No.437887

真・恋姫†無双 雛里√ 鳳凰一双舞い上がるまで 第四章 6話

TAPEtさん

次回から拠点しよう。そうしよう。

今までプラトニックラブだった雛里ちゃんと一刀の中にいろんな人が割って入ってくると、やっぱり下なネタがはいってくるようになるだろうなぁとおもいます。

2012-06-16 12:51:39 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:2734   閲覧ユーザー数:2463

雛里SIDE

 

屋敷が燃えたその夜、街中が大きく騒ぐ中誰も火を消すことが出来ず、屋敷は全焼しました。

燃え尽きた屋敷の残りの中から気を失っている倉ちゃん一人だけが発見されて、その以外には誰も見つかりませんでした。

呂蒙さん曰く、屋敷内には二人以外だれも居なかったとのことですが、分からないことです。死体は火の勢いが強すぎて跡もなく消えたかもしれません。

 

呂蒙さんの話を聞いて、左慈さんの言う通りうまく行かなかったことがわかりました。

左慈さんは驚いた顔で力尽きて倒れた自分の娘さんを見ながら何も言わずに居ました。

 

全焼した徐州の官庁のおかげで、いろんな混乱が起きましたけど、手早く動き始めたのが魯粛さんでした。

直ぐに人々に張闓の悪事に付いて説明し、昨夜起きた事件は張闓の悪事に耐えられなかった内部者の仕業であると事件を収めました。

官庁にあった書類も全部燃えてしまい、徐州は以後とても忙しくなりそうです。

 

 

一刀さんが目を覚ましたのは、張闓がいた屋敷が萌え尽くしてから2日が過ぎた日のことでした。

甘寧さんと周泰さんは直ぐに気を取り戻しましたが、毒にやられていた一刀さんは回復に時間がかかったのです。

 

一刀さんが目を覚ましたという話を聞いて、魯粛さんの横で事後処理を手伝っていた私は真理ちゃんと一緒に一刀さんの部屋に駆けつけました。

 

「一刀さん!」

「北郷さん!」

「…あ、二人も来たんだ」

「一刀さん!」

 

私はまだ寝床の上の一刀さんを抱きつきました。

本当に心配してたんです。

 

「雛里ちゃん…ごめんね」

「一刀さんが謝ることなんて何もありません」

「それと…ありがとう、真理ちゃん」

「あ……てわわ…」

 

思い出したのか、真理ちゃんは恥ずかしがりながらもずっと一刀さんのことを見ていました。

 

「………張闓は…どうなった?」

「……」

 

当然聞いてくると思っていましたけど、いざと答えるとなったらどう言えばいいか判りません。

一刀さんにとって、この結果は最悪のものになるでしょうから。

 

「倉ちゃんと呂蒙さんが二人で張闓から『氷龍』を無力化させられるという匕首を持って行ったのですが、失敗して張闓が暴れだして……」

「…!!まさか、倉が…」

「倉ちゃんは無事です。だけど、徐州官庁が全焼して、張闓もそのまま…」

「…………」

 

話を聞いた一刀さんの顔が曇りました。

 

「……どれぐらい死んだんだ」

「判りません。燃えてる時屋敷内には張闓一人しか居なかったらしいですけど…死体も全然見つかりませんでした」

「そうか…」

「北郷さん、遙火ちゃんは…」

「解ってる……はぁ、考えが多すぎてどこから整理すれば良いのか分からない…倉と左慈を連れてきてくれ」

 

真理ちゃんが倉ちゃんを庇ってくれる話ををしようとしましたが、一刀さんがそれを遮りました。

 

「…はい」

 

今回の事件で、一刀さんはほぼ何もできませんでした。

自分の手から離れたところで起きた出来事で衝撃を受けたはずです。

今回のことで一刀さんの心が傷ついてないか心配です。

 

 

 

一刀SIDE

 

どうすれば良いのか判らなかった。

僕が最初から一人突っ走って倒れたおかげでその後は完全にむちゃくちゃになってしまった、そうとしか思えなかった。

倉のことや、張闓のこと、蓮華のことと、そして真理ちゃんのこと……考えることが多すぎてどうすれば良いのか判らなかった。

全部考えるのをやめてどこかへ逃げてしまいたいぐらい……

 

「一刀さん、連れてきました」

 

雛里ちゃんたちが倉と左慈を連れて戻ってきた。

 

「一刀……」

 

倉は僕に怒られるだろうと思ったのか、離れたところでモジモジしていた。

 

「……こっちに来い」

 

僕が呼ぶと倉はゆっくりと僕が居る寝床に近づいてきた。

 

