side一夏
二時間目の休み時間。焔たちとだべろうとした。箒も機嫌が治ったのか、今朝のようなギスギス感は無い。しかし、昨日の様子見が終わりを告げたのか、
「ねえねえ、織斑君さあ!」
「はいはーい、質問。真庭君の忍法ってあれ以外使えるの?」
「鑢君て、休みの日なにしてるの~?」
「今日の昼ヒマ?放課後ヒマ?夜ヒマ?」
と俺達の席に詰めかける。流石の焔もたじたじだ。
「千冬お姉さまって自宅ではどんな感じなの!?」
「え。案外だらしなー
パアンッ!
「休み時間は終わりだ。散れ」
わが姉上よ。いつの間に後ろに?
「ところで、織斑、お前のISだが準備に時間がかかる。予備機が二台しかなかったんだ」
「すると、一夏のISはどうなるのですか?」
「学園で専用機を用意するそうだ」
「しかし大丈夫なものですかね。俺達は、ISコアモドキを持っているんですが」
「ISコアモドキって?」
「ああ、織斑先生話してもいいのですかね、これ?」
「ああ、それ思った」
「今のところは問題ない。束の奴にも確認は取れている」
「なるほど」
「ああ、そういえば。これらの保存するにあたって何か連絡とかないですかね」
と言って、箱を取り出し見せた。
「特には無いな。初めて見るな。確かにISのコアに見えるな」
「「「ええ~~~!!」」」
と絶叫。
「ISのコアって世界に467個しかないんだよね?」
「まさか、真庭君・・・
「いや、やましいこと何もしてないからな」
「そうだぞ、ん」
見ると、球の一つが光っている。鋸
「この場合どうすべきなんですかねえ、先生」
事前に話はしていたため、千冬さんは
「一人、一人確認するしかないだろ」
ということで、クラスの女子が次々と触れてみたが、無反応。十人過ぎただろうか、箒が触れると、
「主、認証しました」
と声が聞こえ光を放った。光が薄れると、木刀を持った箒がいた。
「木刀だね」
「木刀だな」
「伝説の刀鍛冶も何か迷ったのかねえ?」
「いや、あれが四季崎記紀の造りし完成形変体刀9番目の刀、王刀・鋸。主題は、毒気のなさだったかな」
箒はまっすぐに鋸を見つめていた。
「篠ノ之、しまえるか?」
「あ、はい、大丈夫です」
箒は目を閉じて、念じると右手の人差指に木製の指輪がはめられていた。
「さて、授業を始める。席に戻れ」
という千冬姉の鶴の一声で授業が始まった。
☆
「安心しましたわ。まさか訓練機で対戦しようとは思っていなかったでしょうけど」
休み時間、さっそく俺の席にやってきたセシリアは、腰に手を当ててそう言った。どうでもいいけど、お前好きだね、そのポーズ。
「まあ?一応勝負は見えていますけど?さすがにフェアではありませんものね」
「それは、速計でないのか、オルコット嬢。こいつの奥の手は我らでも対処に苦戦する」
「あら、あなた方が言う変体刀のことですか?確かに未知ではありますが、所詮は過去の産物。敵ではありませんわ」
「それは勇ましいな。せいぜい、足元を掬われないようにな」
「ご心配なく。万に一つもありませんわ」
「億に一つはあるかもな」
「馬鹿にしていますの?」
「さあな」
とにかく飯を食いに行きたい。そう思い打ちきった。
☆
「ISのことを教えてくれないか、箒。このままだと、多分負けるからさあ」
「くだらない挑発に乗るからだ、と言いたいところだがいいだろう」
「助かる」
「というより、焔たちはどうするつもりだ?」
「心配には及ばん。すでに予備機(打鉄)が準備されている。放課後にでもアリーナで訓練する予定だ」
「同じく」
「まあ、教官がいないことは不安であるがそれは刻枼も同じだ」
「ねえ。君達って噂の子でしょ?」
いきなり、隣りから話しかけられる。見ると、ヤヤ外側にはねた髪が特徴的な女子がいた。リボンの色が赤色だから三年生のようだ。
「代表候補生の子と勝負するって聞いたけど、ほんと」
「はい、そうですけど」
噂ってそんなことまで広まっているのか。流石は女子、噂話には目がないな
「でも君達って、素人なんだよね?ISの稼働時間いくつくらい?」
「試験の時のみだったよな。10分くらいか。瞬殺だったしな」
「瞬殺!?だけど、ISって稼働時間がものを言うのよ。もしよかったら私が教えてあげよっか?ISについて」
そう言われる。ふと焔たちを見ると、示し合わせたかのように
「そうですか、では頼みます。ああ、一夏は箒が教えることになっているんで」
「頼みます。先輩」
と、ここぞとばかりにくらいついていた。
「ええ、よろしくね。放課後第3アリーナでいいかな?」
