「成程…大体事情はわかった。買い物をしていたら、いつのまにかこの風都にいた、と」
翔太郎さんが僕にそう聞いてくる。
場所は鳴海探偵事務所。翔太郎さんとフィリップさんが二人で切り盛りしている探偵事務所だ。
「はい。突拍子もないとは思いますが、そうなんです。」
「それにしても、なぜ君は僕たちのことを知っているんだい?それも、ガイアメモリの力についてまで」
「えっとですね、お二人の変身する『仮面ライダーW』、
そしてそのシリーズである『仮面ライダーシリーズ』は僕らの世界では特撮ドラマなんです」
僕のその発言に、翔太郎さんとフィリップさんは驚愕する。
「俺たちの戦いが、テレビドラマぁ!?」
「なるほど、パラレルワールドがあるならばそんな世界があってもおかしくない……面白い。
ムラムラするねぇ」
フィリップさんも翔太郎さんも、本当にテレビ通りなんだ……見てるこっちが面白いよ。
「だったら、君はこれからどんなドーパントが出てくるのかという記憶も持っているのでは?
だとすれば、捜査もなにも必要なくなるんだけどね」
「それはできないんです。今の僕は、その記憶を思い出すことができないみたいなので。
ですけど、その局面にあったら思い出せるみたいです」
まったく都合のいい記憶喪失みたいだなぁ。
「そういえば、君の持っているメモリは『メモリー』のメモリだと言っていたね。
一体、どんな能力があるのか教えてくれないかな?」
「もちろんですよ、フィリップさん。僕のメモリ、メモリーメモリは
限定的に地球の本棚の一部へアクセスし、情報を引き出す能力があります」
その説明で、彼はまた驚いたようだった。
「地球の本棚へ?……興味深い。ぜひ君のメモリを調べさせてくれ!
大丈夫、絶対に壊さないから!」
その迫力に気おされながら僕が了承すると、
フィリップさんはスキップでもしかねない機嫌のよさで秘密の地下室へ入っていった。
「あ、おいフィリップ!?……ったく、しゃーねーな。
とにかく、お前行くあて無いんだろ?だったら、ここで働いてみる気は無いか?」
とんでもなく良い提案だった。魅力的なんだけど、大丈夫かな?
「え、いいんですか!?でも、ご迷惑なんじゃ……?」
「いいや、迷惑なんかじゃないぜ。むしろ、仮面ライダーメモリーだっけか?
の力を貸してくれると俺たちも仕事がやりやすいからな」
「…成程、ギヴ&テイクってことですか。でしたら、こちらも協力は惜しみません。
存分に僕の力、使ってください」
そして、僕は鳴海探偵事務所の助手として、Wの世界で暮らすことになった。
…のはいいんだけど。
「こりゃあぁ!」
スッパァン!!
「痛てっ!」
「あいたッ!」
僕と翔太郎さんの後頭部になにかがいい音をたてて打ち付けられ、僕らは頭を抑える。
「亜樹子ォ!いいかげん人の頭をスリッパでブッ叩くのやめろ!」
「亜樹子さん……初対面の人にも容赦ないんですね」
そう、そこにいたのは鳴海探偵事務所(自称)所長の鳴海亜樹子さんだった。
「だまらっしゃい翔太郎くん!それとその人誰?なんで私の名前知ってるの?」
「初めまして。僕は星雄聡里。今日付けで翔太郎さんの助手になりました。
これからよろしくお願いします、鳴海亜樹子所長。」
「……翔太郎くん、どっからこんな有能な助手拾ってきたの?」
さらりと人を物みたいに言わないでください、亜樹子さん。
「そんなことよりいいかげん突っ込みを手加減しやがれ!」
「何よ、やるかこの~!」
「喧嘩はやめて下さいってば~!」
そんなこんなでどたばたしていると、事務所の入り口のドアが開いた。
「あの……」
そう声を掛けかけて、中で起きているドタバタを観て呆然とする女性。
「亜樹子ぉぉぉぉぉ!」
「いいかげんに……って、お客さん!」
こんな状況でも気づくとは亜樹子さん流石です。
「す、すみません、探偵事務所と間違えました!」
「「「ま、待って待って!」」」
そして、全員そろって唱和する。
