No.420813

真・恋姫無双 魏アフター 簡雍伝 第四幕 

光る宇宙さん

GWをまたいで投稿です。

うーん、一応本編なんですが・・・。

見る人が見ればこれずっとプロローグですよね・・・。

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2012-05-09 23:48:58 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4163   閲覧ユーザー数:3619

それは桃香の私塾入塾が決まって少し経ったある日。

 

「義兄さま・・・これ・・・。」

 

桃香は俺が差し出した服を手に取り呆然と俺の顔を見上げている。

 

「間に合ってよかった・・・。」

 

それは白を基調に淡い草色縁取りのされたシャツとスカートそして白く日の光を反射する上掛け・・・。

 

それは俺の記憶にある劉玄徳が来ていた戦装束とフランチェスの女子制服を似せて作った服。

 

「私塾へ行くのにその格好じゃしょうがないだろう?これ、作ってもらったから着て行くんだ。」

 

俺の目の前で桃香は目を丸くして俺と服を交互に見ている。

 

「だけど・・・これって義兄さまが着ていた服を・・・。」

 

「いいんだ、桃香。確かに色々な思い出が詰まった服で故郷から持ってきた唯一の物だけど。」

 

おれは一度目を瞑り、そして目を開けると桃香に優しく微笑みかけた。

 

「だからこそ、この世界で一番大切な義妹に着てもらいたいんだ。どちらにしろ、俺にはもう着れないだろうからな。」

 

古い生地で悪いけどな、俺はそう言って桃香に苦笑した。

 

桃香はそっとその服を抱くと、その目からそっと涙を零す。

 

「ありがとう・・・義兄さま。私大事にするよ、これずっとずっと私の宝物にする・・・。」

 

 

真・恋姫無双 魏アフター 簡雍伝 第四幕 盧子幹の私塾

 

 

元起さんと分かれて一ヶ月ほどの時が過ぎた。

 

俺達は日々の暮らしに追われながらも私塾への準備を滞りなく終わらせていた。

 

そんな日々の中俺はある一つの事について考えをしていた。

 

それは何か・・・と言うと私塾へ通うための服装のことだった。

 

私塾というからには天のように制服なんてものはないだろうし・・・。

 

桃香は血筋はともかく現状は貧しい農村の娘だ・・・。

 

高級官僚の子供達が通うような私塾にそんな格好で行ったらイジメにあうに決まっている。

 

否!だったら魏にいたときのように俺が案を出して服を作ればいい・・・のだが

 

何と言っても今の俺は魏に居た頃と違い財力というものがない・・・。

 

案を出してもそれを実行に移せるだけの財力が今の俺にはないのだ。

 

そして今回は元の世界から飛ばされた以前とは違って手元に売れるようなものを持っていない・・・。

 

だから今俺の目の前にあるのはこの世界に来た時に着ていたフランチェスカの制服だけである。

 

さすがにこれを売るのは色々と抵抗がある・・・。

 

だからこいつを生地として桃香の服を作ってやれないだろうか・・・。

 

そう考えた俺は村の人達に質問してまわり裁縫技術を持つ人にお願いしてイメージしていた服を作ってもらったのだ。

 

この制服は元の世界から唯一持ってこれた物であり。愛した華琳とともにあの乱世を駆け抜けた証でもあった・・・が。

 

今それに縋る必要はない・・・、この世界で俺は俺の物語を描き始めた。

 

だからこそ、この服との決別は過去の自分との決別と言う意味ももっていた。

 

そうして作ってもらった服を桃香に見せたところ大層喜んでくれて俺としてもホッとしたものだ・・・。

 

 

 

それからまた幾ばくかの時が流れて・・・・・・。

 

俺と桃香は元起さんの住む街へと来ていた。

 

桃香は私塾への入塾を控えて、俺は付き添いとして一緒にだ。

 

陳留、許昌、洛陽と魏の仲間と共に都に住んで居た俺には慣れた景色なのだが。

 

隣にいるおれの義妹はこんなに人が行きかう道を見るのは生まれて初めてらしい。

 

