No.410326

真・恋姫アナザー ~二つの鈴の音~ 拠点 ~私が彼を欲しい訳~

秋華さん

遅くなりましてすみません。

それではどうぞ!

2012-04-17 23:47:59 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3974   閲覧ユーザー数:3506

「と、まぁこういった感じじゃ。ちなみにその後、一刀は親父さんにこっぴどくしかられとったがの」

 

そう笑いながら祭は話を終えた。

 

「へーそんなことがあったんだ。それにしても倒した相手に追い討ちなんて、なかなかエグイことをするのね一刀は」

 

「まぁそうじゃな。でも間違ってはおらんしな。」

 

「そうね。その動きとかは少し気になるけど…ね。じゃあ次は冥琳ね」

 

「わたしか?ふむそうだな私の場合は…」

 

そう言いながら今度は冥琳が話始めた。

 

 

 

~冥琳・出会い~

 

 

 

「ふぅ…これで一通りは終わったか…」

 

そう言って書簡をまとめる。本当なら雪連にやってもらいたいものも多かったのだが、

 

「国の一大事だからちょっといってくるね~♪」

 

といって飛び出していってしまった。元から雪蓮に政務の期待をするほうが馬鹿なのだとは思うのだが、そうも言っていられない。

もっとちゃんとやって欲しいと思いながらも、最後にはそれを許してしまっている自分が少し可笑しかった。

 

「ふぅ、休憩でも…」

 

そう呟いて席を立とうとすると、ドタドタドタと音が通路側からしたと思うと、部屋の扉が勢い良く開いた。

 

「あ、冥琳良かった。ちょっとお願いがあるんだけど…」

 

一瞬にして嫌な予感が全身を駆け巡る。

長く付き合ってきたから分かるのだが、こうやって雪蓮がお願いしてくる事はろくな事が無い。

 

「政務をほっぽり出して、戻ってきたと思ったらお願いとは…いったい何を考えているのだ伯符!!」

 

「うわぁ…ごめんって。ちゃんと政務やるから…ね。」

 

「ハァ…絶対だぞ?それでお願い事とは?」

 

片目を瞑り、舌を出しながらお願いポーズをしてくる雪蓮を見て、ため息をつきながらもお願いを聞く事にした。

我ながら甘いな…常々そうは思っているのだが、頼ってくれているのがちょっと嬉しいと思ってしまっているから、多分一生これは治らないだろう。

…雪蓮と友になったのが運の尽きだという事だな。

しかし今回のお願い事は、今までとは違って政務で疲れた私を、更に疲れさせる言葉だった。

 

「お金頂戴♪」

 

…………何を言っているのだこの人は?

 

「…説明を聞こうか?」

 

「えーと…実はね?前お酒買った所があるんだけど、そこのお酒があまりにも美味しかったもんだから、いっぱい買ったの。でもその時手持ちが少なかったから付けにしてもらってて…しかもそれをすっかり忘れちゃってたのよ。だからお願い!お金頂戴!」

 

………………もう言葉もでなかった。

 

「………その店の場所は?」

 

「町の端の酒屋さん」

 

「わかった。私がそこに行ってお金を払ってくる。」

 

「ほんと!ありがとう。」

 

「ただし!私が帰ってくるまで雪蓮はここで政務をしてろ!!もし帰ったときいなかったら…」

 

「えーそんなぁ」

 

(ギロ……)

 

「あ、あははは…分かりました。ここで待っています!」

 

「そうしてくれ。それとこれはあくまで変わりに払うだけだからな、後できっちりお金は返してもらうぞ!」

 

「え?」

 

何でそこで意外そうな顔をするのだ?

まさか、私が奢るとでも思っていたのだろうか?

 

「何か文句でもあるのですか?伯符?」

 

「あ、ありません」

 

冷や汗を流しながらそう返事をした雪蓮を見て、満足すると私はその店に向かう事にした。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・

「ここか…失礼する。」

 

店の中に入ると、何処かで見たことがあるような顔をした男がこっちにやってきた。

 

「いらっしゃいませ。今日はどういったご用件で?」

 

「ああ、孫策の代わりにやってきた周瑜というものだが…」

 

「え…」

 

私の名前を聞いて、どうやら驚いているようだ。

まぁ…確かにこうして私が酒屋などに出向く事など殆どないからな。

分からなくも無いのだが…それにしてもなかなか面白い顔をしてくれるものだ。

 

「えっと…周瑜様が何のご用件でしょうか?」

 

「ああ、そんなかしこまらなくても良い。実は、孫策がこの店でお酒を買ったのだが、どうやらお金を払っていなかったらしくてな。それを払いに来た。」

 

「そうでしたか…少しお待ちください。親に聞いてまいりますので…」

 

そう言うと店員は、店の奥へ入って行った。

しばらく待っていると、「それホントなの?」といった声が聞こえてきて、その後なにやら神妙な面持ちでこちらにやってきた。

 

「周瑜様今聞いてきたところそれは本当のことだったのですが…」

 

