No.429785 魔法少女リリカルなのはStrikerS ~赤き狂戦士~ゼロ・スパークさん 2012-05-29 16:55:18 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1557 閲覧ユーザー数:1502 |
「で、用ってぇのはなんだぁ?ステキイベントなんだろ?」
「そうですね。ではそろそろ本当に本題に入りましょうか」
「初めからそうしてください・・・」
数分前までヴァンとハーナは訓練やら黒の下着やら騒いでいたが、
今は先ほどと違い大分落ち着いている。
「ですけど一体なんなんですか?いつもみたいに任務なら私達二人を直接呼びだしませんよね」
「流石は私の妹ですね。兄としてとても鼻が高いですよ」
「いいからさっさと話してください・・・」
「兄妹のコミュニケーションを取ったつもりだったんですが・・・まぁいいでしょう」
鼻が高いと言ったカリスの鼻をへし折ってやろうかと思ったがカリスの顔を見て考えが止まる。
あの兄の顔が一瞬本気で残念がっているように見えたからだ。だがすぐにいつもの顔にもどる。
「ヴァン・ハートネット一等空尉並びにハーナ・カーティス二等空尉。
お前達二人には別の部隊に異動してもらう」
「やっぱステキイベントだなぁ」
面白そうに口笛を吹くヴァン。だが目は笑っていない。
「・・・つまり私達はアナタにとってもう用済みって事ですか?カーティス少将」
厳しい目で自分の兄を睨むハーナ。
異動と聞けば大抵の人間はあまり良いイメージを持たない。
確かに積極的に活躍しなかった・・・いや兄の為に戦いたくなかったから殆ど戦わなかったが、
使えないなら実の妹でも切り捨てるのかとカリスに対してハーナはそう考えた。
「いや、お前達二人はよく働いてくれている・・・例え本気じゃなかったとしても・・・だ」
「・・・・・」
カリスの鋭い視線がハーナに当たる。だがそれを庇うようにヴァンがハーナの前に出る。
意外だったようで彼女は大きく目を見開く。
「なんで異動になった訳を聞かせろよ」
「いいだろう」
普段ふてぶてしい態度のヴァンでも今回の件に関しては珍しく真面目な表情になっている。
そんな彼の表情を読み取りカリスは顔を顰める。
さっさの自分のハーナに向けた視線を庇った事に対してもそうだが、
こういうヴァンの表情をあまりカリスは好きではない。先程までふてぶてしい男が
突然真面目になったからだ。
だがヴァンはそれをわかった上でカリスに今の顔を向けているのだ。
「私の後輩で八神はやてという人間がいる。そして今回その八神が新しく部隊を立ち上げるそうだ。だが人手が足りないという事で私に人員を提供してくれと頼んで来た事により、
私の推薦でお前達二人を送る事にした」
「・・・成る程な。だが・・・」
そう話した直後、ヴァンがカリスの視界から消える。
そしてカリスのこめかみに漆黒の銃が突き付けられる。
「その部隊はココよりおもしれぇんだよなぁ??」
漆黒の銃をカリスの背後から突き付けたなはヴァンだった。
「侵害ですねぇ・・・私がヴァンに戦いの事で嘘をついた事がありますか?」
口調がいつもの作られたものへと変わる。
「戦い関しては確かにな・・・たがオマエはそれ以外だと俺様とハーナを騙し続けたなぁ・・・
だろ、ハーナ?」
「・・・・・」
何も答えないが、ハーナはこれまでの兄が自分に対してついた嘘を思い出していた。
考えるだけで怒りと憎しみそして・・・悲しみが彼女の頭に浮かび上がる。
だがそんな兄の嘘で傷ついた彼女を守り続けてくれたヴァンの事を思い出し、心を落ち着ける。
「もちろんアナタが楽しめる部隊ですよ。その証拠に・・・ほら♪」
銃を突き付けられたまま机の端末を操作し、ある情報をヴァンに見せる。
すると彼の表情が再び狂気的な物へと変わる。
「・・・はっ!確かにこいつはオマエの言うとおり楽しそうだなぁ!・・・
まさかアイツらがいるとはなぁ」
表示されたデータを見て凶悪な顔つきなる。ちなみにこの顔は喜んでいるのだ。
「・・・まぁいいだろ。今回は・・・な」
「理解が早くて助かりますね」
データを見て納得したヴァンはカリスから銃を離す。
「少将。この部隊の人員は正直戦力的には十分すぎるほど整っています。
別にヴァンと私を送りこむ必要なんてないのでは?」
ハーナが疑問に思った事を探るように問いかける。
確かに機動六課の戦力は整っている。
リミッターをかけられるとはいえオーバーSランク魔道師が4人いるうえニアSランクも数人
はいるからだ。
むしれこれ以上の人員補助は上層部から過剰戦力と見なされる可能性も捨てきれない。
「それは私から話す事はできませんねぇ・・・まぁ近い内に知る事になると思いますよ?」
「・・・んな事はどうだっていい。俺様はこの機動六課とかいう部隊に行くぜぇ」
「・・・ヴァン・・・!」
「なんかこの部隊にいると今までに味わった事がねぇぐらいのステキイベントに参加できそうな
気がすんだよ。それにあの二人と久々に会うってぇのも悪くねぇ」
「はぁ・・・・」
あぁそうか・・・この男はこういう人間だったなと染々思い出し、呆れ返るハーナ。