「倉」

「……うん…」

「お前が素がいい子だからな。お前がそこまでしたのならそうするしかない理由があったんだろうと思う」

「…え?」

「何も言わない。だからお前ももう気にするな」

「……でも…一刀…」

 

僕を見る倉の目が潤ってきた。

叱った方が彼女の気が晴れたのだろうか。

でも、僕はその気にならなかった。

 

最も、僕がこの件に置いて一番怒りたいのは他にいた。

 

「左慈」

「……」

「今回のこと、倒れた僕のせいもあるけど、僕が倒れた後皆を戦うようにさせたのは、お前だと思うのだけど……違うか?」

「……あなたの言いたいことは分かるわ。認めましょう。私の責任よ」

「…左慈のせいじゃない」

 

あっさりと自分の責任を認める左慈に対し、倉は左慈を弁護した。

 

「何があったか説明してもらおう。僕が気を失ってる間、何をしたのか」

「……あなたが倒れている間でも、『氷龍』を持った張闓は悪事を振る舞う。しかも以前とは違って今回は官吏の者だったから時期を失うと更に攻めにくくなる。だから、他の娘たちを説得して、遙火に私がある武器を持たせて呂蒙と一緒に行かせたの」

「武器?」

「『氷龍』の割れた破片で作った武器で、それを使えば氷龍を無力化できる……はずだったのだけどね」

「…失敗したのか」

「ううん、氷龍の力は消えてた。でも…持ってる人は強いままだった」

 

直接戦った倉がそう言った。

どういうことだ。

白鮫の時は暴走して、化物になった白鮫は氷龍を壊すと形もなく消えてしまった。

なのに今回は氷龍を壊してもなんともなかったと?

 

「武器が効果がなかったのか」

「そんなはずはないわ。私から言える可能性だと言ったら……その氷龍が彼に合わせて造られていた可能性ね」

「あわわ、どういうことですか?人に合うように氷龍が造られたって」

 

左慈は説明を始めた。

 

「元々、『氷龍』働き方というのは誰か自分を持った人の欲望を増幅させて、それを自分のちからの源にする、いわば寄生するものよ。だけど、この場合、『氷龍』の本体が剣ではなく、使ってる人間の体内にある。そう。まるで一刀、あなたのようにね」

「僕?」

「最初あなたが孫策に殺されかけてる時覚えてる?私が氷龍の鞘だった『鳳雛』をあなたの胸に刺した。その『鳳雛』はあなたに命を与えて、あなたの第二の心臓となった。そして、白鮫の時その力が充満した時現れたのが、今あなたが持っている剣の形をした『鳳雛』」

 

そう説明を聞いていた僕はふと僕の元に『鳳雛』がないことに気づいて雛里ちゃんの方を見た。

 

「あ、邪魔になるかもって思って外して今私たちの部屋にあります」

「…そうか」

「続けて良いかしら」

 

左慈は話を続けた。

 

「もし『氷龍』が一刀のように自分の存在を人間に吸収させて、内部から寄生するようになったら、表に出ている武器は形だけよ。本当の『氷龍』は使ってる人の内部にある」

「でも、誰がそんなことをするんですか?自分の体に剣を差し込むなんて」

 

確かに真理ちゃんの言うとおりだった。僕の場合僕の意志でやったわけじゃないが、張闓が自ら剣を胸に刺したとは思えない。

 

「そうね、誰かその人間に剣を刺したでしょうね。それに、誰も刺したら成功するって保証があるわけではないわ。失敗したら、以前暴走した白鮫みたいになるでしょうね……あぁ、一刀の場合は出来ると確信できたからやったのだからそんな恐い顔で見ないで欲しいわ、雛里ちゃん」

「あわわ……そうだったんですか」

 

一瞬雛里ちゃんの顔が険しくなって僕は何事かと思った。

どんな時でも僕の心配だけはしっかりしてくれるんだよね。

 

「『氷龍』の本体は肉体を持っているわ。こんな真似、難しいことじゃない。でも面倒くさいのよ。敢えてこんな手段を使ってくるというのは……一刀、向こうであなたを本気で殺しに来ているのよ」

「何で僕を…」

「前にも言ったわね。あなたが『鳳雛』の力を持っているから、そしてあなたが北郷一刀だから……二重の意味で奴はあなたを憎んでいるわ」

「………」

「この先、あなたが行く道に氷龍が今回のように待ち構えていることは間違い無し。今回はなんとかこんな形にでも収まったけど、次はもっと大きな惨事が起きるかもしれないわ」

 

