No.418115

超次元ゲイムネプテューヌ Original Generation Re:master 第16話

ME-GAさん

第16話 結構間が空いてました すいません

2012-05-04 14:11:29 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1438   閲覧ユーザー数:1396

「ぅわっ……噂通りに寒い……!」

ネプテューヌは肩を抱いてフルフルと震え出す。

ルウィーは『夢見る白の大地』と呼ばれ、名の通りに雪が降る非常に寒とした大陸である。

温暖な気候であったリーンボックスとは違い、時折吹く風が芯まで凍らせてしまうようであった。

テラはしばらく考えた後、自分の来ていた上着を脱いでネプテューヌにバサリと放る。

「ほれ」

「わわっ。……テラさん、寒くない?」

「いいよ。俺はこんくらいの寒さは慣れてるから」

そうは言うが、テラは見た目黒い長袖Tシャツのみなのでどちらかと言えば見ている側の方が寒くなってくるような格好と言えなくもない。

だが、テラの隣ではいかにも薄着で寒そうなコンパがハアと息を手に吐いている。

「……ほれ」

「きゃ……!?」

テラはそっと自分の手をコンパの頬に押し当てた。

「俺、結構体温高い方だけど暖かいかな?」

「……///」

「もう一つくらい上着持ってたらコンパにもあげれたんだけど、一つしかなくてさ。人肌で温めるとか言うだろ?」

「はい~……」

何かもう暖まりすぎじゃね? みたいな、寧ろ、熱くね? みたいな感じにコンパの顔はみるみると紅潮していく。

そんな二人のイチャつきぶりを横で見ていた(正確には見て機嫌を悪くしていた)ネプテューヌとアイエフはポカンとテラの後頭部を叩いてズルズルと引きずっていく。

「いた……。おい、ちょっと? 二人とm――痛たっ! マジで痛いって!」

かくしてルウィーを訪れた一行の最初のやりとりはこんな感じであった――。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

とにもかくにも、こう寒いとやっていられないので一行はとりあえず宿を取って今日は休むことにした。

宿内は暖房が適度なほどに効き、それはもう快適の極みであった。

「あ~、暖かい……」

「ホントです~……」

すっかりくつろぎムードになっているのを横目にテラは部屋のドアに手を掛ける。

「じゃあ、俺はちょっとそこら辺を回ってくるから」

「えぇ……テラさん正気の沙汰じゃないよ……」

「普通に出歩いてる人達もいるんだからそんなこと言うな……」

そんな突っ込みを入れて、テラは部屋の後にした。

 

 

テラは何を思ったか、宿に近い図書館へと向かおうとしていた。

鍵の欠片などと言う不思議なアイテムである。

ましてや魔法文化の生えるルウィー、もしかしたらそれに関連する文献がないかと思い、こうして行動に至っているわけであったが――

「まずいな、完璧に迷った……」

やはり、知らぬ街をむやみやたらと歩くのは自殺行為というか、何というか、ただ言えるのは文字通り自殺行為と言えなくもない状況であると言うことだけであるが。

面倒くさい。

ともかくして、テラはとりあえず道を聞こうと周りを見るも辺りには人気もない。

「マジか……。この年で迷子とか情けなさ過ぎる……!」

テラはそう言って頭を抱える。

そんなことがネプテューヌに知られれば笑われること請け合いである。

ともかく、大通りを探そうとテラが向きを変えたとき――

 

ドン

 

「ぅわっ」

「きゃっ……」

可愛らしい声がテラの足下で聞こえる。

ふと視線を下に向けてみればそこには小柄な少女が恐らくぶつかった衝撃で尻もちをついたのであろう腰を押さえながらテラを……睨んでいた。

「え、と……?」

流石にそんな顔でそんな表情でもされたら慌てるだろう。

少女はあちこちについた雪を払いながらテラを一瞥してスタスタと歩いていく。

「あ、ご、ゴメン! 前見てなかったから……」

「……」

しかし、少女はそんなテラの声にも反応せずにスタスタとテラから離れるように歩いていく。

「怒ってる?」

「……別に」

凜とした声で、しかし、ふくれた声で少女はそう言い放つ。

怒ってるよなー、とテラは申し訳なさそうに後ろ頭を掻く。

「地元の子?」

「……」

「悪いんだけど、中央図書館に案内とか頼めるかな……?」

テラは尻すぼみになりながらも少女にそう尋ねる。

少女はピタリと足を止めてテラの方を向く。

「何故?」

「え? いや、ちょっと調べたことがあってさ」

「……そう。ついてくればいい」

少女はどうでもよさそうに言って再び歩き出す。

(案内してくれる、ってことでいいのか……?)

テラはそう思いながら少女の後を追う。

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 †

 

無言が……。

空気が……。

俺はそう思って口元を押さえる。

 

スゴイ気まずいんだけど、何コレ!?

やっぱり俺の第一印象がまずかった!?

何、俺が悪いの? 俺が死ねばいいの?

や、でも案内してくれるって事はそこまで邪険に思ってるワケじゃないのかな……

 

 

って、チラチラ見て来てるよ!

滅茶苦茶警戒してるし!

