

「制服でいろ!」

「ちなみにブルマとスク水、どっちが好き?」

「短パン派です!」

「わかってるねぇ♪」

「わかりたくありません!」

「じゃあ、短パンで来るから!」

「山登りだから、肌は出さない格好にしろ!」

「君の趣味に合わせたのに」

「俺の趣味じゃなく、山に合わせろ!」

「人は人に合わせないと」

「環境に合わせるのが一番だ!」

「そうやって、悪習が続くのね」

「悪習じゃなく常識だ!」

「はいはい、戻りますよ!」

「次、ふざけた格好したら、家まで突撃しますからね!」

「なら、頑張ろうかな……」

「頑張るな!」

 顔を真っ赤にして帰る会長に俺はめまいがした。

 

 

 それから俺たちは電車に乗るまで一時間もかかってしまった。

「予定の時間より、一時間も遅れて出発してしまった」

「ダメだね、君は」

「アンタのせいだ!」

「女の子は時間にルーズなくらいが」

「いいわけあるか!」

「モテないでしょう?」

「モテたくありません!」

「本音は?」

「強がりですよ!」

 たっぷり一時間、応酬を繰り返し、俺たちは目的の山へとたどり着いた。

 登山する前に俺の体力が限界だ……

 目の前の山を見て、会長は真っ青になった。

「案外、高いわね?」

 山の勇壮さに会長は感心したように腕を組んだ。

「もっと小さいのかと思ってた」

「山は山ですからね。なんか、ヤル気出てきた!」

 疲れは残ってるけど……

「ねぇ、この山に登るの?」

「登ります」

「天保山に変えない」

「日本一低い山だろうが、それ!」

 手を掴んだ。

「いいから行きますよ! ワガママは許しません!」

「え、あ……!?」

「なんですか、顔を真っ赤にして! 文句は受け付けませんよ!?」

「ち、ちが……」

「なにが違うんですか!?」

「わ、私、手を握られると顔が真っ赤になっちゃう病なの!」

「嘘付け! 登山が嫌だからって、仮病は許しません! 首に縄つけてでも歩かせますからね!」

「べ、別に言い訳してるわけじゃないんだけどな……えへへ♪」

 山に登ると意外とキツかった。

 緩い坂とはいえ、山は山。

 やはり、準備不足だったかなと自分で反省した。

「ね、ねぇ」

 手を引っ張られてる分、会長のほうが体力を失っているのか、息を荒げた。

「ちょっと休みましょうよ? 私、足がカモシカになっちゃったよ!」

「棒です!」

「足の細さは自慢よ!」

「確かにカモシカのように細い足ですけど、使いどころが違います!」

 手を離した。

「まぁ、俺も疲れたし、休憩を許しましょう!」

「なんか、偉そうだな?」

「アンタは黙って俺についてくればいいんだ!」

「……」

「文句でもあるんですか?」

「ちょっと、格好いいな……」

「なにか言いましたか? 小声で聞き取りづらかったんですけど?」

「う、うぅん、別に」

 近くの岩をイス代わりに座った。

 会長はなぜか顔を赤かった。

(本当に体調、悪いのか? にしては、元気っぽいけど?)

 とりあえず、俺も隣に座り、カバンを開けた。

「はい、スポーツ飲料です」

「ありがとう」

 スポーツ飲料を飲み、会長も自分のカバンを開けた。

「お礼に醤油をあげよう!」

「コーラの器に戻してないのかよ……」

 蓋を開けて、匂いをかいだ。

「本物の醤油じゃねーか!」

 投げ捨てたい衝動を抑え、会長を睨んだ。

「荷物見せてください! まさか、不要なものを持ってきてないでしょうね?」

「今度は大丈夫よ! 私を信じなさい!」

(妙に自信満々なのが腹が立つな……)

 荷物の中身をチェックした。

(休憩用の小説か?)

 登山家ならこれくらいは許容範囲か。

(汗を拭くためのタオル)

 必需品だな。

(頂上についた後の遊び道具のフリスピー)

 ギ、ギリギリ、オーケーかな……

(これは!?)