「「「探偵事務所です!!」」」
「連続風車破壊事件?」
「はい、そうなんです」
依頼人の女性の名前は、風祭葵(かざまつりあおい)さん。
彼女は風都に無数にある風車を作ったり修理したりしている、
「風祭風工業(かざまつりふうこうぎょう)」の社長の娘さんである。
「最近、町で過剰発電で壊れる風車の数が激増しているんです」
「過剰発電?どういうこと?」
亜樹子さんは良く判っていないらしい。
「はい、説明しますね。元々あの風車は普通の風力発電装置を小型化したもので、
風都に吹き続ける風を利用して発電するものです。
ですが、あまりに強い風、それこそ超大型台風の風などが吹くと、
過剰電圧で配線が焼ききれたり風車そのものが壊れたりするんです。
最近それが一週間に数台のペースで壊れるといった具合で、明らかにおかしいんです」
「ほう、そいつは放っておけねぇな」
あ、翔太郎さんスイッチ入った。
「困っている女性を放っておくのはハードボイルドとは言えないからな。
それに、風都の象徴の風車を壊して回っている奴がいるとしたら、
そいつはこの風都を泣かせている。そんな奴は、この俺が放っておけねぇ。
この依頼、受けさせてもらう」
「ありがとうございます、左さん!」
「良いって事さ。俺たちの専門分野という気もするしな。
それじゃ、何かわかったら連絡入れるぜ」
「はい、よろしくお願いします。では、また」
そう一言言い、風祭さんは帰っていった。
「連続風車破壊事件、かぁ……何でそんなことするんでしょう、翔太郎さん」
「わからねぇ。だが、
瞬間的に、かつ局所的にそんな台風も超えるような風を吹かせることは普通はまず不可能だな」
「ということは……ドーパント、ですか」
「そういうことになるな。うっし、まずは風車が破損したところに行ってみるか。
資料は持ったな?」
「はい、翔太郎さん!あ、それとフィリップさんに一言声掛けて行きましょう。
たぶんまだメモリーメモリをいじってると思うので」
「そうだな、地下に入るか」
とまぁ、そんなこんなで地下室に入った僕らが目にしたものは、
ぶっ倒れているフィリップさんだった。
「フィリップぅぅぅぅぅぅぅ!?」
「フィリップさぁぁぁぁぁん!?」
どうしてこうなった。
そして二人して介抱し、ようやく目を覚ましたフィリップさんは、
「……面白い!ゾクゾクしっぱなしだよ!!」
「「開口一番それかよ!!」」
こんな状態である。
しばらくして落ち着いたフィリップさんから僕らはメモリーメモリのことを教わった。
「聡里くん、君のメモリからアクセスできる本棚は、僕が入れる物とは独立していた。
そして、中の記憶も大半が封印されている状態みたいなんだ」
「え、そうなんですか?」
変身したときに違和感があると思った。そういうことなのか。
「だが本のタイトルくらいはわかった。
でも、そのタイトルも意味がわからない単語ばかりなんだ。
これから言う言葉、あるいは名前に心当たりがあったら言ってくれないかな?」
「はい、どんな単語なんですか?」
「ああ。クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド。
それから、響鬼、カブト、電王、キバ、ディケイド、オーズという単語なんだけどね」
「え、それって!」
むしろ心当たりしかないよ、これは。
「なんだ、一体何の記憶なんだ?」
「え~っと、ですね……僕や翔太郎さんとフィリップさん以外の、ライダーの名前です。
それも、結構最近のライダーですね」
「へぇ……興味深いね。だけど、僕もこのメモリのプロテクトは解除できなかったんだ。
だけど、まったく新しいメモリガジェットの設計図データが入っていた。
これから製作してみるよ。」
「本当ですか?なんでガジェットのデータが……?」
まぁ、考えていても始まらないか。って、何か忘れてるような……あー!
「翔太郎さん、依頼のこと!」
「おっといけねぇ、忘れてた!
