No.434643

IS~音撃の織斑 四の巻:荊鬼、到来

i-pod男さん

姉に捨てられ、魔化魍と戦う猛士の鬼、石動鬼に拾われた織斑一夏。鬼としての修行を積み、彼は何を見る? ISと響鬼のクロスです

2012-06-09 12:52:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8238   閲覧ユーザー数:7883

四の巻:荊鬼、到来

 

Side 一夏

 

入学する数日前、俺は国際IS委員会の代表と呼ばれる奴に呼び出された。当然師匠も同伴したが。

 

「入学して頂ければ、貴方の身の安全は確保されますので・・・・」

 

明らかに相手方は俺と師匠の醸し出すさっき届きに飲まれて怯えている。

 

「成る程。で、世界各国の政府から狙われたくなければ大人しく言う事を聞けと言う事か?」

 

師匠が核心を突いた。

 

「い、いえいえ決してそのような事は・・・!」

 

「分かった。お前らの思惑に乗ってやるよ。ただし、俺の事を優先するな。そんな事をすれば他の奴らがぽっと出の俺に蔑ろにされるからな。他の代表候補生と分け隔て無く接するんだ。」

 

俺はそいつを思いっきり睨んで威嚇した。

 

「もしそうしなければ、俺達はお前を捜し、お前を見つけ、」

 

「「お前を海に沈める。」」

 

それだけ言って俺達はその場を後にした。もう後には戻れない。出発は明日だ。

 

 

 

 

 

 

 

「わざわざ来なくても良かったんですよ?初めて遠足に行く子供じゃあるまいし。」

 

「そうは行かない。織斑千冬がどんな奴か見てみたくてな。」

 

「もう・・・勝手にして下さい。どうせ駄目だって行っても来るんですから。」

 

俺達は現在モノレールの中でそんな軽口の応酬を繰り広げていた。荷物は数日前に学園に搬送した為、手ぶらである。まあ、念の為という事もあって師匠は両袖に銃を、俺は竹刀袋に入れた直刀を持っているが。

 

「一夏、すまないな。お前だけにこんな重荷を背負わせて。」

 

師匠がこんなにしおらしく見えたのは本当に久し振りだった。

 

「修行の一環と思えば軽い物ですよ。それにメンタルの鍛錬は、トウキさんから嫌と言う程レクチャーされましたし。」

 

「そうか・・・・・なら良いんだが。」

 

そうこうしている内に学園に着いた。学園への通行手段は先程まで乗っていたモノレールか航空機位しか無いらしい。全く島一つを学園に作り替えるなんて、日本政府は一体税金を何に使っているのやら。何が悲しくて骨身を削って作った金をドブに捨てる様な真似をしなきゃ行けないんだ。ホームでしばらく待っていると、黒いビジネススーツに身を包んだ女がやって来た。キリッと下目に後ろで束ねた黒い髪の毛・・・・・・織斑、千冬が。

 

「い、一夏・・・?一夏なのか?」

 

驚いてやがるな。芝居じゃ無さそうだ。そりゃ相加、音沙汰無かった弟が突然ISを動かす事が出来る上自分の目の前に立っているんだからなあ。

 

「そうですよ、貴方が何年か前に自分の栄光の為に捨て石にした『元』弟、五十嵐一夏ですよ。」

 

俺は目と口調に精一杯の侮蔑と嫌悪を籠めてそう言った。

 

「ち、違う、私はあの時まだ」

 

「まだ知らなかった、なんて言い分けにはならないぞ?そもそも間違い無く狙われる筈の自分の弟を何故大会に招待した?人目が多い方が誰も手を出さないとでも思ったのか?」

 

師匠の声が静かに、しかし明確な怒気と殺気を孕んでいる。

 