僕は言葉に迷った。

どうすれば良いのか。

このまま旅を続けるとしても、これ以上の棄権が待ち構えているのなら…いっそここでこの旅を辞めて水鏡先生のところに戻るべきなのか。

いや、そうしたところで僕を狙ってくるだろうということは変わらない。そしたら、僕だけじゃなく……雛里ちゃんたちも危険に巻き込むことになる。

 

一層のこと……この先僕一人だけ旅をすれば……

 

 

 

 

「私はどこまでも一緒に行きます」

 

そんな僕の考えがまるっきり分かるかのように、雛里ちゃんが私に言った。

 

「雛里ちゃん……」

「一刀さんはいつも独りになったら何もかも悪い方向に進んでしまうんです。私と離れていたら、一刀さんなんて一週間も立たずに野垂れ死にです」

「……さすがに酷いな」

「酷くありません」

 

まあ……僕が今まで一人で行動していいことなかったのは認める。

でも、だからと言って雛里ちゃんや皆をこれ以上の危険に巻き込むのか。

 

「この先は穏やかな旅じゃなくなるよ」

「一刀さんと一緒に旅して穏やかに居られた時よりあわわ言う間もない程忙しい時の方が多かったです」

 

これまた反論できない。

 

「今更危険だと知った所で立ち止まれるほど、私たちが歩いてきた道は短くありません。荊州で江賊を討って、豫州の民を助けて、ここ徐州の暴政者までも止めたんです。私たちは初めて決めたように、弱いというだけで犠牲にされるしかない弱い人たちを助けながらここに来ました。今更それをやめるなんてできません」

「……」

「てわわ、私たちだって同じでしゅ」

「…うん、ずっと一緒」

 

真理ちゃんと倉もそう言う。

 

……やっぱり、皆が居ないと僕も何も出来ない。

 

「じゃあ、これからもずっと一緒に行こうか」

「はい」

「はい」

「…うん」

 

 

そうやって、新たな危険を知りつつも、僕たちは一緒にその危険さえも乗り越えようと誓いあった。

 

 

 

 

蓮華SIDE

 

「一刀が起きたというのは本当?」

「はい、今さっき目を覚ましたらしいです」

 

官庁の修復の仕事を監督している深月の側にいた私は亞莎からそんな話を耳にした。

亞莎とは張闓を殺したその日に真名を許した。

 

「どうなさいますか」

「……今は鳳士元たちが居るのよね」

「多分そうだと思います」

「…じゃあ、会うのは後にした方がよさそうね」

「……」

 

私の隣には休んでいなさいと言っても聞かずに私に付いてきた思春が居た。

 

「私が後で窺うって一刀に言っておいてくれるかしら」

「はい、分かりました」

 

亞莎はそう答えて去っていった。

 

「蓮華さま」

「……」

 

一刀は、私を連れて行くことを拒否した。

それは分かっている。

だけど…だからと言ってお姉さまの元へ戻るつもりはない。深月の所に居るつもりもない。

 

「私、帰らないわ」

「え?」

 

以前深月が言った言葉ではっきりと分かった。

私がお姉さまの近くや、孫呉の人たちの近くに居ては、以後孫呉の王の座を争う内分が起きるかもしれない。

まだバラバラになってい呉の旧臣の中には、お姉さまが王になることを良しとしない者たちも居る。

そんな人たちが私を王に立てようとして、お姉さまに向けて反乱を起こすかもしれない。

今の私は、お姉さまが治める孫呉に置いて憂いでしかない。

 

「思春、私に付いてきてくれる?」

「……!」

 

思春は私のことを理解してくれているのだろうか。

思春は元々江賊だったから、孫呉には縁がない。お母様との出来事は許したけど、今の孫呉の人々の置いてあまり親しくできる対象ではない。

明命は豫州に帰ってもらわないと駄目。あの娘は元々呉の武将。私の勝手な決心で連れていけない。

 

「…蓮華さまがそう心を決めたのでしたら、私には止める術がございません。ですが、どこに居ても蓮華さまは孫呉の姫です。それを忘れないでください」

「孫呉の姫……ね」

 

その名のせいで、一刀の側に居ることさえも出来ない。

お姉さまと一緒に居ることも出来ない。

 

私は産まれて初めて、自分の身分を悔やんだ。

 

 

 

 

真理SIDE

 

てわわ……

 

「……」

「……」

 

てわわ…

 

てわわ!!!

 

なんでしゅか、なんでしゅか、これ!

 

なんで私北郷さんと二人だけで部屋に残されたんでしゅか!!

