No.427059

超次元ゲイムネプテューヌmk2 Reborn 第十二話 遭遇

今回の話はグロく無いです。
前回の話を読んで無くても筋が通った話になるよう仕上げました。
これでようやくにじファンから見ても最新作を投稿できた……。


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2012-05-23 19:32:13 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:994   閲覧ユーザー数:924

現在プラネテューヌ

 

革新する紫の大地プラネテューヌ。

その異名はこの未来都市を目の当たりにすれば誰もが合点がつくだろう。

都市ほぼ中央に位置する巨大建造物、プラネタワーを中心に数々のハイテクビルが折り重なるように存在し、そのどれもが圧倒的存在感を放っている。

それは夜においてもなんら変わりは見られない。

黒と紫の相性は抜群である。

街を彩る紫色のネオンは闇に同調するかのようにその輝きを増してゆく。

 

 

 

 

黒に染まった未来都市のはずれのビルの一角、その屋上に黒い影はたたずんでいる。

目に映る全てのものは闇にその姿を落としている。

昼には様々な人々が行き交う通りも一切の静寂に包まれている。

街を彩るのは三日月から放たれる月光とネオンだけだ。

見るもの全ての心を魅了するその光景をその黒い影は軽蔑の目で見下している。

 

(…気にいらねえ)

 

影の持ち主、氷室は心の中で皮肉に呟いた。

普通ならこの光景を目の当たりにしてこのような感情を抱く者など皆無に近い。

だが氷室は違った。

人工的に造られたネオン、数多の建造物から発せられる光、道沿いの街灯、それは夜の都市を彩るように見える。

だがそこに真の夜は無い。

捉えようによってはそれらは全て人工的に造られた物であり夜を汚すだけの汚物に過ぎない。

氷室は後者だった。

その感性ゆえか氷室は軽く舌打ちをすると視線を都市から足元へと移し、体を反転させ、ビルの屋上から姿をけした。

 

 

 

 

 

 

 

   ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

黒衣の姿は夜の街を歩いていた。

普通どんな者でもその行動には人間的な生活を連想させるものがあるが、氷室から発せられるそれは一切の人間性を持たなかった。

時刻はすでに午前1時をまわっている。

ゆえに街を行き交う人影は1つも無く、店のほとんどもすでに閉まっている。

静寂と闇に支配されたその街を、氷室はただ当てもなくさまよい歩いている。

どれほど歩いただろうか、しばらくして氷室は前方に気配を感じ、それまで下げていた視線をふと上に上げた。

道沿いのベンチに腰掛けている影は今にも背景に同化しそうであった。

だがそれから発せられる独特の気配はその存在をはっきりとそこに黙認させてた。

 

氷室「聞きたいことがある。」

 

深々たる静寂の奥に氷室の声が鳴り響いた。

恐ろしくよく通るその声は氷室の目の前の影に向けられていた。

 

老人「はて? こんな老いぼれに何のようじゃ?」

 

とぼけた声で影の持ち主である老人が返す。

老人の目は氷室に向けられてはいたが、その目はどこか不自然だった。

 

氷室「女神について色々聞きたい。」

老人「ほう。しかし何故わしに?」

氷室「今、外に居るのがお前1人だからだ。」

 

老人の問いに氷室は淡々と答えた。

老人は最初の氷室の問いに特に驚かなかった。

まるで予期せぬ来訪者とそれに次ぐ出来事を知っていたかのように。

 

老人「一般人であるわしが知っとることなんぞ些細なことじゃぞ?」

氷室「かまわない。」

老人「ふむ。まず、この国を治めている女神はパープルハートとパープルシスターじゃ。他に『そんな事どうでもいい。』

 

老人の言葉を氷室がさえぎった

氷室は両手をポケットに突っ込んだまま続けた。

 

氷室「俺が聞きたいのは2つ、1つ目は女神の変身能力についてだ。」

 

冷たく、白い声で氷室は言葉を紡いだ。

突然の注文であったにも関わらず、老人は表情を変えずに答え始めた。

 

老人「変身と言うと”女神化”のことじゃな。女神はシェアの力を元にプロセッサと言うユニットを身につけ、身体を超活性させることができるのじゃ。これによって女神は限界以上の力を引き出すことが可能となる。身体能力、飛行能力、魔力、ひいては容姿や性格さえも変える者もいる。」

