No.414465 ゲイム業界へようこそ!その50、そして50本記念SSくろとじるさん 2012-04-26 20:23:57 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:2071 閲覧ユーザー数:1976 |
「…さぁレン君、グリーンハート様の護衛役の任を引き受けてくれるかな!?」
「いいとも~!!………じゃねぇ!!その件についてはまだ決まっていなくて、今日協会に来たのも別段用があったからではなく…。」
現在いつの間にやらこんな状況に陥っているレンです。すぐ目の前にはしばらく会いたくなかったはずの協院長さん、そして後ろを振り向いてみればねぷねぷ、コンパ、アイエフとお馴染みの三人組が俺の様子を伺っている。ふぅ……これは当に逃げ場なしってことですよね…、俺にどうしろと?
皆さんには現在俺が何故詰みゲー状態になっているのか回想を踏まえて逃避……もとい説明をしていきたいと思います。そして……
「俺、この難題をクリアしたら結婚するんだ…。」
「ハイハイ!私がお兄ちゃんと結婚しちゃう~~♪」
「ねぷねぷ抜け駆けはずるいですよ!……フン!べ、別に、私がレンさんと結婚してあげてもいいんです…ことよ?」
「間をとって教院長たるこの私が…。」
「ねぷ子もコンパも少し落ち着きなさい!そして一番最後に発言した教院長さん、あなたは少し自重というものを知りなさい!!」
どうしてこうなった…?
………………
「グッドモーニング!今日も良い朝だねっ!!」
目が覚めた俺は跳ね起きてとりあえず元気に挨拶してみた。別に返事が来るわけではないのだが、個人の習慣のようなものなのでそこまで気にもしない。
ベッドから抜け出し、鏡の前で軽く寝癖を整える。そして整えた後、鏡に映る自分自身に一言。
「よぉ、イケメン。」
もちろん鏡の中に映るイケメンは無反応である。まぁ反応されたらそれはそれで怖いのだが。
ネプテューヌの世界に来てそろそろ一ヶ月になるだろうか、前世から変化した自分の姿を初めて見た時の反応はすっかり息を潜め、今では反応すら起こさない。鏡に映るイケメンを自分だと認識しつつ、それと引き換えに前世の自分の姿を俺は日が経つにつれて忘れつつもあった。俺の名前は井上 煉。これだけは間違いようもなく覚えている。ただ、『己の容姿は?歳は?家族の人の名前は?どこに住んでいたのか?』といった誰でも簡単に答えることが出来る質問ですら今の俺には答えれる自信がない。そう、この世界にやってきて一ヶ月程しか経っていないにもかかわらずだ。
別に前世に未練があるわけじゃない………というのは流石に嘘になるが、それでも強い願望があったわけでもない。前にも話したが、俺は前世で死んだことで今があるというのなら、むしろ死んで良かったとさえ思う。理由はそれだけ今が充実しているからだ。日々新しい発見をして、叶う筈も無かった二次元のヒロイン達と直に会話することが出来る環境、前世と今とでは比べるまでもなく今が充実している。
(…それでも)
しかし、それでも。どんなにこの世界に転生して充実している俺であっても、前世の忘れたくない記憶くらいある!この世界に体が引きずられ、大事な記憶の欠片が頭の中から抜け落ちていこうともだ!!
(…だから)
だから俺は、忘れないよう、手放さないよう、強くこの記憶を心に縫い付ける為、一つ、儀式めいたものを執り行うことにしたのだ。それは、
「忘れないために紙にでも書いておこう!」
実際、儀式でもなんでも無かったりするのであって。
「よし…こんなものか。」
目の前の紙を目にして俺は満足気に頷く。この紙は前世の記憶で特にこれだけは!というものを厳選して書いたものだ。
『19XX年、X月X日 ○○県●●市にて 井上(イノウエ) 煉(レン)誕生。年齢 21歳 父 井上 ■■、母 井上 □□、俺の嫁 △△△ △△、好きなもの ゲーム 漫画 ラノベ』
自身が思っていたより内容量が微々たるものだったことに少し落ち込みつつ、俺はこの紙を折りたたんで上着の内側のポケットに仕舞い込んだ。とりあえずの予定ではこれから毎朝この紙に目を通そうと思う、毎日チェックしていれば流石に忘れるなんてこと無いだろうし。
「さてと、今日もクエストに行ってジャンジャンお金を稼ぐとしますか♪」
気持ちを切り替えようと、俺は借り部屋のドアから勢いよく飛び出した。今日は少しレベルの高いクエストでも受けてみようかな?
