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超次元ゲイムネプテューヌ 3dis Creators_013

『召喚美少女ネプ子』
主演・脚本・演出・効果音:ネプ子

偉そうに仁王立ちするネプ子。

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2012-06-06 19:13:22 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:841   閲覧ユーザー数:818

 

 

 

 

 

 

 

第1章 ゲイム・スタート

 

 

 

 

 

C013:着信!フォンギア!

 

 

 

 

 

 

○プラネテューヌ・禁制領域タマルバー最深部・空中スクリーン・<イベント>

 

リンダ「ほらほら早くしねェと、うっかり手が滑って”これ”押しちまうぜェ?」

 

    空中の映像に映るリンダが、ナメているかのような不快な態度で左手に握られたスイッチボックスを指さす。

    押したら爆発しそうなフォルム。

    リンダ、わざと苛立たせるようにボタンを押そうと指を伸ばしては急に引っ込める。

 

リンダ「ん~~~うわぉ……お~~~うぇ~いっ! んんっ……ねぇ~いっ! ま、せいぜいねェ頭で考えてとっと──」

モコの声「ねぇーこ──ザッ──な──ザッ──のー?」

 

    映像から姿が見えていないモコの声が聞こえてくるが、所々ノイズで聞こえない。

    リンダ、囲いになっている仕切りに向かってジェスチャーをつけながら怒鳴る。

 

リンダ「な!? お前! ヘッドセットいじんじゃねえよ! スピーカー! なんか丸っこくなってるとこ耳につけろ耳に!」

モコの声「──ザザッ──こーおー?」

リンダ「そう! その位置!」

 

    アイエフ、モコの声を確認し、映像中のリンダと会話ができることを根拠にモコに呼びかける。

 

 

 

○同・地上・<イベント>

 

アイエフ「モコ? モコなの!?」

 

    モコ、アイエフの声にこたえる。

 

モコの声「ん? あいちゃん? 今どこー?」

 

    アイエフ、気が向いたので友人に電話をかけるかのようなモコの質問に答えず、視線をネプテューヌ達に向ける。

    コンパ、自分達に視線が向けられていることに気付き、固まった体制のままどう答えようか混乱。

 

コンパ「うぇ、え~~……モコちゃんの方を選んでほしいですけどそうしたらギアちゃんが……はぅ~~~」

モコの声「ねぇどこー?」

 

    クランカ、タブレット内のウインドウを切り替えて『Code Analyze...』のメーターが89から90になるのを確認する。

    ゼリー状になっている巨大なスライヌの中に閉じ込められているネプギア、びくんと一瞬身体を震わす。

 

ネプギア「うっ……く……」

クランカ「優柔不断だとチャンスと言うものはどんどん離れていくでしゅよぉ?」

 

    クランカ、タブレットをフリックしてアイエフから距離をとり、静止しているネプテューヌ頬を指でなぞる。

 

ネプテューヌ「いぃっ!?」

 

    これに背筋を凍らせるネプテューヌ。

 

アイエフ「ッ!!」

 

    再びクランカに対しカタールで攻撃を仕掛ける。

    クランカ、ネプテューヌを押し倒す。

    ネプテューヌはマネキンの如く一切体勢を変えずに地面にたたきつけられる。

 

ネプテューヌ「あいたっ!?」

アイエフ「ちょっ!? あわっ!?」

 

    アイエフ、ネプテューヌにつまずき、のしかかる。

    気にせずにすぐに起き上がり、またクランカの元へ走る。

 

アイエフ「くぅっ!」

 

    今度はタブレットをめがけかすめ取るよう横振り、避けられるもすぐに180度転回しはたき落とすように振る。

    クランカ、それも避けてボクシングのジャブのように突いてくるアイエフを嘲るかのごとく、やる気のない様でそれも避ける。

 

アイエフ「このッ!!」

 

    ネプテューヌ、地面に寝転ぶにはあまりにも不自然な体勢で叫ぶ。

 

ネプテューヌ「いけ! いけぇ!」

 

