No.421807

超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 第18話

ME-GAさん

18話です なんやかんやで5月になってキャラソン発売近いですね

2012-05-12 14:30:28 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1308   閲覧ユーザー数:1266

コンコン、と一応ドアをノックし、ゆっくりとドアを開ける。

抜け道を通り、何とか協会にたどり着いた一行はそっとドアの隙間から顔を覗かせ、中の様子を伺う。

ふと少女、ホワイトハートの声が響く。

「フィナンシェ、今日はお休みを貰うと言ったハズなんだけど」

ぶすっと膨れた声でホワイトハートはそう告げる。

しかし、それをさして気にした様子もなくネプテューヌは声を上げる。

「残念! 侍従さんじゃないよー!」

「……誰?」

「何だチミはってか! そうです、私がネプテューヌだよ!」

「フィナンシェ、貴女が連れてきたのね」

ホワイトハートは面倒くさそうに答える。

「まあ、いい。ネプテューヌ、それに……テラ。二人だけ残して後は出て。しばらく三人だけで話をさせて」

「え、俺も?」

テラは衝撃の展開に度肝を抜かれる。

フィナンシェは慌ててアイエフとコンパを連れてドアに手を掛ける。

「さ、お二人とも。ホワイトハートを怒らせるととんでもないことになりますよ!」

寧ろとんでもない展開を見てみたい気がしないでもない二人だったが、まあテラもいるし大丈夫だろうと思い、三人は退室した。

「……クソ侍従」

悪口の度合いに驚きつつも、ネプテューヌは口を開く。

「それより、女神様にもう一度鍵の欠片について聞きたくて来たの。何か知らない?」

「……テメエと話す気なんざこっちにゃねえ! さっさと帰れ、バーカ!!」

「え?」

「だいたい、テメエ自分の島はどうしたよ! んなもんほっぽってこんなところまで無駄足運んで来やがって!!」

なんかもう、そこら辺の不良娘みたいな感じになっているホワイトハートを見て二人はもう驚きっぱなしである。

「だいたい、人の大陸に堂々と入って来ただけにとどまらず、協会にまで入りこんでホワイトハート様、だあ!? 何を面倒くさいこと……ホワイトハート様?」

ホワイトハートは自分の名、というかネプテューヌの呼び方に疑問を持つ。

「テメエ、いま略さずに言ったか?」

「そだよー、一応女神様だし。それともホワイティとか親しげに言った方が嬉しい?」

「次に呼んだらぶち殺すからな……! でも、他人の前で演技できるほど頭の回るヤツじゃねえな」

なんかいきなり罵倒されているな、とテラはマイペースにそれを見ている。

「え、何?」

「……何でもない。それより、貴女はさっさと帰ってくれる? 聞きたいことなら後日に返事を書くから侍従に紙に書いて渡して」

「えー、なんか納得いかないけど、答えてくれるのならいいや! テラさん、行こ」

「待って、テラは残して」

「えー?」

 

 

ホワイトハートの言葉に少々不服そうに声を上げるネプテューヌだが、テラがなんとか宥め、後にはテラとホワイトハートだけが残った。

「えーと、何か御用ですかね?」

「……貴方、どうして彼女たちと一緒いるの?」

「へ?」

おおよそ予想だにしない質問にテラは間抜けな声を上げる。

「別に彼女たちと一緒にいる義理も無いはず」

「……義理、とかじゃないんだけどな」

「どう? ウチで働いてみない?」

なんで女神様が勧誘? とテラは心中でそう思った。

「貴方は何でも出来る、きっといい役職に就ける。危険な旅なんかより、こっちで働いてみない?」

テラはどうしたものかとポリポリと頭を掻いて答える。

「別に、そんなつもりはないんだけど。俺はアイツらと一緒にいたいからいるだけだし。女神様直々に勧誘してくれるのは有り難いけど、俺はこの旅を途中で止めるつもりはないよ」

「……そう」

ホワイトハートは少し残念そうな声を上げる。

「……もういい。帰っていいわ」

ホワイトハートは適当にそう答えると仕切りの向こうでドアの閉まる音が聞こえる。

テラは小さく溜息を吐くと、自分も後方のドアから退室した。

 

 *

 

