No.434321

IS~音撃の織斑 一の巻:新たなる鬼

i-pod男さん

姉に捨てられ、魔化魍と戦う猛士の鬼、石動鬼に拾われた織斑一夏。鬼としての修行を積み、彼は何を見る? ISと響鬼のクロスです

2012-06-08 20:10:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:11994   閲覧ユーザー数:11602

一の巻:新たなる鬼

Side 一夏

 

「うおおおおおおお!!!」

 

俺は音撃弦雪月刃(せつげっぱ)をひっくり返ったバケガニの胴体に深々と突き刺した。バタバタと足や鋏を振り回して抵抗させるが、振り落とされない様に上手くバランスを取った。その間に音撃震羅雪(らせつ)を雪月刃に取り付けて掻き鳴らした。

 

「音撃斬、雪崩嵐(なだれあらし)!!」

 

清めの音を直接体内に流し込まれたバケガニは呆気なく爆散して塵になった。同時刻、師匠も背中に縦から二つに割れた音撃弦斬劉(ざんりゅう)雷火(らいか)を背負って右手には音撃管陣風(じんぷう)とそれの先端に取り付けられた音撃鳴鎌鼬(かまいたち)を持っていた。師匠は弦の鬼だが、管も太鼓もそれをメインとしている鬼の先輩達にも引けを取らない程の腕前を持っているんだ。鬼になった期間の最短記録を持つヒビキさんとほぼ同じ記録を持つ、言うなれば天才だ。

 

「良くやった、一夏。これでお前も、一人前の鬼だ。お前には、まあまだ教える事はあるが、独り立ちは出来る。もし何かがあれば、遠慮無く俺や、たちばなの皆を頼れ。良いな?」

 

「はい。」

 

俺も、師匠から弦だけでなく、管、太鼓の手解きを受けて、時には呪術も教えてもらった。

 

「それはそうと、お前、もう鬼になる時の名前は決めたのか?」

 

「はい。しばらく考えてましたけど・・・・荊鬼(いばらき)なんてどうですか?妖怪でも茨城童子って言うのもいますし、それに因んで付けたんですけど。」

 

「イバラキ、か。良いんじゃないか?俺は好きだぞ、その名前。じゃあ、これからも関東支部での魔化魍討伐、頼むぞ、イバラキ。」

 

「はい!!」

 

俺は嬉しかった。師匠に鍛えられて数年、俺はようやく一人前の鬼になる事が出来た。

 

「そうそう、みどりから卒業祝いにと、お前に渡したい物があるから預かってくれと言われた。」

 

師匠は車のトランクからアタッシュケースを二つ、内一つは短めの桐の細長い箱を四つ取り出して開けた。

 

「あ・・・・これ・・・・!!」

 

「そう、お前専用の音撃管断空(だんくう)、音撃鳴木枯(こがらし)、音撃棒白蓮(びゃくれん)、音撃鼓炎零天(えんれいてん)。そしてこっちは、俺とカブキからの卒業祝いだ。」

 

桐の箱の中身は仕込み杖の様な鍔の無い直刀、長尺の刀、そして刀の鞘二本の先端を溶接した一対の忍者刀。これの値段と価値は計り知れないだろう。テレビで刀を作るのに少なくとも一年以上は掛かると聞いた事がある。それを四本も・・・・

 

「これはな、お前が俺に弟子入りして直ぐに知り合いの刀鍛冶に作らせた。これには溶かした鬼石も玉鋼に混じっている。当然呪術の付加も出来るぞ。変身出来ない時どうしても必要になったら使え。これはお前にしか使えない様に関東支部の皆に封印を掛けてもらった。」

 

「支部の皆が・・・・ここまで・・・・」

 

「ああ。忘れるなよ。俺達猛士は、お前の兄であり、姉であり、父であり、母である。お前の家族だ。お前もいつかその立ち場に登る。頑張れよ、イバラキ。」

 

俺は思わず涙腺が緩んで泣きそうになるのを必死に堪えた。

 

「はい!!ありがとうございました!!」

 

「さてと、今夜はゆっくり休め。メシは俺が作るからな。明日からは本格的に変身した状態で俺とスパーリングをするぞ。」

 

「えええええ?!無理ですよ、勝てませんよ!!」

 

「無理じゃないし、勝てなくはないぞ。俺だって突き詰めて行けば血肉の通う只の人間だ。」

 

「修行の鬼のくせに・・・・・」

 

ぼそりと言ったが、その瞬間

 

バキャッ!!