    アッパーをフェイントにカタールを縮小収納し、カポエイラを思わせる大ぶりの蹴り上げを仕掛けるが、

    クランカがタブレットをかざし、その振り上げた足が見えない力に抑えつけられ届かない。

 

アイエフ「ぬあっ!?」

 

    そのままクランカがタブレットを斜め下に突き出し、アイエフを転ばせる。

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

モコの声「ねーねー、今なにしてんのー?」

 

    モコの親の服を軽く引っ張りながらいうような声が聞こえてくる。

    映像中のリンダ、振り向く。

 

リンダ「あ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    アイエフ、立ち上がって再びカタールを出し構えながらクランカの出方をうかがい、足を一歩ずつ踏みこむ。。

    クランカもアイエフを目でとらえて離さず、様子をうかがう。

    モコの声はそれに構わず言葉を出しつづけてくる。

 

モコの声「あいちゃん達はなにしてんのー? ねぷちゃんは? コンパちゃんは? あとなんかお顔がべちゃっとしてる子が連れてっちゃったぎあちゃんは?」

 

    アイエフ、真っ向で襲いかかるふりをして、飛び前転で懐に入り込み、足払いをしようとするが、クランカに見切られ避けられる。

 

リンダの声「あのよぉ、今そのあいちゃんって奴にネプテューヌとコンパの二人、ネプギア、それかお前、どれか一つ、誰を人質から解放するか選ばせてんだ。もしあいつがお前を選ぶってんなら、しょーがねえからその囲い、それと氷も割って自由にしてやるよ」

 

    その後もカポエイラの蹴り技を連続で浴びせようとするが全て紙一重で避けられる。

 

モコの声「ほんと!?」

アイエフ「くそっ! てえぇりゃあ!!」

 

    最後の体勢を立て直してからのとび蹴りもいなされ、タブレットで体制を崩され着地できず転ぶ。

 

アイエフ「ぐぅっ! っく……」

リンダの声「『あいちゃん』がお前を選んだらな。他の奴選んだら……そん時のお楽しみだ」

 

    クランカ、退屈のあまりため息をついて。

 

クランカ「ゲイムに縛られなきゃ差は歴然でしゅね」

 

    アイエフも2回ほど肩で息を切らしながら立ち上がる。

 

アイエフ「はぁ……はぁ……とか何とか言って、大したダメージを与えようとしないのはどういうこと?」

クランカ「そりゃあ王子にはどれか一つ選んでくれなきゃ争いが治まらないでしゅから」

アイエフ「そっちもそっちで選んでほしいなら、もっと選択肢を考える努力をしなさいよ」

 

    アイエフ、クランカから距離を取ろうと引き下がる。

 

クランカ「クラ達が同じことを言っておみゃーは首を縦に振るんでしゅか?」

アイエフ「えぇそうよ……それが私達”天使”の使命よ!」

 

    クランカ、素早くアイエフの近くまで走り、胸にヒールを向けて蹴りつける。

    アイエフ、カタールを交差させてそれを防ぎ、鳴り響く甲高くとげとげしい電子音。

 

クランカ「都合のいい嘘をついてる暇があったら、さっさと選ぶでしゅ」

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    画面中のリンダ、何かをひらめく。

 

リンダ「あ、いけね。忘れるとこだった」

 

    モコがいるであろう囲いの方へと走りながら、小声で何か言っている。

 

リンダ「おいテメェ、オフレコだ。ヘッドセット外せ」

 

    顔を囲いに近づける。

    画面からでは遠すぎて何をしているのかは分からない。

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

アイエフ「ッ……んああっ!!」

 

    アイエフ、後ろの”壁”を蹴る。

    今のようにイベント中以外は当然何もない空気同然の空間である。

    クランカ、押しだされると同時に軽く後方にステップ。

    アイエフ、とにかく不快な表情。

 

アイエフ「うるさいっ!!」

クランカ「別にそう悩むことでもないんでないでしゅか?」

 

    一瞬で表情が確信を突かれたかのように変わる。

 

アイエフ「どういう意味……?」

 

    そう聞き返しながらもアイエフ、俯いて考え込む。

 

クランカ「モンスターを見る度に勝手に飛び出して、いらぬダメージを(こうむ)ったり」

 