 カバンの奥に隠されれたものを取り出した。

「なんですか、このビデオデッキは!?」

「ポータブルDVDプレイヤーよ!」

「不要なものを持ってくるなといったでしょう!」

「タイタニックよ!」

「聞いてません!」

「泣けるわよ!」

「泣きたくありません!」

「怒ってばっかだもんね?」

「怒らせてるんでしょう!」

「ちなみに好きな映画は?」

「最近なら、ローマ人が現代に来てお風呂文化を学ぶ映画ですかね?」

「そうか! 私もアレ、大好き!」

「気があって、俺も嬉しいですよ。って違う!」

「じゃあ、なに!?」

「何度も無駄なものを持ってくるなといったでしょう!」

「山の上で見るビデオは格別よ」

「家でできないことをしろ!」

 ポータブルDVDプレイヤーを俺のカバンに入れた。

「没収だ、没収!」

「楽しみにしてたのに……」

「もっと、マジメになれ!」

「マジメよ!」

「どこがだ!」

 と、休憩しても俺の疲れは増幅するばかりであった。

 休憩を終えて、登山を再開すると俺たちは苦労してなんとか頂上までたどり着いた。

 その頃には会長も無駄口を叩けないほど、疲れたのか、俺に寄りそって歩いていた。

「塚レター!」

「疲れたでしょう! 塚に手紙(レター)を送ってどうするの!?」

 俺も疲れてるのに突っ込む力だけは残ってるようだ。(もしかしたら、ツッコミの体力なのかもしれない)

「すぐにブルーシートをしいて、休みましょうか?」

「レッドカーペットを歩きたいな」

「何様だ!?」

「満点笑いとかほしいな」

「なんの話だ!」

 無駄口ばかり叩く体力だけは残しやがって。

 ブルーシートを敷いた。

「ほら、横になっていいですよ」

「やっと安さんにメールを送れる!」

「え? 安さんにメール? 安さんにメール……やすめーる?」

 な、なぐりて~~……

「アベシ!?」

 世紀末な叫びを上げて、ブルーシートに倒れるな。

 殴ってねーからな。

「にゃふ~~♪」

 会長の顔が猫みたいに緩んでるな。

「あ~~……いい気持ち」

「散々疲れて、ここですからね。身体が重力に開放されたように気持ちいいでしょう?」

「芝生がふかふかで足が素敵~~……」

「それはよかった」

 俺もブルーシートに座った。

 足が重力に開放されたように気持ちよく、俺も顔を緩めた。

 なんだかんだで苦労はあったが、山を制覇できたのはよかった。

 なんか、癖になりそう。

「これで剣岳にいけるね?」

「あぁ~~~ん!?」

「いひゃいいひゃい! くひをひっはらなはいへ!」(痛い痛い! 口を引っ張らないんで!)