「ただいま」

「おかえり。何の話をしていたの?」

「なんか勧誘された。協会で働かないか、って」

テラはなんとも無い風に両手を上げる。

「ともかくとして、鍵の欠片についての情報はまた後日として……。今後は俺達はどうする?」

テラの問いにアイエフはうーんと唸る。

「そうね……。とりあえずいくつかの依頼をこなしつつ、こっちでも鍵の欠片についての情報を集めていく感じになりそうだけど」

アイエフがコーヒーを一啜り。

しかし、そこでフィナンシェが慌てて部屋に入ってくる。

「た、大変です! 街に、街にモンスターが現れました!」

「はぁ!?」

衝撃の報せに一同は目を見開く。

普段は警備の人達が街を守っているため、そのようなことはまず有り得ない。

しかし――

「どういうことよ……。つーか、街に入られるまで気付かないなんてザルな警備ね……」

アイエフはがっくりと肩を落とす。

「それが、突然街中に出たみたいで……,現場も大混乱なんです……!」

「こうしてる場合じゃないよね! すぐに行かないと!」

ネプテューヌは他の意見も聞かずにサーっと協会の出口に向かう。

「そうですよ! ともかく今は考えるよりもモンスターさんのを退治するです!」

かくして一行は協会を飛び出し、モンスターの出現した現場へと急行した――。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

現場では壊された建物から濛々と黒煙が上がっている。

「って、でか!」

テラは巨体のモンスターを見上げてそんなことを叫ぶ。

建物など比でもない巨大な体躯に一行は顔色を蒼白させる。

「と、とにかく倒すしかないよね! いくよーっ!」

ネプテューヌは変身し、大地を蹴ってモンスターの頭部に太刀を叩き込む。

しかし、太刀を弾かれモンスターは右側の角でネプテューヌを吹き飛ばす。

「ねぷ子!?」

建物に突っ込んでいくネプテューヌを見て、アイエフは叫ぶ。

しかし、突如地響きが起きる。

見ればモンスターが一向に向かって突進してきている。

「くっそ!」

テラはギリギリそれを避けてモンスターの足下に炎弾を撃つ。

『グォオオオ!』

しかし、モンスターはさして気にした風もなく再度地面を揺らし、テラに向かって突進。

「嘘だろ……!」

テラは避けようとするも雪に足を取られて思うように動けない。

モンスターは迫る。

 

 

 

(死……!)

 

テラがそう思い、きゅっと目を瞑ったとき――

 

 

 

「だぁっ!!」

少女の声が響き、ズシンと一際大きな地響きが起こる。

テラはそっと目を開ける。

そこには――

「……無事?」

白き機影。

一行と対したあの白い少女がテラを守るように立ちはだかっていた。

そしてその先には巨体を横たえたモンスターの姿。

恐らく、彼女がモンスターを叩いたのだろう。

「お前……」

「動ける? 手を貸そうか?」

少女はそっと手を伸ばす。

テラは無言でその手を取る。

「今のお前は、味方なのか?」

「モンスターを倒そうという気持ちは同じなはず。目的は一緒」

「……そうか。協力、してくれるか?」

少女はむすっとした表情を見せる。

「……ネプテューヌと共闘するのは癪だけど、今だけは協力する」

テラはそんな少女を見て微笑む。

「助かる」

二人は地面を蹴って少女は上に、テラはサイドに回り込む。

「コンパ、アイエフ! モンスターの動きを止めてくれ!」

「な、何よいきなり! それにあの娘!」

「今は説明してるヒマがない! 急いでくれ」

「りょ、了解ですぅ!」

二人は魔法弾を発砲し、モンスターの脚を止める。

テラは顔の方に回り込んで両目を爆破、視界を奪う。

「ねぷ子、いけるか?」

「当然!」

ネプテューヌは地面を蹴り、少女と共にモンスターの脳天をたたき割る。

『グガガア……!』

モンスターは悲痛な叫び声を上げて、静かに地面に横たわる。

トン、と二人は地面に降りる。

「……貴女」

「……今日は戦うべきじゃない。残念だけど、これで」

少女はそれだけ言うと、くるっと向きを変えて何処かへと消えていく。

テラはそんな彼女の後ろ姿を見送った。

 

 *

 