    アイエフ、それを聞いてはっとなにか気付いたように顔を上げる。

 

アイエフ「それでも愛を選ばない理由にはならない!」

 

    クランカ、静かに、しかし容赦なく叩きこむように言葉をつないでいく。

 

クランカ「大好きな伴侶に怪我を負わせ迷惑をかけたり、今でも人質にとられ大切な仲間達の無事とで天秤に掛けられたり、あんな奴を、仲間の価値とあんな奴の価値を比べる羽目に!」

アイエフ「それでもモコを見捨てる理由にはならない!」

 

    それを聞くと、アイエフに詰め寄っていく。

    息を切らしていくアイエフ。

 

アイエフ「はぁ……っ……」

クランカ「ならば何故あそこに置いていったでしゅか? モンスターに襲われ氷漬けになって動けないにもかかわらず。既に見捨てているじゃないでしゅか」

アイエフ「はぁ……はぁ……っ!」

 

    クランカ、アイエフの目の前にまで詰め寄る。

    アイエフ、その言葉に目線を下に向けてクランカから反らし、ただ息を激しくしていくばかり。

    ネプテューヌの声が割って入ってくる。

 

ネプテューヌの声「そいつのいうことなんか気にしなくていいって!!」

 

    アイエフ、目の前のクランカから少しのぞいているネプテューヌの方を見る。

 

ネプテューヌ「無理だったらわたしたちのことはいいよ。構わずモコ選んじゃっていいよ!」

アイエフ「ネプ子……」

コンパの声「そうです!」

 

    クランカが邪魔で見えないが、後ろ姿を見せつけているであろうコンパの方を向く。

 

コンパ「これはあいちゃんだけの責任じゃないです。わたしたちパーティーみんなの責任です! だから、モコちゃんを助けてほしいです!」

ネプギアの声「アイエフさん……」

 

    ネプギアの力のない声が耳に入り、ゼリー状スライヌの方を向くアイエフ。

 

ネプギア「わたしたちは気にせず……モコちゃんを……」

アイエフ「アンタ達……ホントにいいの……?」

 

    クランカ、不用心にも振り向く。

 

アイエフ「でいっ!」

 

    アイエフ、その隙にクランカを後ろから蹴りつける。

    蹴りが入り、そのまま前に押しだされよろけるも、たいして気にせず言葉を続けるクランカ。

 

クランカ「ほお。じゃあおみゃーたちはあの子供のために自分の身を投げると?」

ネプテューヌ、コンパ「っ……」

 

    ネプテューヌ、コンパ、事の重大さを再確認する。

    クランカ、追い打ちをかけるように付け加える。

 

クランカの声「仲間でもない子供のために」

ネプテューヌ「それはどうかなぁ?」

 

    クランカ、ネプテューヌに向けて眉をひそめる。

 

クランカ「??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ネプテューヌ、語るには様にならない格好で。

 

ネプテューヌ「まー確かに仲間っていうにはまだちょっと違うかもね。でも少なくとも、これから仲間になっていくんだと思うよ?」

 

    アイエフ、ネプテューヌの言葉に目を惹かれる。

 

 

 

        *      *      *

 

 

    リンダ、画面手前にあるヘッドセットを拾い、モコのいるはずの囲いへと持っていく。

 

ネプテューヌの声「それにね、それ以前に……」

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    ネプテューヌ、当然のことをいうように。

 

ネプテューヌ「もう友達じゃん?」

 

    アイエフ、格好悪く寝転がっているネプテューヌの言葉に、これまでを思い返すように落ち着きを取り戻す。

 

 

 

 

 

ネプテューヌ「ねっぷぅぅ!?」

 

    クランカ、ちゃぶ台のようにネプテューヌをひっくり返す。

    ネプテューヌ、抵抗も出来ず軽い放物線を描いて地面に叩きつけられ転がる。

 

ネプテューヌ「あだっ!?」

 

    マネキンのような今の状態と素っとん狂な声のせいか、やっぱり格好悪い。

 

クランカ「マネキンも同然のような状態で何を言ってるでしゅか」

 

