No.412724

IS《インフィニット・ストラトス》 駆け抜ける光 不安と希望

二学期に入ってすぐに、かなりのプレッシャーを持つ謎の先輩と出会う光輝。そして紗英の秘密が明らかに--。

2012-04-22 22:06:28 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2300   閲覧ユーザー数:2262

「皆さん! 今日から二学期です。まだ夏休み気分が抜けないと思いますが、頑張って行きましょうね~!」

 

 二学期初日、朝のSHRで山田先生の声が木霊する。なんか山田先生の声を聞いたのは久しぶりな気がする……。夏休み中は時々寮の食堂で挨拶ぐらいしかしなかったし、会話と言う会話はしなかったな。

 

「諸君、二学期は行事が多く、最初の行事は学園祭だ。楽しむためのイベントだが、羽目を外し過ぎないようにな。各クラスで催しをしないといけないのだが、それはお前たちに決めてもらう。明日その時間を作るから各自、何をしたいか決めておけ」

 

 学園祭ねぇ……。さて、決めると言ってもどうしようか? 自分が主体になるって言うのは好きじゃないし、ここはみんなにまかせよう。女子ならこういうことには熱心になるはずだしね。

 

[――しかし、女子に決めさせると恐ろしいことになるかもしれないんだぞ? ある程度の事は考えていた方が得策だと思う]

「――そうですね……何か簡単に考えておこう」

 

 

 

 その日の昼休憩、僕は適当に散歩していると後ろから人の気配を感じていた。要は着けられているのだ。

 

「――この感じは、けっこうな方ですね」

[――あぁ、この学園の中でもほとんど感じることのないプレッシャーだ]

 

 僕はそのまま屋上に上がり校庭を眺めるふりをする。

 

「さっきからなんですか? 僕を着け回して、何か用なんですか?」

「あらぁ、ばれてた?」

 

 振り向けば扇子で口元を隠して笑っている水色のショートヘアをした先輩――リボンが二年生の色だしね――が扉の前にいた。余裕や落ち着いた雰囲気がただよっているけど、このプレッシャーは唯ものじゃない。しかも、この人ってまさか――。

 

「今日、夏兄が授業に遅れました。その原因の女子生徒って貴女だったんですね」

「一夏くんのこと? さぁどうでしょうね♪」

 

 今日のある授業で夏兄は、見知らぬ先輩に絡まれたせいで遅れたと言っていた。その時言っていた容姿と今ここに居る先輩の容姿が一致するのだ。この人に間違いない。

 

「そんなに警戒しなくてもいいわ。お姉さんは何もする気ないしね♪ 噂の君と話したかっただけよ」

「噂? どんな噂です?」

「もちろん、男子なのに女子にしか見えない可愛らしい後輩がいるって言う噂♪ やっぱり可愛い後輩だわね♪」

「っ! そんな噂が……悲惨だ」

 

 僕のがっくりした反応を見て楽しむ謎の先輩。しかし、本当にそんな噂が雪崩れているとしたら……恥ずかし過ぎる……。しかも最低でも二年の間では流れていることになる。まさかこんなことが……。

 

[――おい、光輝! 相手のペースに囚われているぞ! まずは落ち着くんだ]

「――あ、危なかった……ありがとうございます」

「あら? すぐに冷静さを取り戻すなんて可愛くないわね。お姉さん悲しいわ」

「そんなことどうでもいいです! 本当は何の用ですか!?」

 

 う~ん、と扇子で口元を隠しながら考えている。まさかこの人は何の用もないのに付けてたってことなの!? だったらせめて普通に話しかけてくれればいいのに……。

 

「ガンダムと呼ばれるISの搭乗者を見たかったじゃダメ?」

 

 先輩を纏う雰囲気がいきなり変わった……! 今度は悪ふざけじゃない、本気だ!

 

「そんなに付けてくるんじゃなくて普通に話しかけてくれればいいのに」

「それはお姉さんのプライドが許せないのよ♪」

「なんですかそれ……」

「そのままの意味よ。これでガンダムタイプのISは3機……恐ろしいわね」

「待ってください! 3機って、僕とエリスさんだけのはずじゃ――」

 

 僕のHI-νガンダムとエリスさんのフルアーマーZZガンダムの2機だけじゃないの?

