No.423516

ポケモンになってしまった俺物語 3

ネメシスさん

3話です

2012-05-15 22:39:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:8507   閲覧ユーザー数:8413

 

 

……ゴロゴロゴロゴロゴロ!!!

 

 

(……ん? 雷か?)

 

 

俺がこの地に慣れたときから日課となっている木の実採集をしている時、ゴロゴロと雷鳴が聞こえてきた。

ふと空を見ると一面見渡す限りの曇天、濃い灰色の雲で彩られていた。

そのせいか、まだ昼ごろだろうかという時にも関わらず、すでに周囲が暗くなり始めている。

もしかすると今日は一雨来るかもしれない、そう思った俺は昼と今晩の食料となる木の実の収集を急がせた。

……それにしても、と思う。

流石はポケモンの世界というかなんというか。

俺が元いた世界よりも大きい(らしいということを以前ネットで見た)とはいえ、数千、数万と沢山のポケモンが生息している世界であるくせに、そのポケモンたちの主な食料となるだろう木の実が全くと言っていいほどなくなる気配がない。

俺が主に収集している木もかなりの数のポケモンたちが収集しに来ているにもかかわらず「減ってるなぁ」と思う時はあれども、一向になくなっていない。

そのことを疑問に思い以前知り合いのピジョンに聞いてみたところ、木の実はその種類や実がなる木々、また様々な地域などによりいろいろと差は出てくるらしいが大抵は数日、数週間で新しい実が実るそうだ。

その中には1日しか経っていないにもかかわらず、実を実らせるものもあるらしい。

ちなみに俺が主に収集しているこの木になる実はというと、大体2,3日経くらいでまた新しく実が実るらしい。

それを聞いた時は「ゲームの使用か?」と疑問に思ってしまったものだが、よくよく考えてみると数千、数万を超える膨大な数のポケモンたち、さらにはカビゴンのような大食漢なポケモンたちまで野生に生息しているのだから、そうでもないと野生のポケモンたちが他のポケモンに襲われて死亡する恐れ以上に、食糧問題で生きていくこともままならないことになるだろう。

この不思議があふれるポケモン世界、木の実が数日でなることだってある、むしろその程度のことなんてポケモンの不思議に比べれば些細な物、そのように納得しておくことにした。

 

あぁ、そうそう、話は変わるが以前に俺が思い悩んでいた人にゲットされると洗脳されるのではないかという疑念についてなのだが、それに対しては8割がた解消した。

これも以前知り合ったピジョンに聞いたことなのだ。

 

 

『なぜ人にゲットされたポケモンがあそこまで従順になってしまうのだ?』

 

 

そう聞いてみたところによると彼は

 

 

『確かに彼ら人間たちに従うポケモンもいるが、それはそのものを気に入り、認めたからこそだ。俺たちは感情のある生き物だ、機械のように何でもかんでも意のままに従うことはない。例えゲットされてもその者を気に入らなければ、認めていなければ俺たちは決して従うことはないし、逆にその者に対し牙を向くこともある』

 

 

そのように答えてくれた。

それを聞いて俺はあることを思い出した。

それは、アニメであっても、漫画であっても、ゲットされたすべてのポケモンたちが皆トレーナーに従順に従っているわけではないということを。

 

例えばサトシのピカチュウ。

ピカチュウは確かに今ではサトシと切れることのない友情で結ばれた仲だが、当初はピカチュウは何度もサトシに対して電撃を放ち威嚇し、更には(これは今でもだが)ボールに入れという指示に断固として拒否していた。

 

例えばサトシのリザードン。

確かに元は他人のポケモンであったため、リザードに進化して性格が変わり気性が荒くなり、またリザードンに進化してサトシのいうことを聞かなくなったこともゲームの設定が成り立っているのではないかと思ったが、バッチを集め終えリーグに挑戦した段階であるにもかかわらずリザードンはいざという時でサトシの指示を無視した。

この時点でゲームの設定「他人からもらったレベルの高いポケモンはバッチが無いと従わせることができない」ということと矛盾している。

 

ピカチュウにしても、リザードンにしても、あの態度を見るからに洗脳されているという風には見えなかったのだ、まったくと言っていいほど。

両者とも、トレーナーであるサトシが気に入らない、認められない、という気持ちで指示を無視したりもしたし、主であるにも関わらず攻撃を加えたりもした。

そして、様々な旅を通してポケモンたちはサトシと共に歩み、その中でサトシを気に入り、認めたからこそ、今の関係があるのだろう。

今までポケモンという作品が好きでアニメも漫画も何度も見てきたというのに、そのことを実際にポケモンに言われるまで思い出すことができなかったとは、自称ポケモン大好きっ子が聞いてあきれるというものだ。

 

……ん? じゃぁ、残りの2割は何なのかって?