    アイエフ、ネプテューヌにもう一度確認を取る。

 

アイエフ「いいのね……アンタ達」

コンパ「はいです!」

ネプテューヌ「もっちろん!」

 

    ネプテューヌ、コンパ、元気な返事。

    ネプギア、ゆっくりとうなずくが、また身体をぴくんと震わせる。

 

モコの声「あいちゃーん!」

 

    モコに呼ばれ、スクリーンの方を見るアイエフ。

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    相変わらずリンダが囲いの所に顔を近づけている。

    モコ、棒読み気味な声で。

 

モコの声「そんなやつらどーでもいーから早くわたしを選んでー!」

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    アイエフ、スクリーンに目を置いたまま耳を疑う。

 

アイエフ「……え!?」

モコの声「そんなやつらどーだっていーからさっさと愛を選んでー! 早くねぷちゃんたちのとこいきたーい! 選んじゃえよー! はやくはやくー!」

ネプテューヌ「も、モコ!?」

 

    クランカ、反応を楽しむかのようにアイエフを見る。

 

クランカ「おやまぁあの子供は仲間を裏切る気まんまんでしゅねぇ」

 

    アイエフ、スクリーンに目を離さず声を震わせて。

 

アイエフ「裏切る……」

クランカ「仲間がどういう気持ちで決断したかも知らずに」

コンパ「どうしちゃったですか!?」

モコの声「わたしにあいをー!」

 

    アイエフ、モコの言葉が信じられず。

 

アイエフ「あんた……自分が何を言ってるのかわかってるの!?」

モコの声「え? えーと、ううん。ぜんぜん。ざーざーいっててよくわかんないもん」

 

    適当に返すモコ。

    クランカ、面白そうに見つめる。

 

モコの声「あいをー! わたしをー! えらんでー! はやくー!」

 

    アイエフ、顔を下ろし、わなわなと拳を震わせる。

    拳と共に肩を、全身をふるわせるように。

 

アイエフ「……けないで……ッ!」

 

    その声には異様なほどの力が加わっている。

 

モコの声「これでいーのー?」

 

    誰に向かって聞いているのか、モコの声。

 

 

 

 

アイエフ「ふざけないでッ!!!」

 

 

 

    アイエフ、たまっていた怒りを一気に吐き出す。

 

ネプテューヌ、コンパ「っ!?」

モコの声「うぇぇっ!?」

 

    ネプテューヌ、コンパ、モコに動揺が走る。

 

モコの声「あ、あ、あれ!? お、お、お、お怒られた!?」

 

    アイエフ、周囲の動揺も構わず怒りを露わに感情を吐きだす。

 

アイエフ「友達友達いってるくせに自分のことしか考えてないし、人がせっかく言ってあげてんのに聞きもしないし分かろうともしない!! 少しは周りを見なさいよ!! アンタ自分が周りの人にどれだけ迷惑かけてるかわかんないの!? どれだけ嫌な気持ちにさせてるかわかんないの!? そんなのもわかんないで、友達なんてできるわけないでしょ!?」

コンパ「あ、あいちゃん!?」

 

 

 

 

アイエフ「あんたなんかと友達になりたい奴なんて、どこにもいやしないわよっ!!」

 

 

 

 

モコの声「……え……?」

 

    モコ、その声からいつもの明るさが消えた。

 

 

 

 

 

クランカ「では、おみゃーは愛を放棄する、でいいでしゅね?」

 

    クランカ、スクリーンの方を向く。

 

クランカ「リンダ」

 

 

 

 

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    リンダ、遠くて分かりにくいがブイサイン。

 

リンダ「合点っす!」

 

    手元のスイッチボックスを押すと、ブザーがけたたましくなりだす。

    すぐさま離れて、アナウンサーのポジションに戻り、囲いの様子をうかがう。

 

    そしてすぐさま、囲い向かって所々が黄色い大量のワレチューが掛け声と共に走ってくる。

 

黄色ワレチュー達「ちゅっちゅっちゅっちゅっちゅっちゅっちゅっちゅっ」

 

    囲いまで来ると高い跳躍力で囲いを飛び越え、どんどんと中へ入る。

 