 

「最近までは、ね。でももう一人――坂本紗英ちゃんが3機目のガンダムの搭乗者になったのよ」

「紗英……先輩が? まさか、そんなこと――」

「事実よ。それに君のISもそれに気付いてるんじゃないかしら?」

 

 まさかこの先輩はアムロさんの存在も知っているのか!? でも専用機持ちのみんなとお母さんにしか話してないのに――。

 

[僕の事を知っていたか。確かに光輝が夏休み中に家族で出かけた日にそれらしいのは感じていた。それが誰かは分からなかったし、確信出来る程のものでもなかった。まさかな……]

「じゃあ紗英先輩もニュータイプに? でも夏休みの時はそんな感じしなかったけど」

[念のために一度、その紗英先輩に会って話してみないと分からない……]

 

 ガンダムと言うISを手に入れた人の共通点としてあるのがニュータイプ化である。確かにあって困るものじゃないけど、これが一般に公開されれば――僕やエリスさん、紗英先輩は政府を追われるのは間違いない。

 

「さて、話はそんなとこかしら。それにしても紗英ちゃんから聞いた通りの子ね。純粋で強いわ。それに可愛いわね♪」

「な、なな何を言って――」

「反応が可愛い子は嫌いじゃないわ♪ じゃあ今日の放課後にね♪」

 

 そう言うと謎の先輩は屋上から去っていった。それにしてもあの先輩はなんでアムロさんのことを知っていたんだろう? でもあの時見せたプレッシャーは唯ものじゃないということは判断できた。

 

[一夏もあの先輩に遭遇しているな。しかし、このプレッシャーといい何者だったんだ?]

 その日の放課後、全校集会があった。そこで現れたのが生徒会長――更識盾無先輩だった。今日の昼休憩中に会った謎の先輩の正体が生徒会長だったのだ。その生徒会長が衝撃発表をした。

 

 各部対抗織斑一夏争奪戦

 

  学園祭では各部活が催しを行って全校生徒で投票して、上位の部活は特別援助金が出るらしいんだけど、今年はお金+夏兄をその部活に入部させる、というものだ。

 

 会長は何の理由でそんな企画を企てたのか分からない。ほんとに何を考えているのか分からない人だよ……。だからこそ、警戒するって訳じゃないけど油断できない。

 

 集会が終わった後、アリーナでちょっとだけ練習をして寮へ帰る途中が今現在です。と、後ろに人の気配を感じたので振り返れば、紗英先輩が少し落ち込んでいるような表情をしていた。

 

「……どうしたんですか?」

「せっかく後ろから光輝ちゃんをビックリさせようと思ったのに……」

「そ、そんなことで落ち込まないで下さい。こっちが困りますよ」

「むぅ~……」

 

 なんというか、可愛らしい先輩です、はい。でもこの人がガンダムタイプのISを――。僕は勇気を振り絞って聞いてみた。

 

「先輩、先輩って専用機持ってますよね?」

「っ! ……なんで知っているの?」

「今日の昼に会長が言ってました。ガンダムタイプのISが3機いるって。内の2機は僕とエリス・リムスカヤさんと言う人です。3機目の方の名前を聞いたら紗英先輩だと言ってました……。どうやって手に入れたんですか?」

「そっか……盾無ちゃんが。ということは光輝ちゃんは信用できる人なんだね……」

 

 紗英先輩は決心したようにゆっくり応えてくれた。

 

「夏休みの途中で自分の部屋に待機状態のISがあったの。それがあたしの専用機――Ξ(クスィー)|ガンダム」

「Ξガンダム……それが先輩のガンダム」

[――だが、そんなガンダム聞いたことが無いぞ……どういうことだ]

 

 アムロさんも知らないガンダムなのか? だとすれば一体……。

 

「じゃあ先輩も自然発生のISってことになるのか……」

「自然発生? 光輝ちゃんのISも自然発生だったの?」

「いいえ。僕の場合は篠ノ之博士が関係しています。自然発生なのはもう一人のガンダム――フルアーマーZZガンダムの持ち主、エリス・リムスカヤさんです」

「そう、だったの。そのエリスちゃんにも会ってみたいな……ねぇ光輝ちゃん? あたしの頼み聞いてくれる?」

 

 夕日に照らされた先輩の表情は不安と希望を兼ね備えていた。

 

 

 

「紗英ちゃんが3人目のガンダムタイプの持ち主ってことかぁ」

 

 紗英先輩の頼みは「エリスちゃんと話してみたい」ということだった。エリスさんを探して本人に訳を話して承諾を得ることが出来た。二人を僕の部屋に招待して三人でいろいろと話した。エリスさんと紗英先輩は気が合うのかすぐに仲良くなった。エリスさんなんてタメ口の域までいったよ。

 

 紗英先輩はΞガンダムが出現したことをすぐに更識会長に相談し、ISを調べて貰って名前が分かったと言う。このISの存在をまだ教職員には言っていないらしい。お母さんぐらいに相談した方がいいかな。

 

「専用機を持てたのは嬉しいけど、まだ一度も使ったことないの」

「もしかして調べた時に性能が高過ぎて使えないとか?」

「えっとね……恥ずかしいんだけど……あたし、ISを使っちゃうと口が悪くなるみたいで……みんなが言うには凶暴化するとかって……だから普段からあんまりISは使わないの」

 

 ……まさかの発言である。こんな可愛いらしい先輩がISを使ったら凶暴化だって? 