………………
『50本記念SS』
皆さん、おはこんばにちわ。ラステイションの協会で勤めておりますOOOと申します………、あれ?何故でしょう、私の名前が上手く皆さんに伝わっていない気がしますね。OOO、OOO、OOO!………どうして伝わらないのでしょうか?まぁ、仕方ありませんね、とりあえずこの件については脇に置いておくとして、話を先に進めましょう。
実は現在、私は非常に辛い状況に陥っているのです。具体的に言うと、私の目の前には高々と積みあがっている資料の山、そして途切れることの無いスケジュールの数々、それらを私を含めた数人の協会の方々で作業している真っ最中でありまして、寝る間も惜しんで頭をフルに回転させつつ、手足を必死になって動かし続けているのです。どんなに頑張っても一向に減らない資料の山とスケジュール、むしろ増えているようにさえ感じてしまう事態……あぁ、私が睡眠を取ったのは果たして何日前だったのでしょうか………、ハッ!?いけません!今意識が飛びそうになりました!もし、今寝てしまったらと思うと………(ブルブルッ!)
どうしてこんな状況になってしまったのか……、皆さんの方では大体予想が着いているかもしれませんね。そう、我が大陸の女神ブラックハート様がはっきり言って全く活動してくれていないからです。今私の目の前にある資料もそのほとんどが本来であればブラックハート様がこなすはずだった物で。こう今になって思うのですが、これだけの量をブラックハート様はよく平然とこなすことが出来るものです。流石は女神様、私達のような凡人とは一戦をかくしますね…。
さて、そのブラックハート様についてなのですが、現在も絶賛部屋に引き篭もり中でして…。食事と入浴の際以外は全く部屋から出ない状況となっているのです。つい最近にも似たような現象がブラックハート様に起こったのですが、現在よりもその時の方がまだ良心的でした………だってあの時はなんだかんだで自身の仕事はやってくれていましたからね。
結構長々と説明してしまいましたが結論として私が何を言いたいのかといえば、「もう体の限界♪オワタ\(^o^)/」ということだけ。
今、当に「天国(気持ち良く眠れる)と地獄(その後に待つ仕事の嵐)」状態、そう『ヘル!アンドヘブン!!』なのです。あぁ…、なんだか光になっちゃいそうですね……。
『ああ、ア○ロ、時が見える…。』
不思議とどこからか声が聞こえた気がします…、しかしこの台詞、今の私にぴったりのようで、どこか心地が良いですね……、なにやら最高に「ハイ!」ってやつみたいです。そしてこの状態であれば、この台詞以外ありえないでしょう!!
「もう何も怖くない…。」
zzzzZZZZZZZZZZ………。
………………
「ハァ…。」
溜め息がこぼれる、もう何回目になるだろう…、試しに少し計算してみる。
5分程に一度溜め息をつく。一時間が60分であるから、60÷5=12 一時間に約12回の溜め息という計算になる。そして私の睡眠時間は一日大体6時間くらい、よって残り18時間は活動しているわけだから、その18時間も計算してみると 18×12=216 結果として一日に216、約200回近く溜め息を吐いてる計算になるわ。驚きの結果ね…、こんな凄い記録ギネスに登録されたりでもするんじゃないかしら?
「ハァ…。」
そしてまた溜め息。これは5分間に一度というペースじゃないわね…、もっと多いのかも。
こんな状態に私が陥っている理由…「レンが傍にいないから」…これに尽きる。
彼と接岸場で別れてから今日で何日目かしら……、おそらくまだ一週間は経っていないはず。でも何故だろう…、不思議と私は既に年単位で彼に逢っていない気がするの。ほんと馬鹿みたいな話だけど、この一日一日がまるで何十日、何ヶ月、何年にさえ感じてしまう。あぁ…本当にこれは重症ね……。
レンが別れる際に私に言った言葉を思い返す。私がこんな状態になってしまった原因とも言える私への衝撃的な台詞。
『気に入ってくれたなら嬉しいよ…。』
(私の為にあなたが選んでくれた物だもの…、気に入って当然じゃない///)
ベッドの中に潜っていた私は枕を体全体でギュっと少し強めに包み込む。彼の最後の言葉は今でも一字一句覚えているわ。
『その……、あれだ……、凄く似合ってるぞ。』
(小声で言ったって私にはちゃんと聞こえてるんだから。)
誤魔化したようでも私には彼の言葉がしっかり聞き取れていた。彼の嘘偽りの無い真っ直ぐな言葉を今も思い出す度に身体と心が火照ってくる。駄目…、ほんと私おかしくなりそう……。
『それに………ほんと俺好みだよ。』
(っ~/////)
枕に必死になって顔を埋めて行く。ヤバイ…、今の私の顔絶対にやけてる……、にやけ過ぎて蕩(とろ)けてそうだ。もし、仮によ?今目の前にレンがいた場合………、うん、我慢なんて出来ないわ、絶対彼の身体にダイブしちゃう…。それほどまでに私は今狂ってしまっていたの。でもそんな私を他所に彼はリーンボックスに旅立ってしまった…、だから今現在私の近くに彼はいないのであって…。
「ハァ…。」
そしてこのエンドレスループになるわけなの…。気分が高揚しては落ち込むの繰り返し、ほんとこれじゃ私の精神が持たないわ。まだ外は明るいけれど結構疲れたし、今日はもう寝ちゃおう……。
(レン…、早くまた、あなたに逢いたい…。)
明日、レンに再会できると信じて…、おやすみなさい…zzz
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