No.424240

超次元ゲイムネプテューヌmk2 Reborn 第十一話 兇刃

※注

今回の話は冗談抜きでエグい(グロい)です。
苦手な人は見ないほうが良いかもです。
おまけに2話連続女神が出ていない……。

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2012-05-17 20:10:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1288   閲覧ユーザー数:1246

現在ルウィー

 

依然として、ルウィーの大地には銀の粉粒が風に吹かれて舞っている。

場違いとも思える建造物は、先ほどの奇声と銃声の後、しばらく静寂に包まれていた。

 

「ひっひいいぃぃぃいいいい、あっああぁぁぁぁああうわあああぁぁぁぁああ!!」

 

男の恐怖に駆られた悲鳴がその静寂を切り裂いた。

その周りは奇妙なオブジェで埋め尽くされていた。

全体を赤に染めた“死体”という名のオブジェが。

それはまさにオブジェと呼ぶにしか値しないほどに原形を留めていなかった。

首が無いものはまだマシな方だった。

手足全てが無いもの、腹より上がごっそりと無くなって臓物が飛び出しているもの、体中を切断され肉塊に成り果てたもの、どれ1つとっても、もはや死体と呼べるレベルではなかった。

そのオブジェの山から流れ出る深紅の血は、倉庫の床、壁、天井全てを紅に染め上げ、その空間を瞬時に地獄へと変えて見せた。

倉庫内には大巨獣の爪跡のような傷が床から天井まで至る所に方向を定めず、本物の大巨獣がそこで暴れまわったかのように痛々しく残されていた。

オブジェの山の中央に、地べたにへたり込んだ男とそのオブジェをあざ笑うかのようにエスターは立っていた。

全身に返り血を浴びて真っ赤に染まってはいたものの、彼自身は手傷1つ負ってはいない。

それどころか如何なる者をも狂わせるような現状の中で、エスターは顔色1つ変えずに、不気味にその頬を吊り上げたまま男を見下している。

一体この空間で何が起こったのか?

それを知る者はこの空間にいる両者のみだ。

ただ1つ言える事はこの空間にあった80を越す人の命は、僅か5秒足らずで1人のダンピールの手によって冥界へ送られた事実だけだ。

 

エスター「どうしたんですかい? さっきまでの強気は何処に行っちまったんで?」

 

狂気をこめた瞳で男を見下しながら、エスターが言い放つ。

その声には非情という感情以外、一切感じられなかった。

 

男「おっおおお前……何者なんだよ……おおおお俺たちは…泣く子も黙る犯罪組織マジェコンヌなんだぞ………。」

 

震える声で男は言った。

以前のような気迫は一切感じられず、その目は恐怖のあまり虚ろになったまま涙がこぼれ落ちていた。

 

エスター「ケッ、子供になめられていながらよくもまぁそんなことが言えるもんでさァ。でも、もし泣く子が俺を見たら、そん時はどうなりますかねェ?」

 

あざ笑うようにエスターは男を罵倒する。

美しかった茶髪は真っ赤に染まり、ボタボタと血の雫を落としながらエスターの狂気をさらに駆り立てた。

エスターは震える男に静かに近づくと、ゆっくりとその口を動かした。

 

エスター「てめえが持ってる女神とお前ら犯罪組織についての情報を教えな。拒否したら……わかるよな?」

 

男は無言のまま何度も首を縦に振った。

もはやまともな理性が残っているとは思い難かったが、震えながらも男はゆっくりと話し始めた。

 

男「おっ俺たちマジェコンヌは……犯罪神様を崇拝している組織だ。3年前は……女神を捕らえて縛り上げていたのに…。」

 

まるで機械のように淡々と男の口が動いていく。

だがその声は相変わらずふるえて、目は焦点が合っていなかった。

 

エスター「……3年前、縛り上げたってのはどういうことだ?」

男「3年前……女神4人と候補生1人は…マジェコンヌ四天王の一人に敗れて……ぎょ、ギョウカイ墓場で……拘束されていたんだ。」

 

エスターの低い声に男が機械的な声で答えた。

両手をポケットに突っ込んだまま、エスターはすさまじい殺気で男を気圧している。

男はガタガタと歯を鳴らしながら口を開いた。

 

男「でも…一ヶ月前……犯罪神様が……めっめめ女神に倒されたんだ。遠くで見ていた奴の話じゃ……1人の女神が…妙な剣を持っていたって…。」

エスター(妙な剣……なるほど。)

 

男の話を大体聞き終わると、エスターは顎に手を当てて少し何かを考えた。

だがしばらくすると、男に再び冷たい声を浴びせた。

 

エスター「ご苦労でさァ……さて、言い残すことはありますかい?」

 

その言葉を聞いた瞬間に、男の顔から血の気が一切無くなった。

もはや恐怖で呂律が回らぬ男は、すがる様にエスターに訴えた。

 

男「じょ、情報は言ったじゃ……なななんで……。」

エスター「今まで散々悪いことやって来たんだろう? 続きはあの世でやってくだせェ…。」

 

エスターは男の訴えを鼻先であしらった。

もはや男に選択肢など残されていなかった。

いや、それは夜のダンピールに戦いを仕掛けた時点で、彼の運命は決まっていた。

刹那、男は急に立ち上がり、出入り口に向けて全力で駆け出した。

エスターは男の姿をただ横目に見ているだけだった。

 

男「あっああぁぁあああぁぁあああああたた助けてくれ!! 死にたくな『バギャン』」

 

男の必死の命乞いは、轟音と乾いた音にかき消された。

その直後に、男は肩より上を失ったオブジェに成り果てた。

大きな刃で切られたような断面は赤色の生温かい液体を辺り一面に撒き散らした。

切られた断面から両腕がまず地面に落ち、胸辺りからせり出した骨をむき出しにして、そのオブジェは失速すると同時に足のバランスを崩してその場に崩れ落ちた。

切り取られた肩より上の部分は壁に打ち付けられ、血と脳みその跡を壁に残し、爆砕して辺りに飛び散った。

もし抵抗のない者がこの瞬間を見れば、すぐさまショック死するであろう。

エスターの両手はだらりと両側に添えられていた。

その瞬間は第三者から見れば、男の体が勝手にはじけ飛んだようにしか見えなかった。

 

エスター(どんな悪でも命乞いの台詞は一緒かよ。)

 

エスターはそう思いながら頬についた返り血を手の甲で強引にふき取った。

その後手のひらについた大量の血をエスターは蜂蜜でも舐めるかのように舌の上に乗せ、口に含んだ。

すでにエスターの足取りは閉ざされたままの出入り口の扉に向いていた。

とても一人では開けられそうも無い扉が突如として木の葉のように吹き飛ばされ、地面に落ちると同時に鈍い音を辺りに響かせた。

 

エスター(こいつらの血はどれも汚らしいものばっかでさァ…。あいつらの血はもっと綺麗だといいんですがねェ。)

 

心の中で呟くエスターの目はもはや人間のそれではなかった。

狂気と殺意に満ち溢れたその瞳は、悪魔そのものだった。

エスターは風に血が固まりかけた髪をなびかせ、白銀の粉粒が舞うルウィーの闇にその姿を落としていった。


 
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