「甘いな。人の目は大会の競技に集中している。そんな状況だったら馬鹿でも一夏(コイツ)を連れ出せるぞ。俺がたまたま通りかかったから良かった様な物の、遅れてたら恐らくコイツは死んでいたぞ。さっさと手続きを済ませて、俺の弟子に二度と近付くな。コイツも言っていたがお前は姉になる資格なんか無いんだよ。自分の弟の苦しみを心の底から理解もせずに蔑ろにする様な(ヤツ)に、姉を名乗られる筋合いはコイツには無い。こいつの姉を名乗る資格がある奴を俺は三人知っている。お前よりも断然適役だ。」

 

その三人は恐らく立花姉妹とみどりさんの事だろう。あの三人は本当に面倒見が良いからなあ。織斑千冬の方は明らかにショックを受けているが、どうにかそれを隠そうとしている。だが顔の引きつり様でバレバレだ。

 

「それじゃあ師匠。俺がそっちにいない間、魔化魍(ヤツら)の討伐、よろしくお願いします。」

 

「ああ。気をつけろよ。お前はこの世界で唯一のイレギュラーだ。目的の善し悪しに関係無くお前に接触して来る奴らは現れる。油断するな。」

 

俺の肩に手を置いてそれだけ言うと、再びモノレールに乗って彼方へ消えた。

 

「さてと、行きましょうか、織斑先生。」

 

「ま、待て!お前は何故そこまで変わってしまった?!何故私を姉と認めないなどと言うのだ?!」

 

「黙れ。」

 

俺の肩に乗った手を振り払って竹刀袋の中に入っていた刀を抜刀し、首筋に突き付けた。幸いホームには俺達二人以外は誰もいない。だから言いたい事は言える。

 

「お前の所為でどれだけ俺が苦しんだと思っている?俺を、栄光への踏み台、礎にした癖に・・・・・何故姉と認めないだと?お前、寝ぼけているのか?はっきり言っておくぞ。俺はお前を姉とは認めないし、俺はお前の弟じゃない。織斑の姓は過去とともにとっくに捨て去った。俺の名は五十嵐一夏だ。二度と俺の名を馴れ馴れしく呼ぶな。」

 

再び刀を鞘に納めて竹刀袋の中に隠すと、学園の方に向かって歩いて行った。

 

「早く手続きを済ませないと、遅れちゃいますよ?新入生と教師が揃って遅れましたなんて。恥ずかしいですからね。」

 

そう言って俺は歩き去った。手続きは円滑に済ませる事が出来た。そして、ISで教官と戦闘を行う入試試験で俺は圧勝した。有した時間は一分も無い。やはり本当の死地に赴いた奴とそうでない奴の差は、次元を異にする程大きいと改めて実感した。ISの操縦者保護の『絶対防御』なんて貫いてしまえば何の意味も無い。俺は一年一組の教室の外で待たされた。それも織斑千冬が担当しているクラスだ。副担任の山田とか言う人の方がまだマシだな。

 

「それでは入って来て下さい。」

 

「五十嵐一夏だ。趣味は音楽鑑賞と鍛錬。特技はブレイクダンスだ。よろしく。」

 

約一名俺から見て右端の髪をポニーテールにした女が雷にでも打たれたかの様な顔をしていた。誰だっけか?まあ良いか、忘れちまったしどうせ大した事じゃない。そして俺の自己紹介の直後、教室が音で爆発した。改造されたヨブコしか出来ないかと思っていたが、案外人間の力は侮れないな。ガラスが震えたんだぞ?

 

「では空いている席に座れ。」

 

座って直ぐに授業が始まった。参考書を読んでおいて正解だったな。無駄な予備知識かと思っていたが、師匠曰く、無駄な知識などこの世に存在しないらしい。どうやらこれは本当の様だ。何の差し支えも無く授業はスラスラと進んで行った。ここまでは良いが、問題は休み時間だ。この教室の女子のみならず、他学年の女子が挙ってやって来た。これ以上俺のストレスに負荷をかけるな・・・・

 

「ちょっと良いか?」

 

さっきのポニーテールの女が救いの女神に見えるのは気のせいだろうか?とりあえず承諾して廊下に連れ出された。教室じゃ息が詰まるかと思ったが、ここならある程度落ち着ける。