モコの声「わっ!?」

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    すぐにクランカから目を離し、スクリーンを緊張の目で見つめるアイエフ。

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    黄色いワレチュー全員が囲いの中に入り終わる。

 

モコの声「ふえ? なに? どしたの?」

黄色ワレチューの声「よい子はぜえったいに真似しちゃだめっちゅよぉ?」

         「ワレチューさん達からのお願いっちゅ」

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

    クランカ、目線だけ見下ろしてアイエフを見る。

 

クランカ「ずいぶんと無責任でしゅねぇ。おみゃーも」

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

黄色ワレチューの声「全隊よーい!!」

モコの声「え!?」

黄色ワレチューの声「ワああああああレチュ──ブツッ──」

 

    掛け声の後、急に音が切れる。

    しかし、囲いの中から激しく暴れるような稲妻が放たれている。

 

リンダ「……あ、すんません。ヘッドセット一個ぶっ壊れましたね」

 

 

 

        *      *      *

 

 

 

クランカ「気にするなでしゅ」

 

    クランカ、スクリーンのリンダに向かって言う。

 

アイエフ「なに……なんなの!?」

ネプテューヌ「何したの何を!?」

 

 

クランカ「王子パリスが愛を捨てた。ただ単にそれだけでしゅ」

 

 

アイエフ「……ッ……ッッ!!?」

 

    アイエフ、それを聞いた瞬間、愕然とし、握っていた拳が震えながら開かれる。

    吐息が乱れて洩れる。

 

コンパ「あ、あいちゃん……」

 

    クランカ、不快感を誘いこむように。

 

クランカ「選択肢によっては、時間がたつと消えてしまうものもあるでしゅよ~? さぁ~~~どーちーらーをーえーらーぶーでーしゅ~~~?」

 

    アイエフ、ゆっくりと地面に膝をつく。

 

 

 

○同・タマルバー入口前・囲いの中

 

    氷の塊の中にすっぽりと入ってしまっているモコ、上に乗られたり周囲にたかられたりしている黄色いワレチュー達に電撃を浴びせられている。

 

モコ「ほおおぎゃあああああああああああっ!!?」

 

    しばらくして、やむ電撃。

    黄色いワレチュー達は一斉にどっとため息をついて地べたや氷の上に座り込む。

 

黄色ワレチュー「ぐえ~~。つかれるっちゅ~~」

 

    リンダ、囲いの壁の小さなトビラを開いて顔を出す。

 

リンダ「おう、どうだ? ワレチュー電撃健康法の威力は?」

 

    モコ、ぐったりしつつ涙目で。

 

モコ「う、うえぇ……なんで……こうなるの……言われたとおりにしたのに……あいちゃんには怒られて……ばりばりされて……すごく……いたい……」

リンダ「だっはっはっはっ!! いいこと教えてやるよ! さっき教えたことは人に嫌われる方法だぜぇ? 友達とかぜってぇ無理だから! 一つお利口さんになったなぁ!」

 

    そう言ってご機嫌にトビラを閉めるリンダ。

 

黄色ワレチュー「ちょ……休憩……」

リンダの声「なしだ! 氷が割れるまでやれ!」

黄色ワレチュー「ええぇぇぇぇ……」

 

    黄色いワレチュー、しぶしぶエネルギーをためる。

 

黄色ワレチュー「ワあああああレ」

 

    放電し、更に強い電撃がひたすらにモコを襲う。

 

黄色ワレチュー「ちゅうううううううううううううううううううううううううっっ!!!」

モコ「のぎゃああああああああああああああああああああああっっ!!!」

 

    モコが悲鳴をあげる。

    コミカルではあるが、悲鳴をあげる。

    更に、ぐずぐずの涙声で。

 

モコ「うわああぁぁん、なんでええぇぇ、みんなとともだちになりたかっただけなのにいいぃぃぃ……」

黄色ワレチュー「ちゅうううううううううううっっ!!」

 

    モコを包んでいた氷にひびが入り始める。

    ヒビはみるみるうちに広がり、ついに割れる。

    氷の上の黄色いワレチューはこけて地面にたたきつけられ、周囲にいた方はそれに押しつぶされる。

 