 

「真理ちゃん」

「てわわ!」

「!」

「………」

「……真理ちゃ」

「てわわ!」

「しっかりして、言葉が通じてないよ」

 

わかってます。

何で一人で残されたのかは解ってるんです。

 

北郷さんが毒にやられて戻ってきた時、北郷さんにキスをしたんです。

きっとその事で残されてるに違いないです。

でも、いい機会です。

今度こそ、今回こそちゃんと言うんです。

私の気持ちを……

 

「北郷さん、好きです!結婚してください!」

「え!?」

 

言いました。言ってやりまし……

 

「……てわっ!ち、違いましゅ!後ろはまだ早いでしゅ!」

「………」

 

北郷さんが頭を金槌で打たれたかのように固まっているのを見て私はただ慌てながら虚空で手を振ってるだけでした。

 

「てわわ、だからあの、その……好きなのは本当でしゅ。結婚とかそういうのは本音では考えたことがまったくないとは言い切れませんけど、今は取り敢えず北郷さんに女の子として見てもらえたらそれだけでもいいです」

「……じゃあ、この前僕にキスしたのってやっぱり…」

「…はい」

「その前に僕に何か言おうとしたのは…?」

「……好きって…言おうとしました。雛里お姉さんに負けない程、私も北郷さんのことが好きって……」

「………」

 

北郷さんはまた黙り込みました。

そして暫くして口を開けました。

 

「僕は……真理ちゃんのことは妹みたいに思ってたんだ…倉みたいにね」

「遙火ちゃんは、どっちかと言うと娘みたいな扱いですけどね」

「……とにかく、真理ちゃんのことそんなふうに思ったことはないんだ。今回残したのも、以前キスしたこと、あんなこと誰にでもするのは良くないというつもりだったんだ…」

「誰にでもとかじゃありません。北郷さんだったからやったんです。北郷さんのことが好きだから……助けたかったから」

「それでも…僕は真理ちゃんのことを女の子として見ようとは思っていなかったよ」

 

やっぱり…そうですよね。

私だって、最初は近くに居られるならそれで良いと思っていたんですから。

雛里お姉さんと北郷さんが一緒に仲良くしている姿を見ても、妬いたりなんてしたことありません。

でも、最近は馬車に一緒に座っている二人を見ていると、私もあそこに居たいという気持ちがどうしても抑えきれませんでした。

 

もう、妹のように見られるだけじゃ、ただ側に居るだけじゃ満足できません。

 

「二番目でもいいです」

「…!…真理ちゃん」

「北郷さんが雛里お姉さん以外の人にそういう気持ちになったことがないというのはわかります。長い間私のことを妹のように思っていたことも、私がその立場に何の文句も言ってなかったのですから。だけど、本当に北郷さんのことが好きなんです。雛里お姉さんにも負けないぐらいに、北郷さんのこと……愛しています」

「……!」

 

北郷さんは黙り込みました。

 

……いけなかったのかもしれません。

今まで溜まりに溜まった気持ちを、無理矢理ぶつけすぎたのかもしれません。

 

だけど、ここに来て否定されたくはないんです。

 

「僕は雛里ちゃんのことが好きだよ。愛している。真理ちゃんのことも…嫌いだと思ったことは一度もない」

「はい」

「今の僕じゃ真理ちゃんの気持ちに満足に応えられそうにないよ。でも、真理ちゃんとギクシャクになるのも嫌だ。……少し、待ってくれないか」

「…構いません」

 

取り敢えず、否定されなかっただけでも安心…といったところでしょうか。

 

「そ、それじゃあ私はもう部屋に戻ります。まだ病み上がりですから、しっかり休んでください」

「あ、うん…」

 

安堵の息が出ようとするのをぐっと我慢して、私は急いで部屋を出て行きました。

そして、門を閉じた後やっと息を吐きました。

 

「やっと……言えたよ」

 

この気持ち、例え報われないものでも構わない。

伝えられただけでも…何ヶ月…一年以上悩んだ心が安らぐのを感じました。

 

 

 

 

 

一刀SIDE

 

「……」

 

真理ちゃんが出て行った後、僕は複雑な感じになっていた。

 

何故なら……

ふと振り返ると…

 

 

なんで僕は真理ちゃんをこの旅に連れてきたんだろう。

 

雛里ちゃんや倉は、輩元紹との出来事で絆があった。

でも真理ちゃんとは、まったく別の件で、僕個人として無理矢理連れてきた感が強かった。

本当に僕は真理ちゃんについてどうとも思っていなかったのか。

単に妹に感じていたのか。ただ独りだったあの娘が可哀想だったからここまで連れてきたのだろうか。

今思えば、旅立つ前、暫く真理ちゃんと二人きりになったことがあった。

百合さん迎えに行く時だったけど、その時付いてきた真理ちゃんは旅を始めた時よりもずっと積極的だった気がする。

 