一行はモンスターの出現を見ていたという人物に話を伺っていた。

「本当にモンスターが来たことを誰も気付かなかったのか?」

「はい。もういきなり現れたとしか言いようが無くて……」

しかし、そんな女性の言葉にコンパはふと疑問を口にする。

「でも、思えば私達はモンスターがどうやって生まれるかなんて知らないです。ホントにいきなり生まれるのかもしれないですね」

テラはふと周りを見るも特に目立って怪しいものやきっかけになりそうなモノも全く見当たらない。

「ホントにこれだけなのか? 何か後味悪いな……」

「そうですね……。私も異端者さんを見ただけで特に怪しいことはなかったですし……」

 

 

…………。

 

……。

 

…。

 

 

一行の間に暫しの沈黙が流れる。

そして、見かねたアイエフがゆっくりと口を開く。

「あ、あのさ、こんぱ? アンタ、分かって言ってるのよね?」

「え? 何がですか?」

「……見たのよね? 異端者を」

「はい」

天然恐るべし、と一行は頭を抱える。

「こんぱ……、覚えてないの? 異端者が違法ディスクでモンスターを召喚していた時のこと……」

「……」

ネプテューヌにそう指摘され、コンパはしばらく無言になる。

「あれ、私なんか重要なこと見落としたですか……?」

「「「……うん」」」

コンパの問いに三人は非常にやりにくそうにそう答えた――。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「ようやく追いつめたわよ!」

アイエフは洞窟の奥で老人に向かってそう叫ぶ。

この老人こそ、異端者でありモンスターを召喚したと思われる人物だった。

「分かっておったさ、誰かがワシを追ってくることなぞ……。だが、ワシはもう戻るつもりはない。このディスクがある限り、モンスターは生まれ続ける……」

老人はそう言って懐から一枚のディスクを取り出す。

「それが噂の違法ディスクだな。誰に貰った?」

老人は「はて……」と呟く。

「これは魔王ユニミテスの使いに渡された……。モンスターを生み出すことは魔王へのこの上ない奉仕じゃからな……」

「そんなことのためにモンスターさんを召喚したですか!」

「何も知らない小娘が分かったような口をきくな! ……モンスターを生み出さねば、世界は滅びるのじゃ」

しかし、そんな矛盾した言葉にテラは眉を寄せる。

「何を……。モンスターがいるからこそ、世界が滅びるだろうが」

「うるさい! 魔王様の天罰に比べれば貴様等なぞ怖くもないわ!!」

老人はぴしゃりと一行に言いつける。

「……もう女神様の信仰もないわね、これ以上は話しても無駄みたい。行きましょ……」

まだ老人のことを気にするネプテューヌではあったが、テラに宥められ、仕方なく老人をそこに置いて一行は洞窟を立ち去った――。

 

 

「とりあえずモンスターの元凶は異端者だって分かったわけだけど、どうする? 大陸回って異端者を締める?」

「んー、でも結局は何も解決してないよねぇ。まずは本体を叩かないと」

ネプテューヌの言葉にコンパはポンと手を叩く。

「そうです! 異端者さんの話だと、ディスクは魔王さんの使いの人から渡されたって言ってたです!」

「つまり、その使いとやらを倒せば事は済むわけだな」

一行はそんなことを言いながら、宿屋への道のりを歩いていた――。

 

 

 

少女は真白の雪が降り注ぐ森の中をゆっくりと、歩いていた。

ただのゆっくりという表現では少し間違いがある。

ゆっくり、というよりはモタモタ、という方が表現は適切かもしれない。

小柄な体躯の少女は一歩踏み出すごとに少女の脚はずぶずぶと雪の中に埋まっていき、更にそれを前に動かすのにもいちいち埋まった脚を引き上げて進まなくてはいけないために時間が掛かっているのである。

しかし、そんな話を持ち出しておいてなんだが面倒くさいので普通にモタモタと歩いていると表記した方がこんなに行を使わなくて良いと今更ながらに後悔しているのであるが。

 

閑話休題。

少女はそんな状況に苛立ちを募りながらまた新たな一歩を踏み出すが、決してその一歩は希望への道のりではなく、むしろ一歩一歩進むごとに絶望していってしまう感じすら思われるのである。