黄色ワレチュー「ちゅうううううううううう!!!??」

 

    久々に地に抱かれるモコの身体。

    まだモコの身体から電気が抜けておらず、身体の痙攣と共に走る電気。

 

 

 

 

 

 

 

 

モコ「うぅぅ……われた……ようやく……でも……痛いっ!」

 

    黄色いワレチュー、どんくさく立ちあがりながら。

 

黄色ワレチュー「あー……はい、罰ゲーム終了っちゅ」

       「あーもうやだっちゅー」

 

 

 

○同・囲いの外

 

黄色ワレチュー達「よいしょーっ」

 

    黄色いワレチューが短い会議した直後、囲いが倒れ、地面に展開した。

    それに驚くリンダ。

 

リンダ「うわぁっ!?」

黄色ワレチュー達「オイラ達、黄色いの引退して、普通のワレチューにもどるっちゅー!」

リンダ「え? お、おう……おつかれー……」

 

    リンダ、去っていくワレチュー達を静かに見送る。

    モコ、電気は引いたが身体のしびれが止まらず、フォンギアを操作するにも一苦労。

 

モコ「うぅ……ふぇ……」

 

    誰かに通話をしようとするが、「着信」のアイコンをタッチしてしまう。

 

モコ「うあ……間違えた……」

 

 

    リンダの影がモコに重なる。

 

モコ「ほ……」

 

    その影の手から棒のようなものが急に伸びる。

 

モコ「おぉっ!?」

 

    リンダ、モコの目の前で出した鉄パイプを担ぐ。

 

リンダ「みじめだなぁ! 仲間に捨てられた挙句に、ここからテメェの墓場に行くんだからな!」

 

    モコ、しびれでフォンギアにタッチしようとしても外してしまう。

 

モコ「やっぱり……わたし……ここで……」

リンダ「ああそうだ! 最後はこれで……うううううらあああああああああああっっ!!」

 

    リンダ、モコめがけて鉄パイプを振り下ろす。

 

 

 

 

    着信と大きく書かれたアイコンにタッチ。

 

 

 

 

    その瞬間は鉄パイプがモコに当たる直前。

 

リンダ「どわああっ!!?」

 

    フォンギアからアーマーのパーツが飛び出し、それが鉄パイプとリンダを吹っ飛ばす。

 

    シンセサイザーのメロディーラインが印象的なビートに乗せ、立方体の格子型フィールドがモコを包む。

    フォンギアから出たアーマーがこの周囲を飛び交っている。

    情景はスローになり、リンダが空中を遊泳しているように見える。

    格子にボクセルが2次元的に打たれて変身後のシルエットが描画される。

    それが終わると同時に3次元的にふくらみを持たせるようにボクセルが打たれる。

    モコがよろけながら立ち上がり、モコの動きに合わせてボクセルが動き、アーマーを受け入れる準備ができる。

    飛び交っていたアーマーが一つの形をなし、ボクセル画に向かって急接近する。

 

    次の瞬間、衝撃波と共にモコはZH(ジーンハート)になり変わる。

    揺れる木々、散る葉。

 

リンダ「ぐっ……だ……!?」

 

    リンダ、ZHを目にした瞬間、あまりの理不尽さに破顔したような表情。

 

リンダ「こ、こいつも……女神……!!?」

 

    ZH、先ほどまでと違い、スムーズに動けることを確認する。

 

ZH(ジーンハート)「……うむ。しびれが取れた……」

 

    ZH、リンダに目を向ける。

 

ZH「すみませんが、話はまたあとで……てやっ!!」

 

    空高く跳び上がり、その場から居なくなってしまう。

    リンダ、呆然のあまり言葉が出ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○同・タマルバー最深部

 

    膝をつき、やるせない表情に、全身からオーラに至るまで力のない様子のアイエフ。

    間抜けにも固まっているネプテューヌ、コンパ、とらわれているネプギアの表情にも悔みが前面に出ている。

 

    何かが落ちてくる音がする。

 

クランカ「?」

 

