No.421359

ISアスラン戦記4

タナトスさん

赤対白。
この戦いはどう動くのだろうか?

2012-05-11 12:18:32 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:5284   閲覧ユーザー数:5014

 

 

 

所変わって一夏と箒は如何したものかと考えていた。

 

一夏は半分絶望、半分諦めの表情がその目を支配していた。

 

「なあ、箒……俺、今からあんな化け物と戦うんだよな?」

 

その何とも頼りない表情に箒は激をとばした。

 

「戦う前から諦めて如何する!?」

 

しかし、次の一夏の言葉に流石の箒も押し黙るしかなかった。

 

「じゃあ、俺がアスランに勝てる確率はあるのか?」

 

「それは……」

 

「だろ? しかもアスランは射撃兵装があるんだぜ?」

 

「じゃあ、懐に飛び込めば!!」

 

その言葉に一夏は呆れながらも溜息を吐いて言う。

 

「たとえ潜り抜けられたとしても、あのレーザーすら弾き返す変態剣術の餌食だぜ? さっき、オルコットに言ってただろ? 得意な剣で戦ったって……それって接近戦はアスランの土俵だぜ? 同じ土俵で戦うとしたら物を言うのは技術と経験と力だ。俺とアスランじゃあそのどれもアスランには敵わない……」

 

何時までもウジウジ悩む一夏に箒は怒鳴る。

 

「戦う前から戦いを放棄して如何する!? 幾らザラが頭抜けていても相手は同じ人間なんだ!! 確かに理論的にはお前の勝利は万に一つも無いかもしれない。でも、ソレを理由に戦いを放棄するなどお前らしくも無い!! 思い出せ! 一夏! 私が虐められていた時、お前は数の暴力に屈したか!? 私を見捨てたか!? 違うだろ!! お前は私を殴られながらも助けてくれた!!」

 

その言葉を聞いて一夏の瞳に力が宿る。

 

「私はそんなお前だから……!!」

 

途中まで言いかけた言葉を箒は飲み込んだ。

 

一夏の様子が変化した事に気が付いた。

 

「悪りい……忘れてたぜ……箒……ハハ……確かに俺らしく無かったわな……何相手が強いくらいで諦めてんだ? 情けねえ……こんな事じゃ千冬姉に申し訳ないぜ……腹は決まった。後はアスランの装甲に俺の刀を浴びせる!」

 

その言葉に千冬の名しか入っていなかった事に不服を感じながらも箒は一夏を自分が出来る限りの笑顔で見送った。

 

「ああ、行って来い! そして勝て!!」

 

「ああ!!」

 

2人とも馬鹿じゃない。2人とも勝てない事は先刻承知。

 

だけど2人には敗北の悲壮感も強者への恐怖も無い。

 

あるのは前を向いて勝利を掴むと言う意思だけだった。

 

 

 

 

 

俺は腕組をしながらアリーナ中央に陣取っていた。

 

アリーナ観客席は喧騒の渦に包まれている。

 

しかし、一夏の奴、遅いな。

 

そう思った時だった。

 

一夏がピットから勢い良く飛び出してきた。

 

俺は一夏の瞳を見た時、内心驚いていた。

 

(ほう……勝負を諦めてはいない様だな……いい目だ)

 

ソレは腕組みを止め手を下ろすと、一夏に語りかけた。

 

「準備はいい様だな?」

 

一夏は俺をその強い眼差しで見据えながらはっきり言い放った。

 

「ああ、何時でもいいぜ!!」

 

そう言うと一夏は刀型のデバイスを取り出し、構える。

 

俺はリアスカートにマウントしていたビームライフルを取り構える。

 

『それでは、第二回戦! アスラン・ザラ対織斑 一夏の試合を開始します』

 

お互いがお互いを見据える。

 

『始め!!』

 

その声と共に俺達は加速した。

 

 

 

 

 

千冬と真耶はこの試合をモニタリングする為にモニターを注視していた。

 

そう、この試合は日本政府とIS委員会の求める試合だった。

 

「それにしても相変わらず射撃も上手いですね、ザラ君は……」

 

その言葉に千冬も頷いた。

 