 

拳で頭を殴ったとは思えない様な音が響いた。

 

「いってぇえええええええ!!」

 

「口は災いの元とは良く言った物だな。・・・・・ん?あれは・・・・姫と童子・・・!」

 

「え!?」

 

それを聞いて俺は直ぐに腰の音角を取り出して開き、手首に軽く打ち付けて額にかざした。師匠も左手首に巻き付いている鬼弦、音響の弦を弾いた。師匠の周りには灰色の旋風と雷が現れ、俺の周りは竜巻の様に立ち上る緑色の炎とその炎が帯電するかの様にちかちかと時折赤く光った。

 

「っらあ!」

 

「はあっ!」

 

一人はメタリックシルバーのボディーに紺色の前腕と隈取り、そして前に突き出た一本の角を持つ鬼になった。これが俺の師匠の鬼の姿、石動鬼だ!

 

俺はと言うと、暗緑色のボディーに赤い隈取りと前腕、際立つ三本の角を持つ。俺が鬼になった時の姿、荊鬼。両腕にはショウキさんみたく巨大な鉤爪が付いていた。使えるかもな。

 

「「鬼か・・・・鬼ならば、殺す。」」

 

姫と童子はそれぞれ姿を怪童子と妖姫に変え、俺達に襲いかかって来た。見た目からしてヤマアラシか。俺達に向かってきながらも口から針を飛ばして来る。師匠は音撃管でそれを全て撃ち落とし、俺は新調した音撃棒白蓮の先端に付いた鬼石に己の気を練り上げた。

 

「はああああああああ・・・・・!!!!」

 

そして二本の音撃棒から伸びた炎の刃でまず童子を切り裂いた。怯んだ所で至近距離から鬼火を口から放った。

 

「ギャアアアアアアアアア!!!!」

 

童子は灰になった。

 

「いきなりか。姫も頼むぞ?」

 

どうやら師匠は援護の方に徹する様だ。いつもなら先陣を切って魔化魍を倒すのに。

 

「了解!」

 

 

「はい!!」

 

今度は姫の体に音角を変化させた音叉剣を突き立て、炎を纏った状態の音撃棒を両側頭部に叩き付けた。姫の法も呆気なく倒してしまう自分が恐ろしい。

 

「な?言っただろう?お前はもう一人前だと。ほら、帰るぞ?」

 

「はい!」

 

やっぱりこの人に付いて行って正解だった。

 

Side out

 

 

 

 

 

Side 千冬

 

「千冬さん、それじゃあやはり一夏はまだ・・・・・?」

 

「ああ、残念ながら、誘拐されてドイツ軍からの通達があって居場所を突き止めたあの日から行方不明だ。」

 

私は織斑千冬。ISの元日本の代表、そしてモンド・グロッソ二連覇を達成した。だが、そんな事では私の気持ちはちっとも晴れなかった。肉親である私の唯一の弟が行方不明になってしまったのだ。決勝戦が終わってから直ぐにドイツ軍からの通達があった。そこへ着いた頃には、誘拐犯の一味と思われる連中が地面に転がされており、私の弟の姿はどこにも無かった。

 

「そう、ですか・・・・」

 

今私の前に座って落胆しているのは篠ノ之箒。私の知り合いであり、一夏に好意を抱いている幼馴染みだ。彼女もまた一夏の安否を私並みかそれ以上に気遣っている。もう一人幼馴染みはいるが、まあこれは後で話すとしよう。一夏、お前はどこにいる・・・・?生きているなら、何か生きていると言う知らせをくれ・・・・こんなどうしようも無い姉を許せとは言わない。ただ、私はお前の事を今でも心配していると言う事を分かって欲しい。


 
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