    クランカ、上を見上げる。

 

 

 

    それから数秒後、粉じんを巻き上げ、けたたましい音と共に何かが着陸。

 

アイエフ「ごほっ! ごほっ! けほっ!」

コンパ「けほっ! けほっ!」

ネプテューヌ「げほっ! げっほっ!」

ネプギア「……!?」

 

    せき込みながら立ち上がるアイエフ。

    ネプテューヌ、コンパも固まったまませき込む。

 

    粉じんが晴れるとZHが立ちあがり、アイエフを見下ろす。

    アイエフ、目を見開き、疑う。

    喜びが混じったような声で。

 

アイエフ「……モコ!!?」

ネプテューヌ「モコ!!」

コンパ「モコちゃん!!」

 

    ZH、すぐにしゃがんでアイエフと目線を合わせ、アイエフの方へと寄る。

 

ZH「あいちゃん……ぐぁッ!?」

 

    ZH、言葉を続けようとした所、クランカに横から思い切り蹴り飛ばされる。

 

ZH「っつッ! ぬぁ……」

 

    ”壁”に叩きつけられ、そのまま地面へと滑り落ちる。

    アイエフ、”壁”がまだ解消されていない事を確認、再びクランカに敵意を向ける。

 

アイエフ「……モコが入ってきた程度じゃエラーにはならないのね……!」

 

    ZH、”壁”をまさぐりながら立ち上がる。

 

ZH「く……ぐうぅッ!?」

 

    ダメージが思ったよりも大きく苦労する。

 

アイエフの声「はあっ!!」

 

    ZHの目の前、アイエフがカタールでクランカに再び攻撃をしているのが見える。

    クランカ、またもカタールをタブレットにある文様の見えない力ではじき、アイエフを吹き飛ばす。

 

アイエフ「っくぅっ!」

クランカ「無駄でしゅ。かすめ取ろうったって、このタブレットには届かないでしゅ」

 

    クランカ、タブレットを素早く操作する。

    途中『Code Analyze Complete』の文字が見えそれを一瞬で過ぎ、その後わずか数秒でハンマーを取り出す。

    威嚇するようにハンマーをアイエフにつきつける。

    一歩一歩アイエフへと歩み寄る。

 

クランカ「王子パリスよ……」

 

    大きく振り上げ、尚も威嚇を続ける。

 

クランカ「運命に従うでしゅ!」

 

    ハンマーが勢いをつけて振り下ろされる。

    そしてアイエフの顔をめがけて進む。

 

アイエフ「ッ……!!」

 

 

 

 

 

    ZH、ハンマーとの合間を縫ってアイエフをつかみ、逃げようとするが、間に合わないと判断する。

 

    そしてそのまま、アイエフを抱き庇い自分の背中にハンマーを当てさせる。

 

    黒板をひっかいた音にも似た周波数の低い音が、同じ周波数の打撃音と一緒に鳴る。

 

ZH「ぐああっ!!」

 

    アイエフ、気がつくと目の前にZHのごつごつとしたアーマー。

 

    ZH、アイエフをそっと離しつつ、倒れる。

 

アイエフ「モコ!!」

 

    クランカ、ZHを容赦なく何度も叩きだす。

 

    ハンマーに叩かれるたびに身体が揺れるZH。

 

コンパ「あぁっ!! モコちゃん!」

アイエフ「止めて!! もうその子は選択肢から外れた! もう関係ないでしょ!?」

クランカ「おみゃーたちがクラの筋書きどおりにいかないのは重々承知でしゅけど、酔客が勝手に舞台に上がるなんてのは許さないでしゅ」

アイエフ「止めなさいよ!!!」

 

    アイエフ、クランカを止めようとするが、ハンマーにみぞおち辺りを頭突かれる。

 

アイエフ「かっ! は……」

 

    そのままうずくまるアイエフ。

 

ネプテューヌ「あいちゃん!! モコ!!」

クランカ「おみゃーは演技を続けろでしゅ」

 

    クランカ、もう一度ハンマーを振り上げる。

 

 

 

ZH「あいちゃん!!」

 

 

 

 