「・・・わかりました。疫病神のアナタと付き合うのはもう正直慣れ過ぎてしまい問題ありませんし、それにアナタとは約束があります・・・なので異動の件は受ける事にします」
「約束・・・ねぇ・・・」
つまらなさそうに呟くヴァン。
「じゃあ機動六課に行ってくれますね?」
「俺は楽しけりゃ何処でもいくぜ」
「・・・」
いつも通りなヴァンとハーナの態度を見て二人が了承したと取り笑顔を向けるカリス。
「ありがとうございます♪」
気持ちのこもっていない声で礼を言う。
「それで何時その機動六課とやらに行きやぁいいんだァ?」
先程見せられたデータには何時行くようにとは書いてはいなかった。
「あぁそれはですねぇ、ちょっと待ってくださいね」
端末を開き調べるカリス。
「!これはこれは・・・いやはやすみません。これは完全に私の手違いでした」
「あン?」
言葉のわりにそう思っていなさそうなカリスを見て怪訝に思うヴァン。
「異動は・・・明日でした♪」
「「・・・・はあ?」」
間抜けな声が出る。
「いや~前にもらった聖王教会から六課に関する古い情報と新しい情報を間違って見ていたようで、
新し方の情報が一番したの方に隠れていたようです」
「聖王教会も関わってンのか・・・いやじゃねぇよ。なにやってンだよオマエ」
「・・・ちゃんと仕事してください」
珍しく呆れるヴァンと不快感全開のハーナが厳しい目でカリスを睨む。
「そんな面白い目を向けないでくださいよ~私、楽しくなってくるじゃないですか~♪」
きっと今から聞かされる事で私は呆れる事になるんだろうと感じるハーナ。
それは見事に当たる事になる。
その後カリスから六課で二人にリミッターをつけられると説明を受けヴァンが反論したが
カリスの説得でしぶしぶ承諾する。
管理局では一つの部隊が持てる戦力が決まっている。
部隊全体の戦力バランスを取るためだ。偏った戦力は必ず全体に影響を及ぼすのだ。
いい意味でも悪い意味の両方でだ。
そういう理由で二人は肉体には魔力制限と体には能力制限がかけられる事なった。
優秀すぎるのも苦労するぜとヴァンが悪態をつく。
「そこはもうアナタの力でカバーしてくださいよ♪」
「めんどくさいが仕方ねぇな・・・」
というか自分達が入る時点で保有戦力規定を越えるのではないかと思うヴァン。資料を見るところ、
オーバーSランクの隊長陣はリミッターをかけられているとはいえ、
いろいろ問題が起こるのではないか?
「大丈夫です♪・・・と言いたいですが正直ギリギリですよ」
「やっぱなァ」
「まぁ、上の方々はあまり仕事をしないですし問題ないと思いますよ」
「アナタが言わないでください」
カリスの適当な発言に呆れるハーナだが、内心では裏でカリスが何か手を回したと考えている。
この兄のやり方は本当に強行な上に汚いのだ。
実際にインフェルノの部隊長になる為に他の部隊長候補だった人間をどんな手を使ったかは知らないかが、自分から辞退させたのだ。
その事に関しカリスは涼しい顔で知りませんねぇとしか答えていない。
あとで知った事だが他の部隊長候補だった人間は敗退後、管理局を首になった者や
管理外世界の駐屯基地にまわされた者もいる。
間違いなく兄の仕業だとハーナはそう確信している。
「では六課の役割について話しますよ。六課の仕事は第一級捜索指定ロストロギア「レリック」の回収及び封印です。また現在レリックを収集する自立行動型機械「カジェットドローン」の殲滅とそれを操る人間の逮捕が仕事です」
レリックとガジェットの映像が出される。
「錆び落としには持ってこいのポンコツだなァ。というかやっぱこのポンコツのバックには
臭い奴がいるみてぇだな」
「ええ。そもそも、こんな物が現れる時点で何者かが製作したと考えるのが妥当です。あんな物が勝手にポンポン生まれるはずないですしね」
データを見るところかなり高度なAIがガジェットには搭載されているようだ。
ロストロギアを回収するところがそうだらう。
おまけに出現するたびに性能がアップしている上に、コンピューターへのハッキングとクラッキング、及び攻撃能力。量産型と出ているが非凡性と応用性は量産型とは思えない。
それ+魔力を拡散させるアンチマギリングフィールド通称AMFは魔道師にとっては厄介な能力だ。
「相当なオツムのいい変態が作ってそうだなァ」
「同意見です。現在その件については六課と地上本部が全力で捜索しています。時期に何か尻尾を掴むでしょうね」
そう話ながら二人に六課の資料の入ったデータディスクを渡す。
「後の細かいところはそれで確認してください。私も話すのが面倒なのでねぇ」
やれやれと額に手で触れながら首を振る。
「ハーナ。俺は調べんの面倒だから中身の情報を見たら教えろよ」
「嫌です」
即断る。
「では早速明日に向けて準備をお願いします。インフェルノ実働部隊は代理としてクランツを隊長代理にしますので心置きなく出発してくだい♪」
「あぁ、じゃあな隊長サン、ご達観で」
「失礼しました」
部隊長室を後にする二人。
一人残されるカリス。
「さて・・・これからが大変だな・・・」
メガネを外し指で回しながら考える。真剣な表情で窓の外を見る。
赤い目がただ事ではないと言っている。
いったい何を悩んでいるのだろうか?