見るもの全てが新鮮なようで、キョロキョロと楽しげなものを見つけてはそこに向かおうとする。

 

「桃香。混雑してるし町の中が安全って訳でもないんだ、俺から逸れるなよ?」

 

「あ・・・うん義兄さま。」

 

そう言って俺の手を握ってくる、なんというか・・・元の世界の男どもが妹に夢を見る気持ちが

 

ほんの少し・・・ほんの少しだけ理解できた気がした。

 

「義兄さまはこんな人が多い街に来た事があるの?慣れているみたいだけど?」

 

「ああ、俺は都にも住んでた事があるぞ(もっと未来のだけどな・・・)」

 

「すごい!!都って街よりももっともっと大きいの?」

 

「そうだな・・・大きいぞ」

 

「どれくらい!?」

 

え?桃香さん、何ですかねその質問は・・・。とっても答えにくいんですが・・・。

 

「うーん、なんだ・・・。この街が3個くらい入るくらいだ!」

 

俺は自分でも微妙と思える答えを桃香に示す。

 

「すごい!! 義兄さまは本当に物知りだね!」

 

ぐ・・・適当に答えたことなので、あの信頼の眼差しがとても胸に痛い・・・。

 

そんな他愛のない話をしながら俺は教えてもらっていた劉家への道のりを歩いていた。

 

本来なら俺まで街に来る必要はなかったのだが・・・、俺には一つ調べたい事があったのだ。

 

村ではまだ浸透していなかった『天の御遣い』の予言。

 

もしかしたら大きな街になら伝わってるかもしれないと思ったのだ。

 

もしあの予言が為されているのら、俺のこれからの対応も考えなければいけなくなる。

 

そしてもう一つの可能性・・・。俺じゃない御遣いがいるという可能性も0じゃないということ。

 

そんな事を考えていたら、少し怖い顔をしていたらしい。

 

心配そうに俺の顔を覗き込む桃香。

 

「義兄さま?どうかしたの?」

 

しまったな・・・不安が顔に出てたか・・・。

 

「なんでもないよ、元起さんが待ってる。劉家に急ごう。」

 

俺はそう言って桃香に微笑みを向けた。

 

「うん!」

 

 

そして元起さんの自宅に辿りついた俺達は、そこでもう一人の人物と出会うことになる。

 

 

 

「桃香ちゃん!久しぶり。」

 

「あ、璃華ちゃん。久しぶり!」

 

抱き合って再会を喜ぶ二人・・・。俺は何故か置いてけぼりをくらった気分だ。

 

そう・・・この子が桃香の学友であり、血の繋がった年の近い従兄弟。

 

劉元起の娘?であり。史実、演技ともに動向が謎の人物でもある人物。姓は劉 名を露 字を徳然と言った。

 

その感動の再会を眺めながら俺はまたまた小さく溜め息をついた・・・。

 

(また女性か・・・。あ、この場合は女の子と言うべきか。)

 

「初めまして。劉元起の娘で姓は劉、名は露、字を徳然と申します。」

 

「初めまして徳然殿、桃香の義理の兄になった。姓は簡 名は雍 字を憲和と言う。桃香共々よろしく頼む。」

 

感動の再会が終った俺に丁寧に頭を下げて自己紹介をしてくれる徳然ちゃん。

 

俺も同じように礼儀正しく返礼することにした。

 

「お母様から聞いていた通りの方なのですね、私は桃香ちゃんと同い年の子供です。年長の方に丁寧に接しられたら緊張してしまいます。」

 

言外に敬語を使うなと言ってるんだろう。お嬢様のような雰囲気を持ってるがやっぱりそこは劉家の血か・・・。

 

「わかりました・・・わかった、徳然ちゃん。これからよろしくな。」

 

「はい!よろしくお願いします。」

 

こうして劉元起さんの娘である劉徳然ちゃんも俺達を快く迎え入れてくれたのだった。

 

村では食べれないような食事が出たりと驚く事も多かったが・・・。

 

