No.421374

ISアスラン戦記8

タナトスさん

無人機襲来により調査に乗り出すIS学園。
そして、また、季節外れの転校生が2人現れる。
アスランの明日はどっちだ!?

2012-05-11 13:35:24 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5036   閲覧ユーザー数:4820

 

 

 

俺は今回の事件の詳細を確認する為に織斑先生の所に来ていた。

 

俺はあくまで二人だけで話がしたいと呼びつけたのだ。

 

「先生、率直にお尋ねいたします。あのISは無人機ですね?」

 

コレは皆が知る所の確認である。

 

「そうだ」

 

その肯定に俺は次の質問をした。

 

「あの無人IS、そのコアは回収している筈です。なら、ISにコアナンバーはありましたか?」

 

コレは確証ではなく俺の考えだ。

 

この世界に無人ISを開発した国家、組織、企業は存在しない。

なら、答えは自ずと明らかになる。

 

俺の質問に織斑先生はあくまでも極秘事項で押し切る。

 

俺はその答えに自身の考えが正しい事を確認できた。

 

織斑先生は基本的には嘘はつかない。極秘事項で学生においそれと教えられないのは重々承知。

 

「解りました。これ以上は問いません。最後に質問して宜しいですか?」

 

これこそ俺が確認したかった事だ。

 

「今回の襲撃を計画、実行したのは篠ノ之 束博士ですね?」

 

その言葉に、ほんの僅か、常人では気付かない位に織斑先生の眉根は動いた。

 

「お前の事だ。そう思う根拠があるのだろう?」

 

言ってみろ。

 

その目線が俺にそう告げていた。

 

俺は、何故その考えに至ったのかを説明した。

 

「先ず、あの無人IS、あのISは無人で動いていた。つまり、遠隔操作或いは自立制御AIが搭載されている可能性がある。今の所ISを無人で動かせる国家、組織、企業は存在しない。もし、無人で動かせたなら国防に置いて大きな一歩となる大々的に喧伝される筈だ。なのに何処もそんな情報は無かった。ハッキングまでして洗い出しをしました。間違いないでしょう。つまり、あれは個人、或いは小規模の組織が運用した事になる。しかし、個人や小規模組織でISを運用するなど不可能だ。襲撃にしても可笑しい。先ず襲撃の基本は相手の戦力をそぎ落として陽動とかく乱を行い本命を叩くのが鉄則で更に退路の確保も必要だ。しかし、ソレすらない。現にIS学園の警備や緊急即時対応は笊で俺が襲撃者なら教師、生徒のIS保管庫や整備室、更に職員室や待機室、教室を襲撃してかく乱と陽動と敵戦力低下を行ってから襲撃を行う。しかし、敵は真っ先に一夏達に所に襲撃をした。もしソレが陽動やかく乱なら狙われるのはIS保管庫だがそんな形跡は一切無い。つまり、目的は一夏達だ。だが、鳳や一夏の経歴を調べても後ろ暗い所は余り無かった。つまり、襲撃される可能性があるとするなら一夏達のISの奪取。しかし、敵はISを奪取する所か破壊するような素振りさえ見せた。しかし、ソレにしては急所や致命傷を避けた攻撃が目立つ。威力偵察にしては派手すぎる。俺が敵なら破壊工作を学園内で行い。試合を中止させ、一夏と鳳を分断、然るべき後に各個撃破しISを奪取する作戦の方が被害は少ない。更に言うなら一人でいる所をコッソリ暗殺する方が早い。こんなの素人でも思いつく事すらしなかった。なら目的は一夏達の威力偵察だが兵数の少なさや撤退経路が無い。たとえ使い捨ての駒でも自分達の形跡を残すような襲撃は避けるべきだ。なのに敵は証拠物件をあんなに残してくれた。つまり、コレはメッセージだ。ナンバーの無いコア、そして、何処にも無い無人機、詰まる所コレは篠ノ之 束のメッセージ。では、一体誰に宛てたメッセージなのか、貴女ですね? 織斑先生」

 

俺の説明に織斑先生はこう質問した。

 

「お前の仮説が正しくて、なら束は何が目的で私にメッセージを残した?」

 

「白式を開発したのは篠ノ之博士だと私は考えます。そして、一夏や篠ノ之の話を聞く限り彼女は自分の研究成果と自身の作った物、自分が興味のある物、そして、自分が認めた一握りの人間だけしか興味の無い人間だ。なら、コレは一夏と白式の戦闘テストだ。そして、その犯人が博士である事を貴女だけに教えた。つまり、これか一夏と白式をテストする為に次も同じ様な、或いはステップアップした事を行うと言うメッセージだと俺は考えます。まあ、コレはあくまで俺の仮説ですが」

 

最後に俺はそう付け加えながら織斑先生に背を向けた。

 

その背に織斑先生は語りかける。

 

「ではお前の仮説が正しく、襲撃がまたあった時は如何する?」

 

俺はその問い掛けに振り向きながらこう言った。

 