フィリップ、俺たちはこれから依頼された事件の捜査に行って来る。
メモリーメモリはもういいか?」
「ああ、翔太郎。メモリーメモリに僕側からリンクを作ったから、
これからは僕の本棚側からいつでもアクセスできるし、
メモリーメモリから僕の本棚が閲覧できるようになっているはずさ。
メモリのほうは聡里くんに返すよ」
「便利なもんだな。じゃ、行くぞ聡里!」
「了解です、翔太郎さん!」
そして、僕たち二人は風都で捜査を開始した。
途中なんか見覚えのある人が魚屋さんで小指を魚の口に突っ込んでいたり、
木の上に自転車ごと引っかかっていた不幸な人を助けたりしつつ。
すべての風車が壊れた場所を見ていくと翔太郎さんが共通点を発見した。
「デートスポット、ですか?」
「ああ、ウォッチャマンやクイーンとエリザベスに聞いて判ったんだが、
風車が壊された場所の近くは有名なデートスポットがあってな、
風車が壊された関係で人を近づけないようにしたらしい」
「と、いうことはもしかして?」
「ああ、他人の恋愛を妬ましく思っている奴だな犯人は。
だが、あと一箇所壊されていない有名なデートスポット、それも特大のがある」
「それってまさか、『風都タワー』、ですか?」
「その通りだ、さすが助手だな。犯人は大体、週末や祝日に事件を起こしている。
ちょうど今日は金曜、風都タワーに張り込むぞ」
「わかりました。フィリップさんに連絡して、
犯人がどこから行動を起こすのか検索してもらいましょう!」
と、言うわけで鳴海探偵事務所に戻ってくると
フィリップさんは嬉々として変わった形のノートパソコンと携帯を操作していた。
「フィリップ、検索だ……って、なんだそりゃ?」
「ああ、翔太郎に聡里くん。いいところに来たね。メモリガジェトが完成したよ」
「本当ですか!どこにあるんですか!?」
そう僕が聞くと、フィリップさんはおもむろに二本のギジメモリを取り出した。
そして、ノートパソコンと携帯にそのギジメモリを挿入した。
「紹介するよ。彼らが新しいメモリガジェット、
『マンタレイライブラリ』と『ホークフォン』だ!」
[MANTAREY!][HAWK!]
ガイアウィスパーが鳴り響くと、パソコンと携帯が変形してマンタと鷹になった。
「おお、コイツが新しいメモリガジェットか!」
「すごい!ありがとうございます!」
「さらに、マンタレイライブラリにはメモリーメモリからのデータ読み込みも
できるようにしてある。
一応、キーワードがあれば検索もできるようになっているから、役に立つと思うよ。
どうかな、彼らは?」
さ「……」←感動で言葉すら出てこなくなっている
翔「……」←驚愕で固まっている
1分後
「あ~、フィリップ、検索だ。頼めるか?」
「もちろんさ。……さぁ、検索を始めよう。キーワードは?」
「キーワードは、『風都タワー』、『攻撃』、『隠れ場所』だ」
そのキーワードで、フィリップの検索結果がある程度絞られた。だが絞りきったほどではない。
「駄目だ翔太郎、絞り込みきれない。他にキーワードは?」
「あ、フィリップさん!キーワード追加、『風の通り道』!」
その一言で、フィリップの検索が一冊の本に絞り込まれた。
「ああ、検索完了だ!ナイスだよ聡里くん!
翔太郎、結果は風都タワーの裏側の廃工場だ。
そこで張り込みしていれば、ドーパントが現れるはずだよ」
「ありがとよ、フィリップ。んじゃ、ちょっくら行って来るぜ」
僕と翔太郎さんは、メモリとドライバーを持ってその工場へ向かった。
そして時間は過ぎて翌日の深夜二時ごろ。丸一日張り込んでいたけれど犯人はまだ現れていない。
「翔太郎さ~ん、アンパンと牛乳買って来ましたよ~」
「助かった、これまでは買い込んでから見張りするしかなかったんでな」
「いえ、お安い御用ですよ……!来た!翔太郎さん、これ!」
僕はそう言って翔太郎さんにPCモードのマンタレイライブラリの画面を見せる。
そこにはホークフォンの暗視カメラから転送された映像が映っていて、
工場の入り口から入ってくる一人の冴えない男が写っていた。
「でかした聡里。気づかれないようにアイツに近づくぞ」
「アイ・アイ・サー」
闇にまぎれて動くのって小さいころからなんかワクワクするね。
~犯人サイド~
「くっそ、クリスマスなんかなくなっちまえ!デートなんかさせるかよ!」
暴言を吐く彼は冴えない容姿と陰気な性格のせいで、
まったく女性に興味を持ってもらえなかった。
そして男は、クリスマスをブチ壊すというその考えに取り憑かれ、
禁断の力、ガイアメモリを手に入れてしまった。
そしてその男はスタートアップスイッチを押し、メモリを起動させる。
[AIR!]
