No.438427

【獣機特警K-9】交錯する光と影【戦闘】

古淵工機さん

いよいよフェザントヒルの事件も佳境。
あの海賊が、そしてあの男が久々に登場!
そしてそして、エルザ隊長ピーンチ!!

◆K-9隊以外の出演者

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2012-06-17 14:52:45 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:861   閲覧ユーザー数:837

突如現れたゴクセイカイの新たな刺客、時雨…。

彼女をなんとか撃退したK-9隊と少年自警団は、次の任務に向かうべくある場所を目指していた。

今回の治安回復任務の最大の目的である、フェザントヒル港の倉庫群だ。

 

情報によると、ローゼン海賊団によってドラコニア星から密輸されてきたドラッグの取引がここで行われているという。

相手はこのあたりでは相当の実力を持つマフィアの一味である「オルソ・ファミリー」である。

 

「なるほど、結構な量じゃないか」

と、煙草をふかしながらファミリーの首領であるドン・オルソが部下を引き連れ、女海賊と話している。

「ああ、ファンガルド通貨換算で10万FH(約1億円相当)はくだらないと思うよ、ドン・オルソ。アンタらの活動資金のためならローゼン海賊団はなんだってするさ」

オルソと話しているのはローゼン海賊団の首領であるキャプテン・メルローズ、そしてその隣には海賊シザーハンドが控えていた。

「さぁ、持っていきな。間違いなくこいつは売れる…」

と、メルローズが言いかけたその時である!!

「動くな!警察だ!!」

「見つけたぞ!ローゼン海賊団!!」

 

エルザ率いるK-9隊と、アンバー率いる少年自警団が次々に畳み掛けてきたのである!!

「くそっ!何故バレたんだ!!」

ドン・オルソは慌てた様子で叫ぶ。するとオルソの後ろから一人の男が出てきた。

「…それは…私が彼らに教えたからですよ、ドン・オルソ」

背の高いオオカミ形ファンガーの男。彼はオルソの元でドラッグ取引を行っていたという男であった。

「き、貴様!ファミリーを裏切る気か!!」

「裏切る?あなたは騙されたんですよ。この私にね」

 

「なんだ?あのマフィアども、様子がおかしいぞ?」

と、アレクが疑問を投げかけたその時、オオカミ形のファンガーはゆっくりとその手をその長い髪にかける。

「…騙しただと!?調子に乗りやがって!」

「気づかないあなたが悪いんですよ。もっとも、こうもうまく騙されてくれるとは思いませんでしたがね」

そう言うなり、そのオオカミ形ファンガーは一気にその髪を引っ張り…顔の皮を脱ぎ捨てた!その下にあったのは…!!

「なっ!?」

「怪盗…ノワール!!」

「やあ、K-9隊の皆さん、随分お久しぶりで」

そう、オオカミ形ファンガーの男は怪盗ノワールの変装だったのである。

「フェザントヒルでドラッグ中毒者が多く出ていると思ったら海賊とマフィアの裏取引があったとはね」

「ちぃ…よりによってこんな時に…まあいい。アタイは撤収させてもらうよ。シザーハンド、後はアンタに任せる」

キャプテン・メルローズはそう言うと、手に持っていた転送装置のスイッチを押し、そのまま姿を消した。

「へっ!任しとけよ!ジャマな奴らはK-9だろうが自警団だろうがぶっ潰す。だがその前に!!」

と、シザーハンドは右腕をノワールに向けた。

「まずはテメーからだ、このヒョロ長野郎!」

「おやおや、女性がそのような乱暴な言葉遣いをしてはいけないな」

「うるせー!女だからってナメてっと消し炭だぜこの野郎がァ!!」

と、ノワールを挑発していたシザーハンドの後ろから、一つの影が飛び掛り、膝蹴りを食らわせた。クオンだ!!

「どぉりゃあぁぁぁっ!!」

「ぐわっ!?て、テメーはいつぞやの!!」

「お前の相手はこのボクだ!!さぁ来い!!」

「くそっ!いきなり後ろからなんて卑怯だろ!」

と、クオンに食って掛かるシザーハンド。だが、この隙を狙ったノワールは、ドラッグの入った袋を片っ端から持ち上げると…。

「まったく、このようなもので金儲けとはいささか嘆かわしい。私が処分してしまいましょう」

と、袋を空中高く放り投げたのち、軽く指を鳴らした。

するとどうだろう、突然袋の端から火がつき、数秒後には燃え尽きてしまったではないか!