「全力で叩き潰します。悪いが、この世界は彼女の遊び場でも実験場でも無い。まして、一夏は実験動物ではない。人だ。更に、自分の為に他人を踏み躙り何とも思わない様な奴は俺の敵です。倒します」

 

俺はそう言いながら去った。

 

 

 

 

1時間目が終わり、俺はセシリアの所に行く。

 

「如何しましたの? アスランさん。珍しいですわね」

 

俺はセシリアにある提案をした。

 

「目を瞑って手を出してくれるか?」

 

その言葉に、セシリアだけでなく一夏や箒を含む全生徒と織斑先生も俺に注目した。

 

「わ、解りましたわ」

 

セシリアは戸惑いながらも右掌を上にして俺に差し出した。

 

俺は彼女の手にある物を載せた。

 

「ハロ、マスターに挨拶」

 

『ハロ、ハロ! セシリア! ゲンキカ!!』

 

一瞬、セシリアは戸惑いながらも掌の丸い物体を繁々と見つめた。

 

「か、かわいいですわ……これは何んですのアスラン?」

 

「ああ、ハロだ。ソイツはISの操作系調整プログラムの補助なんかもかねたタイプだ。整備に役立ててくれ。後、書類整理も自分からパソコンに接続して音声入力で書き込む事が出来るし、音楽も取り込んで聴く事や、同じハロ同士なら通信も出来る」

 

そう、俺がラクスに送ったタイプとは違うマスコットロボット、ハロである。

 

この世界の技術に合わせて俺が作った。

 

セシリアのハロはスカイブルーでセシリアをイメージしているカラーリングである。

 

今度は一夏と箒に向き直り、一夏にもハロを渡す。

 

「セシリアとは色違いの白ハロと赤ハロだ。ソレもセシリアと同じ機能が付いている」

 

『ハロ、ハロ!! イチカガンバレ~!!』

 

『ホウキ! ホウキ! ヨロシクナ!』

 

次の瞬間、女子が俺の前に殺到した。

 

「ザラ君!! 私も作って!!」

 

「アスランさん私にも作って!!」

 

俺は何とか抑える為にこう言った。

 

「悪いがアレは試作品で3つしか作れなかった。材料も切れたし、また今度な」

 

そう言いながら女子は渋々と撤退した。

 

その時、俺は織斑先生に呼び止められる。

 

「ザラ、材料があったら作れるのか?」

 

俺はその言葉に材料があればと答えた。

 

「なら、私用に1機と整備部の連中にも作ってくれないか?」

 

「構いませんけど……」

 

「よし、コレで無駄な書類整理から解放される」

 

かくして、ハロが整備部と職員室を『ハロ、ハロ』言いながらピョンピョン跳ねている光景が見られるようになった。

 

 

 

 

襲撃事件の事後処理が終わった時だった。

 

我がクラスに転校生が二人現れた。

 

一人は小柄で金色の髪をポニーテールにした男子。

もう一人は女子にしては小柄で銀髪をストレートにし、左目を覆う眼帯が特徴的な鋭い目をした女子だった。

 

「それではお二人とも、自己紹介をお願いします」

 

山田先生の言葉に金髪の少年が先陣をきって自己紹介を開始する。

 

「初めまして、フランスから来ました。シャルル・デュノアです」

 

その自己紹介と共にざわめく教室。

 

「男……!?」

 

「男子よね?」

 

そのざわめきに俺は人差し指で耳栓をした。

 

「ハイ、そうです。ここに2人の男子がいると聞いてきたのですが……」

 

その肯定の言葉と共に教室が割れんばかりの黄色い声で染まる。

 

耳栓しておいて良かった。

 

一夏なんか耳を押さえてるぞ。

鼓膜は大丈夫だろうか。

 

それにデュノアも戸惑ってるよ。

 

しかし、デュノアか……

 

世界シェア第3位のデュノア社に嫡男がいたとは知らなかった。

 

何とかその場の喧騒を山田先生が抑えると今度は銀髪の少女に自己紹介を求めるが少女は無反応。

 

「ボーデヴィッヒ、挨拶しろ」

 

「了解です。教官」

 

織斑先生に諭されようやく少女は口を開く。

 

しかし、教官か。

 

確か、織斑先生はドイツ軍のIS部隊の教官をやっていたはず。

その為か?

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

その名前しか名乗らない自己紹介に流石の山田先生も唖然とした。

 

「あの……以上ですか?」

 

「以上だ」

 

取り付く島も無いとはこの事かと言わんばかりにボーデヴィッヒは自己紹介を切り上げた。

 

そして、一夏の前に歩み寄り、彼の頬を叩いた。

 

流石の俺も何事かと思う。

 

「何だよ!?」

 

一夏の怒りの声も無視して彼女はこう言った

 

「認めない。お前があの方の弟など私は認めない」

 

その言葉と共に彼女は自分に割り当てられた席へと腰を下ろした。

 

(全く、IS操縦者とはこんな奴等ばかりか?)

 

俺はそう思いながら窓の外に視線をやるのだった。

 

 

 

 

 

 


 
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