いや、確かにある程度は解消し安心はしたけど、まだ懸念事項がないわけではないのだ。

普通のトレーナーはいいかもしれないが、どこかの組織が開発したボールやら何やら、十分怪しいものも一緒に作中に出てきたからなぁ、その2割はそれらの非人道的(非ポケモン道的?)な奴らのことを指してるわけだ。

まぁ、とにもかくにも、ゲットされないっていう方針は今のところ変えるつもりはないけどな。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

話を戻して、木の実収集を終えた帰りのことだ。

いつものごとく収取場である木で昼食をとりつつほかのポケモンたちとの会話を楽しんでしまい、かなり時間が過ぎてしまった。

時計がないから大体でしかないが、3時過ぎたくらいだろうか?

昼食の時間を差し引いても大体2時間ほど会話を続けていた計算になる。

……どことなく井戸端会議をしてるおばちゃんを思い浮かべてしまい少々気落ちした。

 

 

ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ…………ガシャァァァン!!!

 

 

(……ん? 少し遠いけど、雷が落ちたのか?)

 

 

ふと周囲を見渡してみると先ほどより薄暗さが増し、ポタポタと雨が降り始めていた。

空では先ほど以上に雷鳴が響き渡っていて、いつ雷が落ちてきてもおかしくない。

しかも、電気は電気に引かれやすい性質を持っている。

つまり電気ポケモンであるピカチュウである俺はこういう時、雷が落ちる可能性が高いのだ。

 

 

(……ちょっと、急いだ方がいいか)

 

 

俺は少し早足になり寝床へと向かった。

両手に木の実を持っているのであまり速く走れないのが悔やまれる。

 

 

……ビリビリ…ビリ、ビリビリビリ

 

 

すると、どうやら今度は俺の近くで雷鳴よりかなり小さい電気がはしる音が聞こえる。

少し気になりその音の発生源を探してみる。

……探すまでもなかった。

なぜならすぐ近く、本当に俺のすぐ近くで電気が迸っていたからだ。

 

 

(……ちょ!? なんで俺の頬から電気流れてんだ!? 俺はなにもやってないぞ! 

……あっ、もしかして……雷に誘われて俺の頬の電気袋から電気が漏れてきてるのか!?)

 

 

以前よりも自身の力をコントロールできるようになったとはいってもやはりまだまだほかの電気タイプから見たらお粗末なところがあるのも事実。

実際、以前この森で出会ったピカチュウに会った瞬間だめだしされたのだ。

 

 

『……ぷっ! ピカチュウにもなって電気袋の電気も制御できないの!? そんなのピチューだってできる子はできるのよぉ!? はっはっはっはっは!!!!!』

 

 

そう、ひとしきり笑ってそのピカチュウは去って行った。

……同胞との全くうれしくもない出会いと、全く悲しくもない別れである。

確かに、俺はその時全く制御できていなかったから笑われても仕方ないかもしれないけどさ、一つだけ言わせてくれ、俺はピチューみたいに自分の電気で痺れたりなんてしねぇ!!!

……それでも、こんな時に電気袋から電気が漏れ出すなんてことはピチューでも滅多にないそうだが、それを聞いたのは今からかなり後の事だ。

 

 

(って、そんなこと思い出してる暇なんかねぇ! 早く寝床n『ガシャァァァァァァァァン!!!!!!!』あ、あががあががががががががががががががががががあがが!!!!!!!!!!)

 

 

俺がとっさに走り出そうとしたとき、俺の頬が一瞬“フラッシュ”を使ったかのように激しく光り、それを目印にしたかのように正確に寸分もずれることなく雷が俺に向けて落ちてきて、直撃してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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