「ええ、その射撃能力だけを見ても世界トップクラスの射撃能力でしょう。オルコットの様に棒立ちの射撃とは訳が違う。超高速で動き回りながらも牽制射撃ですら確実に当ててくる。アレをシールドエネルギーを消費せずかわすのは困難に近い」

 

千冬は知らない事だがソレをかわして尚且つ反撃出来る存在はいる。

無論、ソレはC.E.での世界の話だが。

 

「織斑君……勝てるでしょうか……?」

 

真耶のその言葉に千冬はスッパリと切り捨てた。

 

「今の所は那由他の彼方でしょう」

 

一夏は10の60乗すら超える確立で敗北する。

 

千冬はそう言ったのだ。

 

「幾らなんでもそれは……」

 

ありえない。

 

そう言いかけて真耶は口をつぐんだ。

 

解っているのだ。

 

アスランはどんなに格下でも油断しないし手も抜かない。

 

圧倒的な力でねじ伏せる。

 

確かにセシリアには射撃兵装は殆ど使わなかった。

 

しかし、ソレはセシリアに圧倒的敗北と自身の力を理解させる為と言う勝利条件を満たす為だろう事は真耶も理解している。

 

つまり、一夏にはそんな制約が無い。ならば射撃兵装もふんだんに使う事だろう。

 

「しかし、織斑の目は死んでいない。あるいは一太刀浴びせられるかも知れません」

 

真耶はその千冬の言葉を聞きながらモニターを見つめた。

 

 

 

 

 

 

一夏は焦っていた。

 

(クソ!! 解っていたけど。隙が全然無いばかりか射撃が鬼の様な弾幕と正確無比な射撃だぜ!!)

 

しかし、次のアスランの台詞で心が折れそうになった。

 

「一夏!! こんな手緩い牽制射撃すら避けれないのか!?」

 

(これで手緩いのかよ!?)

 

一夏は回避するが確実に回避先に先回りしたようにビームの嵐が吹き荒れる。

 

「馬鹿野郎!! 回避は最小限で相手の目線と銃口、肩の動きを見て即決で回避しろ!!」

 

「そんな超人的な事出来るか!!」

 

一夏はそう叫びながらも突撃を開始するが。

 

やはりアスランの射撃が待っていた。

 

「馬鹿野郎!! 猪突すれば何とかなるとでも思ったか!? 相手との距離を詰める場合はジグザグに動きながらかく乱しつつ高速で近付け!! ソレか相手の認識外の速度で動け!!」

 

アスランの怒号はアリーナ内に響く。

 

その時だった。

突如白式は輝きを放つ。

 

「ファーストシフトか……いいだろう、次の段階に移る」

 

アスランはそう言いながらビームライフルをリアスカートにマウントしビームサーベルを引き抜いた。

 

 

 

 

さて、俺の教えを何処まで一夏が学習して行動に移せるかだな。

 

そう思いながらアスランは一夏を待った。

 

一夏の持っていた刀型デバイスが突如割れて青白い光の刃を形成した。

 

そして、俺と一夏は打ち合う。

 

鍔迫り合いをする俺達。

 

どうやらこの世界でも鍔迫り合いは可能らしい事に俺はホットした。

 

俺達の世界のビームサーベルはミラージュコロイドの応用でビームの刃を形成している。

その為、C.E.のビームサーベル同士がぶつかると双方の磁場が干渉し合って刃が維持できなくなる。

しかし、干渉が途切れると即座に刃が形成される。それ故に刃を干渉させたまま、斬りつけるのに有利なポジションの取り合いの為、お互い距離を取ったり、クルクル回りながら有利なポジション取りをしている。

それ故に、ビームサーベルで斬り結んでる時の機動は独特だ。『相手が振ったビームサーベルの延長線上から常に機体を外す』コレが基本的な動きとなる。

 

と、されていたが、戦闘データを見る限りでは最初にC.E.でビームサーベルの鍔迫り合いを演じたデュエルとストライクにはそんな現象は起きなかった。

 

更に、俺が乗っていたイージスとキラのストライクの対艦刀でも切り結ぶことが出来た。

 

更に言うならプロビデンスとストライクでもビームサーベル同士で切り結ぶ場面が何度もあった。

 