 

「何て言うのかな、意識はあるんだけど身体が勝手に動いて自由が利かなくてISを解除したら自由が戻るんだよ」

「それって原因が分からないね……でもISを使わない限りは大丈夫なんでしょ?」

「そうだね。授業の時は口が悪くなるだけで凶暴化はしないらしいんだけど、模擬戦とかになったら凶暴化しちゃうんだよ」

 

 これは一種の病気か何かだろうか? それともニュータイプになり始める影響の一つか? エリスさんが急にプレッシャーを感じるようになったみたいに。でも紗英先輩は一年の時からって言ってたし、他に原因が?

 

「アムロさん、これってニュータイプになり始める影響の一つですか?」

[僕にはなんとも言えないな……エリスの言う通りその影響の一つかもしれない。でも一年の時からなら、その可能性は低いぞ]

 

 やっぱりそうだよな~。これ以上原因を探るのは難しいかも……。と、紗英先輩が驚いた顔で僕達を見ている。どうかしたのだろうか?

 

「あ、ISが喋った!? え、嘘でしょ!?」

 

 何気にアムロさんと話してたけど紗英先輩は知らなかったんだよね。説明が遅れちゃったよ。

 

「紗英先輩、僕のISは元は異世界の人間の方なんです。僕のIS――HI-νガンダム、エリスさんの――フルアーマーZZガンダムもこのIS――アムロ・レイさんの世界の機体なんです」

「異世界? 機体? あ、頭が追いつかないよ~」

 

 頭を抱えて悶える先輩。いきなり異世界とかって言われたらそうなりますよね……。でも事実なんですよ、これって。

 

[紗英と言ったか? いきなりのことで驚くのは無理ない。でも本当の事なんだ……少しづつでもいいから受け入れていって欲しいんだ]

「え、は、はい……。あたし、頑張ってみます!」

[そんなに緊張しなくてもいいさ。それと、ここで話したことは他言無用で頼む。千冬や一年の専用機持ちのみんななら大丈夫だが、それ以外の人間には言わない事。いいね?]

「分かりました……気をつけます」

 

 戸惑いでいっぱいなのか、先輩はそわそわしている。しかし、一気に言い過ぎたかも知れない……時間を掛けてゆっくり理解してもらう方が良かったよね。

 

「まぁ難しい話は置いといて、これからよろしくね紗英ちゃん♪」

 

 考え込んでいる先輩に手を差し伸べるエリスさん。この明るさがあるからこそ友達も多く出来るんだろうな。先輩とか関係なしに……。こういう風景見てたら自然と心が暖かくなるよね。

 

「えぇ♪ 先輩って柄じゃないけど、よろしくねエリスちゃん♪」

 

 二人の女子が握手を交わす。こうみるとエリスさんが姉で紗英先輩が妹みたいだなぁ。だってエリスさんって結構身長が高いんだよね。いや~好きだなぁこういうの♪

 

「そういえば光輝くんと紗英ちゃんってどっちが背高いの?」

「へ? それは僕に決まってるよ。ねぇ先輩?」

「光輝ちゃんってば冗談はよくないよ! あたし、155㎝だよ?」

 

 なん、だと! 僕より7cmも高いと言うのか!? 

 

「そんなバカなぁぁぁぁぁ!」

「なんか大変な事になりそう……」

 

 光輝ちゃんとエリスちゃんとアムロさん? と話し終わって自室に戻ってます。正直なところ、この現状を理解するのに時間がかかりそう。特にアムロさんにはビックリしたよ。

 

「あぁもう……頭がおかしくなりそうだよ……」

 

 右の薬指にはめているΞの形をした指輪を眺める。ガンダムと言うISは異世界の機体? この時点で頭がおかしくなりそうなんです。でも嘘をついてるようには見えないし……。

 

「それに――盾無ちゃんが一目見て信用した人なら」

 

 あたしの信頼できる友達。一年の頃、あたしを助けてくれたあの子が言ったなら――。

 

 そう言えば光輝ちゃんを見てると既視感を感じるのはどうしてだろう? 昔、会ったことあるのかな? 思いだせないなぁ。

 

「……考え事はおしまい! シャワーでも浴びよっと♪」

 

 難しいことばかり考えてたら、暗くなる一方だしここはすっきりしてまた明日にしよう♪

 


 
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