氷室「シェアってのは何だ?」

老人「民衆の女神への信仰のことじゃ。多くの者から崇められるほどにシェアは増してゆき、女神の力も増す。逆にシェアが減少すれば力は衰え、完全にシェアが無くなった時、女神は死ぬ。」

 

一切の迷いの無い口調で老人は淡々と話した。

それまで感情を露にしなかった氷室の顔に始めて1つの感情がともった。

氷室の頬は僅かながらに吊り上がっていた。

だが氷室はすぐに表情を戻し、変わらぬ口調で話し始めた。

 

氷室「質問を変える。女神の中で一番強い奴は誰だ?」

老人「ふむ……。どの女神も力は均衡しておる。ただ戦闘力で言えばパープルハートかのう? だが他の女神も実力者揃い、むやみに喧嘩など売らん事じゃ。」

 

氷室は沈黙を守りながら老人の話を聞いていた。

だが話の途中から氷室の表情に陰りが出てきた。

やがて老人の話が終わると同時に氷室の口が動いた。

 

氷室「……聞いておいてなんだが、まるで女神にあったことがあるような口ぶりだな。」

老人「あぁ、前に何回か会ったぞ。最後に会ったのは……ゲハバーンの在り処を教えたときじゃな。」

氷室「!!!」

 

氷室の顔に驚きの色が浮かんだ。

それは氷室の疑念が確信に変わった瞬間だった。

表情は見る見るうちに険しくなり、目も鋭さを帯びていた。

老人はこの男には言ってはならないことを口走ったのだ。

 

氷室「なぜゲハバーンのことを知っている? 答えろ。」

老人「はて、のう? 昔のことは忘れたわい。」

氷室「とぼけるな。隠しても無駄だ。」

 

とぼける老人に氷室が低い声で言い放った。

その声にはどこか殺意さえも感じられた。

目つきはさらに鋭くなり、手を突っ込んでいるポケット付近には強いしわが走っている。

だが老人はおびえる様子も無く、無感情のまま瞳に氷室の姿を映していた。

 

老人「もし……わしが拒否したらどうするかの?」

 

興味本位の顔で老人は聞いた。

刹那、氷室の腕は老人の方に伸びていた。

老人の首元には鋭い銀光を放つ日本刀が月光に照らされて、そのすがたを白銀に染め上げていた。

 

氷室「首と胴体に別れを告げるんだな。」

 

おびただしい殺気をこめた口調で氷室が言い放った。

下手をすればすぐさまに老人の首を斬り落としそうなほどに。

氷室の目はさらにその鋭さを増し、老人を見下している。

それはどれほど意志強固な人間であろうともたちまちに震え上がらせ、その理性を砕くほどの気迫を放っていた。

だが老人は眉1つ動かさない。

変わらない無表情はどこか威圧感さえも感じられた。

そのままの状態が少し続いた後、突如として老人の顔がゆるんだ。

 

老人「ほっほっほ、すさまじい気迫じゃな。昔、お前さんのような男が1人おったわい。そ奴もお前さんと同じ目をしておった。」

氷室「そんなことどうでもいい。 別れは告げ終わったか?」

老人「まあ待て。お前さんは何でわしが惚けていると?」

氷室「……その剣の”記憶”は遠い昔に滅んだ。お前が知ってるはずがない。ましてや文献なんかに辛うじて残っていたとしても、そんな書物をお前が手に取ることなんてあり得ない。」

老人「おいおい、お前さんの言っとることは矛盾しとるぞ。じゃあ何でお前さんはゲハバーンのことを知っとるんじゃ? ひとつ、わしに教えてはくれんかの?」

 

老人の問いに氷室は視線を落とし、沈黙した。

しばしの静寂の後、氷室は軽く舌打ちをしてゆっくりと腕を下ろし、老人に背を向けて歩き出した。

だがその足取りは5、6歩歩いたところで突如として止まった。

 

氷室「今は殺すのを見送ってやる。だが――。」

 

言いかけた氷室は顔だけを老人に振り向いた。

 

氷室「敵対する行動を1つでも取ってみろ。1秒もかからずにその首が飛ぶからな。」

 