「ん?どうしたのだ?何をそんなに良い難そうにしているのだ?」

 

「はぁ…それがですね…。お支払いしていただく金額は、こちらになるんですけど…」

 

私にそう言いながら、一つの書簡みたいなものを取り出し見せてきた。

そして私はそれを見て愕然としてしまった。

 

「…これは本当なのか?」

 

「はい…正直私もありえないと思っているのですが、ここに孫策様の署名があるので本当のことだと思います。」

 

「むぅ…確かに書いてあるが、他の者が書いたわけでは無いのか?」

 

「それは無理だと思います。字が書けるのは、家の者では私ぐらいですし、それにこれは私共の売り上げを記帳しているものなので、外に出すことはまずありえません。」

 

「そうなのか…にしてもこれはさすがに…」

 

「親の話を聞いた限りでは、店のお酒のほとんどを買っていったそうで…。私としては、そんなことありえないと思っているのですが…、家では店の売り上げをなるべく正確に割り出す為に毎日売ったお酒の数を数えております。その他にも日々の在庫を記帳した書簡が此方になるのですが、確かに数があっています。私もこれを見た時にてっきり珍しく大勢のお客さんが来てくれたものだと思っていました。」

 

店員がそう説明しながら、先ほどとは違った書簡を取り出し私に見せてくれた。

そこには確かに、雪蓮が買った日にかなりの数のお酒が売れた事になっている。

しかも、おそらく後から書いたのだろうが、売り上げ金額まで書かれていた。

流石にこれと、雪蓮の署名を見せられたら信じるしかなかった。

 

「みたいだな…分かった。少し足らんがこれをそれの足しにしてくれ。」

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

「足らない分は、また後日払いに来よう。」

 

「いえ…そんなことさせられませんよ。私が取りに行きます。明日ならばお城に顔を出す予定になっていますので…」

 

「ん?…それはどういうことだ?」

 

「それは、ししょ…黄蓋様との鍛錬の約束がありますので」

 

「祭殿の?」

 

「はい。先日祭様がいらしたときに一騒動が有りまして、その時に私の事を目に留めていただいて教えてもらっているところです。真名のほうもその時に教えていただきました。」

 

そこまで聞いて、先ほど感じたどこかで見た事がある顔に納得がいった。

多分私は、この男を城で見かけた事があるのだろう。

そういえば…祭殿も少し前に楽しそうに帰ってきて、「良い小僧にあったわ」と言っていたのを思い出した。

つまり、祭殿が言った”良い小僧”とはこの男の事なのだろう。

しかしそれにしても…、祭殿が真名を教えたと言うのは本当の事なのか?

傍目からは豪快に見える祭殿だが、さすが孫堅様から呉に仕えてくれているだけあって、人を見極める目は確かなものだ。

つまり、この男はそれだけの男だという事なのだろう。

 

「それは本当のことなのか?」

 

「はい。なんでしたら祭様にご確認ください。もし嘘偽りが有りましたら、首をはねて貰ってもかまいません。」

 

「ふむ…そこまでいうか…」

 

そう言って、真剣な眼差しを私に向けてくる。

 

(とてもよい目をしている。…なるほど。祭殿が真名を預けたのもなんとなく分かるな)

 

言葉に何か含むことがある場合、ほとんどの場合が目を逸らしたり、目のどこかが曇ったような輝きをするモノだが、この者にはそれがない。こんな目をしているものは、真実を言っている者か、よほどの度胸をもっているかの二つだろう。

それに先ほどまで普通に話していたが、よくよく考えるとただの酒屋の店員のはずなのだが、私をこうも簡単に納得させたのだ。大体今城に仕えてくれている者でも、文字を書けるものはそう多くない。名のにこの男は書けると言い、そしてその証拠も見せられた。

 

(…祭殿ではないが、本当に良い青年に逢ったのかもしれないな。)

 

そう思い始めると、色々確かめたい事が頭の中に浮かんできて、私は色々聞いてみる事にした。

「そこまで言うのなら多分本当の事だろう。信じることにする。…所で、先ほど見せてもらった売り上げを記帳している書簡と、在庫を調べてある書簡はお前が考えて書いているものなのか?」

 

「はい。店のことを考えたときにまず大事になるのはお金がどう回っているかです。」

 

そういい始めると、この者は私に何故このようなことをしているのか説明してくれた。

簡単に言うとこう言う事だ。

 

うまく売り上げを伸ばす為には、いかに原価よりも高く売るかである。そのためには、これがどのぐらいの価格で、どれだけ売れているかを考えなくてはいけない。

だが、それを全部覚えるのは不可能なので、一日終わったらそれを確認して記帳しているそうだ。そして今売れている物は多く製造し、売れていないものは作る量を減らす。

更に今売れていない物などは、利益が出るように考えながらギリギリまで価格を下げて、売れやすくしているそうだ。

 