「大丈夫です。ああ、そういえば自己紹介がまだでしたね。俺が、真庭焔。こっちが、
「鑢刻枼だ」
「私は、皿場硝子(さらばしょうこ)。じゃ、放課後に」
そう言って去って行った。
「ふむ、都合よく見つかったな」
「そうだな」
「一夏」
「ん」
「今日の放課後、剣道場に来い。いちど、腕がなまってないか見てやる」
「いや、俺はISのことを――」
「まだ、機体は無いのだろう。いいから見てやる」
「ま、それもそうか。よろしく頼む」
箒は、なぜか頬を赤く染めつつ
「うむ」
と頷いた。
「一夏」
「なんだよ。焔」
「食後にコーヒー牛乳おごれ」
「ああ、てかイチゴじゃなくていいのか?」
「今は無性にコーヒーが飲みたい気分だ」
どっちにしろ甘いチョイスだな。
side焔
放課後、焔とともに打鉄を装備して第3アリーナにいる。皿場先輩が基礎のこと教えてくれたので非常にうまくいっている。どこから噂が漏れたかは知らないが、第3アリーナにはギャラリーであふれかえっている。さてと、用意した鎖を手に持ち
「忍法・演武・渦刀鎖式」
忍法を使用してみた。ふむ、違和感はない。続いて
「永劫鞭」
繰り出す。装備として、チェーンウイップなんかないだろうか?聞いてみよう。焔の方を見てみると、七花八裂の練習をしている。ふむ我も負けられないな。
「真庭君」
「わざわざすみません。皿場先輩」
皿場先輩に頼んで射撃用の的を持ってきてもらった。用意した棒状手裏剣を構え、
「巻菱指弾応用」
先ずは、5丈(15メートル)問題なし。10丈(30メートル)問題なし。
12丈(36メートル)やや横にそれた。15丈(45メートル)ぎりぎり当たった。ここまでか。
「すごいね。銃器だったらスコープとかついてるけど、肉眼で当てるなんてやるじゃない」
「ありがとうございます」
投擲の練習を切り上げる。時間も限られているので、最後に鉋を使うか。
「絶刀・鉋」
右手に持ち、練習を開始した。10分経っただろうか。突如、眩暈を起こした。何事かと思うと、設定完成という声が響いた。すると、機体が光り始めた。
目を開けると黒を基本とした機体となっていた。床には打鉄のコアらしきものが転がっていた。同様のことが刻枼にも起きていた。機体は赤を基本にした十二単風の着物のように変っていた。
「真庭君、鑢君?どうやったの?」
皿場先輩が混乱していた。そう言われても分からないものは分からない。待てよ、こいつは
「鉋が原因か?」
誰かが呼んだのか、千冬さんがやってきた。
「真庭、鑢。とにかく、今日の練習はここまでだ。機体は少々調べさせてもらうが、時間はいいか」
「うす」
「問題ないです。あ、皿場先輩、今日はありがとうございます」
そう言って、アリーナを去った。
☆
「検査の結果が分かった」
ピッド内で待機してしばらくたったころか、千冬さんが戻ってきた。
「二人の機体だが完全に打鉄とは違った機体になっていた。先ずは、真庭のからだ。性能は第三世代並の機体になっている。特徴としては、機動性が他のISに比べ高い。装備についてだが、鉋のみだな。それでも、拡張領域が十分にある。最後に何かしらの能力が設定されているようだがこれについてはまだ分かっていない」
「分かりました。拡張領域が装備したい武装があるのですが可能ですか?」
「大がかりなものでは無ければな。次に鑢だ。鑢の機体は真庭の機体より性能が上だ。ただ、単一使用能力と常時発動型能力で大半が埋まっている。装備は、手甲と足甲のみ。能力についてだが、これも真庭同様まだ分かっていない以上だ。質問は無いか?」
「織斑先生、機体の名前は決まっているのですか?」
「決まってはいないな。お前たちが決めていいぞ」
「では早速、『黒鳳』(こくほう)で」
「じゃ、俺は『森羅』(しんら)で」
「黒鳳と森羅か。分かった、そう入力しておこう。以上だ。真庭、装備については明日に聞こう」
それを合図に俺達は学食に向かった。
side一夏 時は放課後
今俺は剣道場にいる。どこから噂が漏れたのか、ギャラリーは満載だ。あいつらのとこも今こうなっているのかな?それにしても竹刀持つのも久しぶりだな。その前に、いつもの習慣で針を発動させる。それを構え、目を閉じる。そしてなおした。
「よろしく頼む、箒」
「ああ、さっきのが一夏の?」
「ああ、四季崎記紀の完成形変体刀4番目の刀、薄刀・針。主題は、軽さと美しさだ。ただ、この刀スゲー脆いんだよな。」
「そうか、では始めるぞ」
30分後
「どういうことだ」
「と言われても」
手合わせを開始してから30分。俺の負け。やはり、ブランクが長いのが原因だ。
「…中学では何部に所属していた?」