言うなり氷室の姿は闇の中に落ちていった。

老人は氷室の影が消えてゆくのをただ呆然と眺めていた。

氷室が振り向いたときに見せた表情、その残忍邪悪さはまさに吸血鬼(ヴァンパイア)の顔だった。

 

 

 

 

 

 

  ◆◆◆

 

 

 

 

 

氷室が去ってしばらく経った後、老人は1人、静かに口を開いた。

 

老人「あれが今の……時代は変わるのぉ。」

 

軽くため息をつきながら老人は天を仰いだ。

夜風が老人の髪をなびかせ、肌を撫でる。

 

老人「いつから―――道を間違えたのか――――お前もそう思っておるじゃろう、ド―――。」

 

 

 

 

 

 

  ◆◆◆

 

 

 

 

氷室(あの老いぼれ……何者だ?)

 

歩きながら氷室は心の中で呟いた。

氷室の頭の中はあの老人のことでいっぱいだった。

両手は相変わらずポケットの中に収められてはいるが、視線はやや上を向いている。

だが足取りだけは以前と変わらない。

裏路地に足が差し掛かった時、氷室はさらに考えを深めた。

 

氷室(最高権力者である女神に”様”をつけない……。口調からして奴は女神の敵でなければこちらの味方でもない。そしてゲハバーンのことを知っている……。おそらくはこちらのことも……。)

 

正体を探れども意識はただ手ごたえの無い闇に触れるばかりである。

行く当ても無くさまよう影はどこか寂しげだった。

老人から離れてすでに4時間弱が過ぎようとしている。

ふと氷室の足取りが止まった。

背後に降り立った2つの影を黙認したためだった。

 

ライ「ようやく見つかったな。」

 

安堵のため息を漏らしながらライは肩を落とした。

 

レオン「エスターはいないみたいだけどよ。」

氷室「……何してんだお前ら?」

 

振り返って2人の姿を目に映した氷室は呆れた顔で2人に言った。

2人は互いに顔を見合わせた後、顔をゆがませた。

 

レオン「行けねえんだよ、あの場所に。方向は会ってるはずなのによぉ。」

ライ「んで、お前に送ってもらおうと思って捜してたら偶然レオンに会って一緒に捜してた、ってわけだ。」

 

2人は理由を淡々と話した。

氷室は無表情で話を聞き、ふと腕を組みながら少し考え込んだ。

しばらくして気がついたように二人に目を向け、ぶっきら棒に尋ねた。

 

氷室「ここまでどうやって来た?」

レオン・ライ「走って(に決まってんだろ)(だけど)」

 

2人は同じ答えをほぼ同時に即答した。

だがそれは理論上不可能なことだった。

リーンボックスとラステイションからプラネテューヌに行くには海を越えて行く必要がある。

どう考えてもそこを走るなど出来るはずがなかった。

おまけに距離を考えてもこの短時間で走っていける距離では到底無かった。

だが実際にレオンとライは嘘をついてはいなかった。

氷室も一切、それについて疑おうともしなかった。

不可解な会話のやり取りの後にレオンが口を開いた。

 

レオン「にしてもエスターの奴、何やっt『あー、そこにいたんですかい。』」

 

3人の頭上から聞き覚えのある声がした。

声の主は建っていた建造物の屋上から静かに足をはずし、道理のままに落下して音も無く地に足をつけた。

 

エスター「全然見つからないと思ってたらなにしてたんで?」

 

軽く笑いながらエスターは3人に問いかけた。

 

氷室「それはこっちの台詞だ。」

 

だが3人のエスターを見る目は冷ややかだった。

原因はエスターの姿にあった。

全身に返り血を浴びてその姿を赤くにごらせ、茶から赤へと変わり果てた髪をぐしゃぐしゃと掻いていた。

 

レオン「何人殺った?」

エスター「100はいってなかった気がしまさァ……。」

 

首を傾けながら目線を右上に向けてエスターがとぼけた様な声を上げた。

 

氷室「帰ったら返り血洗っとけ。」

エスター「ヘイヘイ。」

 

氷室は負傷したとは言わず、返り血と言う。

その判断は的確だった。

瞬間、四つの影は黒い炎の中にその身を次々と落としていった。

あとに残されたのは路地の間を縫う夜風だけだった。

4人の消失を待っていたかのように朝日が東の空から白い光を放っていた。

 

 

 

――カタストロフィまであと4日


 
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