 本当にこの口を喋れないように縫い合わせたい。

「先輩! 東方が赤く燃えています!」

「そっちは西だ!」

「あ、よく見たら、太陽ないや」

「朝だからな」

「お兄ちゃん、こっちに人気がない場所があるよ!」

「入るなよ」

「三人で裸の休憩を」

「この口か、卑猥なことを言いたい口はこの口か!?」

「お、おにいひゃ~~~ん!?」

「……」

 遠くでジャレているカップル(三人いるけど)に俺は目をそらした。

「アレって、ウチの学校の双葉姉妹じゃない?」

「見るな!」

 無理やり顔を隠した。

「視察にきたんだから、同じ生徒と会うのはまずいでしょう?」

「意外とマジメね?」

「会長がいい加減すぎるんですよ!」

「無心の境地といってほしいわね!」

「会長のは無心じゃなくって、考えなしなんです!」

「でも、遊び人は無条件で賢者になれるわよ!」

「そこまで育てる労力が惜しいですよ!」

「序盤で三人、遊び人を育てて、後半で一気に」

「賢者ですか?」

「解雇する!」

「苦労が水の泡になってますよ!」

「ふぅ~~……こう、ノンビリすると、昔を思い出すわね?」

「昔?」

「私、小さい頃、ここじゃない山に町内遠足で登ったことがあるのよ」

「へぇ~~……?」

「例のごとく迷子になったけどね」

「会長らしい」

「でも、違う理由で山に登っていた男の子に会って、助けてもらったの!」

「そんな記憶、俺にもありますよ」

 あの時、あの子は自分は迷子じゃないと言い張って、妙なボケをかましてたな。

 考えれば、あの時から、俺は突っ込みの才能があったんだな。

「あれ?」

「どうかした?」

「い、いえ」

 気のせいか、あの時の少女と今の会長が重なって見えた気がしたが、気のせいだろう。

「それよりも、お昼、食べましょう?」

「じゃあ、俺が用意したお弁当でも」

「これ、使わないの?」

 取り出したフライパンに俺は冷たい目をした。

「まだ、無駄なものを隠し持ってたか!?」

 フライパンを奪った。

「こんな山の中でフライパンなんか使えるわけないでしょう!」

「せっかく材料も用意したのに!」

「なんで、キャベツ一個だけなんですか!?」

「レンジでチンすればなんとかならない?」

「なるか!」

「気合で!」

「スポーツじゃない!」

「物はためしに……」

「第一から、山にレンジなんかあるか!」

「ないの?」

「あってたまるか!」

「探せば」

「あるか!」

「このバイブル(マンガ)には」

「三次元に二次元を持ち込むな!」

「そんな力強く言わなくっても……」

 涙目になる会長の頭にフライパンをパンパン叩いた。

「それと、フライパンとキャベツでなにが出来る?」

「キャベツの炒めとか?」

「俺たちは修行者か!?」

「じゃあ、なんで私、フライパンなんか持ってきたの!?」

「知りませんよ!」

 ついでにキャベツも奪った。

「会長と話してると喉が痛くなる!」

「お茶あるけど、飲む?」

「いただきます」

 お茶を飲んだ。

 吹いた。

「なんだ、この苦いお茶は!?」

「朝鮮人参を入れた健康茶よ!」

「登山で朝鮮人参の茶なんか出すな! というか、よくそんな高級な漢方薬、用意できたな!」

 めまいがした。

「俺、少し寝ますから、起こさないでくださいよ?」

「はぁ~~い!」

 ……

 …………

 ……………………

 ………………………………

 …………………………………………

「あ~~……よく寝た! って!?」

「うぅん……」

「なんで会長が俺に抱きついてるの!?」

 間近で見る、会長に俺はちょっと惚れ惚れした。

(会長って黙ってれば、本当可愛いよな?)

 これで、ボケなきゃ、完璧なんだけど……

「って、違う違う!」

 こんなの人に見られたら誤解される。

「会長、起きてください! もうそろそろ帰りますよ!」

「まだ、眠い」

「むぐぅ!?」

 小さな胸に顔を押し付けられ、俺は真っ赤になった。

(あ、柔らかい……って、違う!)

「うるさいな~~……なに……を」

 目が合った。

「キャ……」

「か、会長、落ち着い」

「キャァァァァァァァ!?」

 

 