少女はこめかみをひくつかせながら面倒くさそうに足下の雪を蹴り上げる。

「……ネプテューヌを追って来てみれば見失うし、迷うし……!」

そう毒づき、手をついていた樹木の幹を思いきり殴りつける。

「過激派ギルドの動向も気になって今は一番教会を開けたくねえ時期だってのに――」

少女の手はブルブルと震えだし、大きく息を吸い叫んだ。

「どれもこれも、全部ネプテューヌのs――ぶっ!?」

突如、少女の頭上から何か大質量のモノが降り注ぐ。

それは誰もが察しが付くとおり雪であり、彼女が木の幹を叩いた瞬間に上に絶妙なバランスで乗っていた大量の雪が降り注いだ結果であった。

そこ一帯には最早、何もなくただただ静寂のみがそこに鎮座しようとしていたのであった――。

 

 *

 

ダンジョンから抜け、一行は一休みと付近で見つけた天然温泉で足湯状態でいた。

しかし、そんなことをしているのは女性陣だけであり、テラはと言えば何を思うか適当に付近を徘徊していた。

しかし、テラはふと聞こえた何か、人の声のようなモノを聞きつけた。

何事だと思い、その声がした方へと足を向ける。

だが、そこには何もなく、何も居ず、テラは首を傾げて訝しみつつもパーティの元へ戻ろうと踵を帰した直後――

「――っづぁ! だぁーっ! 邪魔だ邪魔!!」

暴言を吐く少女の声と共にテラの足下の雪から手が飛び出し、ホラー映画も真っ青な風景が築き上げられた。

「ひぃっ!」

いくら戦闘に長けた歴戦の士官生でもこの状況はあまりに怖すぎるか、悲鳴を上げてその手がバタバタと暴れるのを暫し見つめていた。

が、そろそろ状況が理解できたかテラは顔を別の意味で青ざめさせて急いで地面に膝をつけた。

「埋まってるのかよ!? お、おい、大丈夫か!?」

テラは地面に己の手を突き立てて急いで雪をかき分ける。

幸い、積もって間がないのかテラの手が刺さると共に雪は掻き分けられて行く。

 

それから数分。

テラの必死の穴掘りのお陰でどうにか埋まっていた人間を救出することが出来たのではあるが

「って、冷た! とにかく身体温めないと!?」

テラは自分の上着を脱ぎ捨てて目の前の少女に被せ、それから懐から念のために買っていた緑茶を取り出し、少女に手渡す。

だが、ここでテラはふと少女の姿を見てハッとする。

「……ブラン? 何でここに?」

テラにそう言われ、少女、ブランも同じくしてハッとする。

「テラ? えと、私はネp――くしゅんっ」

と可愛らしく嚔をするブランを見て、テラは慌てて彼女を抱え上げる。

「と、とにかくここじゃどうしようもないから、一度宿に行こう! そこなら暖房とかもあるから!」

と、ブランは何となく感じるテラの微熱を感じながらちょっぴり嬉しい気持ちになった。

 

 

 

満足したか、ネプテューヌ、コンパ、アイエフは足湯を終えて戻るもテラが居ないことに気付く。

「あれ? テラさーん?」

「何処に行っちゃったですかー?」

「アイツ、また勝手に……」

アイエフは仕方がなさそうに呟くと辺りを探そうと適当に一歩と足を踏み出す。

しかし、彼女たちの背後からザクザクと雪を吹き分ける音が響き、木々の影から探し人の姿が現れる。

「もう、何処行って――誰?」

そう怒鳴ろうとしたものの、彼が連れている少女の姿を見て眉をひそめる。

「えと、この娘は……」

しかし、そんなテラの言葉も聞かずにネプテューヌとコンパの二人は嫌に黒い笑顔を浮かべる。

「どうせ何処かからかお持ち帰りしてきたんだねー……」

「そうですかー、テラさんもイケナイ人です……」

「ち、ちが……!」

そんな二人の言葉にテラは激しくショックを受ける。

しかし、その脇でブランはネプテューヌの姿を見て

「ね、ネプテューヌ……! そうだった……。

テラ、降ろして! 一人で帰れるからっ……!」

そう言ってジタバタと暴れるモノのショックを受けるテラにそれは聞こえていないのか肩を落としてガミガミと三人からの説教を受けている。

ブランはその後に、結局為す術無くそのまま連行される形となった――。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