更にインフィニットジャスティスのグリフォンビームブレードでシンが投げたブーメランも蹴り弾いたことからこの仮説は覆された。

 

俺は興味本位でビームサーベルとビームサーベル同士を切り結ばせてみた。

 

切り結べた時間は大体1分位だった。

 

その後、ビーム同士の磁場が干渉し合いすり抜けた。

 

つまり、約1分以内なら切り結ぶ事が可能である。

 

しかし、1分も切り結ぶ事など実戦ではあり得ない事からもコレは許容範囲内であろう。

 

余談は兎も角、俺達が切り結ぶ刃と刃がスパークして放電している。

 

桃色の刃は衰えを知らず強い力を放っている。

 

一方、白式の方は何だか光が弱々しくなっていっている。

 

その時、白式のブレードが消えた。

 

「へ?」

 

一夏は唖然としながら自分の剣を見つめる。

 

俺は剣を引き、一旦一夏から離れた。

 

そして、ブザーが鳴り響き、山田先生が終了を告げた。

 

『織斑君のシールドエネルギーエンプティーにより勝者、ザラ君!』

 

何とも後味の悪い終わり方である。

 

その後、一夏と箒と一緒に織斑先生から聞いた話では一夏の剣は『雪片弐型』といい更に一夏は何時の間にやらワンオフアビリティーを発動していた。

 

その名も『零落白夜』と言うそうだ。

 

こいつが発動すればエネルギー性質のものであればそれが何であれ無効化、消滅させる白式最大の攻撃能力。しかしその発動には自身のシールドエネルギー、つまり自分のライフを削るという武器仕様であり、諸刃の剣でもある。その威力は全ISの中でもトップクラスだそうだが、俺のビームサーベルには効果が無かった。

 

その理由を一夏は織斑先生に質問した。

 

その回答が、

 

「ザラのインフィニットジャスティスは一時間に全世界のISのシールドエネルギーをフルに出来るほどの出力を生み出すエンジン、『ハイパーデュートリオンエンジン』が搭載されている。更に兵装の出力100パーセントなら零落白夜が消滅させるどころか逆に鍔迫り合えば1秒でパンクするほどの容量だ。打ち合っただけでシールドエネルギーが空になる。正に零落白夜の天敵だ」

 

ソレを聞いた瞬間、一夏と箒は唖然とする。

 

ソレを見ながら織斑先生は溜息を吐いた。

 

「解っただろ? コレだけリミッターを掛ける理由が……更にザラの技量と相まって倒せる奴がこの学園からいなくなる。アレだけリミッターを掛けても絶対防御がひび割れるほどの出力だぞ。100パーセントなら絶対防御がガラス細工だ」

 

それを聞いた瞬間、一夏と箒は俺のリミッターは甘いとすら考える顔を俺に向けた。

 

「と言う訳でザラ。ジャスティスのリミッターを更に掛ける。いいな?」

 

(お願いじゃなく命令ですよ。それ)

 

俺は心の中でしか突っ込む事が出来なかった。

 

 

 

 

 

その夜、1年1組が食堂を貸し切り、パーティーを開いていた。

 

「と、言う訳で代表は織斑 一夏君に決定しました!!」

 

その言葉に一夏は唖然とした。

 

「ちょちょチョット待て!! 何で俺!? 大体、代表決定戦はアスランの圧勝だっただろ!?」

 

何だ、その事か。

 

俺はニヤニヤしながら一夏にこう言った。

 

「ああ、それはな、織斑先生が俺が出たら圧勝してバランスが悪すぎるからここは間を取ってお前になった訳だ」

 

その言葉に一夏は慌てる。

 

「ならオルコットが!?」

 

その言葉にセシリアがこう言った。

 

「私は辞退させていただきますわ。何せ、私は敗れた身、アスランの指示に従いますわ」

 

そう言いながらセシリアは俺を見ながら何故か頬を赤らめる。

 

何でだろ?