 帰りの電車の中、会長は申し訳なさそうにトランプのジョーカーを俺にくれた。

「さっきはゴメンね。私のお気に入りのトランプのジョーカーあげるから許して?」

「別にいいですけど、なんでトランプのジョーカーを集めてるんですか!?」

「奇術師って、言葉が好きなのよ」

「偏愛というんですよ、それを」

「このハートのキングは最後にヒロインと結ばれて」

「どこのファイターですか!?」

「東方は」

「すでに言われてます!」

「私が……」

「歴史が飛びまくってます!」

「……」

 会長の顔がブスッとなった。

 俺はため息を吐いた。

「今日はだいぶ疲れましたけど、視察のかいはありましたね?」

「私は君にそれを伝えたかったのよ!」

「このフライパンがですか?」

「あう~~……」

 フライパンで頭を殴る俺に会長は涙目になった。

「副会長がいじめる~~」

「第一から、昨日から聞きたかったんですけど、なんで、俺を副会長に選んだんですか?」

「暇そうだったから!」

「なら、工藤先輩でも、いいじゃないですか?」

「なんで?」

「え……無責任ですけど、頭もいいし、顔も」

「そう?」

「そ、それに工藤先輩なら、会長のために喜んで尻尾を振ってくれますよ?」

「本気でいってる?」

「た、多少、本気ですけど」

「工藤なんか、副会長にしたら、生徒会は崩壊よ! あんな男、アナタと比べたらゴミと神よ!」

「ど、どっちがゴミですか?」

「そんなの久遠よ!」

「名前、間違えてますよ」

「あれ? 区報だっけ? 気泡だっけ? 怨神(まがつかみ)だっけ?」

「もう、原型がなくなってますよ!」

 工藤先輩も可愛そうに……

「それに、私はアナタと一緒に生徒会をしたかったのよ!」

「ほへ……!?」

「どうしたの?」

「い、いま、なんて?」

「アナタと生徒会をしたかったって言ったんだけど?」

「そ、それって、もしかして……」

「言わなかったっけ?」

「なにを_」

「私、アナタのことが好きだって」

「そ、そうなんですか!?」

「最初にいった気がしたけど?」

「言ってません!」

「じゃ、じゃあ、今、言うわね? 私、アナタのことが好き!」

 信じられないことをいう会長に俺は絶句した。

「アナタ、それを承知で生徒会に入ってくれたんじゃないの?」

「無理やり入会届けに朱印を押させたのは誰だったでしょうね?」

「世の中、酷いことする人っているのね?」

「アナタですよ、アナタ!」

「アナタなんて、まだ、早いわよ! それに「アナタ」をいうのは私の役目だし?」

「意味がわかりません!」

「これから意味が出来るのよ!」

「出来なかったら?」

「意味を作るから安心して!」

「答えになってません……」

 ホトホト呆れる俺に先輩は肩を掴んだ。

「な、なんですか?」

「うん! 君は本当にいい男だね?」

「なぬ!?」

「ギャルゲーの主人公みたいな顔なのに、なんで、こんなにハンサムなのかしら?」

「それって、褒めてるんですか?」

「褒めてるわよ!」

 ジッと見られた。

「工藤とどこを比べる必要があるの?」

「く、工藤先輩と俺じゃ」

「そうね! 工藤とアナタでは比べるのが失礼ね、アナタに!」

「俺にですか……」

 言葉を失う俺に会長は不思議な顔をした。

「なんで、みんな、工藤なんかになびくのかしら、アナタのほうがずっとハンサムなのに?」

「たぶん、みんなの意見が正しいと思いますよ」

「そうかしら、みんなの美的センスを疑うわ」

 こっちが疑うよ……

 まぁ、嬉いっちゃ嬉しいけど……

 

 

 終着点は学校なので校門の前まで来ると俺たちは意外な人物とであった。

「あ、白鳥さん! こんなところで会うなんて奇遇だね?」

「うわぁ!?」

 工藤先輩に突き飛ばされ、俺は尻餅をついた。

「生徒会の仕事? そういえば、副会長辞めたんだっけ? 大変だね、一人で?」

 俺のことが見えてないのか、工藤先輩は謝りもせず、会長に話しかけていた。(ほぼ一人で)

「暇なら、これから俺とデートでも」

「邪魔よ!」

「あべし!?」

 平手打ちをくらい、工藤先輩は空中でコマのように回転し、頭から地面に落ちた。

「大丈夫!?」

 工藤先輩じゃなく、俺の心配をした。

「怪我とかしてない!? 痛いところとかない!? 病院いく?」

 キッと工藤先輩を睨んだ。

「ちょっと、人を突き飛ばして、なに寝てるのよ!?」

「いや、会長が気絶させたんだけど?」

 理不尽に怒る会長に俺は嬉しいと同時にちょっと工藤先輩がかわいそうになった。

 俺を立たせると会長は今までのふざけた態度とは裏腹に怖い顔をした。

「次、彼を突き飛ばしたら、会長権限で部活動永久参加禁止をくらわせるから覚悟してよね!」

 工藤先輩など興味ないのか会長は俺の肩を抱いたまま、歩き出した。

「気分が悪いわ! 喫茶店でフィーバーしに行きましょう!」

「なんで、喫茶店でフィーバーできるんですか?」

「最近、ディスコ風のカフェが出来たらしいのよ!」

「出来れば、普通の静かなカフェに行きたいな、俺?」

「じゃあ、カラオケのある綺麗なママのいるお店とか?」

「それは飲み屋です!」

「ゲームがたくさんおいてある」

「それはゲームセンターです! カフェでもなくなってる!」

「アハハハ♪」

 ケラケラ笑われた。

「デートは終わってないし、カラオケにでも、行きましょうか、カラオケ?」

「え……デ、デートだったの?」

「違うの?」

「ち、違わない……です」

「じゃあ、決まり!」

 ギュッと腕に抱きつかれ、俺はドキッとした。

「さぁ、カラオケで食べるわよ!」

「歌わないの!?」

 まだまだ、会長とは付き合わないといけなさそうだ。


 
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