No.438488

異聞~真・恋姫†無双 四ニ

ですてにさん

前回のあらすじ:一刀にのめり込んでしまって悔しいけれど、逃れられない逃れる気がおきない正妻筆頭候補二人の図式。

人物名鑑:http://www.tinami.com/view/260237

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2012-06-17 17:33:14 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6425   閲覧ユーザー数:4908

この作品はキャラ設定等が一刀くんを中心に、わりと崩壊しております。原作重視の方はご注意下さい。

時代背景等も大きな狂いがあったりしますので、

『外史だから』で許容できない方は全力でブラウザバックを連打しましょう。

 

オリキャラも出ますので、そういうのが苦手という方も、さくっとまわれ右。

 

一刀君とその家系が(ある意味で)チートじみてます。

物語の展開が冗長になる傾向もすごく強いです。(人、それをプロット崩壊という)

 

この外史では一刻=二時間、の設定を採用しています。

それでもよろしい方は楽しんで頂けると幸いです。

 

・・・って、この書き出しを懐かしいと思ってしまうとは(苦笑)

「かぁーっ! この炙り烏賊と銀杏の酒に合うこと! 甘露じゃのう!」

 

「なんで、一刀の作った簡単なアテが一番受けがいいのよ…納得いかないわ」

 

「蘭樹殿、それはお主が真の酒飲みでは無いからじゃ、かっかっか!」

 

「まるで俺が酒飲みのような発言は撤回して下さい、祭さん」

 

あの後、祭さんの所に向かおうとした俺に、華琳と愛紗が同行すると主張した結果、

じゃあ、つまみでも簡単に作って持参しよう、となった結果、

俺の作ったのが一番受けが良かったという結末に。

 

簡単に、といっても、華琳が作る簡単な料理と、俺と愛紗が作るそれとは明らかに基準が異なり。

ジャンクフードと会席の一品ぐらいの差があるというか。

 

ただ、酒飲みの基準って、塩が効いてるとか、濃い味付けとか、

まぁ、カップラーメンを無性に食べたくなる感覚に似ていると思う。

 

ともかく、華琳の額には青筋が浮かび、別の意味で俺の顔色は真っ青になりつつある。

修正、俺と愛紗の顔色は、だ。

 

「雲長どのが造ったこの焼きそばも酒が進むな! こりゃいい!

おっと、伯符どの、自分の酒が無くなったからって俺のを取るのはいかんなぁ?」

 

「だって、このギョウの酒、美味しいんだもの!

だから、孟忠から足りない分を手に入れただけじゃない~」

 

「よ、喜んで頂けて何より、です」

 

愛紗の塩焼きそば、大絶賛。本当は嬉しいはずの愛紗の顔が完全に引き攣っている。

ニ、三歩後ずさっている身体は正直だ。

 

「・・・蘭樹が作ったこの一品、とても美味だと思うのだがのう」

 

「お嬢様、蘭樹さんの一品は酒飲みさん達には薄味なんですよ、きっと。

舌がヤラれちゃってる可愛そうな人たちなんですよ♪」

 

「なんじゃとう!?」

 

「なんですって?」

 

公路さんグッジョブ! と思ったのもつかの間、

七乃さんの毒に、程よく酔いが回りつつある二人が即座に反応する。

というか、祭さんの天幕にこれだけの人が集まっている自体が異常というか。

 

祭さんに、雪蓮。公路さん、孟忠さんに七乃さん。少し前までは徳謀さんに、冥琳もいたという。

天幕の外でやはり宴会をしていた様子の回りの兵士さん達の喧騒も、既に収まりつつあるようだ。

 

「華琳は素材の味を生かす調理法が多いからな。ま、天の国で学んだ技術って奴だ」

 

今は、公路さんの言に乗り、華琳の溜飲を下げる方向に動くべしっ!

 

「おお! この繊細な味付けはそうであったか!」

 

「ただ、酒のアテとしては分が悪かったのかな。

むしろ、酒飲みの最後に頂くと胃が休まるような一品だね。

華琳はそこまで考えていたのさ。だから、祭さんも雪蓮も変に噛み付かないの。

んで、皿を取り上げられたくなければ、七乃さんも煽らないで下さいね」

 

「わらわのも取り上げなのか!?」

 

「あくまで、『七乃』さんのだけだよ、公路さん」

 

「良かったのじゃ、では続きを頂くとしようかの」

 

安心した途端、すぐに黙々と食事に戻る公路さんを少し羨ましそうに見つつ、

七乃さんは渋々といった感で、降参の意を表わす。

 

「むー、仕方ありませんねー。一刀さんはやると言ったら本気でしょうし」

 

「短い付き合いながら、ご理解頂けていて嬉しいですよ、七乃さん」

 

「・・・そういうことにしておいてあげるわよ」

 

すぐ隣に寄ってきて、軽く肘でこちらを小突きながら、俺だけが聞き取れるような細い声で、

機嫌を損ねていた華琳は、我を取り戻したことを知らせてくれる。

 

