No.412741

真・恋姫無双 ~新外史伝第59話~

取り敢えず璃々と黄忠紫苑との初対面ですが、色々考えましたがこのような形になってしまいました。

では第59話どうぞ。

2012-04-22 22:20:55 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:5582   閲覧ユーザー数:4644

璃々と蒲公英が出発して、7日くらいして巴州に到着した。

 

城は警戒状態に入っているが、まだ軍が攻め入る気配がないため、黄忠は、民のことを考えて、ギリ

 

ギリまで出入り自由にしていた。

 

璃々たちは、直接黄忠と交渉を行うつもりであったので、関所通過時のトラブルや不測の事態に備

 

え、偽名を使った鑑札を所持して、ここまで来ていた。

 

因みに璃々が黄叔、蒲公英が馬秋と名乗り、旅の武芸者を装っていた。

 

そして既に巴州の町に入り蒲公英が

 

「ねえ璃々、どうするこのまま城に行って、交渉始めちゃう?」

 

「う~ん、まずはここの住民に黄忠さんの事を聞いて回ろうと思うけどどうかな」

 

璃々が先に情報収集を提案すると蒲公英も異存はなく了承した。

 

そして2人は、買い物や食事がてらにさりげなく黄忠の評判を聞いていると、店の亭主や客は、黄忠

 

の事をいい領主様だと異口同音を褒める言葉ばかりであった。

 

これを聞いて2人は、人物に問題は無いので、普通に話し合いは出来そうだと安堵していた。

 

丁度その頃、城を守っている黄忠のところに葭萌関の戦いにおける(北郷)紫苑の策が漸く明らかに

 

なっていたが、これを聞いて黄忠は頭を悩ませていた。

 

と言うのは、先の戦いに参加し捕虜にならず敗走した兵士たちが、紫苑と黄忠が別人であることを知

 

らないことから、

 

「黄忠様は敵に寝返った」

 

「黄忠様は敵の将に身を預けて寄り添い、敵に身体を売った」

 

そういう話が成都を中心にちらほら噂になり始め、劉璋側近の重臣から黄忠討伐の声が出ているとい

 

う話が出てきた。

 

黄忠自身は、謀反について身に覚えないことだったので自ら弁明するつもりであったが、しかし黄忠

 

は、元々劉璋の政治姿勢に対して反対の態度を示しているため公平な裁きが期待できないことから、

 

家臣からは成都行きを反対され、更にこの際劉璋を見限り、北郷軍に寝返る話も出ていた。しかし黄

 

忠自身は、一刀の政治姿勢は好感を持てるもののまだ人柄等について分からない部分があり、更に噂

 

に上がっている紫苑の存在が気に掛かり、結論が出ていない状態であった。

 

「はぁ…、どうすればいいのかしら…」

 

黄忠が悩んでいる中、更に悪い知らせが入り、巴州と桔梗が守る巴郡との間にすでに菫が軍を進めら

 

れ、連絡が寸断され連携が困難な状態になり、現状では援軍が得られない状態になっていた。

 

「このままでは北郷軍と戦っても勝ち目は薄いわ…。と言ってこのまま下るのも…。それに私と似た

 

人物が敵にいるというのも気になるわね…」

 

黄忠は悩んでいたが

 

「駄目ね…、いい考えが浮かばないわ。少し町に出て気分転換しようかしら」

 

とそう呟きながら、黄忠は町に出ていった。

丁度その頃、璃々たちも城に向かい、黄忠に面会に行く途中、街中で人だかりができていた。

 

野次馬精神旺盛な蒲公英が人だかりにいた住民を捕まえて

 

「ねえねえおじさん、何かあったの?」

 

「何、さっきそこで押し込み強盗があってよう、そこで男3人組が、逃げる途中で役人に見つかり、

 

途中に偶々歩いていた子供を人質にして、役人と睨み合いの状態になっているんだよ」

 

これを聞いて蒲公英と璃々は

 

「あら~大変な事になっているね…」

 

「うん…人質に取られている子供も心配だから助けないと…」

 

「でもさ璃々、ここで目立つのはどうかと思うけど?」

 

「そうだよね…でも私、子供をこのまま放っておけないし、それにこの騒ぎを鎮めないと多分黄忠さ

 

んと会えないと思うよ」

 

璃々から言われると確かにその通りで、蒲公英も流石に子供を見捨てるほど薄情な女性ではなく、こ

 

のまま見捨ててれば女が廃ると思い、璃々の言葉に納得して子供の救出作戦を行うことにした。

 

そして男3人組が役人に対して

 

「逃げるための馬を用意しろ!」

 

「ガキがどうなってもいいのか!」

 

「あ…あとご飯も用意するんだな」

 

「わ~ん、お母さん~」

 

チビの男に刃を突き付かれている子供はその恐怖から泣いており、役人が手出しできずにいたとこ

 

ろ、すると何処からか

 

「待てーー!」

 

周辺に声が響き渡たると、周囲の人間は皆、声がした方を見やっている。

 

すると屋根を見ると

 

「ジャーンジャーン!ここに居るぞ~♪」

 

何故か効果音付で屋根から蒲公英が右手を上げながら周りにアピールをしていた。

 

「な、何だ!てめぇは!」

 

突然の蒲公英の登場に驚いた3人組の兄貴分の男が大声を上げると蒲公英は

 