ヤベェよ……どうすればいいの? この空気……。

 

 †

 

テラはそんなことを思いながらも少女の後を追い続けた……。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

そんなこんなが続きに続いて20分ほど経った――。

二人の前には大きな白い建物。

掲げられている建物には『中央図書館』と書かれている。

「……あー、えと、ありがとう」

「別に……」

少女はそのままふいと図書館に入館する。

テラもつられてそれに続く。

暖房の風がテラの鼻をくすぐる。

少女はそれを無視してさっさとハードカバーの一冊を近くの棚から抜き取って椅子に座り、それを読み始める。

そんな少女を横目に、テラも歴史書のコーナーから何冊かをピックアップして少女の隣に座る。

「……何?」

いささか不機嫌そうな声を上げて少女はこれまた不機嫌そうな視線をテラに投げつける。

「ん? 普通に読書するだけだけど?」

テラの至極真面目な表情に少女は奇異に視線を向けて一つ隣の席に身を置く。

そして再びハードカバーに視線を戻す。

そんな少女を見てテラは薄く微笑むと自分も書籍に目線を映す。

 

 *

 

テラは一通りの文献に目を通したがやはりというか、その様な記録は残っていない。

やはり、それだけ貴重なモノなのかとテラはそう思いながら本を元の位置に戻そうと席を立つ。

隣の少女も、ちょうど読み終わったのか席を立っている。

「読み終わったのか?」

「……」

少女は何も言わずにこくんと頷く。

テラは暇つぶしにと適当な小説本を抜き取って席に戻るも、少女の姿をふと見つける。

どうやら棚上部に置いてある本を取りたいようだが、身長の所為かいくら手を伸ばしても届かないと見えた。

テラはそんな彼女を見てゆっくり席を立つ。

そして彼女の傍らからそっと手を伸ばして目的の本と思しきモノを棚から抜き取る。

「ほれ」

「っ~~!」

少女は顔を真っ赤にしてテラの手から本を奪い取る。

そんな彼女を自然に追いつつ、自席に戻ろうと思ったのだが――

「ついてくんなっ!」

少女は唐突にそんな怒声を上げる。

「え……!?」

いきなりそんな暴言を吐かれてテラは戸惑い、足を止める。

「さっきから人のこと付きまとって何がしたいんだコラ! ストーカーか!?」

先程の落ち着いた雰囲気から一変、彼女は不良よろしくな言葉遣いでテラにそう投げつける。

「え、付きまとってるつもりはないんだけど……嫌だった?」

「嫌に決まってんだろっ! さっさと帰れ! 二度と出てくんな――!!」

少女はブンブンとそこらにある本をテラに投げつける。

「ちょ、危ないから!」

テラは投げつけられる本を払いながらそう叫ぶ。

しかし、少女は一向に話を聞かずに本を投げ続ける。

 

 

そんな攻防が続いて2分ほど。

ものの2行ほどしか経っていないが2分ほど。

互いに息を切らせて膠着状態である。

「……」

「……」

果たして何がこの二人の異様なほどの緊迫感を演出させているのかは疑問であるが、ともかくして二人の周りには妙な雰囲気が流れており、一般人はおろか職員でさえも近付くのを憚られるような感じである。

まあ、そんな超が付くほどどうでもいい戦いにも終わりは来るわけで。

少女は近くの棚に手を伸ばすも、もう投げる本もないことに気付き、一歩後ろに下がる。

そんな彼女の隙をテラが見逃すはずもなく、急接近して少女の手を押さえる。

「やっと止まった……」

「っ! 離せっ!!」

少女はそんな怒号で叫ぶ。

「癪に障ったなら謝るからさ。これ以上暴れるなよ、な?」

テラはそう告げる。

少女はしばらく低く唸った後にテラの手を乱暴に払い、踵を帰してその場を立ち去る。

テラもそれを見送った後に――――

 

 

 

 

 

何者かの手がテラの肩に据え置かれる。

「お客様」

「え?」

見たところ、ここの職員らしき男性は妙に清々しいというか何というか、とにかくとびきりの笑顔でテラを見ている。

「何か?」

「恐縮ですが、こちらの惨状を見てください」

見れば、先程テラと少女が暴れ、争って(ていうか散らかしたのは主に少女であったが)すっかり元の姿なぞ見る影もない、彼の言うとおりの惨状が広がっていた。

「……え、と」

テラは口元を引きつらせて男性を見る。

「片付け、頑張ってくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで俺だぁあああ―――――――――――!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

テラの怒号が館内に響き渡った――。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

3時間後、

すっかり日も暮れて、テラはふらふらになりながら図書館を後にした。

アレから結局一人で片づけを終えて、最早気力を根こそぎ持って行かれた感満載のテラである。

「疲れた……」

テラは小さく漏らす。

テラがふと視線を向けた先には、

 

 

 

先程の少女が、身を小さくしてテラの方を見ていた。

「……?」

テラは訝しむように彼女を見る。

こちらが見ているのに気付いたか、少女はとてとてと歩み寄る。

「……何?」

テラがぐったりとした声でそう問う。

少女はもじもじと両手をいじりながら顔を俯けて口を開く。

「……悪かった」

「……?」

いきなり謝られる意図が読めず、テラは首を傾げた。

が、後に『ああ、あの事か』と納得する。

「別に、俺の方こそ悪かったし……おあいこって事で」

「……そっ、か」

少女はそれだけ言うと居心地悪そうに踵を帰して去ろうとする。

しかし、途中で動きを止めてテラの方を振り返る。

「私、……『ブラン』」

「ブラン……ああ、名前。俺はテラバ・アイト、テラでイイよ」

少女、ブランはテラの名を何度か復唱し、小さく手を振る。

「たまにココにいるから、また……」

「おう。また会おうな」

テラも同じくして小さく手を振り返す。

そうして、そんな彼女の背を見送ったテラであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『第一印象、最悪につき』――

 

 

 

 

最高をと呼べずもなかなかの別れで±0

 

そう思い、テラは宿へと足を向けた。

 


 
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