青州兵が晋を裏切り恋についた
最強の青州兵を手に入れた恋の戦いはまさに鬼神のごとくで
圧倒的優勢だった晋の軍勢は散り散りとなり、形勢は逆転した
「陳宮様より伝令、呂将軍を旗とする紅巾党は残存の味方勢力を吸収。そのまま許都へ向かうとのこと
連合にあっては兵站及び降伏兵の処理をされたし」
防衛指揮所の桂花と風は伝令の言葉に戸惑った
「まずいわね」
「まずいですねぇ」
桂花は風と目を合わせる
(ねねのやつ、恋の国を作るつもりだわ)
「風、私はねねのところに行く。荀諶のことお願いね」
腕に抱く子供を風に渡すと、ねねのいるであろう戦場へ馬を走らせた
(ねねのやつ、私たちを出し抜こうなんて十年早いのよ)
桂花は焦っていた
このままではねねに足元を掬われるかもしれない
(あれは春蘭)
逃げ惑う晋の中でただ一人敢然と前進を続ける春蘭
そして対峙する味方の将達
桂花は春蘭から少し距離を置いて戦況を見つめる真桜を見つけた
「真桜、春蘭は抑えられそうなの?」
「桂花やん!どしてこんなとこにおるん」
「私のことはいいから、春蘭は」
「ふっふ~ん、春蘭様捕獲作戦進行中や。まあ見とき」
真桜は胸を張って春蘭を見ている
春蘭の周囲には力を使い果たしたのか愛紗と翠が肩を上下させ座り込んでいた
今春蘭と打ち合っているのは星と焔耶だ
「よっ、ほっ、はーはっはっは、当たらんなぁ」
「グググググググ」
星の挑発で春蘭は怒り心頭となり、なりふり構わぬ攻撃を星に向ける
星はまたもひらりと春蘭の攻撃をかわす
「はーっはっは、くっ」
余裕を持ってかわす星であったが、春蘭の攻撃は息継ぎがない
常に繰り出され続ける攻撃が徐々に星を捉え始める
「でやぁあああーーーーー!」
焔耶の攻撃が春蘭を襲う
春蘭は避けようともせず焔耶の鈍砕骨を七星餓狼で正面から受け止めた
「ぐっ!!」
二人の力が拮抗する
しかし、春蘭の力は尽きることがない
徐々に焔耶が押され始める
「後ろががら空きだ」
焔耶と力比べをしていた春蘭の背中を星の龍牙が切り裂く
切り裂いたのを確認すると星と焔耶は春蘭と距離を取った
春蘭は一瞬痛みを感じた風を見せるが、傷はすぐに治癒を始める
「動きが止まったで、今や凪!」
真桜の号令と共に後方に隠れていた凪が飛び出した
「はあああああああ、猛虎蹴撃!!」
傷の治癒のため動きの止まった春蘭に気弾が打ち込まれた
隙をつかれた春蘭は凪の気弾を体で受け止める
「グッツグググッグググ」
気弾を抱え込む形で耐える春蘭
「いよっしゃ、春蘭様にとどめさせるんは誰やー!」
「ここにいるぞー!」
次に登場したのは蒲公英だ
蒲公英は気弾の側に立つと体を横に向け影閃を両手に握り前に落とす
体をひねりながら後ろに振りかぶり・・・・・・
「いっけーーーーー!」
気弾ごと春蘭をフルスイング
気弾の勢いと蒲公英のフルスイングで吹き飛ぶ春蘭
「ないすしょっとや!」
「な、ないすしょっと?」
桂花の疑問も一瞬で消えた
吹き飛んだ春蘭が桂花と真桜のまん前に落ちようとしていたのだ
落下点にあるのは岩の張りぼてで、春蘭が飛んでくるのにあわせて真桜が張りぼて岩をどけた
下にあったのは大きな穴だった
ひゅ~~~スポッ!
