No.42074

SF連載コメディ/さいえなじっく☆ガールACT:19

羽場秋都さん

毎週日曜深夜更新!フツーの女子高生だったアタシはフツーでないオヤジのせいで、フツーでない“ふぁいといっぱ〜つ!!”なヒロインになる…お話、連載その19。

2008-11-17 00:41:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:692   閲覧ユーザー数:667

「今日のクレーン事故みたいなことがあった場合、人助けができるんとちゃうか、て話や」

「んな事くらい、朝メシ前どころか朝メシこしらえながらでも片手間でできるわ。───練習次第やけどな」

「れ、練習ぅ!?」

 

 

「そらそうや。ひとくち飲むだけで家を半壊さしてまうようなパワーが出るんやぞ。そんなもんをイキナリまるごと一本飲んでみい。ノーコンの全開パワーでクレーンどころか、ビルそのものも粉々や」

「うそ………」

 夕美は青くなった。「そんなに…?」

 たかがドリンク剤一本ぶんの薬だが、それがもたらすパワーは夕美の想像の域を超えているらしい。

「たぶん、それでも遠慮ぎみの表現や。なんにしても、もう薬は使わせへんけどな」

「え。」

 意外だった。耕介のことだから面白がって夕美を実験台にするくらいのことは予想できても、まさか止めるとは思わなかったのである。

「なっ…なんでやのん。あの薬のチカラがあったら、災害とか事故で困ってる人を大勢助けられるんとちゃうのん。」

「ふむ、まあな。けど、おまえがソレをやるっちゅうのんか?」耕介は夕美に向き直る。

「ええっ、ま、まさかっっっ!なんであたしが。」

「それやったらええけど。なあ、ええか?まあ、座れ───あの薬───スイッチ、って名前をつけたんやけど、ぶっちゃけて言えば、アレを使うたら…たぶん、ひとつのことを除いて、でけへんことはないに等しい」

「…サイコキネシス(念動力)だけとちゃうのん?」

「まあ、基本的な能力だけでもたぶん、世間で言うところの超能力っちゅうヤツのオンパレードになる…たとえ念動力ひとつだけでも、理論上はいろんな事に応用できるはずや。」

「……たぶん、とか、はず、て言うことは…まだ試してへん、てこと?」

「イヤイヤ、俺とほづみ君でやっとるがな。いろいろと」

「ああっ。」

 おもわず耕介とほづみを交互に指さす夕美。要するに、これまで研究室が何度も何度も壊れた原因はそうした実験の結果だったのである。

「そ…そんならお父ちゃん、イキナリ自分らで人体実験してた、ゆーことか!?」

「しゃあないやないか。しゃべらん動物では薬の効き具合をモニターすることもでけへん。だいいち破壊的超能力を持ったケダモノは超獣ゆーてやな、怪獣退治の専門チームでも手に負えんという…」

「何の話や?そんなんテレパシーで動物と話したらええやんか。それこそ、人類の夢やで」

「あほ。そんなん、マンガやテレビの話や。こっちがテレパシーが使えても、動物相手では会話になんかなるかいな。」

「ええ〜……そ…そうなん?」と、夕美は残念そうにほづみの方を見る。

「だいいち夕美、会話できるような相手を実験台に使たりできるか!? それこそ世界緑豆組合が黙ってへんし、たとえ危険がない薬でも俺かてイヤや。なあ、ほづみ君。説明したってぇな」と耕介。「その間に残りのラーメン食べさせて貰うわ。…すっかり伸びてもたけど、ほづみ君も……あれっ」

 見ると、いつの間にかほづみは自分の分を完食していた。耕介が喋っている間に食べていたらしい。(ぽ〜っとしとるようで、こーゆーとこチャッカリしとんなあ、ほづみ君は)

 

「動物には意思疎通のための系統だった言語がないだろ。よしんばあったとしても知能は低い。まあ、相手の考えてることくらいはなんとな〜く伝わるけど、せいぜいどっかのオモチャメーカーが出してる、犬猫や赤ちゃんの泣き声判断装置みたいな程度だよ。ほら、怒ってるとか、お腹が空いてるようだとか、嬉しいとか。だけど、そんなことテレパシーがなくたって、いつも一緒にいたら解る事だよね。」

「…ほづみ君、それゆーたら身もフタもあらへんがな。自分の子供の泣き声を聞き分けられへん母親がおるから、そんなモンが売れるんと違うん?」

「それこそ身もフタもあれへんがな、夕美。このラーメンはおツユがあれへんけど───まあとにかく、効き目の持続時間が短いこと以外は、どれくらいのパワーが引き出せるんか、逆にどれくらい加減したら安全か、みたいな基本的なことがおぼろげにしか判ってへん。」

「ほんなら結局、これからも使わへんままなん?」

「今のままでは使う側もその周りにいる者も危険すぎる。飲むだけで誰かて“超人ロック”とか“ジャスティ”とか“小松崎蘭”なみのド級超人になるんやぞ。」

「先生、例えのネタがマイナーで分かりません」

「……昔はメジャーやったの!……とにかくそれがノーコンやってみい。ゆーてみたら使用説明書なしの核兵器みたいなもんや。」

「かか、かかかかかか、核兵器ぃぃぃぃぃぃい!?」

 

 

 次の瞬間、夕美は耕介の首を思いっきり締め上げていた。

 

「お、お父ちゃん…なんちうトンデモナイもんをこしらえたんや!? いったい、ナニを考えて…!自分の家をつぶすだけに飽きたらず、世界まで破滅させる気か」

「ま“、ま“、ま“だんがいっっっっっっ。(ゲル状になったラーメンが鼻へ逆流して…)ぶきゅう〜〜〜〜〜〜〜〜っ。」

「夕美ちゃん、入ってる、急所に指が食い込んでるよ。離さないと先生、本当に死ぬから。」

 耕介はほづみの説得?のおかげで力を緩めた夕美の手を力いっぱい払いのけた。ぜえぜえと肩で息をしながら夕美が半べそ状態になっていることに気づいた。

「ら、らんや、らんちゅう顔をしてんねん。絞められて鼻から麺を出したんは俺やぞ。それとも汝、親を手に掛けたを悔やむかッッ」

「先生、それ何の台詞ですか…」

 

「おっ…おっ…お父ちゃんは…実験やとか発明やとか言いながらアホなことばーっかしして、あたしらも近所の人に恥ずかしい思いとか、せんでもええ貧乏させられて…挙げ句にお母ちゃんも心労で…………!まだ、まだこの上にヨソさんに迷惑かけることばっかしするんやったら…いっそ娘のあたしが責任とって世間さんに詫びを」

 言いながら夕美はふたたび渾身の力を込めて耕介の首を絞める。

「きゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

〈ACT:20へ続く〉

 

 

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