「なっ…!?俺様たちが苦労して運んできたドラッグが!!」

と、驚愕するシザーハンド。

「くそぅ!もう許さん!!撃て!撃て!!」

オルソが号令を飛ばすと、すぐさま部下が出てきてノワールに銃口を向ける。

しかし、ノワールはその弾丸を軽い身のこなしで難なくかわしたかと思うと、懐からトランプを取り出し、マフィアたちに投げつけた!!

「うわっ!?」

「なにっ!!」

トランプはマフィアが持っていた銃を直撃、その衝撃で思わずマフィアたちは銃を落としてしまったのである。

「さて…私の役目はここまでです。後はあなた方にお任せしますよ。アデュー!!」

「待ちなさい!ノワール!!」

と、飛び去っていくノワールに向かって叫ぶイシスだが…。

「待て!今はローゼン海賊団とオルソ・ファミリーを確保するのが先だ」

「でも隊長!!」

「命令だ」

最初は戸惑っていたイシスだったが、エルザの瞳を見てすぐに笑顔を見せると…

「了解!」

と、自身いっぱいに答えたのであった。

一方のクオンはというと…

「残念だったねローゼン海賊団。キミ達がせっかく売りさばこうとしてたドラッグはノワールが全部燃やしちゃったよ」

「畜生!んな事ァわかってんだよ!!ぶっ飛ばしてやるぜ!!」

そう言うと、シザーハンドは巨大な右腕を使い、クオンに殴りかかろうとする。

するとその後ろから、巨大な棒を持ってアンバーが勢いよく殴りかかった!

「がはっ!?くそっ!このガキ!!」

「クオン!クラリス!!連携プレーだ!!」

「オッケー!!」

「…妖怪、もとい…了解」

三人の素早い接近攻撃に翻弄されるシザーハンド。

「ちっ、すばしっこい野郎どもだ…だが!!」

すぐさま、後ろにジャンプして間合いを取ると、右腕にエネルギーを充填し始める。

「オレの武器は殴るだけじゃねーんだぜ!?」

射撃体勢に入ったシザーハンドに向かい、アンバーは挑発をかける!

「バーカ、そんなんでオレたちに勝てると思ってんのかよ」

「なんだと!?拳銃(チャカ)一つ持ってねーのに粋がってんじゃねえよ!テメーらの負けだ!!」

その言葉を聞いたクオンは不敵な笑みを浮かべて答える。

「確かにボクのリボルバーじゃ、キミには届かない。けどね!」

そして次の瞬間、一条の光線がシザーハンドの右腕に直撃した!!

「ぐわぁっ!?オレの右腕が…粉々に!?くそっ、どっからだっ!!」

シザーハンドが目をやった先には、キララの姿があった。

「タキオンキャノンめいちゅー!いえいっ!!」

「こういう時もあろうかと、キララを配置しといて正解だったぜ」

と、自信に満ちた表情を浮かべるアンバーとクオン。

「畜生…覚えてやがれーっ!!」

と、いかにもな捨て台詞を吐いてシザーハンドは去っていった。

一方のドン・オルソは…。

「こうなったら生かして帰すな!警察(サツ)どもを皆殺しにしろ!!」

と、部下たちに命令する。すると今度は、レーザーナイフやら、振動マシェットやらで武装したマフィアがつぎつぎにK-9隊に襲い掛かってきたのだ!

「イシス、フィーア、ウー、私に続け!!」

「了解!!」

しかし日頃から激しい訓練を受けている上に、特殊合金製のロボットであるK-9隊に、生身のマフィアたちが敵うはずがない。

「くそっ!ロボットだ!サイボーグでもいい!こいつらをぶっ飛ばせ!!」

「ムダだよドン・オルソ。アンタのロボットたちは俺とリクが電磁麻酔で気絶させたからね」

「ぐっ…!」

「アレクさん、リクくん、ナイスです!!」

と、言っている間にも四人はマフィア軍団を次々に倒しては捕らえ…とうとう、残るはオルソ一人のみとなった。

「さぁ、これで残るはお前一人だ。大人しくしてもらおう」

と、エルザがオルソに近づいたその時だった。オルソは突然、不気味な笑いを浮かべたのである。

「クックック…ああ、貴様らはよく頑張ったよ…だが!!」

そう言ってオルソがそのスーツを脱ぐと、なんとその腹部には…レーザーガトリング砲が搭載されていたのだ!!