「ほーるいんわんやー!やったで蒲公英~」
ガッツポーズの真桜
春蘭は気弾ごと見事に穴に落ちた
「グウウウウウ、ガアアアアア!!」
気弾をかき消した春蘭は怒り心頭
しかし
穴の底にあったのは・・・・・・華琳様人形だ
春蘭はすぐさま華琳様人形に飛び掛る
それを上から眺める桂花と真桜
華琳様人形を見て穴に飛び込もうとする桂花を思いとどまらせ
「これで、しばらくおとなしくなるやろ」
穴に落ちた春蘭は幸せそうに華琳様人形改を堪能していた
ついに脅威となっていた春蘭を一応封じることに成功した
ほっとしたのも束の間、桂花のところへ馬軍が近づく
ねねだ
「こんなところで何やってやがるです!この勢いのまま都に攻めあがれば連合の勝利は必然、桂花は早く兵站の準備をするのです。
真桜、皆を集めて恋殿の軍に合流するのです。そうすれば潜入した御遣いを助けられるのですぞ」
「隊長を・・・・・凪、動ける人間集めるで!」
「待ちなさい!」
「け、桂花?」「なんで止めるんや!」
「兵站はこちらで手配するわ。けど、ねねと合流していい将は、美以以外の蜀の将だけよ」
「な、この好機に戦力を分散するなど愚の骨頂なのです!そんなことが分からない桂花ではないはずですぞ!」
「そうや、戦力のないうちらが戦力を分散したら勝ち目あらへん。ねねの言うように戦力を集中して隊長を助けに・・・」
「聞きなさい、呉が苦戦しているらしいわ」
呉が苦戦
霞を残したとは言え、呉が大規模攻撃を受けていることは知っていた
自分達連合は晋を撃退できた
しかしそれは計算外の出来事のおかげで、ほぼ全滅寸前だった
呉が苦戦しているなら、そのまま全滅もありうると言う事だ
合肥には霞がいる
真桜は霞が危ないと聞き冷静さを取り戻した
「今援軍を送らなければ呉は確実に落ちる。けれど、今この時に連合として援軍を出せば、魏蜀連合に正式に呉が加わり
三国同盟が復活したことを世に示せる。世論を引き付ける好機なのはねねも分かっているはずよ」
しかしねねは納得しない
「合肥が落ちたとて、その間に都を落とせば戦争は終わるのです。今こそ戦力を集中し都に攻めあがるべきなのです」
「合肥には霞姉さんも呉の皆もおるんやで!」
「呉は荊州の戦いで裏切ったのです。勝機を潰して助ける義理はないのです。それに、御遣いが手遅れになってもいいのですか?」
「ぐっ」
ねねと真桜が険悪な空気になる
「二人とも落ち着きなさい。合肥援軍の準備は既に小蓮が進めてくれているわ。これは決定事項なの」
「むぅ~~~~納得いかないのです!」
すると、今度は別の馬軍が接近する
恋だった
「ねね、どうしたの?」
「恋殿~~」
恋は皆を見渡した
至る所に傷を作った愛紗たち
そして、ねねと険悪な空気にある真桜
何かを訴える桂花の目
恋は考えた
「ねね」
「はいなのです」
「めっ」
「はぅ~恋殿~~」
軽いデコピン
「恋は、皆好き。だから、喧嘩しちゃだめ」
この時、桂花は思った
(恋の作る国も見てみたい)
「はっ、だめだめだめ!」
桂花は必死に頭を振り冷静さを取り戻そうとする
「ふぅ~、恋、愛紗と星と翠と焔耶を連れて行きなさい。後はこちらに任せて」
「ん、皆いこ」
愛紗たちは馬を受け取ると恋の紅巾党に合流する
「・・・・・・・わりい、あたし、ここに残るよ」
翠だ
「蒲公英はまだ万全じゃないんだ。また離れ離れになって心配したくないからさ・・・・・」
「姉様・・・・・」
ねねは不満そうであったが、愛紗の説得で翠が残ることを了承した
こうして、晋撃退に成功した魏蜀連合軍は
恋率いる紅巾党が都へ攻め上がり
残る残存部隊は合肥への援軍に向かうのだった
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青州兵の寝返りで形勢逆転するも新たな目論見が