第三話 戦闘
あの恥さらし出港会の次の日。
俺は一躍有名人になった。
そりゃあ艦長代理で決め手の言葉を言ってしかも間違えたとなればもう。
ディさんと羽佐間さんは今でも笑うし、困ったものだ。
今、戦艦は太陽系を抜ける途中だ。
まだまだ我々の制権内だ。よって戦いは起きないだろう。
だが、万が一と言うこともある今のうちに復習復習。
宇宙戦闘での戦い方は少々特殊だ。
敵が太陽系に進入しようとした場合は。
まず太陽系外に艦隊を張る(といっても常時張っている)
後は敵を待つだけだ。
敵はものすごく早い速さで迫ってくる。
だから、太陽系を覆う巨大なシールド網を張っている。
シールド網はそこまで強いものではないので簡単に抜けられる。
だから、第2シールドがある。
第2シールドは第1シールドが突破された瞬間に張りめぐられる。
第2は常時動いてる第1とは違い敵を数秒間拘束できる。
その間に艦隊が光速で近づき拘束シールドを張り敵を捕獲破壊。
それがもっとも普通の戦い方だ。
と言ってもこの艦は今までの戦艦と違い、300機以上の戦闘機と100機以上無人機が搭載されているいわば要塞。
全部隊で潰せば何とかなるだろう。
と俺はどこに向かっているとか言うと、格納庫だ。
格納庫で自分の愛機とご対面だ。
ピューピュー。
と俺は格納庫へ向かう。
「艦長さんぅ、通信が入りました。」
「私のところへ開け」
「はぁい」
ここはブリッジ、この艦の中心となる場所。
ここには艦長や通信士などいろいろな人が集まっていた。
今、この艦に通信が入ってきた。
艦長がいすに座る。
『こ、こちら第12船団”アースガーナー”です。』
向こうの人が流暢な日本語で話してくる。
「何事だ。」と艦長は聞き返す。
『現在、太陽系外ポイント7付近で敵部隊と交戦中。貴行らの任務は知っているができれば援護に回ってくれないか?』
「ポイント7か・・・・・・マクリアッ艦の航行ポイントでポイント7は通るか?」
艦長のこの言葉にマクリアと呼ばれた女性が答える。
「は、はい。通ります。」
「そうか・・・・”アースガーナー”こちらも戦線に加わります。」
『御厚意、感謝仕る。』
プツンと通信が途切れる。
艦長は大声で言った。
「聞いたかみんな戦闘配置だ。観測士は長距離レーダーで交戦状況を確認、警報音を鳴らせっ!!」
「な、何だ?」
俺は格納庫で自分の愛機を見ていた、噂どおりの最新機だ。
「勝井新兵っ戦闘配置だ。第3ミーティングルームへ集まれ。」
「は、はい。」
第3ミーティングルームには21~40番隊が集まるらしい、それにしても広い。
指揮官さんが中央に出る。
「現在、味方艦隊が交戦中だ。我々も攻撃するが、出るのは1~20番隊までだ。君たちは待機だ。」
指揮官はそれだけ言うと去っていった。
「俺たちは見てるだけなんですか?」
「上からの命令だからね・・・・・・初めてかい?」
そう、俺はまだ戦ったことが無い。
これが初めてだ。
「敵船団との交戦ポイントへ到達しました。」
「よしっ遊撃戦闘機隊、発進せよ!!」
黒い宇宙戦闘機が戦艦から発進される。
そして、味方艦のほうへ向かう。
『こちら”アースガーナー”敵主力はFタイプだ。』
「こちら”ブラック・フォーミュラー”了解した。」
『幸運を』
「全戦闘機に告げる。敵はFタイプだ。戦闘隊形は各隊で。」
《指令機、了解。》
いくつもの黒い戦闘機”ブラッド・ファイター”が宇宙を舞う。
そして、隊形を組む。
《1番隊、敵機と交戦開始》
”ブラッド・ファイター”は両翼に装着した高圧力レーザーを使い敵を焼き払う。
《指令機からブリッジへ、見たことも無い敵機を発見。破壊行動に移ります》
その黒い戦闘機の中、一機だけ、赤色に染まった機体がいた。
指令機の”ダーク・アタック・フォーミュラー”だ。
指令機はその機体を加速させ未確認敵戦闘機へ走る。
「ブリッジから指令機へ”無理はするな”」
《了解》
指令機は先ほどの未確認戦闘機に迫る。
《指令機から4番隊へ我を援護せよ》