二人が仲良く私塾へと想いを馳せている中。

 

俺はと言うと当然の如く元起さんに捕まって晩酌に付き合わされたのだ・・・それも徹夜で。

 

だけどそれはまた別の話。というか・・・話したくないです、出来れば一生。

 

 

 

桃香の私塾入塾の日、俺は桃香を連れて私塾が開かれるという屋敷に来たのだが。

 

何故か今俺の目の前には超絶美人な女性が立っている。

 

優しげな目元、整った鼻と口。スラリとしたスタイル・・・。

 

長く鮮やかな青い髪を肩の所で結って前に流している。

 

俺の記憶の中の女性では・・・うん秋蘭に近い。

 

だけど秋蘭とは決定的に違うのはその身に纏う雰囲気だろう。

 

優しげでいて知的、圧倒的な包容力。その微笑は見る者を虜にして放さない。

 

俺の知る中でもこれほどの女性は数えるほどしかいない。

 

「初めまして、私は姓は盧 名は植 字を子幹と申します。」

 

「あ・・・私は姓は簡 名を雍 字を憲和と申します。これから義妹がお世話になります。」

 

これが俺と盧子幹殿との初めての出会いだった。

 

 

「やっほー、久しぶりね。優衣」

 

名乗りを終えた俺の隣に居た元起さんが『やっ』と言った感じで片手を上げてにこやかに挨拶する。

 

あなたは相変わらずね・・・璃音。と、同じようににこやかに笑っていた。

 

そうか・・・知り合いって言ってたっけ。俺はそんな事を考えながら美女二人を見る。

 

久々の邂逅に会話が弾んでいるようで、二人は楽しげに会話を交わしている。

 

 

「珍しい・・・というか初めてね、璃音が旦那さん以外の男性と一緒にいる所を見るの」

 

「んーそういうんじゃないよ?彼は私の(義理)の甥・・・になるのかな?」

 

「なんで疑問系なのかしら。それに甥?姪の話は聞いてたけど?その話初耳よ?」

 

「そうねー、だって甥になったのってつい最近だし。」

 

そう言ってにこやかに笑みを浮かべる璃音。

 

「相変わらずね・・・。それで?貴女の姪と義兄妹になったってことかしら?」

 

「うん・・・いい男でしょー。」

 

私はちらりと彼を見る、確かにいい男だと思う。

 

それに・・・彼がその優しげな笑顔の裏に隠してるのは・・・。

 

人を見てしまうのは悪い癖かしら・・・有望な人を見ると我慢できないのも考えものね・・・。

 

「元起さん、子幹先生。子供達が集まってきたようですけど?」

 

彼のそんな困ったような声に私は我を取り戻す。

 

「ありがとございます、憲和さん。では入塾式を始めましょうか。」

 

 

こうして俺は盧子幹殿と会え、桃香は何事もなく私塾へと入塾を果たした。

 

私塾と言えど男子禁制らしいので俺には中の様子は判らない。

 

「ふふふ、気になるの?」

 

「ええ・・・まあ。桃香は農村の子供ですから、貴族が集まるような私塾に一人というのは色々と気がかりですが・・・」

 

俺は不安の顔を無理やり押し込め笑顔で答える。

 

「ま、大丈夫でしょう、桃香ですし。徳然ちゃんもいますしね。」

 

そんな返答にクスクスと笑う元起さん。

 

「それで?憲和くんはどうするの?何か目的があって街まで着いてきたんでしょ?」

 

「あ・・・バレバレでしたか?」

 

「きみ・・・過保護に見えるけど付き放すところは放すじゃない。私塾入学程度で態々付いて来るような人じゃないでしょ?」

 

バレてるな・・・と俺は苦笑しながら元起さんに顔を向け。すっと人差し指を自分の口元に持っていく。

 

「いくつか考えてることはあるんですが・・・。とりあえず・・・今は内緒ってことで。」

 

そう言って俺は元起さんに小さく笑いかけた。

 

 

 

 

 


 
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