宿に戻った一行はとりあえず嫌がるブランを無理矢理部屋に押し込み、暖房をガンガンに効かせ、毛布を被せてとにかく暖かい格好をさせた。

数分の後に、抵抗も無駄だと悟ったか彼女はもう子犬のように大人しくなっている。

 

テラとアイエフは部屋の外で彼女について話し合っていた。

「あの娘の知り合いなの?」

「あー、まあちょっと前に会ってな」

「そう……。見た感じあの娘、アンタにしか心開いてないんだけど」

そうかな、と思いながらテラはポリポリと後ろ頭を掻く。

「俺も一回あっただけなんだけどな……。やっぱり知らない人より知ってる人ってことか?」

「そんなこと私に聞かないでよ、知らないわよ」

そんな話をしていた二人をドアの影から少しばかり顔を覗かせるブランを見てテラはニコと微笑みかける。

「ん? どした」

「……何でも」

そう言ってまたひょっこりと顔を引っ込める彼女を奇異の目で見ながらアイエフは口を開く。

「んー、二人の方が話しやすいこともあるかもね……。私達で買い物に行ってくるから、その間に身の上なり聞けることがあったら聞いておいてくれる?」

あまり深いところまで突き詰めるのは流石に駄目だよな、とテラは思いながらそんなアイエフの言葉に首を縦に振った。

 

 

 

 

テラにそんな身の上を聞き出すとかそういう器用極まれる、しかも女の子相手にできるものかとアイエフは思っていたのだろうか。

宿の一室、テラ達が現在借りているその部屋にはもう重苦しいほどの沈黙が鎮座しており、何て言うか、もう逃げ出したい感じなのである。一般的な感性であれば。

しかし、ブランはこういった静寂は慣れているし基本的に物静かな性格なので特に気にしないし、テラも特に変とも嫌とも思わなかった。

すなわち二人は一般的な感性とはかけ離れております。

ともかくとして。

そんな沈黙が数分も続けば、流石にテラやブランもいけないなと思う。

「な、なあ、ブラン?」

「……何?」

テラの問い掛けにブランは少し嬉しそうに答える。

そんな彼女を見てテラは少し微笑みながら

「少し気分転換に外で歩いてみないか?」

そんな言葉に、ブランは少し悩んだ様子を見せると後にこくんと静かに首を縦に振ったのであった――。

 

 *

 

外に出ると、ルウィーではすっかり見慣れてしまった真白の雪が再びパラパラと舞い降りていた。

一歩進むたびに降り積もった雪がサクサクと小気味のいい音をたてながら陥没していく。

プラネテューヌで育ったテラとしては、雪というのは非常に珍しい気象で以前ルウィーを訪れた際には年甲斐もなくはしゃぎ周りから奇異の目で見られたものだが。

 