「こ、これは…!?」

「俺が貴様らごときに捕まってたまるかってんだよ!!死ねぇぇっ!!」

その怒号とともに、オルソのレーザーガトリングが火を吹き…エルザの腹部を貫通した!!

「隊長!!」

「がはっ…き、貴様…サイボーグ…か!?」

エルザの腹部には穴が開き、内部からは破壊されたメカとともにオイルがあふれ出していた。

「ふははははは!無様なものだな…そのままじっくりといたぶって一人ずつ…」

と、狂った笑いを浮かべていたオルソだったが、その背後から、電磁警棒の一撃が炸裂した!!

「ぐわっ!?が、うぐっ…!!」

腹部のメカに強烈な電流を受け倒れるオルソ。

その後ろに立っていたのは、白と緑のアーマージャケット…アイヴィーだった。

「みんな大丈夫!?」

「総監…隊長が…、隊長が…!」

「なんですって!?…エルザ、しっかりして!エルザ!!」

「へ、平気です…今、損傷箇所の回路を閉鎖し…ぐっ…」

「いけない…すぐに救護班へ!…イシス、オルソの身柄の確保を」

「了解…!」

かくして、ドン・オルソの手に頑丈な電磁手錠がはめられ、ドラッグ取引の現場は見事に押さえられたのであった。

一方その頃…。

「ごめんなさいね、絶対に死なせないって言ったのに、こんな事に…」

と、スピアGTの車中で、涙を浮かべるアイヴィー。

「いいえ、謝る必要はありません…だってそうでしょう…?現に今、殉職者はゼロですし、私もまだ…」

「でも、あなたにこんな深い傷を…」

「平気ですよ…、私はロボットです。あなたと同じ…機械の身体ですから…修理すればまだ…うっ!」

「大丈夫!?あまり喋っちゃダメ…」

と、言っている間に、スピアGTは救護車両の前についた。

 

「総監!!」

救護班のロボット医師が驚いた様子でアイヴィーを出迎える。

「重傷者よ!K-9隊の隊長が腹部を撃ちぬかれた…すぐに修理を!!」

「わかりました…!さぁ、エルザさんこちらです!」

「ああ、頼む…」

そうして、エルザは救護車両の奥へと引き込まれていく。

その様子を、アイヴィーは険しい表情で見つめていた…。

数時間後、ナインキャリアーが到着し、救護車両の中にK-9隊の他のメンバーが入ってきた。

「隊長!」

そこには、ベッドの上に身体を横たえているエルザの姿があった。

破損した腹部パーツは新品に交換され、あとはカバーを取り付けるだけの状態だった。

「無事だったんだね!!」

「ああ、すまない…心配かけてしまって。でも、もう大丈夫だ」

「本当にごめんなさいね…私がもっとしっかりしていればこんな事には」

と言うアイヴィーの言葉を、アレクが遮った。

「何言ってるんです、頭を下げるなんてあなたらしくもない」

「でも…」

「だってそうでしょ?隊長は死んでない。今ここにこうして生きて目の前にいるじゃないですか。もしあなたが総監じゃなかったら今頃…」

それに続いてイシスとフィーアも言う。

「そうですよ、あなたは決して隊長を見捨てなかった。だから今こうして隊長は助かったんです。自信を持ってください」

「私も、いや、ここにいる警官の皆さん全員がこう思ってるはずですよ。あなたがいてくれて本当によかったって」

他のK-9隊員も、黙って笑顔で頷く。

「みんな…本当にありがとう…」

と、救護車両の車内は感動的な雰囲気に包まれたのだった。

…と、これで終わればよかったのだが。

「あれ…ホッとしたらなんか、お腹が…」

と、突然アイヴィーはバランスを崩し、エルザの上にもたれかかるようにして倒れこんでしまった!

「うわ!?そ、総監!?その体勢はなんか…いろいろと!!」

慌てふためくエルザ、そしてK-9隊の面々。そしてクオンは思わず…叫んでいた。

「誰か!誰か!なんでもいいから総監に食べ物を持ってきてあげてーっ!!」

何はともあれ、フェザントヒルの治安回復任務は一段落し、K-9隊も全員無事に生還したのであった。

 


 
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