ここまでの説明を聞いて、私はその考え方に素直に関心した。

こうした考え方と対処法は、文官や軍師からしたら少し考えればわかる事。

しかしそれは、過去の事例などを聞き、知識として持っているからそうできるのであって、習わず自分で考え付いたのは素晴らしい事だ。

しかも、ちゃんとした結果を出している。

これまで、いろんな商人と交流をしてきたが、こんな事をしている者に私は初めて出会った。

 

(まさに素晴らしい逸材だ。これほどの事が出来るのなら、もし智を学ばせる事が出来たらどれほどの存在になるのか…。考えただけで胸が躍るようだ。)

 

私は、いつの間にかこの青年を”これからどう育てていこうか?”とそんな事を考えてしまっていた。

すると、此方が色々考え込んでいる事に気がついたのか、青年がおずおずと尋ねてくる。

 

「という理由からなのですが…。あの、どうかしましたか?」

 

「…ああすまん。まさかそこまで考えが行き届いているとは思わなかったのでな。お前は以前、何処かの城にでも仕えてたのか?」

 

「いえ…そんなことはしていません。文字についてはここに来る前に人に教えてもらったのですが、一通り教えてもらった後、こちらに引っ越してきたので後は自分で考えました。」

 

「ふむ…なるほどな。では、もしなのだが…」

それを聞いた私は、いくつかの問いを投げかけてみた。すると少し考えた後、自分で考えた答えを私に聞かしてくれた。その答えは、流石に私を満足させるほどの答えではなかったが、着眼点と発想力は非凡な所があり、私を驚かしてくれた。

そして一番私が素晴らしいと思ったのは、考えのほとんどが他者との共存を考えての答えだったという所だ。今の時代、商人などは殆どが利益を追求する為に他者のことを蹴落とす事を考えるだろう。

しかし、それは仕方が無い事。

利益を求めるにはそれが最善なのだから。

しかしこの青年はそんな考えをしなかった。

もちろん、自身の利益の事は考えているのだが、それでも大幅な利益を求めている訳じゃなくほどほど…皆で利益を得られるように答えを出していたのだ。

軍師としての私から言えば、それは甘い。しかし、私個人の感情から言うならその考え方はとても好ましいかった。

この青年を育ててみたい。

そんな欲求が沸いてくる。

今はまだまだだが、少し育てるだけでこの青年は絶対にモノになる。

それこそ素晴らしい文官に。

軍略については、教えてみないと分からないが、この着眼点と発想力なら軍師としてもやっていけるかもしれない。

そう考えていると、とても楽しくなってきて、どんどんこの青年に問いをしていくのだった。

いくつかの問いを話し終えたところで、この者が親に呼ばれたのでその場は解散する事になり、城に戻る事になった。

 

「すみません周瑜様。こんな時間まで留まらせてしまって…」

 

「いや…こちらこそ仕事中なのにこんなにつき合わせてしまってすまない。」

 

「いえ、とても有意義な時間だったと思いますので、私からはありがとうございました、と言いたいぐらいです。」

 

「そうか…それならよかった。そういえば明日城に来るのだな?」

 

「はい。そう約束していますので。」

 

「なら、鍛錬が終わった後でも良いから、私を訪ねてきて欲しい。」

 

「えっと…それはどういった理由で?」

 

「私にとっても今日のこの時間は有意義な時間だった。もし時間が有るのなら、もっと話して見たいと思ったほどだ。」

 

「いや、そんなこと…」

 

「フッ…お前はもう少し自分の力を信じるといい。それにお前は私から見て、文官や軍師としての才能も有るように感じる。どうだ?祭殿に武を教えてもらうついでに、私から智について教えをこわんか?」

 

「ええ!それは大変ありがたいお話なんですが…えーと…どうしよう…」

 

ふふ…良く表情が変わるやつだ。問題を突きつけられると困った顔をしながら考えているのに、何かひらめくとコロッと表情を変え嬉しそうな顔をする。そして今のようにテレながら困っている顔は、なんというか…かわいい…とすら思ってしまう。

 

(こうした所も見て祭殿は心を許されたのかも知れんな)

 

そう考えていると、

 

「わかりました。仕事も有りますので毎日と言うわけにはいきませんが、暇を見つけては教えてもらいにいきます。なによりこんな貴重な体験をさせていただく機会などそうないと思いますので。」

 

「そうか…ならば私の真名を預けよう、私は冥琳という。これからよろしく頼む。」

 

「ええ!!真名を私に預けるのですか?そんな恐れ多い…」

 

「なに、お前の才と考え方。祭殿が真名を預けるほどの人柄、何より私の弟子になるのだからな。真名を預けるにたる人物だと思っているよ。」

 

「はぁ…祭様にも同じようなことを言われたんですが、本当にそんなのがあるのかなぁ…」

 

何かぼそぼそと呟いていたが、良く聞き取れなかった。

 

「何をぼそぼそ呟いているのだ?それでお主の名前を教えてくれぬのか?」

 

「あ、すみませんでした。私は姓は北、名は郷、字は江清、真名は一刀と言います。これからよろしくお願いします。」

 

「ああ」

 

そう言って私は一刀と分かれ、明日を楽しみにしながら城へと帰っていったのだった。

 

 

 


 
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