 

「で、何の用だ?」

 

「一夏、お前は今までどこにいた?!」

 

「突然怒鳴るな、騒々しい。そもそも、何で初対面の相手にそんな事を教えなきゃならない?」

 

「しょ、初対面ではない!私はお前の幼馴染みだ!篠ノ之箒だ!忘れたのか?!」

 

まあ、恐らく初対面ではないのだろうが、敢えてそう言っておく。実際俺の記憶にはほぼ残っていない。

 

「ああ。そもそも俺の記憶の中にはお前みたいに強引で横柄な奴は記憶に無い。用事がそれだけなら俺は戻るぞ。まあ、息が詰まってた所を連れ出してくれたのは、感謝する。」

 

それだけ言って教室に戻って自分の席に着いた。ノートを整理していると、また別の女が近付いて来た。金髪碧眼の如何にもお嬢様と言った感じの風体だ。こう言うタイプは嫌いなんだよな。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

「今は少し忙しい。悪いが後にしてくれ。」

 

「まあ?!何ですって?!この私がワザワザ声をかけているのですからそれ相応の態度と言う物があるのではなくて?!」

 

「初対面の相手につっけんどんに接する様な人に対する態度なんかこの程度で十分だと思うがな。」

 

相変わらず顔はノートに向けたまま会話を続けた。こう言う奴は本当に嫌いだ。女尊男卑の風潮に犯されて頭では女=偉い何て言う論外な図式が出来上がっている。おめでたいもんだな、男の遺伝子がなければ自分は存在すらしないってのに。

 

「その不遜な態度、私をイギリス代表候補生、セシリア・オルコットと知っての狼藉ですの?!」

 

うるさい奴だ。コイツ一遍死んだ方が良いんじゃないか?しかも狼藉って・・・・お前は江戸生まれの代官か何かか?

 

「いや、初めて知ったよ。そもそも俺は各国内部の事情に詳しいと考えるのがおかしいぞ?」

 

「くっ・・・大体、貴方ISの事を何も知らない癖に良くここに来れましたわね。初の男性適正者と聞いて少しでも期待した私が愚かでしたわ!」

 

正論で押されて一瞬黙ったが、再び噛み付いて来る。懲りない奴だ。

 

「ああ、確かに期待したお前が愚かだ。会った事も無い様な奴に何かを期待する事自体が無駄なんだよ。後、俺は別にここに来たくて来た訳じゃないんだ。保身の為だよ。お前の政府も含めて世界各国に俺のデータ目当てに付け狙われるのはごめんだからな。誰が進んでこんな女尊男卑の象徴である糞溜めに来るか。お前みたいな考えを持つ奴がいる所為で、世の人間は苦労してるんだよ。それぐらい気付け、((貴族様|ブルジョワ))。」

 

「なっ・・・!」

 

開いた口が塞がらないか。

 

「まあ良いですわ。私入試主席で、唯一教官を倒したエリートですから!」

 

開き直るな、うざいぞ。

 

「俺も教官倒したぞ?女子の中ではお前だけって言う三流のオチじゃないか?そろそろ席に戻らないと、怖〜い先生がその頭を空き缶みたいに拉げさせるぞ?」

 

そう言った瞬間に次の授業を知らせるチャイムが鳴ったので、オルコットも席に戻らざるを得なくなった。戻り際に俺を睨んだが、怖くも何ともない。そして入って来たのは、いつもの山田先生ではなく、織斑千冬だった。

 

「授業の前に、このクラスの代表を決めなければならない。自薦他薦は問わないぞ。決まった場合一年間変更は無いからそのつもりで。」

 

「はい!私は五十嵐君を推薦します!」

 

「私も!」

 

「おい、待て。勝手に決めるな。」

 

「自薦他薦は問わないと言った筈だ。推薦された以上は腹を括れ。」

 

ちっ・・・面倒な事になった。

 

「お待ち下さい!そのような選出は認められませんわ!」

 

突如後ろで反対の意を示す声が上がった。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
3
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択