「デートスポットなんて、壊れちまえばいいんだ!!」
そう吐き捨て変身しようとした瞬間、工場内に声が鳴り響いた。
「おおっと。そんなことさせると思うか?」
「思い通りにはさせませんよ!」
「!!」
~聡里サイド~
ドーパントにセリフを投げつけながら登場する翔太郎さんと僕。
相手は露骨に悪意のこもった表情になり、ガイアメモリを握り締める。
「うるせぇ、人が仕事するしかない日に横でイチャイチャされる方の身にもなれってんだ!
邪魔すんな!」
そしてその男は、自分のひじにある生体コネクタにガイアメモリを挿入し、
ドーパントへ変身してしまった。
「うわぁ、ドーピングしちゃったよ」
「しゃあねぇな。フィリップ、聡里!こっちも行くぞ!」[JOKER!]
「もちろんさ、相棒」[CYCLONE!]
「わかってますよ、翔太郎さん!」[MEMORY!]
「「変身!」」
[CYCLONE! JOKER!]
「「さぁ、お前の罪を数えろ!」」
「変っ身!」
[MEMORY!]
「貴方の記憶、見せてもらいます!」
『翔太郎、あのドーパントは『エア・ドーパント』。空気を操る力を持っていて、
かまいたちを飛ばして攻撃するらしい』
「だったら、このメモリだ!」
そう言い、翔太郎さんは左側、ボディサイドのメモリを変更する。
[TRIGGER!]
[CYCLONE! TRIGGER!]
「サイクロントリガー……だったら僕も!」
そう言いつつ、僕はメモリーメモリをベルトから抜き、ウェポンスロットに装填する。
すると左胸の位置にメモリーの装甲と同じ色のトリガーマグナム、メモリーマグナムが現れる。
「行くぜ、空気野朗!」
「空気って言うんじゃねぇ!」
そんなことを言いつつ、ドーパントはかまいたちをWに向かって飛ばす。
だが、Wはやすやすとかわして風の弾丸を敵に撃ち込む。
「てめぇ、いいかげんにしやがれ!」
「僕も忘れてもらっちゃ困りますよ!」
ドーパントに言い返しつつ、僕もメモリーマグナムで敵を射撃する。
「ぐあああああ!?……なーんてな」
「『「何!?」』」
その瞬間、まるで砲撃のようにものすごい風圧がWとメモリーに襲い掛かる!
「『「あぁぁぁぁぁッ!?」』」
その攻撃で、Wとメモリーは工場の壁を突き破り外へ放り出される。
「今の攻撃、なんだってんだ!?」
『あの攻撃は風……もしかして』
「ええ、フィリップさん。おそらく空気を圧縮してから一方向へ一気に開放したんでしょう。
となると、直撃すればけっこうヤバいですよ」
そんな感じで、僕らはドーパントの攻撃を回避しながら話し合っていた。
「……翔太郎さん、フィリップさん。一つ思いついた打開策があるんですけど」
そう言って、僕は翔太郎さんとフィリップさんに作戦を伝える。
「どういうことだ?」
『ああ……なるほどね』
「ってわけで、協力お願いします!行きますよ、ボス!」
「ボスっておい……まあいいか。作戦は良く判らねぇがやるぞ、フィリップ!」
『もちろんだとも、翔太郎』
そして、Wは『ハードボイルダー』、僕はバイクが無いのでハードボイルダーの後ろに立って
メモリーマグナムで牽制射撃をする。
「てめぇらチョコマカ逃げ回ってンじゃねェェェェェェェェ!」
ドーパントは風を背中側から噴出しバイクに匹敵する速度で追いすがってくる!
まぁ、追って来てくれないと、作戦自体成立しなくなるんだけど……
そして半時間かけて、ドーパントを狙い通りの場所、港まで連れて来た。
「や、やっとたどり着いたぜ……」
『途中、竜巻で上空に打ち上げられたときはどうなるかと思ったよ……』
「で、でも目的地には着きました!後は……!」
「おう!コイツで決めるぜ!」
[JOKER!]
[CYCLONE! JOKER!]
そしてサイクロンジョーカーに変身したWは、
サイクロンサイドの能力で竜巻を巻き起こしドーパントの攻撃を吸収・無効化する。
「なんだと!?俺の砲撃を取り込んでやがるのか!」
「当たり前だ!お前なんかの風が相棒の疾風(サイクロン)に敵うか!」
『まぁ、当然の結果だね』
そしてWは、その風を纏った右腕でエア・ドーパントを上空へ殴り上げる!