《4番隊から指令機へ了解》
指令機は敵に向かってミサイルを放つ。
ミサイルはすばやい動きをする敵に向かって進む。そして、直撃。
しかし、敵はそれをものともせず得体の知れない青い光線を放つ。
《うわぁぁ》
指令機の後ろにいた4番隊隊長へ攻撃が直撃する。
《た、助け・・・》
ドカーンと爆発するような感じだが意外にも静かに戦闘機は停止した。
宇宙なので効果音は無い。
残された4番隊のメンバーは隊長を救うべく先ほどの敵に攻撃するが敵はやはりものともしなかった。
やがて、怒ったように4番隊メンバーに例の光線を放つ。また何機か停止した。
別の場所では敵の無人戦闘機との混戦があった。
”アースガーナー”専属の部隊”バン・ファイター”はもう、9割がた敵にやられてしまった。
あるものは敵とぶつかり、あるものは不運にも味方の攻撃に直撃してやられた。
こちらは被害を受けながらも敵を少しずつ倒していっている。
しかし、最新規を扱う”ブラッド・ファイター”部隊は新人など初めての宇宙での戦闘だった。
この戦いは被害は少ないながらもパイロットに恐怖を与えた。
『こちら”アースガーナー”敵が引いてゆく、状況終了だ。』
「了解、我々はこのまま敵の追尾に当たる。」
『任務成功を祈ります。』
プツン。
「艦に通達、味方機を回収しだい敵を追うこれからが我々の任務の始まりだ。」
四角い第3ミーティングルームに一人の人影があった。
数分前まではここに大勢の人が居たが戦闘終了の放送後、姿をけした。
今は一人だけだ。
俺は宇宙での戦闘がこんなものなのか知らなかった。
地上でシュミレーションはやったけれど現実とは違う。
今回の戦闘でパイロットの死は21名だったらしい。
そのうち、5名ほどが味方の攻撃に直撃してだそうだ。
人間ってこんなに簡単に死ぬんだ。
俺はそのようなことを考える。いまさら何をかんがえているのだろう。
「ここにいたのか?」
声がした。声の主はあの人だ。
「すみません。ディさん」
「・・・・・・怖いのか?」
「・・・・・・・」
「勝井君は宇宙は初めてだったよな、宇宙って簡単に人を殺すんだ。戦闘機が破壊されて生きていても宇宙の中では人間は無力だ。」
「・・・・・・・」
「これからもっと人が死ぬぞ。勝井君がどんなことを思っていたとしても、もう乗ってしまった船だ、最後まできちんと乗りな。」
「ディさんは・・・」
「?」
「ディさんは怖くないんですか?」
「怖いさ、怖いよ、俺だって怖いよ。でも、俺達がやらなきゃ誰かが死ぬ。俺が死ななきゃ誰かが死ぬ。船はゆっくり進むんだ。」
「・・・・・・」
「勝井君も怖いだろ。だけど、年月という船は僕らの意思とは関係なく進む。誰かがしなければならないことなんてたくさんある」
「例えば毎朝、飯が食えるのは誰かが頑張って作ってくれたからさ。それみたいに誰かがしなければならない。しなければ進まない。」
「そういうことだ・・・・・それでも、生きたいなら頑張って敵を倒し、生にしがみ付けっ。そうすれば生き残ることができる。」
「ディさんはもしかして、誰かのために死ぬの?」
「・・・・ふぅ、俺は死なない・・・・いや、死ねない。待っている人が居る。だから、生にしがみ付いて何とか生き残るさ。」
「・・・・・ありがとうございます。」
「いや、いいって。俺も気が晴れた。・・・・・そうだ、これやるよ」
とディさんはポケットに手を突っ込む。
ディさんのポケットから出てきたものは不思議な光を持つ宝石だった。
「えっこれなんだか高そうなんですけど?」
「いや、宇宙で拾った唯のダイヤさ。」
「ブラックダイヤと同じものですか?」
「さあな・・・・・・もう行くぞ。」
「は、はい」
俺は彼のおかげで元気が出せた。
唯一、気がかりなのはあの不思議な光を放つ宝石だった。
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出航してからの初めての戦い。
それは多くのものを失った戦いだった。