ポケットの携帯がバイヴしだした。
彼女は見るまでもなく用件が分かっているのか、すぐさま行動する。
行き着いた場所は川神学園の屋上。
すでに携帯でメールを送ってきた相手は待っていた。
「マルさーん♪」
相手は辺りに誰もいないのを確認すると彼女に抱きついた。
「大和♡」
ぎゅーっと力強く抱きしめられているのが嬉しいのか、彼女の顔はとても嬉しそうだ。
……が。
「それじゃ、さっそくお願いしていい? なんか毎日マルさんにしてもらわないと収まらないんだ」
相手はここがどこだか知ったうえで、彼女にいつもしてもらっていることをお願いしてくる。
「はい。わかりました♡」
彼女は真っ赤になりながらも頷くと人目のつかない場所に相手を誘導した。
――――――※※※――――――――※※※――――――――※※※―――――――――※※※――――――――※※※―――――――
マルギッテ・エーベルバッハと直江大和は恋人同士である。
ただしキッカケが一般的な恋愛から始まったわけではないためか、二人の交際は体の交じり合いが日常茶飯事であった。ちなみに交際は一部の人間しか知らないため、人がいるときは知人程度関係として振る舞っている。
けれど本音ではみんなに公表して堂々と付き合いたい。なのでよく大勢集まるイタリア商店街を歩いているのだが、なぜかその日は知人とは会わずに終わっていた。恐らく『何か』が二人の公表を邪魔しているのだろう。そうなると自分の口から発表するのは恥ずかしいので、交際のことは何も言わずに時が過ぎていた。
だけど、それよりもさらに重大な問題があった。
「マルさん、マルさん」
「はい、なんですか大和?」
脱いでしまった服を再び着なおしている最中のマルギッテに、大和はある質問をした。
「俺達の交際って、三月で終わっちゃうの?」
「っ!?」
マルギッテは耳を疑う。まさか彼氏から別れ話を持ち出されるとは思ってはいなかったからだ。
当然、理由を求めた。
「ど、どうして……そんな話を……」
「だって、マルさんはクリスのお目付けとしてここに来たんでしょう?」
「……なるほど」
マルギッテは大和の不安の意味を知る。
「それならば一切、問題ありません」
「え?」
「とりあえず、三月から家と婚姻届けをドイツで用意しましょう。そこで毎日一緒です♡」
「え……」
――――――※※※――――――――※※※――――――――※※※―――――――――※※※――――――――※※※―――――――
人は愛し合いすぎると、未来も即決である。
Tweet |
|
|
4
|
2
|
追加するフォルダを選択
チョロいという印象があるが、それは大和とマルギッテの相性がとても良いからであって、決してチョロいわけではない。