    無理やり絞り上げたかのようなZHの声。

    この声にクランカの手が止まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クランカ「何か弁明が?」

 

    ZH、地面を這いつくばりアイエフの方へと進み始める、クランカの言葉にに関係なく自分の言葉を続ける。

 

アイエフ「モコ……」

 

ZH「あいちゃん……さっき……言われたことですが……」

 

    少しずつだがアイエフに近付いていっている。

 

ZH「私にはわかりません……なに一つ……でも……このままではいけないことは分かっています……」

 

    ネプテューヌもネプギアも、可能な限りZHに目を向ける。

 

ZH「私は……知りたいのです……あなたに言われた……距離感……とやらを……TPOとやらを……」

 

    アイエフに慈しむような、願うような表情を向けて。

 

 

 

ZH「わからないまま……さよならをするだなんて……私は嫌だ」

 

 

    クランカ、冷たい目で。

 

クランカ「酔客にしてはなかなか気の利いたセリフでしゅが……退場でしゅ」

 

 

    再びハンマーを大きく振り下ろす。

 

    アイエフ、その瞬間にクランカの方へ走りだす。

 

アイエフ「隙あり!!」

 

    振り下ろすすきを突き、クランカのタブレットをカタールで突き破る。

    地面に落下し、二つに割れるタブレット。

 

クランカ「しまった……!!」

 

    すぐにアイエフから離れるクランカ。

 

 

    コンパ、縛りが解け後ろに倒れこむ。

 

コンパ「ふわあっ!?」

 

    ネプテューヌ、動けることを確認する。

 

ネプテューヌ「ほ? お? お!? 動ける!」

ZH「う……うぅ……っ」

 

    ZH、力尽き変身が解け、モコに戻り、アーマーがフォンギアに収納され、フォンギアがモコの目の前に落ちる。

    モコの元に集まってくる二人。

 

ネプテューヌ「モコ!!」

 

    コンパ、モコの手を触れ、確かめる。

 

コンパ「……メモリオーバー(気絶してる)ってだけみたいです」

 

    ネプテューヌ、モコの目の前にあるフォンギアを拾い。

 

 

ネプテューヌ「ごめんねモコ……後でクレープおごってあげる!」

 

 

    3人、クランカと対峙。

 

クランカ「あーあ。けっこうあれお気にだったんでしゅけどねぇ……」

 

    ネプテューヌ、クランカに指をさし。

 

ネプテューヌ「知らんな!!(キリッ」

クランカ「じゃあそれで弁償してもらうでしゅ!!」

 

    クランカ、ネプテューヌの持っているフォンギアめがけて蹴りを入れる。

 

ネプテューヌ「うおわあっ!!」

 

    ネプテューヌ達、避けるが、ネプテューヌがその拍子にフォンギアを宙に放ってしまう。

 

ネプテューヌ「あ! あぁぁぁ! っとっと!!」

 

    危うく落とす所をギリギリでキャッチ。

 

ネプテューヌ「っとっ!!」

 

 

    その際、『着信』と書かれたアイコンを偶然タッチする。

 

 

 

 

 

    その瞬間フォンギアからアーマーが飛び出す。

 

ネプテューヌ「うわあっ!!? なになに!?」

 

    ネプテューヌの周囲を回り始めるアーマー。

    それと同時に格子状のフィールドがネプテューヌを覆い、エレクトロサウンドと共にボクセルを打ち出し、すぐにPH(パープルハート)へと変わる。

 

PH(パープルハート)「なっ!!? 変身した!?」

 

    そしてアーマーは形をなし、そのまま勢いよくPHに装着される。

 

PH「!?」

 

    その瞬間、突風が巻き起こり、木々を揺らめかせ、コンパ、アイエフ、クランカも立っているのがやっとなほど吹き荒れる。

 

コンパ「ふわあああああっ!」

アイエフ「なっ! ちょっと……!!」

クランカ「くっ……!!」

 

 

 

 

    突風が止み、森の葉が舞い散る中、ZHのアーマーを装備したPHが立っていた。

 

 

PHZ(パープルハートジーン)「……これは……っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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