 

「兎に角、一夏さん、頑張ってくだしまし。私とアスランの代わりに出るのです。恥はかかせないで下さいね?」

 

その言葉に一夏は戸惑う。

 

「“一夏さん”?」

 

「ええ、友達をファーストネームで呼ぶのは当然ではなくて?」

 

そう言いながら優雅に振舞うセシリアに篠ノ之が噛み付いた。

 

「一夏の名を慣れなれしく呼ぶな!!」

 

しかし、セシリアは涼しい顔で篠ノ之の耳元でヒソヒソ話す。

 

その内容に納得したのかそれ以上は何も言わなかった。

 

何を話したんだ。一体?

 

「まあ、友なら仕方ない。友なら」

 

「そうですわ。おほほほほ」

 

そうしている内にカメラを持った二年のネクタイをした女子が突然声を掛けてきた。

 

「ハ~イ新聞部の黛 薫子で~す。取材に来ました!」

 

新聞部? 何故?

 

「おお! 噂通り男子がいるね。しかも二人とも美形で結構結構」

 

俺と一夏を品定めするように取材を開始する女性。

 

「それじゃあ、代表になった織斑君から一言!!」

 

一夏はその強引さにシドロモドロになりながら答える。

 

「え、あ、その、頑張ります」

 

その内容に不服だったのか黛先輩は後で捏造する旨を一夏に告げる。

 

中々のイエロージャーナルである。

 

「それじゃ、1年最強の呼び声高く、IS学園の赤い騎士のあだ名を持つザラ君から」

 

そのゴテゴテした某二臭いあだ名は何だ?

 

俺の質問に黛先輩がこう答えた。

 

「今回の試合を見た生徒が映像を学内に配信してソレを見た生徒達がそう呼んだんだよ」

 

と。

 

兎に角、俺は取材に答える事にした。

 

「俺は一夏のサポートとして、一夏が勝利出来るよう全力で挑みたいと思います」

 

そう言うと、黛先輩は詰まらなそうに模範的な回答でパンチがないと言われた。

 

そして最後にセシリアに振られたが話が長い事から適当に書いておくそうだ。

 

 

 

 

セシリアは黛に近付き耳元で語る。

 

「写真撮影は最初は私とアスランのツーショットでお願いいたしますわ。ソレと写真は現像して私に下さい」

 

「OK、OK。取材に協力してくれたしソレくらいお安い御用だよ~」

 

セシリアはその返答を聞き、こっそりガッツポーズをとる。

 

(よし!! ですわ。アスランと私のツーショット写真が私の物に!!)

 

セシリアは浮かれてアスランの元まで歩み寄る。

 

「それじゃあ、ザラ君とオルコットさんから写真を撮るよ?」

 

アスランはそう言われ、仕方なくといった感じでレンズの前に立つ。

 

しかし、ここでアスランの予期せぬ行動をセシリアは取り出す。

 

行き成り、セシリアはアスランの腕に組み付き、その胸元をアスランの二の腕に押し当てた。

 

「セ、セシリア!?」

 

「あら、如何しましたの? アスラン?」

 

慌てるアスランを見ながらセシリアは瞳を潤ませながら頬を赤らめる。

 

その唇はリップが薄く塗られ、水をたたえた様な潤いを見せる。

 

アスランは二の腕の感触とセシリアの顔に不覚にもときめいた。

 

(不味い!! コレは凄く不味い!! 俺の二の腕にセシリアの柔らかいものが!!)

 

アスランは意を決してセシリアにお願いした。

 

「あのな、セシリア、その、当たっているんだが……少し離れてくれないか……?」

 

その懇願にセシリアは頬を更に赤らめ意地悪な微笑を湛えながら言う。

 

「あら、当たっているのではありませんわ、当てていますのよ?」

 

(駄目だ!! 何か知らんがセシリアが可笑しくなった!!)

 

アスランの内心の葛藤を他所に黛はシャッターを切る事を宣言した。

 

しかし、やはりここはIS学園、セシリアの思惑は物の見事にご破算となる。

 

一夏と箒を含む全員がチャッカリフレーム内に入っている。

 

「な、何でこうなるのですの!?」

 

セシリアの叫びを聞きながらアスランはほっとした。

 

しかし、アスランは知らない、これから彼の苦悩は加速していくのだから。

ソレもカナリ悪い方向に。

 

頑張れアスラン。

 

アスランの女性問題に幸あれ。

 

 

 

 

 

 


 
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