結衣視点
いつものように私の家に来た京子は、今回泊まるとのことで、私は中へと入れた。
他愛のない、何の変化も見れないやりとりに私はその落ち着く空気に心を委ねている。
京子と対戦ゲームやったり、残った宿題を見てやったりして時間はあっという間に過ぎていった。
京子に言われて先にお風呂に入った私は、京子を読んで入ればと促すと京子は
元気良く頷いて、お風呂場へ向かっていった。本当に、その日はいつもと同じで
私の心の中でも何ら変な所はその時に感じることはなかったのだ。
ところが、京子が上がってくるまでゲームで暇を潰していた時に、不意に背中に重みが
のしかかってくる。その重さは共に柔らかさと良い匂いを全身から感じさせてくれる。
「結衣~」
そう、それは京子が私に覆いかぶさるように体を乗せてきたのだ。
そのせいで、操作ミスを生み出してしまい、画面にはゲームオーバーの文字が
出てくる。
「対戦しようぜ~」
京子は無邪気に、そう言うが、私の視線は画面から外せず、かといって、手を動かすこともなく
画面の中でコンティニューの数字が点滅しながら徐々に減っていく。
やがては0に到達して寂しそうにゲームオーバーの文字がただ、漂っているだけだった。
その時の私はただただ、京子の柔らかさと温かさ。長くて綺麗な髪の毛が数本私の肩の
辺りから垂れてくる。そう、京子は私の反応がなくてつまらなそうに、覗き込んできたのだ。
「だめだ」
「何で~、つまらない」
「やりたければコントローラー貸すから、重いから降りてくれ」
「ちぇ~・・・」
口を尖らせながらぶーぶー言う京子はコントローラーを受け取ってCPU相手に
大連鎖をしていた。私のやっていたのは、有名なパズルゲーム。落ちてくる色とりどりの
団子状のモノをくっつけて消すという単純なものである。
「ふ~・・・」
少し距離を開けてから、私は喉が渇いてることに気付くと京子の分を含めてココアでも淹れて
京子のゲームをやっている様子を見ながら少し離れたテーブルにココアを置いて腰をおろした。
なんだろう、いつもと変わらないふれあいのはずだったのに、今までと違う感覚が芽生えていた。
重くて早くどいて欲しいというのと、ずっとそのままでいれたら。という矛盾である。
甘くて美味しいココアを啜ってからコップを置いて両手を背より後ろについて、
状態を仰け反らせる。そして、一息吐いた。
少し落ち着いたところでゲームに飽きたのか、京子が自分の分のココアを発見すると
まるで子犬のようにトテトテと歩いてきて私の前にちょこんと座ると、ココアをふーふー
しながら飲み始める。
「京子のことだから豪快に飲んで火傷するオチがあるかと思ったよ」
「は? さすがにそこまでバカじゃないよ」
「そうだよな」
あかりたちがいても楽しいけど、二人でいると、また違った空気になるなぁ。
何だか落ち着く感じ・・・。去年のごらく部でもずっとこんな感じだったなぁ。
でも、あの二人が入部してから、元気だった京子も更に生き生きしているように見えた。
あ・・・でも去年と同じように見えて、本当は違っていた。それは、京子との距離だ。
友達や親友くらいの距離だったのが今ではもっと近くて大切なものになっていた。
「結衣~、暇だ相手しろ」
「何でだよ」
「いいから、相手をしろ~~」
そういってさっきのように私の背後に回って抱きついてくる、同じように風呂上りの匂いと
温かくて柔らかい感触が私を包み込んできた。
「だから、やめろって・・・!」
ダメといっていることをしつこくする京子に軽くイラッとした私は振り返って勢い余った時に
京子の手は離されドサッという音と共に京子は床に仰向けに私はそんな京子の上にいる
形になっていた。京子の体の両サイドに手をついてはいたが。
少し捻っていた体を整えると、まるで私が京子を襲っているような光景になっていることだろう。
違うけど、違うともいいきれない感情が私を襲う。びっくりして、一瞬言葉を失った京子の
唇に私はそのまま、支えていた両腕から力を抜いて徐々に京子の顔に近づけていった。
「ゆ、結衣・・・」
「京子・・・」
言葉に表せないこの気持ちを抱えながら、珍しく少し緊張した面持ちの京子も、恐らく私と
同じ気持ちで待ってるであろう表情でジッと私の目を見つめている。
いつまでも慣れないこの行為。バクンバクンと心臓の音がうるさく鳴り響く。
でもその音も、もう少しで聞こえなくなる。京子との間に距離が一切なくなった時には
心臓の音の変わりに互いの口から漏れる厭らしいクチュックチュッという音に
変わっていった。
「ん・・・ふ・・・結衣・・・」
「はぁ・・・京子・・・」
元気さは隠れているが、普段の京子にはない色っぽい表情に私の胸は直接掴まれたように
苦しい。けれど、それは辛いどころか、とても愛おしく感じて気持ちが熱くなってくるようだ。
しばらくの間、お互いの気持ちが落ち着くまで、その長いようで短い一時が過ぎ去っていった。
「ふぅ・・・まったく、結衣ったら」
「京子だって、まんざらじゃなかったじゃないか」
「まぁね~」
素っ気無く振舞うが、まだ若干赤みが残ってるのを見て、私は小さく笑ってしまう。
本気で恋をするより、こうやって落ち着けるような甘い日々が続くといいなと、私は思っていた。
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ブログで書いたらくがきSS、ふと浮かんだ話をまとめたもの。
あまり深い話は書けてないです。