「がはっ!?だが俺はこんな攻撃では……」
「誰がそれだけって言いましたか!」
[MEMORY!]
「メモリーシャフト!いっきまぁす!即興技、ライダーバッティング!」
「ぐぁぁぁぁぁ!?」
僕は打ち上げられたドーパントをメモリーシャフトでバッティングするように打ち、
海の中に叩き込んだ。
「くっそ、あいつら!砲撃してや……ッチ!、空気がねぇ!」
そう、僕がWに伝えた作戦とは、『ドーパントを水中へ沈める』というものだった。
メモリーの力を使ってドーパントの能力を検索した結果、
エア・ドーパントの能力が『接触している気体を操る』という物だったから、
『気体に接触しない状況』を作り出せば良いと思い、
この作戦を考えついて翔太郎さんとフィリップさんに教えたんだ。
「翔太郎さん、フィリップさん!仕上げ行きますよ!」
「『ああ!』」
そして二人揃ってメモリを取り出し、マキシマムスロットへ挿入する。
[JOKER! MAXIMUMDRIVE!!]
[MEMORY! MAXIMUMDRIVE!!]
「まずは……その場に縫いとめる!」
そう叫び、メモリーシャフトをドーパントへ投げつけ、突き刺してその場に足止めする。
「ガァァァァッ!?動けねぇ!!」
「メモリー!同時に決めるぞ!!」
「了解です、翔太郎さん!」
「『「はぁぁぁぁぁっ……!!」』」
気合を込め、僕ら二人は上に飛び上がる。そして、メモリブレイク!
「『ジョーカーエクストリーム!!』」
「メモリークラッシャー!!」
Wが左右に分離しキックを叩き込み、
僕はドーパントに突き立てたメモリーシャフトを相手に突きこむように上から踏みつける!
「貴方の罪、記憶しました」
「ぐぁぁぁぁぁぁああああああッ!!」
断末魔の叫びと共にエア・ドーパントは爆発し、メモリが排出され砕け散った。
[事件記録]
[ドーパントに変身していた男はすぐに警察に引き渡しました。]
[お約束の刃野刑事さんの他に、]
[どっかで見たような不器用な警察の人が来て犯人を連行していったけど]
[なんだったんでしょうね?]
[それはそれとして。]
[女の人に気づいてもらえない程度の事でドーパントなんて、アブない人でした。]
[まぁ、なんでも、いいですけど。]
[翔太郎さんは、どうやら風祭さんにいいところを見せたかったみたいですね。]
[でも、婚約しているとわかってすごい落ち込んでました。さすがハーフボイルド。]
[そして、明らかになったガイアメモリ販売員の特徴。]
[赤いシミのあるスカーフの男、だそうです。一体どういう人物なんでしょう。]
[それはともかく、これからも、僕は翔太郎さんたちに協力させてもらうことにしましょう。]
「……こんなものでいいかな。ありがと、マンタレイ」
僕は、マンタレイライブラリに事件の記録を入力するのを終えて、
自分で淹れた紅茶(砂糖少な目のミルクティー)を静かに飲む……つもりだったんだけど。
「亜樹子ぉぉぉぉぉぉ!」
「ぶっふぅ!」
思わず吹いちゃった。何事かと思って見に行くと、そこでは。
「俺のプリン返せ~!」
「もう食べちゃったも~ん♪」
「じゃあ弁償しやがれぇぇぇ!」
と、喧嘩している探偵(二十四歳)と女性(二十歳)。誰かは言わずもがなでしょう。
「翔太郎さん、亜樹子さん……」
「え、聡里くん……?」
「ちょ、おい落ち着け!」
ハリセンを構える僕に対し、あっけにとられている亜樹子さんとオドオドしだす翔太郎さん。
「僕は本来、あんまり手は上げないんですけどね……?」
「「ひいっ!?」」
「いい大人が……なにやってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぎゃあああああ!」「きゃあああああ!」
スッパァァァァァァァァァァァァァン!!
その日、これまでで最高のヒット音が鳴海探偵事務所には鳴り響き、
後には探偵と所長の屍(生きてます)が転がっていた。
「いっぺん、天国を味わって来て下さい!」
続く!
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連続投稿の二話目です。
では、どうぞ