「帰宅部だ。ちなみにバイトしてた。剣振ったのは半年前からだ。たまに、焔と刻枼と稽古したけど、俺の勝率は2割だ」
「鍛え直す!IS以前の問題だ!それに筋は悪くないのだ。これから毎日、放課後に私が稽古つけてやる」
「いや、それはいいが、IS関連も―――」
「分かっている。焔たちには一応勝っているのだな?」
「まあな。どっちかっていうと針の能力のおかげだ」
「どういうことだ?」
「なんつーか線が見るんだよ。トランスって言うのかな。その線を切れば、まっぷたつに切れるんだよ。岩でも、鋼でも」
「……すごいな」
「よしてくれ。続きいいか?」
「いいだろう」
と会話を終え、トレーニングを再開した。
side刻枼
訓練が終わり、学食に向かう途中、一夏達とであった。そのまま、一緒に夕食を食べることにした。
「で、どうなんだ、一夏のほうは?」
「感覚を失っているが、筋は悪くは無い。1週間で使い物にしてやる」
と篠ノ之さん。明らかに、恋い慕っているな。それに気がつかないとは、焔も言っていたが重症だな。
「焔と鑢君は」
「ああ、すまん。篠ノ之さん。俺のことは、刻枼でいい」
「ああ、なら私のことは箒でいい。ところでISの訓練は順調なのか?」
「それについてだが、機体が変わった。恐らく、俺らのコアが原因であるがな」
と途中経過を焔が説明した。
「そいつは驚きだ。てことは、俺の針も」
「可能性としては十分あり得るな」
「しかし、分からないな。四季崎記紀はここまで予測できたのかねえ?」
「さてな、今となっては真相は闇の中。知るすべは少ないな」
そう言ってこの話を打ち切った。食事を終え、部屋に戻る。少し休んだ後は、今日の復習と明日の予習をする。それを終え、修行着に着替え直す。焔はシャワーを浴びていた。屋上に行く。アリーナでは練習できなかったが、前々から考えていた奥義を完成させるためだ。すでに虛刀流の奥義は習得してはいるが、向上のためだ。梅の連続技その名も
「梅に鶯」
とまあ、発案したはいいがなかなか使い物にならない。まあ、練習あるのみだ。こいつは、打倒焔の技にしてやる。練習を終え、部屋に帰る。
「帰ったか、こく・・・・」
「どうした?」
「なんで、半裸なんだ!?」
「いや~、このスタイルが一番しっくりくるし」
「知るか!?まさか」
焔はあわてて廊下に顔を出した。
「見ろ、刻枼。一部女子が鼻血出してるぞ!!」
「ええ!!俺のせい!?」
「当たり前だ。さっさとシャワー浴びて着替えろ」
こうして、日々は過ぎていき一週間後の放課後。ついにやってきた。俺はピットに入ろうとしたが、先に来ていたのか、一課と箒が廊下で待機していた。
「速いな」
「まあな。だけどまだ来てないんだよな、IS。最悪、針でやるしかないのか」
「落ちつけ一夏」
「ま、俺らが前座だからな、その間じゃ・・・・
「織斑君、織斑君、織斑君」
山田先生、大事なことは二回でいいと思いますよ。
「山田先生。落ち着いてください。はい、深呼吸」
「は、はいっ。す~~~~~~は~~~~~~、す~~~~~は~~~~」
「はい、そこで止めて」
「うっ」
一夏、先生で遊ぶな。にしても、落ち着きないな山田先生。
「目上の人間には敬意をはらえ、馬鹿者」
パアンッ!と織斑先生にはたかれる。自業自得だ。そうして、俺達はピッドに入る。そこには一夏の専用ISが鎮座していた。ゆっくり見たいところだが、あいにく時間が差し迫っている。さっそく森羅を装備する。
「刻枼」
「何だ、一夏」
「頑張れよ」
「ああ」
さあ、戦おう、焔。
side焔
ピッドに入ると、オルコット嬢が先に待機していた。とりあえず、会釈だけはしておく。あとは、頭にかぶり物をかぶる。さて、いく
「あの」
「なんだ?」
「何をかぶっていらすの?」
「見て分からないのか?帽子だが。少々変っているが、気にするな」
戦闘着ならぬ戦闘帽だ。これも昨年の大掃除の際に見つけたものだ。オルコット嬢は、何か言いたそうだったか、あきらめたのか、ため息をつく。
「オルコット嬢」
「なんです?」
「一つ忠告してやろう。一夏にときめくなよ」
「はあ?」
「忠告はしたぞ」
そう言って黒鳳を装備する。そして外に出る。刻枼も同時にでていた。
「さて、刻枼。勝負の前に名乗りを上げたい。いいか?」
「いいぜ、じゃこっちからだ」
一呼吸置く
「虛刀流剣士、鑢刻枼押してまいる!!」
「真庭忍軍末裔、真庭焔、忍び名真庭鳳凰、いくぞ!!」
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