「ドア・・・どうしようか?」
真剣に考えていた内容はドアを修理してもらう業者を何処に頼むかと悩んでいたようだった・・・
------------
部隊長室から出たヴァンとハーナの二人は異動の準備の為に自分の部屋に向かっていた。
「・・・・・・」
無表情のハーナではあるが彼女から出ている雰囲気は不機嫌そのものだ。
「オマエ、なんで着いて来る気になったァ?拒否も出来たはずだぞ?」
ハーナの不機嫌など気にせずにヴァンが話しかける。
確かに異動になったとしても一度だけなら拒否する事ができる。
今まで異動になった事などなかったハーナはその権利を使う事ができた。
「さっきも言ったはずですよ。今さらアナタの疫病神っぷりにはもう慣れてます。
だから拒否する理由もありません」
拒否しなかった理由を当たり前のように話す。
「・・・約束か?」
「・・・覚えているんですか?」
「まァな」
「・・・・・」
沈黙するハーナ。
その表情には少しだけ悲しみがあった。
「・・・あの時、アナタに私は足枷をつけまたした・・・本当なら私はあの時に死んでいます・・・
今でもあの時の事は忘れられません」
「・・・ハッオマエの頭はそう簡単に何かを忘れねェだろうがァ・・・
そんな事忘れちまえばいいものを」
「・・れら・・・・ない・・・・・・・」
「あン?」
「忘れられる訳ないじゃないですか!!」
「・・・・・・・」
大声を上げるハーナ。
その顔は悲しみがあり、瞳からは涙が出ていた。
「わ、私はアナタに!!・・・恨まれても仕方のない事をやったんですよ!?だ、だから!!
わ、私は・・・・!!」
必死に話すハーナ。頭に血が上りすぎてまともに話せないようだ。
もはやいつもの冷静な彼女はそこにはない。
いったい何が彼女をそこまでさせているのだろうか?
「・・・くだらねェなァ」
そのままハーナの隣を通りすぎる。
「待ってください!!」
呼び止めるハーナ。
その声で歩くのをやめるヴァン。
「・・・あの約束・・・なかった事にしていいんですよ?」
その声は震えていた。
まるで罪を犯した人間が自分を赦なとでも言っているかのように・・・
「ハーナ・・・」
振り返りハーナの前に行き彼女を抱きしめる。
自然とハーナも彼を抱きしめヴァンのぬくもりを感じる。
「俺様は・・・いや、僕は君の事をあの日、守ると決めたんだ。
例えそれが地獄の道だとしてもね・・・」
「ヴァン・・・」
今のヴァンの表情はいつものふてぶてしいものと違い、優しさに満ちあふれたものだった。
その彼を見てさらに悲しみがハーナの顔に出る。
「もう僕とハーナはあの時のようには戻れないし、それを望んじゃダメだけど・・・・
僕は君を絶対に守りぬくから」
「わかってる・・・けど!!」
しかし、彼女の言葉は最後まで続かない。
何を話せばいいかわからないからだ。
そんな彼女を見ながらヴァンはハーナから離れる。
すでにその表情は元の狂気的なものへと戻っていた。
「オマエに罪の意識があるならそれで十分だ。さっきは忘れろつったが、
忘れられるモンじゃねぇよな・・・」
「・・・あ・・・」
頭を突然撫でられ少しだけ落ち着くハーナ。
そして元の無表情の顔に戻る。
「すみませんでした、見苦しいとこらを見せてしまい」
「さァ、知らねェーなァ」
ニヤっと笑い、再び歩き出すヴァン。
「さっさと引っ越しの準備をやるぞ。早めに眠りてェしなァ」
「はい」
先程あった事が嘘かのように二人はその場を去り、自分達の部屋へと戻る。
そして翌日。
二人は早朝からインフェルノ隊舍から出て新たな自分達の仕事場である機動六課へと向かった。
今赤き狂戦士の新たな戦いが始まろうとしていた・・・
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