「う~ん、おじさん達に名乗る名前はないけど、敢えて言うなら正義の味方かな。私が天に変わって

 

お仕置きよ!」

 

蒲公英がどこかで聞いたような決め台詞を使い、そして右手に持っていた拳大の石を思いっ切り3人

 

組に向けて投げ込むと

 

「ぐぁ!い…痛いんだな…ドサッ」

 

蒲公英が投げ込んだ石は3人組の1人のデブの男に顔面に命中すると、デブは最後の台詞みたいに言

 

ってその場で倒れた。

 

「てめぇ、人質が目に入らないか!」

 

兄貴分の男が叫ぶも蒲公英は

 

「え?見えるに決まっているじゃない。蒲公英そこまで目が悪くないよ」

 

「それにおじさん、人の事を心配するより自分の心配をしたら?」

 

「はぁ!?……えっ!?」

 

蒲公英に言われると男は後ろを振り向くと人質を取っていたはずのチビの男が、蒲公英に気に取られ

 

ている間に背後から来ていた璃々に倒され、そして人質に取られていた子供はすでに璃々が後ろに庇

 

うように立ちはだかる形で保護していた。

 

「これで形成逆転だね、おじさん。無駄な抵抗を止めて武器を捨てた方がいいよ」

 

そして子供を助けた璃々が兄貴分の男に対して、愛刀「桜花」を向けて投降を勧告したが、男はやけ

 

くそになったのか

 

「く、くそっ!こうなったら貴様を道連れにしてやる!」

 

男は璃々に突撃を敢行しようとしたが、すると急に男が被っていた頭の頭巾が飛来した矢によって吹

 

き飛ばされ、更に男の足元には矢が3本くらい突き刺さっていた。

 

男は恐怖の余り腰を抜かしてしまい、そしてその場で失禁していた。

 

璃々と蒲公英は矢が放たれた方向に目をやると、2人は目が点になっていた。

 

なぜなら2人が見た人物は、普段から見慣れているはずなのに、ここでは別人の紫苑(黄忠)が現れ

 

たからである…。

そして璃々の後ろで保護されていた子供が黄忠の姿を見るなり

 

「ふぇ~ん、お~母さん~」

 

泣き叫びながら黄忠の元に駆け寄り、そのまま泣きじゃくっていた。

 

この世界の紫苑が自分の子供をあやしている間に先程の賊3人組は役人たちに連れ去られ、蒲公英と

 

璃々は黄忠に聞こえないよう小声で

 

(「あ~びっくりした。璃々から聞いていたけど、やっぱり何処からどう見ても紫苑そのものだか

 

ら、いざ見ると驚いたよ」)

 

(「うん、私もやっぱり見た瞬間、「お母さん」と叫びそうになったよ。それにこの子供ってこの世

 

界の私かな…」)

 

2人でひそひそ話をしているとようやく子供が落ち着いたのか、黄忠が

 

「先程は私の子供を助けて戴いてどうもありがとうございました。私はここの主で名は黄忠、字を漢

 

升と申します。こちらは娘の璃々と言います。さあ璃々、お姉さんにお礼を言いなさい」

 

「お姉ちゃんたち、さっきはありがとう♪」

 

この世界の璃々からお礼を2人は微笑んでいたが、やはりこの世界の自分を見て、璃々が少し戸惑っ

 

ているので

 

「良かったね、璃々ちゃん」

 

蒲公英が代わりに答えてくると、璃々は漸く我を取り戻し、アイコンタクトで目礼をした。

 

璃々はこの場にいたのが蒲公英であることに感謝した。と言うのは星ならいざ知らず、翠や朱里では

 

この場にいたら、ここの黄忠の姿を見て動揺してしまう姿が容易に想像できてしまったのだから…

 

そして向こうから名乗りを受けたので、こちらも名乗りをしなければならないのだが、流石にここで

 

は他人の目もあり、自分の名を名乗ることを拙いと判断した璃々は、取り敢えず偽名で名乗ることに

 

した。

 

「態々のお礼ありがとうございます。私たちは旅の武芸者で私が黄叔で、もう1人が馬秋と言いま

 

す」

 

璃々が自己紹介をすると黄忠は璃々たちの顔を見て内心

 

(「旅の武芸者ね…、確かに身なりはそう見えるけど、でも見た感じあまり長旅をした様に見えない

 

し、この2人何かありそうだわ…。特に黄叔ちゃんは璃々と似てそうで、璃々を成長させたらあんな

 

感じになるのかしら…。まあ璃々を助けてくれたから悪い人ではないでしょう。1度ゆっくり話して

 

みる必要がありそうね」)

 

僅かな時間で黄忠はそう考え

 

「そうですか。では今日のお礼もありますし、今晩は我が家に泊まってぜひ貴女方の事を色々聞かせ

 

て欲しいですわ」

 

黄忠から笑顔で言われると璃々と蒲公英は2人とも顔を合わせ無言で頷き、璃々が交渉できるいい機

 

会だと判断して

 

「助かります。では今晩はお世話になります」

 

璃々は承諾して、この日は黄忠の屋敷に泊まることとなったが、こちらも内心は

 

(「今晩は腹を括らないといけないかも…」)

 

璃々はそう思いながら、黄忠の屋敷に向ったのであった。

 


 
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