もしかしたら…その時からもう……ずっと、真理ちゃんは我慢していたのかもしれない。

僕と雛里ちゃんとの仲がギクシャクになるのが嫌だったから……。

 

知っていて知らないフリしてきたんじゃないのか。

 

雛里ちゃんが今の僕を見たらどう思うだろうか。

 

コンコン

 

そう思っていたら誰かがまたノックする音がした。

今度は誰だ。まだ僕に追い打ちをかけるものが残ってるか。

 

「はい」

 

うん?でも、ノックの風習は確か普通の中国の人なら持ってないはず…となると、

 

「一刀、調子はどうなの?」

「蓮華」

 

入ってきたのは蓮華だった。

雛里ちゃんたちと一緒に来なかったと思えば、甘寧と一緒来ていた。

 

「思春、外で待っていてくれるかしら。二人で話したいの」

「御意」

 

蓮華はそう言うと、思春は外から門を閉めた。

 

「甘寧は元気そうだな。周泰はどうだ?」

「明命も大丈夫よ。二人とも二日前に起きたから…あなただけ起きなくて心配してたわ」

「…心配かけてすまなかったな」

 

真理ちゃんとそんな話をした直後なせいか。

ふと蓮華を連れて行かないと言ったのが妙に心を針のように刺した。

 

「明日にでも魯子敬に会って謝罪しようと思うよ」

「一刀が謝ることなんて一つもないわ」

「でも、結果的には僕が出すぎた真似をしたおかげで事を大きくしたし、徐州の人々にも迷惑がかかった」

「表では張闓を死んだのは不意の事故ということになっているけど、徐州の人々は深月がやってくれたことだと思っているわ。皆深月に感謝しているのよ。元々なら、あなたたちに向く名誉だわ」

「…僕は何も出来てないさ」

 

蓮華は真理ちゃんが座ってた椅子に座って私に向けて言った。

 

「一刀、あなたはあなたが思っているよりももっとすごいことをしてきたのよ。分かってる?」

「……どういう意味だ?」

「張闓を殺したのがあなただと皆に知らせて、あなたを天の御使いだと知らせれば、今この徐州の州牧になることさえも可能よ」

「…そんなことしようと思ったこと一度もない。それに、僕たちば旅を続けなければならないから」

「豫州の時だってそうよ。お姉さまにだけいい事させて、あなたは結局何も得なかった」

「人を助けられた。それだけで十分だよ」

「……やっぱり、あなたという人は損する男ね」

「若い時の苦労は買ってでもやれとも言うからね」

「…ふふっ」

 

蓮華は笑った。

以前彼女の顔が歪むのを見たから、少し気が晴れた気がする。

 

「…一刀、私、旅に出ようと思うの」

「…え?」

「姉様の所に帰らず、あなたみたいに旅をするわ」

「……蓮華」

「分かってるわ。あなたに付いて行こうとは思ってないの。でもあなたを見て分かったわ。私ももっといろんな所を見て回りたいの」

 

蓮華の顔に悲しみはなかった。

ヤケクソ、というわけではないようだ。

孫策の元へ帰るよりも…蓮華にとってはいい選択なのかもしれない。

 

………なら

 

「蓮華さえ良ければ、一緒に来ても良い」

「え?」

「自分で旅をするって決めたんだ。名目上では別々でも、一緒に目的地に向かって旅する事にしておけば問題ないさ」

「…本当に、良いの?」

「旅をするのは蓮華だからね。僕に許可を取る必要はないさ」

「……一刀!」

 

そう言うと突然蓮華が寝床の上の私に抱きついた。

 

「ありがとう、一刀!」

「ちょ、ちょっと、蓮華。止せって」

「あわわーー!!!」

 

…げっ……!

 

「なにしてるんでしゅか!!」

「ほ、北郷さん、私にはああ言っておいて、孫権さんと…!」

「ちょ、ちがっ!これはそういうんじゃなくて」

「…浮気」

「ち、違うよ、鳳士元。私はただ個人的に用事があって…単に偶然行き先が同じなだけで…」

「あわわ、うるしゃいでしゅ!真理ちゃんはまだ良いとして、どうして孫権さんまで割り込んでくるんでしゅか!」

 

あぁ…これはいきなり騒がしくなりそうだな……。

それとも、今まで無理矢理蓋をしていたものがついに爆発したというべきか…

 

「一刀さん!」

「北郷さん!」

「一刀!」

 

一応病み上がりなんて勘弁してくれーー!

 

 


 
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