「一刀が形振り構わずに動いてくれているのに、私が怒っているんじゃ馬鹿みたいじゃない」

 

どこか甘えた声色に、一安心しつつも、

こんな一面を素直に見せてくれる優越感に頬が緩みそうになるのを意志の力で抑えつつ。

 

「一刀さん、頬が緩んでる上に顔が引き攣ってますよ? 正直、気持ち悪いですねぇ」

 

・・・出来てなかったようだ。

愛紗が俺を見て苦笑いをしながら、酔いが回った孟忠さんや雪蓮を、

徳利をギリギリ手の届かない位置に保ちつつ、別の天幕へと誘導していく。

馬を人参で釣る様に、酒飲みを徳利で釣るのはうまいやり方だなぁ、と妙に感心する。

雪蓮の反応速度にも、愛紗なら十分対応できるしね。

俺なんかが同じことをやると、多分かっさらわれてジ・エンドだ。

 

まぁ、酔いが回ってるんだろう。雪蓮も孟忠さんも、あっさり釣られるぐらいには。

 

「孫さ…いや、この呼び方は違うの。伯符も公覆も、蘭樹に嫉妬してるのであろ。

そうでなければ、こんな美味な一品をあえて評価しない理由もわかるというものじゃ」

 

華琳の一皿を抱え、嬉しそうに、それでいて黙々と味わいながら、

不意に公路さんの一言が、祭さんに投げられる。

からかう口調でもなく、ただ、淡々と。

 

「んなっ、え、袁術! て、適当なことを申すでないわっ!」

 

「大当たりのようじゃの。

お主がわらわの一言でここまで動揺するなど、よっぽどじゃからな。

さて、ご馳走様でした、なのじゃ。

美味しく頂いたぞよ。蘭樹、また良かったら、手が空いた時に作ってたも」

 

「え、えぇ」

 

「楽しみにしているぞよ。

さて、わらわはもう休むとするが、公覆。子供の戯言と思い、聞き流してもいいがの。

胤が自身の内に宿って、これからも声を聴くことが出来る喜びと同時に、

どれだけ願おうとも、もう抱き締めてはもらえぬ事実を思い知っておる」

 

淡々と言葉を続ける公路さんの声は、あえて感情を乗せていないのだと、

だから、祭さんも口を挟むことなどせずに、言葉の続きを待つ。

華琳は急に人が変わったような公路さんにそもそも絶句してしまっているし。

七乃さんは黙って、公路さんを静かに抱き締めていた。

 

「孺子が何を言う、と公覆なら言うのかもしれん。

じゃがな…ああ、胤、大丈夫じゃ、わらわがどうしても公覆に言いたいことがあるだけの、

我が儘を言っているだけの話じゃから。七乃も、ありがとの」

 

「良人の肉体を失ったお主が儂に何を伝えたいというか。聞くだけは聞いてやろうではないか」

 

「うむ。北郷に、甘えたい時は素直に甘えたいと訴えるべきだと、それを言いたかっただけじゃ。

わらわにはもちろん、七乃や悠梨、孟忠もいて、独りじゃないことは十分分かっておる。

ただの、この寂寥感とはずっと向き合っていかねばならぬと、改めて思うとの」

 

もう一人の俺と、公路さんの間にどんな物語があって、どんな絆が育まれたのか。

それは想像するしかないし、不可思議な出来事から意識を共有していても、記憶まで覗こうとは思わない。

ま、俺はエネルギーの供給元みたいなもんで、彼の意識の殆どは公路さんの内にあると感じる。

呼びかければ遅れて返事がある、それが俺の中にいる奴の状態だろう。

 

「お主に言われるまでも無いわい。じゃが、心の端には留め置いてやろうかの」

 

「十分じゃ。さて、せっかくの楽しい席の雰囲気を済まなかったの。わらわはそろそろ休むのじゃ。

…北郷、いや、これからは主様と呼ぶべきだろうかの?」

 

「茶化さないでよ、公路さん。アイツのことも含めて、詳しい話は明日の朝、ゆっくり話そう」

 

「うむ。ただ、主様、と呼ぶのは冗談では無いのだがの? それも含めて、明日の朝食を予約させてもうらうのじゃ、わははー!」

 

 

「・・・七乃、ちゃんとわらわは最後、いつものように笑えていたかの?」

 

「はい、さすがはお嬢様♪ 完璧な棒演技でしたよー♪」

 

「そ、そうか! わはは、流石はわらわじゃ…って、七乃、棒じゃダメじゃなかったかの?」

 

「いいえ、あえて棒演技で無理をしているお嬢様の姿が

却って皆さんの心を鷲掴みですから、全く問題ありません♪」

 

天幕を退出した後の、公路さんと七乃さんの会話が丸聞こえだったため、

二人が完全に遠ざかり、雪蓮たちの誘導が終わった愛紗が戻るまで、

天幕はなんとも気まずい沈黙を強いられる羽目になっていたのは、オチがついたというべきだろうか。


 
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