ともかく、

テラはふと雪の降り注ぐ空を一瞥し、そこから背後にいる少女に視線を向けた。

「なあ、何か食べたい物とかあるか? なんなら奢るけど」

「……いいの?」

ブランはそんなテラの顔を見て少し不安そうな表情で尋ねる。

「いいよ。今はそこまで困っているワケじゃないし」

「……うん」

と、しばらく辺りを歩き回り、最終的に見つけたクレープ屋台でひとまず何かを頼もうと二人は足を向けた。

「ブランは何が食いたい?」

テラの問いにブランは掲げられているメニューを見渡した後にシナモンアップルを注文し、それを無表情で受け取る。

「ちょっと前にアイツらに買ってくれってせがまれてな。その時はもうみんな食いまくりで久々に怒鳴ったよ」

そう言って笑うテラを横目にブランはポツリと呟く。

「……ネプテューヌは私達の中でも一番食いしん坊だから」

「え……?」

そんな彼女の呟きを耳にしたテラは頭上に疑問符を浮かべる。

「私達、って?」

「……気にしないで、知らない方が幸せなこともある」

そんなことをいう彼女であったがテラとしてはそれは納得がいかない。

彼女たちと旅を続けてから、テラも、皆がずっと探していたモノのひとつと言ってもいい。

そんな手掛かりが、今、目の前にあるのだから。

「やっぱり知っているのか。ねぷ子のこと」

「……忘れているべきだわ。あなた達のためにも、あの娘のためにも」

「……そうはいかねえ!」

テラは立ち上がり、そう叫んでいた。

思えば、今、彼らが居るのが昼時とはいえ人気のない公園で助かったのかもしれない。

恐らく、人混みの中であればテラは奇異の目で注目されていただろうし、最悪、少女を脅したという理由で警察の厄介になっていたかもしれない。

しかし、テラにはそんなことはどうでも良かった。

「教えてくれ! アイツのこと、アイツの過去を……」

「……」

しかし、ブランは何も答えない。

その表情からは何か、不快な、いや嫉妬だろうか。

そんなモノが見受けられる。

唇を噛みしめ、頬を朱に染め、今にも涙を零しそうに瞳は潤んでいる。

そして、ブランは口を開いた。

「……どうしても、知りたい?」

「っ!」

今まで頑として聞き入れなかった彼女の予想外の答えにテラは少し身を引く。

しかし、次には意を決したように表情を固める。

「当たり前だ……!」

「……そう」

ブランは、悲しそうに目を伏せる。

「……貴方はそれを知ったとき、彼女と今まで通り接することが出来る?」

「……どういう、意味だ?」

「そのままの意味。貴方がネプテューヌの存在を知り、それでもなお、彼女と仲良くできるか、って事」

その質問の意味を見いだそうと、テラは思考を廻らせるがしかし、彼の答えは明白であった。

「当然だ。アイツが誰だろうと、俺は絶対にアイツを見捨てない!」

ブランはハアと少し大きめの溜息を吐き、そして重々しく口を開いた。

「……彼女は女神。女神パープルハート」

そう、ブランが言い放った瞬間から、

テラの周りには静寂が渦巻いた。

それもそのはずだろう。

今まで、共に世界を旅してきた中まである少女が、女神であると。

 

 

しかし、テラには驚くという感情は皆無に等しかった。

何処かで悟っていたかもしれない。

確信はなかったというのに、テラの中では今、彼女が告げた言葉が真実であると思わずにはいられなかった。

「意外と落ち着いてる。もっと取り乱すかと思った」

「……何でだろうな。俺が聞きたいくらいだ」

テラは後ろ頭をポリポリと掻く。

そんな彼を見て、ブランは最期の一口のクレープをぽいと口の中に放り込んだ。

こくんとブランの喉が微かに動き、クレープが飲み込まれる。

「……私は、女神ホワイトハート。彼女のライバルでもある」

「お前も、か……」

テラはふうと体内に長らく溜め込んでいた二酸化炭素をはき出し、ブランと同じくベンチに腰掛けた。

「……他に聞きたいことは?」

「なんで、女神はねぷ子を……いや、パープルハートをつけ狙う?」

「……トドメをさせなかったから」

その答えに、テラは愕然とした。

トドメ?

何故、女神内でそのような事態に陥っている? と。

「……長い間、『守護女神戦争』は決着がつかなかった。誰かを排除してしまえば終わりが来ると思っていた……」

「その標的がアイツってことか?」

「……そう」

テラはそこまで聞き、頭痛を抑えるように額を押さえた。

しかし、テラはそれに口を出すことは憚られた。

女神事情に、自分ごときが口を出していいモノかと。

そんなテラの心中を察したかどうかは定かではないがブランはまた淡々と続けた。

「……やっぱり、あの娘は忘れているべきだと思う。それが、皆の為だと思う……」

ブランはそれだけ告げると静かに立ち上がった。

「……帰る」

「ん、そうだな。帰るか」

「……違う、協会に帰る。ここでお別れ」

「あ……」

そうか、とテラは思った。

彼女は女神。

そういつまでもここで油を売っていられるような身分ではないのだと。

それでも――

「また、会ってくれるか?」

「……!」

ブランは顔を赤らめてテラを見る。

しかし、その後にふいと視線を外す。

「好きに、すればいい……」

そう小さく漏らし、彼女は雪の降る公園を去っていく。

テラが小さく手を振ると、やがて暫し迷った後に、彼女も小さくその色白の手を振り返したのだった――。

 

 

 

 

 

「ずっと、一緒だよな……?」

テラは、意味もなくそんなことを呟いた。

何が一緒なのか、

 

 

何と共に行くのか、

 

 

どうするのか、

 

 

どうすればいいのか、

 

 

 

 

 

 

少年は、何も知らない――。

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択